過去ログ - 速水奏「ゆらゆら揺れて、夢のようで」
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1:名無しNIPPER[saga]
2016/02/22(月) 17:49:37.42 ID:5MCPQXq+0
速水奏さんが渋谷凛さんの頭をなでなでするやつです。

・短編

・地の文

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2:名無しNIPPER[saga]
2016/02/22(月) 17:50:35.52 ID:5MCPQXq+0


 ねぇ、クロノスタシスって知ってる?
 凛がそう言ったから、私は手元でコンビニのレジ袋を少し揺らして、知らないと答えた。

以下略



3:名無しNIPPER[saga]
2016/02/22(月) 17:51:18.07 ID:5MCPQXq+0

 あたりはとっくに真っ暗。

 最近は日も長くなってきたけれど、凛と待ち合わせるのはいつも日が落ちてからだった。
 今日もいつも通り、月が追いかけてくるのを知らんぷりして家に帰る。
以下略



4:名無しNIPPER[saga]
2016/02/22(月) 17:52:02.50 ID:5MCPQXq+0

 左に曲がればもうすぐ、白い壁のマンションが見える。

 さして会話もない、いつも通りのコンビニからの帰り道。
 マンションに入ってもそれは変わらなくて、エレベーターの電灯がちらついていたことを軽い会話の種にしたくらいだった。
以下略



5:名無しNIPPER[saga]
2016/02/22(月) 17:53:00.83 ID:5MCPQXq+0

―――――


 リビングについてすぐ、凛はすぐにソファ代わりのベッドに腰掛けた。
以下略



6:名無しNIPPER[saga]
2016/02/22(月) 17:56:19.83 ID:5MCPQXq+0

 私がインスタントのコーヒーにたっぷりミルクを入れたら、それを見て凛はちょっぴり饒舌になる。

 北海道ではまだまだスキーができることだとか。
 お土産として買ったチョコレートを少しだけ食べてしまったことだとか。
以下略



7:名無しNIPPER[saga]
2016/02/22(月) 17:58:04.63 ID:5MCPQXq+0

「それでも、夢は白いドレスだよね」

「まぁ、そうよね。女の子だもの」

以下略



8:名無しNIPPER[saga]
2016/02/22(月) 17:59:01.80 ID:5MCPQXq+0

「凛はいつか、私と一緒にステージに立ちたいって思う?」

「……思わないかな」

以下略



9:名無しNIPPER[saga]
2016/02/22(月) 18:00:12.14 ID:5MCPQXq+0

「この曲誰の歌なの?」

「シガーロスってバンドよ。ほら、映画でも使われてたでしょ」

以下略



10:名無しNIPPER[saga]
2016/02/22(月) 18:00:42.87 ID:5MCPQXq+0

 凛はこてんと私の肩に頭を乗せる。
 高い体温が伝わってきて、やっぱり猫みたいだと思った。

 ふふっ、って笑ってしまって、彼女からはジト目が飛んできたけれど、でも犬を飼っている凛が「猫みたいだ」なんて、可笑しいって思わない?
以下略



11:名無しNIPPER[saga]
2016/02/22(月) 18:02:27.08 ID:5MCPQXq+0

―――――


 それから私たちはそれぞれシャワーを浴びて、またベッドの上に並んで座った。
以下略



12:名無しNIPPER[saga]
2016/02/22(月) 18:03:56.33 ID:5MCPQXq+0

 ちなみに私も鳥の着ぐるみを着ている。
 フードには飾り羽が付いていて、なんていう鳥かフレちゃんに聞いたら「ミミズクだよ!」だそうで。

「ミミズクなんて、奏にはぴったりだよね」
以下略



13:名無しNIPPER[saga]
2016/02/22(月) 18:04:44.11 ID:5MCPQXq+0

 カチコチ時計が鳴っている。もうすぐ十二時だった。
 普通の女子高生のお泊まり会だったら、ここからが本番だったりするのかもしれない。

 でも、私たちの夜会は、だいたい日付が変わる頃にはお開きになる。
以下略



14:名無しNIPPER[saga]
2016/02/22(月) 18:06:24.38 ID:5MCPQXq+0

 私たちはむぐむぐベッドに潜る。
 彼女が口元まですっぽりタオルケットをかぶったら、三センチだけ背の低い私はつま先が冷えてしまう。

 少し丸まれば、ベッドの上は私たちでいっぱいになった。
以下略



15:名無しNIPPER[saga]
2016/02/22(月) 18:07:01.35 ID:5MCPQXq+0

「奏はさ」

「なぁに?」

以下略



16:名無しNIPPER[saga]
2016/02/22(月) 18:09:26.33 ID:5MCPQXq+0

―――――


 凛を最初に泊めたのは、たしか十二月の雪の降った日だった。
以下略



17:名無しNIPPER[saga]
2016/02/22(月) 18:10:18.83 ID:5MCPQXq+0

 「どうして凛を泊めたのか」なんて、今まで考えたこともなかったんだ。
 だってあの日の凛はなにかとても疲れていたような気がして、ほっとけなかっただけ。

 もしかしてこの子は私の想像以上に脆いのかもしれない。そう思ってしまったら、そばにいたくなった。
以下略



18:名無しNIPPER[saga]
2016/02/22(月) 18:10:53.36 ID:5MCPQXq+0

 凛には奈緒や加蓮、卯月、未央みたいに、たくさんの友達がいる。
 その中で私を選んだのはどうして?

 初めて泊めた冬の日は、偶然。でも、二度目や三度目は偶然じゃないでしょ?
以下略



19:名無しNIPPER[saga]
2016/02/22(月) 18:15:10.10 ID:5MCPQXq+0

 ねぇ、クロノスタシスって知ってる?

 また凛はそう言ったから、私は今度は「教えて?」と答える。

以下略



20:名無しNIPPER[saga]
2016/02/22(月) 18:17:54.96 ID:5MCPQXq+0

 凛はいつだって強くて、キラキラ輝いて、全力で走り続けられるって、てっきり私もそう思い込んでいたんだ。
 
 私はグラファイトの髪を撫でる。
 私が触れても崩れはしなかったけれど、すごくか細く感じる。
以下略



21:名無しNIPPER[saga]
2016/02/22(月) 18:21:15.65 ID:5MCPQXq+0

 彼女の髪に指を通せば、指の間をさらさらと流れる。
 思いっきり甘えてほしかった。

 野良猫に似ているところも、子供っぽいところも、彼女の弱さも知ってしまった私は、彼女の細い髪を撫でて、からだを抱きしめて、それしかできないけれど。
以下略



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