過去ログ - 高森藍子「誰かを笑顔にできるなら」
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26: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 17:55:11.89 ID:wiTHyHYmO
「あ、すいません。つい…」
「今日はどうしたんだいったい。何かいいことでもあったのか」
俺に言葉を投げかけながらも先輩は手際よくパソコンの電源を入れ、起動の待ち時間でホワイトボードに何か書き込み冷蔵庫から缶コーヒーを取り出していた。
27: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 17:58:04.19 ID:wiTHyHYmO
「けど、普通ってのは悪いことじゃないって思ってたからな」
先輩は取り出した書類に判を押すとそれを上司のデスクに放り投げる。
「個性が無いことが、ですか」
28: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 17:59:40.10 ID:wiTHyHYmO
帰り道にコンビニに立ち寄った。
昼間の公園から何も食べていないはずなのに不思議と腹は空いていなかった。
少しは食べないと体に良くないと思い棚に残っていたおにぎりを二個買った。そしてアイドル雑誌も一緒に袋に入っている。
29: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 18:01:18.69 ID:wiTHyHYmO
「ちひろさん、植物の図鑑ってありますか?」
「図鑑といわれても…なにを調べたいんですか?育て方とか食べ方ですか?」
「色や形が分かるものがいいんですけど…」
30: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 18:02:58.14 ID:wiTHyHYmO
オフィスの下のフロアはまるまる資料室になっている。
何度が先輩たちに頼まれて資料を取りに来たことはあるが、探している以外のどんな本があるか、なんてほとんど気にも留めていなかった。
「この辺なんかどうでしょうか」
31: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 18:05:13.95 ID:wiTHyHYmO
必要そうな本を数冊取り出して自分の机に戻ってきた。
ところどころに付箋が張ってある。
今までなんの価値もないと思っていた本だった。
32: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 18:07:15.79 ID:wiTHyHYmO
外はまだ雨が続いている。
そんなことはお構いなしに、俺はスケッチブックに向かって自分の想いをぶつけていた。これをすることが答えを見つける手段だとは思わなかったが何かせずにはいられなかった。
このデザインが完成したらまたあの公園に行こう。
33: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 18:09:11.94 ID:wiTHyHYmO
「どうぞごゆっくり」
来客用の上等な紅茶を置いてちひろさんは応接室を出ていってしまう。
「すみません、いきなりお邪魔して。ご迷惑じゃなかったですか?」
34: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 18:11:17.65 ID:wiTHyHYmO
「あの…私このあたりには何度か来たことがあるんです。ほら、向こうのビルにたまにお買い物に行くんです」
そう言って坂の上にある丸いビルを指さす。
「でも不思議ですね。私の知っている街と、ここから見る景色はちょっと違う気がします」
35: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 18:13:03.34 ID:wiTHyHYmO
「あの…それでですね」
おずおずと彼女が口を開いた。
「この前、その…おっしゃっていたことって…本当ですか…その…私がアイドルに向いているかもっていうお話」
36: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 18:16:05.40 ID:wiTHyHYmO
紅茶のカップを手に持ったまま彼女はしばらく考え込んでいるようだった。
少しだけ口を付けたカップをソーサーにそっと戻すと、彼女はこちらを見てゆっくりと口を開いた。
「私、考えてみたんです。なんの個性も取り柄もない私がアイドルになったとして、何ができるのかなあって」
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