過去ログ - 高森藍子「誰かを笑顔にできるなら」
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20: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 17:30:53.56 ID:wiTHyHYmO
「ああ、もうこんな時間か」

彼女との会話と猫との格闘に夢中になっていた俺の腕時計の針は予想よりも先に進んでいた。

「あ、ごめんなさい。ついおしゃべりに夢中になっちゃって、お仕事の方は大丈夫ですか」
以下略



21: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 17:32:34.10 ID:wiTHyHYmO
「えーと、これは…アイドル事務所のプロデューサーさん、ですか」

担当アイドルが居なくてもプロデューサーを名乗っていいのだろうか。

多少の罪悪感を覚えながらも彼女に見栄を張りたい欲が勝り大きくうなずいてしまった。
以下略



22: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 17:34:34.99 ID:wiTHyHYmO
「ああ、あのさ…キミ、アイドルに興味はないかな?」

「え、アイドルって私がですか?」

「もちろん」
以下略



23: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 17:37:14.42 ID:wiTHyHYmO
「それでは私はこれで…あの、この公園にはよく来られるんですか?」

「え、えーと…たまに立ち寄るけど」

「私もです、またお会いできるかもしれませんね」
以下略



24: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 17:50:53.36 ID:wiTHyHYmO
「プロデューサーさん、どうしたんですか。ずぶ濡れになって」

「帰りに雨に降られちゃいましてね」

「ちょっと待っててください、今タオル持ってきますから」
以下略



25: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 17:52:45.14 ID:wiTHyHYmO
島村卯月、高垣楓、天海春香、日高舞、Jupiter…

時代やジャンルは様々だがトップクラスのアイドルたちが完成度の高いパフォーマンスを繰り広げているのを見ていた。

みんなステージの上で歌い、踊り、自分たちの持つ輝きを精一杯に放って観客を魅了している。
以下略



26: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 17:55:11.89 ID:wiTHyHYmO
「あ、すいません。つい…」

「今日はどうしたんだいったい。何かいいことでもあったのか」

俺に言葉を投げかけながらも先輩は手際よくパソコンの電源を入れ、起動の待ち時間でホワイトボードに何か書き込み冷蔵庫から缶コーヒーを取り出していた。
以下略



27: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 17:58:04.19 ID:wiTHyHYmO
「けど、普通ってのは悪いことじゃないって思ってたからな」

先輩は取り出した書類に判を押すとそれを上司のデスクに放り投げる。

「個性が無いことが、ですか」
以下略



28: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 17:59:40.10 ID:wiTHyHYmO
帰り道にコンビニに立ち寄った。

昼間の公園から何も食べていないはずなのに不思議と腹は空いていなかった。

少しは食べないと体に良くないと思い棚に残っていたおにぎりを二個買った。そしてアイドル雑誌も一緒に袋に入っている。
以下略



29: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 18:01:18.69 ID:wiTHyHYmO
「ちひろさん、植物の図鑑ってありますか?」

「図鑑といわれても…なにを調べたいんですか?育て方とか食べ方ですか?」

「色や形が分かるものがいいんですけど…」
以下略



30: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 18:02:58.14 ID:wiTHyHYmO
オフィスの下のフロアはまるまる資料室になっている。

何度が先輩たちに頼まれて資料を取りに来たことはあるが、探している以外のどんな本があるか、なんてほとんど気にも留めていなかった。

「この辺なんかどうでしょうか」
以下略



31: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 18:05:13.95 ID:wiTHyHYmO
必要そうな本を数冊取り出して自分の机に戻ってきた。

ところどころに付箋が張ってある。

今までなんの価値もないと思っていた本だった。
以下略



32: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 18:07:15.79 ID:wiTHyHYmO
外はまだ雨が続いている。

そんなことはお構いなしに、俺はスケッチブックに向かって自分の想いをぶつけていた。これをすることが答えを見つける手段だとは思わなかったが何かせずにはいられなかった。

このデザインが完成したらまたあの公園に行こう。
以下略



33: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 18:09:11.94 ID:wiTHyHYmO
「どうぞごゆっくり」

来客用の上等な紅茶を置いてちひろさんは応接室を出ていってしまう。

「すみません、いきなりお邪魔して。ご迷惑じゃなかったですか?」
以下略



34: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 18:11:17.65 ID:wiTHyHYmO
「あの…私このあたりには何度か来たことがあるんです。ほら、向こうのビルにたまにお買い物に行くんです」

そう言って坂の上にある丸いビルを指さす。

「でも不思議ですね。私の知っている街と、ここから見る景色はちょっと違う気がします」
以下略



35: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 18:13:03.34 ID:wiTHyHYmO
「あの…それでですね」

おずおずと彼女が口を開いた。

「この前、その…おっしゃっていたことって…本当ですか…その…私がアイドルに向いているかもっていうお話」
以下略



36: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 18:16:05.40 ID:wiTHyHYmO
紅茶のカップを手に持ったまま彼女はしばらく考え込んでいるようだった。

少しだけ口を付けたカップをソーサーにそっと戻すと、彼女はこちらを見てゆっくりと口を開いた。

「私、考えてみたんです。なんの個性も取り柄もない私がアイドルになったとして、何ができるのかなあって」
以下略



37: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 18:20:31.59 ID:wiTHyHYmO
急に体から力が抜けていくような感じがした。

なんだ、答えは彼女が持っていたじゃないか。

下手の考え休むに似たりとはよく言ったものだ。
以下略



38: ◆6X9N3xfEM.[sage saga]
2016/07/24(日) 18:21:35.16 ID:wiTHyHYmO
以上で終わりです。

日付変わったら依頼出してきます。


39:名無しNIPPER[sage]
2016/07/24(日) 18:38:43.30 ID:cw2le8VcO
おつ
良かった


40:名無しNIPPER[sage]
2016/07/24(日) 19:57:13.32 ID:Qh6Y72Ulo
スケッチブックは使わないのか
乙?


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