817:名無しNIPPER[saga]
2017/10/30(月) 00:30:51.36 ID:J5LgB8ivo
◆
"まず明らかなように、個人の意味作用が、なにかしら耳にきこえた文句とか、ふとかいまみた光景とか、通行人の身ぶりとか、
818:名無しNIPPER[saga]
2017/10/30(月) 00:31:49.76 ID:J5LgB8ivo
◆
"運命の晩、さしせまる処罰の不安のなかで、二人の姉妹は女主人たちの心像に自分たちの禍の幻影をまぜあわせる。
819:名無しNIPPER[saga]
2017/10/30(月) 00:32:22.91 ID:J5LgB8ivo
◇
わたしはページから目を離すと、本を元の位置に戻した。
820:名無しNIPPER[saga]
2017/10/30(月) 00:32:56.92 ID:J5LgB8ivo
そうだ。お兄ちゃんの部屋は、昔、お母さんが使っていた部屋と、扉で繋がっていた。
その扉はずっと使われていなかったけれど、それでも、たしかに繋がっていたはずだった。
でも、その扉があった場所に、今は本棚が立っている。
821:名無しNIPPER[saga]
2017/10/30(月) 00:33:44.74 ID:J5LgB8ivo
中身をすべて床の上に吐き出させると、本棚はようやくわたしの腕でも動かせるくらいになった。
ずらすように横に押すと、やはり、そこには扉が隠されていた。
822:名無しNIPPER[saga]
2017/10/30(月) 00:34:23.71 ID:J5LgB8ivo
ふと、足元を見ると、一枚の写真が落ちていた。
古い、古い写真。
823:名無しNIPPER[saga]
2017/10/30(月) 00:35:23.13 ID:J5LgB8ivo
そんなことは分からないままだ。
今までだって、ずっと、そうだ。
824:名無しNIPPER[saga]
2017/10/30(月) 00:35:58.42 ID:J5LgB8ivo
全力で走ってきたつもりだ。
お兄ちゃんに、お祖母ちゃんに、お母さんに、いつか、認めてもらえる。
825:名無しNIPPER[saga]
2017/10/30(月) 00:36:37.39 ID:J5LgB8ivo
扉の向こうは下り階段になっていた。
埃と黴の匂いの混じった湿った空気が、地下から吹き込んでくる。
風の音が怪物の吠える声のように聞こえる。
826:名無しNIPPER[saga]
2017/10/30(月) 00:37:25.92 ID:J5LgB8ivo
一歩踏み出すと、冷たい風がわたしの首筋をするりと撫ぜる。
身をすくませるような怖気。
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