過去ログ - 2月の昼下がりに橘ありすと話すことについて
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11: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/02/07(火) 19:49:34.89 ID:0cqd1nr10
 「プロデューサーは、仕事ですか」

 「いいや、友人とやり取りをしていた」

 嘘じゃない。彼らとは実際にプライヴェートでも交友を持つほど仲が良い。
以下略



12: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/02/07(火) 19:52:33.87 ID:0cqd1nr10
 「旅行の計画?」

 「立てるだろう、ありすも。ここじゃないどこかへ旅に出かけるなら」

 僕がそう問いかけると、少し考え込む表情になってから、真面目にも彼女は頷いた。
以下略



13: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/02/07(火) 19:54:42.56 ID:0cqd1nr10
 「では、お楽しみのところ申し訳ありませんが」と彼女は言って、ソファから立ち上がる。

 「今日のことを、プロデューサーは覚えていますか」

 はて。
以下略



14: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/02/07(火) 19:57:51.83 ID:0cqd1nr10
 「ありすには今日という日に心当たりがあるのかい」

 「あるから、ここにいるんです」

 少しだけつまらなさそうに彼女が返事をよこす。
以下略



15: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/02/07(火) 20:01:33.29 ID:0cqd1nr10
 「これは?」

 「一応、誕生日のプレゼントです」

 彼女の黒檀の髪がまるで、春の風に色をつけたようにしなやかに揺れる。
以下略



16: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/02/07(火) 20:05:02.18 ID:0cqd1nr10
 「別に誕生日に関して聡くある必要性がないからさ」

 「……私の誕生日は忘れたことがないくせに」

 「担当しているアイドルの誕生日を忘れるようじゃ、プロデューサーは務まらないからね」
以下略



17: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/02/07(火) 20:08:17.78 ID:0cqd1nr10
 丁寧な包装を取り去ると、包まれていたのはカランダッシュのボールペンだった。
 シンプルで無駄のないボディに、精緻な装飾が施されていて、思わず感嘆の息が漏れてしまう。
 実際に手に取って見るのは初めてだった。まるで感情を持っているかのように、それは意味ありげに輝きを放っている。

 「カランダッシュか」と僕は言った。
以下略



18: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/02/07(火) 20:13:43.31 ID:0cqd1nr10
 冬の夕暮れに響くコルネットのように、彼女は清らかなアイドルだ。
 いつの彼女にも年齢相応の可愛げがあり、聡明さがあり、正しさがあった。
 それらは彼女にとって紛れもなく美点だといえるし、もちろん欠点もその中にある。
 でも、そんななにもかもを含めて、僕は彼女のことを敬愛している。

以下略



19: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/02/07(火) 20:15:59.02 ID:0cqd1nr10
 「……あの、少しだけ心配です」

 「なにが」

 「仕事のしすぎで、プロデューサーが身体を壊してしまわないか」
以下略



20: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/02/07(火) 20:26:29.10 ID:0cqd1nr10
 「普段は飄々としているプロデューサーが、仕事に熱心な人なのは知っています」

 「でも、そのせいで体調を崩されたら、元も子もないと思います」

 「たまにはゆっくりされることを、推奨します」
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21: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/02/07(火) 20:27:27.33 ID:0cqd1nr10
 彼女は彼女で、僕のことを頭の片隅には置いてくれているのだな、と思った。
 まるで丘陵に立っているような気分になった。ささやかで、清々しい。
 生きていると、生活を続けていると、指紋のように自然に、それでいて防ぎようのない形で、倦怠感のようなものが身体に貼り付く。
 それは、退屈なロードムービーを観賞したり、自分好みの味付けの料理を口にすることで、拭き取ることができるのだけれど。

以下略



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