2: ◆eBIiXi2191ZO[saga]
2017/04/28(金) 21:41:06.81 ID:OxvHpGT1o
ひとり。窓の外を見る。
眼下に広がる街並みの灯りに、私は息をひとつ。
3: ◆eBIiXi2191ZO[saga]
2017/04/28(金) 21:42:23.55 ID:OxvHpGT1o
シンデレラガール。
年にひとりだけ選ばれる、栄え。
私たちアイドルはみな、そこを目指しているといっても過言ではないだろう。
4: ◆eBIiXi2191ZO[saga]
2017/04/28(金) 21:43:54.12 ID:OxvHpGT1o
確か、どこか地方でのロケだった。
移動の合間に寄った駄菓子屋さん。
5: ◆eBIiXi2191ZO[saga]
2017/04/28(金) 21:44:50.95 ID:OxvHpGT1o
チープなおもちゃのおかげだったのかもしれない。
ひかりもしないその指輪は、薬指にぴったりとフィットする。
「いや、これは」
6: ◆eBIiXi2191ZO[saga]
2017/04/28(金) 21:45:57.17 ID:OxvHpGT1o
それ以降、ゲン担ぎというわけではないけれど私は、なにか大きな仕事に取り掛かるたび、その指輪に祈るのだ。
きっと。きっとうまくいく。
彼も知らない、私だけのルーチンワーク。
プロデューサーさんの不断の努力と、それに報いたいと思う私の努力。
7: ◆eBIiXi2191ZO[saga]
2017/04/28(金) 21:48:08.97 ID:OxvHpGT1o
一年前。私は選挙で二位という順位を得た。
充実感を抱え、私は事務所に顔を出す。プロデューサーさんに会いたい、その想いで。
8: ◆eBIiXi2191ZO[saga]
2017/04/28(金) 21:49:54.82 ID:OxvHpGT1o
プロデューサーさんはうつむいて、コーヒー缶を握りしめる。
震える彼の手。そして。
みしり。手の中のコーヒー缶がつぶれる。
うつむいたまま彼は、絞り出すようにつぶやいた。
9: ◆eBIiXi2191ZO[saga]
2017/04/28(金) 21:51:05.06 ID:OxvHpGT1o
心が揺れ動く。
涙がこぼれる。
私もプロデューサーさんも努力している。誰よりも、きっと。
その居心地の良さに、私は目を曇らせていた。
10: ◆eBIiXi2191ZO[saga]
2017/04/28(金) 21:52:17.03 ID:OxvHpGT1o
次の日から。
私もプロデューサーさんもなにも変わらない日々を過ごしている、ように見える。でも。
知ってしまった。違っていた。
11: ◆eBIiXi2191ZO[saga]
2017/04/28(金) 21:53:51.27 ID:OxvHpGT1o
ひとりの部屋がどことなく広すぎたから。
私はプロデューサーさんに電話を掛ける。
12: ◆eBIiXi2191ZO[saga]
2017/04/28(金) 21:55:08.48 ID:OxvHpGT1o
会話が、止まる。互いの息遣いが、私の心を苦しくさせる。
外は、街灯り。にじむ視界が私を狂わせる。
「プロデューサー、さん」
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