20: ◆9HQtX1uR2o[saga]
2016/10/04(火) 23:38:19.15 ID:7ab73rSh0
――さて。
嵐は去ったことだし、そろそろ豚のところへ行ってやろうかしら。
ここで待っていても現れないようだし。本当に気が利かない――、
「あら」
21: ◆9HQtX1uR2o[saga]
2016/10/04(火) 23:40:25.63 ID:7ab73rSh0
帰りの車では会話なし。
豚の言葉が、腹立たしいことに気になって、話の続きをする気になれなかった。
事務所に着き、車を降りると、私は事務所の一室へ、豚は慌てて会議室の方へ向かっていった。
そうして半刻ほどソファで寛いでいると(そして物思いに耽っていると)、法子から声がかかった。
22: ◆9HQtX1uR2o[saga]
2016/10/04(火) 23:42:07.07 ID:7ab73rSh0
「時子さん。もしかして、何か悩みとかありますか?」
ふいにそう言って法子は私の隣へと座り、残ったモチモチリングを頬張る。
「何よ急に」
23: ◆9HQtX1uR2o[saga]
2016/10/04(火) 23:43:31.14 ID:7ab73rSh0
「――あはは、なんとなく悩み、わかりました」
「そんなものないって言ってるんだけど?」
「時子さん。こういう時は、喋るしかないんです、きっと。プロデューサーさんと。とことん喋りましょう!」
24: ◆9HQtX1uR2o[saga]
2016/10/04(火) 23:46:53.13 ID:7ab73rSh0
豚は部署の週間ミーティングを終えたところだった。
会議室の前で待ち伏せし、現れた豚は、私の顔を見ると驚きの表情を浮かべた。
「何よ、豚」
25: ◆9HQtX1uR2o[saga]
2016/10/04(火) 23:48:12.97 ID:7ab73rSh0
「た、確かにそうなんですけど、あの、ただ疑問に思っただけなんです、あれは。どうして時子様が向井さんの言われるがままになってるのか」
あぁ、あの女、向井っていうのね。
「質問なら、まぁ答えてやるわ。あの女が面倒になっただけよ」
26: ◆9HQtX1uR2o[saga]
2016/10/04(火) 23:49:44.36 ID:7ab73rSh0
「妥協しない? 私が? そう信じてるの、貴方?」
「え、いや、信じてるというか、そうですよね。……あの、あれ、時子様?」
信じている。こいつは信じている。
27: ◆9HQtX1uR2o[saga]
2016/10/04(火) 23:51:08.58 ID:7ab73rSh0
「アーッハッハッハ!」
「ええっ!? と、時子様? 突然笑い出してどうされたんですか!?」
不安げに、豚が言葉を発す。
28: ◆9HQtX1uR2o[saga]
2016/10/04(火) 23:52:54.07 ID:7ab73rSh0
先日のオーディションの結果、私は件の映画でサブヒロインを演じることとなった。
メインヒロインは例の高垣というアイドル。
忌々しいけれど、あの女の方が、ヒロインの役柄に合ってたってだけね。そういうことなら譲ってやるわ。
「時子様っ! 今日は頑張ってくださいねっ!」
29: ◆9HQtX1uR2o[saga]
2016/10/04(火) 23:54:55.33 ID:7ab73rSh0
――あぁ、なんて考えていたら、あんなところに。
通路の先を行く、アイドルにしては大柄な背中。
それに、この私から声をかけてやった。まったく、光栄に思ってほしいものね。
「貴女、向井拓海だったかしら?」
30: ◆9HQtX1uR2o[saga]
2016/10/04(火) 23:56:58.16 ID:7ab73rSh0
ねえ、豚?
こうやって、相手を挑発して、とことん殴り合って、そうしてどこまでも勝ち進んでゆくのが、財前時子なんでしょう?
そう貴方は信じているのよね。
女王様の私しか認めないなんて、傲慢な豚だわ。
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