過去ログ - アナスタシア「またひとつ、約束を」
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1: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:25:03.06 ID:o5p7gtxyO
ある日の昼下がり。
屋外での撮影を終えた後、私はふと空を見上げる。
白い雲はまばらにしか浮かんでいなくて、春の陽ざしが青空をさわやかに映し出していた。
私の大好きな星が見えるのは、今から4時間以上後のことだろう。
「アーニャ。お疲れ様」
「プロデューサー。どうでしたか? 今日のアーニャ」
「いつも通りよかったよ。カメラマンの人も、理想通りの写真が撮れたって褒めていた」
「プリクラースナ……すばらしい、ですね」
褒めてもらえるのは、うれしい。がんばりが、認められたような気がするから。
……けれど。
「いつも通り……ですか」
「……アーニャ?」
「なんでも、ありません」
お仕事が終わった後、プロデューサーはいつも私を褒めてくれる。
いつも通りに、褒めてくれる。
さっきも言ったけれど、それはうれしい。たまに頭を撫でてもらえると、もっとうれしい。くすぐったくて、暖かくて。
「事務所に帰りましょう。ランコたちが、待っています」
「……そうだな。車、こっち」
「ダー」
先を歩くプロデューサーの背中を追いかける。
その背中が、いつもより小さく見えたのは……きっと、私の気持ちの問題。
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2: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:27:36.68 ID:o5p7gtxyO
「………」
「………」
聞こえるのは、車のエンジンの音と、流れているラジオの音だけ。
3: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:29:39.64 ID:o5p7gtxyO
実際は、そんなことはない……と、思う。
歌もダンスも、演技やトークだって。デビューしたての頃よりも、今のほうがずっとうまくなった。トレーナーも、そう言ってくれている。実力は、ついてきているはず。
けれど、新しく事務所に入ってきた人たちが、どんどん力をつけて、どんどん人気が出てきて……仲間が輝くこと、それ自体は、とてもうれしいのに。
どうしてだろう。心の奥底で、怖いと感じる自分がいた。
4: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:31:45.38 ID:o5p7gtxyO
「ここだ」
車を止めて、プロデューサーが運転席から降りる。
私も、後に続いて外へ出る。
次の瞬間、目に映ったのは。
5: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:32:51.89 ID:o5p7gtxyO
「桜の木、ひとつひとつが星のよう……さっき、アーニャはそう言ったと思うけど」
お互いに無言で桜を眺めていると、ふとプロデューサーが口を開いた。
「じゃあ、その桜の花びらひとつひとつは、なにに見える?」
6: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:34:18.07 ID:o5p7gtxyO
「なるほど。伸び悩みを感じている、か」
さっきまで考えていたことを、包み隠さず打ち明ける。
「私、悪い子ですね。他の子が輝くのを見て、焦ってしまうなんて……」
7: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:35:36.50 ID:o5p7gtxyO
「アスカと、桜を見る約束をしてますよね」
「あれ、知ってるのか」
「アスカから聞きました」
8: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:36:39.31 ID:o5p7gtxyO
「もうすっかり暗くなっちゃったな」
かなりの間花見をしてしまっていたようで、帰りの車の中から見える空は、すでに黒く染まっていた。
「ちひろさんにはあらかじめ連絡しておいたから、問題はないだろうけど」
9: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:39:25.66 ID:o5p7gtxyO
「アーニャの夢は、この一年でようやく明確なものになった」
私の話を黙って聞いていたプロデューサーが、おもむろに口を開く。
運転中だから、私を見てはいなかったけれど……その口元は、少し緩んでいた。
10: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:40:28.33 ID:o5p7gtxyO
「私、よくいい子と言われます」
「でも、本当は欲張りで、寂しがりです」
「知ってる」
11: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:41:51.16 ID:o5p7gtxyO
「まあ、アーニャが知りたいならいつでも教えるよ。俺のこと」
「うれしいです」
「何が聞きたいんだ?」
12: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:42:47.75 ID:o5p7gtxyO
流れ星に祈ったわけではないけれど。
その願いは、きっと叶う。そう信じることができた。
でも、それはそれとして。
13: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:46:14.87 ID:o5p7gtxyO
おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
アーニャをまともに書くのは初めてだったのですが、セリフを見ていくうちにすごいかわいい子だなあと改めて感じさせられました。モバマスでお迎えするのは非常にしんどいので、今はデレステで踊ってもらうことで満足しようと思います
過去作
的場梨沙「で、ハートさんの体重はいくつなのよ」 佐藤心「0キロ☆」
14:名無しNIPPER[sage]
2016/08/16(火) 17:52:20.11 ID:MemAElDS0
おっつおつ
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