過去ログ - アナスタシア「またひとつ、約束を」
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2: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:27:36.68 ID:o5p7gtxyO
「………」
「………」
聞こえるのは、車のエンジンの音と、流れているラジオの音だけ。
3: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:29:39.64 ID:o5p7gtxyO
実際は、そんなことはない……と、思う。
歌もダンスも、演技やトークだって。デビューしたての頃よりも、今のほうがずっとうまくなった。トレーナーも、そう言ってくれている。実力は、ついてきているはず。
けれど、新しく事務所に入ってきた人たちが、どんどん力をつけて、どんどん人気が出てきて……仲間が輝くこと、それ自体は、とてもうれしいのに。
どうしてだろう。心の奥底で、怖いと感じる自分がいた。
4: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:31:45.38 ID:o5p7gtxyO
「ここだ」
車を止めて、プロデューサーが運転席から降りる。
私も、後に続いて外へ出る。
次の瞬間、目に映ったのは。
5: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:32:51.89 ID:o5p7gtxyO
「桜の木、ひとつひとつが星のよう……さっき、アーニャはそう言ったと思うけど」
お互いに無言で桜を眺めていると、ふとプロデューサーが口を開いた。
「じゃあ、その桜の花びらひとつひとつは、なにに見える?」
6: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:34:18.07 ID:o5p7gtxyO
「なるほど。伸び悩みを感じている、か」
さっきまで考えていたことを、包み隠さず打ち明ける。
「私、悪い子ですね。他の子が輝くのを見て、焦ってしまうなんて……」
7: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:35:36.50 ID:o5p7gtxyO
「アスカと、桜を見る約束をしてますよね」
「あれ、知ってるのか」
「アスカから聞きました」
8: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:36:39.31 ID:o5p7gtxyO
「もうすっかり暗くなっちゃったな」
かなりの間花見をしてしまっていたようで、帰りの車の中から見える空は、すでに黒く染まっていた。
「ちひろさんにはあらかじめ連絡しておいたから、問題はないだろうけど」
9: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:39:25.66 ID:o5p7gtxyO
「アーニャの夢は、この一年でようやく明確なものになった」
私の話を黙って聞いていたプロデューサーが、おもむろに口を開く。
運転中だから、私を見てはいなかったけれど……その口元は、少し緩んでいた。
10: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:40:28.33 ID:o5p7gtxyO
「私、よくいい子と言われます」
「でも、本当は欲張りで、寂しがりです」
「知ってる」
11: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:41:51.16 ID:o5p7gtxyO
「まあ、アーニャが知りたいならいつでも教えるよ。俺のこと」
「うれしいです」
「何が聞きたいんだ?」
12: ◆C2VTzcV58A[saga]
2016/08/16(火) 16:42:47.75 ID:o5p7gtxyO
流れ星に祈ったわけではないけれど。
その願いは、きっと叶う。そう信じることができた。
でも、それはそれとして。
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