2:名無しNIPPER[saga]
2017/03/17(金) 12:22:39.68 ID:1HyDqIB70
桜はとっくに散った。
ツツジが咲いたと思ったら、アジサイが信号機みたいに咲き始めた。
3:名無しNIPPER[saga]
2017/03/17(金) 12:23:27.43 ID:1HyDqIB70
憂鬱な定期テストを潜り抜けたら、大きな入道雲が梅雨前線を蹴っ飛ばして、気がつけば夏だった。
ジクジクと鳴き始めた蝉の声、風鈴、プール帰りの小学生。
4:名無しNIPPER[saga]
2017/03/17(金) 12:24:20.68 ID:1HyDqIB70
私が奏の家に泊まるようになったのは、確か去年の冬だった。
大きなライブが終わって、私の中で一区切りがついてしまいそうになった頃。
5:名無しNIPPER[saga]
2017/03/17(金) 12:25:33.77 ID:1HyDqIB70
どうして奏だったんだろう?
私自身よくわかっていなかったけれど、初めて泊まった日に「寒かったでしょ?」と差し出されたホットチョコレートの味は覚えている。甘くて、暖まって、とても落ち着く味だった。
6:名無しNIPPER[saga]
2017/03/17(金) 12:27:07.30 ID:1HyDqIB70
私はソファーの上で足をバタつかせていた。
クッションを抱えて、ファッション誌を開いていた。
なにも言わないのをいいことに、私は奏の部屋に物を増やした。
7:名無しNIPPER[saga]
2017/03/17(金) 12:29:58.52 ID:1HyDqIB70
☆
赤と白の提灯が街灯代わりにぶら下がっていた。
8:名無しNIPPER[saga]
2017/03/17(金) 12:31:32.99 ID:1HyDqIB70
奏は人混みに当てられたと言って、
早々にベンチに腰を下ろした。私は一人買い出しにでも行こうかと思った。
9:名無しNIPPER[saga]
2017/03/17(金) 12:32:40.98 ID:1HyDqIB70
去年までの私だったら、わけもなくたこ焼きやチョコバナナでお腹をいっぱいにしていたものだったけれど、「今年はそんなに食べられないよね」と独り言ちた。
ソースの焼ける匂いに負けて、1パックだけ。
10:名無しNIPPER[saga]
2017/03/17(金) 12:34:23.40 ID:1HyDqIB70
「何度でも来てくれ! いくらでもおまけするぜ」
「考えておくね……」
ただそれだけだったのに、ざわざわの中に噂する声が聞こえだして、お祭りに行くのも大変になってしまったんだな、と実感した。
11:名無しNIPPER[saga]
2017/03/17(金) 12:35:44.78 ID:1HyDqIB70
「焼きそば。食べる? 多すぎて食べきれないよ」
「なら、一口頂戴?」
12:名無しNIPPER[saga]
2017/03/17(金) 12:36:51.86 ID:1HyDqIB70
帰る前にこれだけと、彼女は大きな綿あめを買った。
左手でふわふわをちぎって、小さな口でそれを食む。
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