10:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 18:49:38.44 ID:887tizks0
「う、うん。そうかも……」
「あ、由紀までそんなこと言うんだ……。へこむなぁ……」
11:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 18:58:49.31 ID:887tizks0
……私だって、二人の言っている事が冗談だってことくらいわかってる。でも、冗談とはいえ自分の好きな人にこんな事を言われたら、顔が熱くなってしまうのはどうしようもないんじゃないかな……。
私は自分の気持ちを真ちゃんはもちろん、晴菜ちゃんにも秘密にしていた。晴菜ちゃんに相談すれば応援してくれそうな気もしたけど、なんとなく今の三人の心地よい関係が消えてしまいそうな気がしたから……。
12:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 19:02:27.70 ID:887tizks0
だからさっきの会話でも、晴菜ちゃんの「真には彼女ができなさそう」に対してつい頷いてしまったんだ……。“できなさそう”だと思ったんじゃなくて、“できてほしくない”って強く思ったから……。
……そういえば、晴菜ちゃんは真ちゃんをどう思ってるんだろう。もし晴菜ちゃんが真ちゃんを好きなら……ううん、そんなはずないよね。「彼女ができなさそう」って言ってるくらいだし、普段も真ちゃんと口喧嘩してばかりだし……。
13:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:00:09.62 ID:887tizks0
そして中学時代は何事もなく過ぎ、小中に引き続き私たち三人は地元の同じ公立高校に進学した。一年が過ぎ、二年目が終わっても私たちの関係は何も変わらない。もしかしたら、ずっとこのままなんじゃないかな……
――そう思っていた矢先の出来事だった。晴菜ちゃんが私に真ちゃんへの想いを伝えてきたのは。
14:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:09:04.62 ID:887tizks0
真ちゃんと晴菜ちゃんは付き合い始めてからも表面上はほとんど変わらないように見えた。私に対する態度も、三人で通学するのも、以前と同じ。晴菜ちゃんが真ちゃんをからかうのも相変わらずだ。
ただ、それでもやっぱり二人だけで合う時間は増えていて……。そんな時、二人はどんな事をしてるんだろうってつい想像してしまいそうになって、私は慌てて頭からその映像を追い出す。
15:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:14:43.34 ID:887tizks0
――私の心中なんてお構いなしに月日は流れ続ける。結局、真ちゃんと晴菜ちゃんは良好な関係を保ったまま高校を卒業した。
小学校からずっと一緒だった私たち。でも、大学への進学で初めて道が分かれた。
16:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:18:58.66 ID:887tizks0
真ちゃんが大好きな気持ちには変わりはない。ただ、晴菜ちゃんとの関係にモヤモヤしなくなっただけだ。そもそも、私の大好きな親友の二人が付き合い始めたのは嬉しいことのはずなのに……暗くなっていた私がおかしかったんだ。
そんな風に真ちゃんへの想いを整理した気になっても、私は他の男の人と付き合おうとは全然思えなかった。男の人への恐怖心は昔よりもだいぶ薄れてきたのに……なんでだろう……。ゼミで同じグループの人に告白されたりもしたけれど、私はそれに良い返事ができなくて……。
17:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:28:20.80 ID:887tizks0
大学生活三年目も半ばを過ぎて、枯れ落ちた紅葉が通学路の石畳を彩る頃、その電話のベルは鳴った。
時刻は二十三時前。携帯のディスプレイには真ちゃんの名前が表示されている。
18:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:30:08.26 ID:887tizks0
――バーのカウンター席に突っ伏している真ちゃんは電話で聞いていた通り完全な泥酔状態で、店員さんの手を借りてようやく店外に連れ出せるといった有様だった。
「1杯だけでここまで酔ってしまうとは思わなくて……」
19:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:34:12.89 ID:887tizks0
――居酒屋を出発したタクシーの車内には会話は無く、目的地を目指すタクシーの淡々とした走行音だけがその場を包み込んでいた。
時折、真ちゃんが不鮮明な唸り声を漏らす。その度に私は背中をさすってあげていた。
20:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:35:59.10 ID:887tizks0
結局その後は何事もなくアパートに到着した。タクシーの料金を払い終えてから隣を見る。真ちゃんは相変わらず目を瞑った苦しげな表情のままだ。
「真ちゃん、着いたよ。降りよう」
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