794:名無しNIPPER[saga]
2017/12/05(火) 00:12:02.58 ID:HHfyV3AE0
「お兄ちゃんが、わたしに一緒に部屋に戻ろうって言ったんだよ?
それをとやかく言う筋合いがどこにあるの?」
「はあ?」
795:名無しNIPPER[saga]
2017/12/05(火) 00:12:44.05 ID:HHfyV3AE0
でも、いくら踏み出そうとしても足がうまく動いてくれない。
吐きそうになるほどの不快感。金縛りにでもあったように、身体が強張る。いつもそうだった。
佑希がこちらに縋るような目を向けている。
796:名無しNIPPER[saga]
2017/12/05(火) 00:13:34.49 ID:HHfyV3AE0
そして、それは優しさではなく俺の利己的な思考に基づく態度だった。
俺がやるしかなかったから、今まで彼女を支えてくれる人は現れなかったから、誰も使い物にならなかったから。
──先輩以上にそういう役目が適任な人はいないと思います。
797:名無しNIPPER[saga]
2017/12/05(火) 00:14:05.90 ID:HHfyV3AE0
だが、今の様子を鑑みるに、その認識は全くの誤りであったことに気付いてしまう。
いくら自分を磨いて外面を取り繕っても、肝心の弱い内面までは矯正できていない。
心の何処かで誰かに選択を委ねている。
798:名無しNIPPER[saga]
2017/12/05(火) 00:14:45.06 ID:HHfyV3AE0
「……お兄ちゃん。もういいよ」
目が合う。
言葉を続けようとして、彼女の口が何度か形を変える。
799:名無しNIPPER[saga]
2017/12/05(火) 00:16:08.74 ID:HHfyV3AE0
【1/4】
佑希の過去について語ることは、この家の問題点について語ることに通じるかもしれない。
800:名無しNIPPER[saga]
2017/12/05(火) 00:16:59.13 ID:HHfyV3AE0
彼女は他者から認められないことにひどく怯えていた。
いつも誰かに褒められていないと、自分の存在意義を疑うような言動を取ることも少なくはなかった。
だから、彼女は自分の弱い内面を鎧を纏うために、すべてのことに全力で取り組むようになっていった。
801:名無しNIPPER[saga]
2017/12/05(火) 00:18:26.43 ID:HHfyV3AE0
母さんは仕事が好きな人だ。職場に復帰してからは昔よりも楽しそうにしている姿を見ることが多い。
だからあの頃に関しては、家事育児によって仕事ができないストレスを抱えていたのかもしれない。
父さんはいい顔をして働いていて、俺と佑希は学校で外に出ていくのに、家に一人で残されていたことがつらかったのかもしれない。
802:名無しNIPPER[saga]
2017/12/05(火) 00:20:08.85 ID:HHfyV3AE0
佑希が泣き散らかして自室に戻った後、母さんは額を手で押さえながらうんざりした顔で俺の名前を呼んだ。
疲れ切った顔だった。話は三十分以上続けられていた。俺は聞いていない振りをしていた。
娘は母親に一番影響を受け、一番似てしまうものだ、とそこかしこで聞いたことがある。
803:名無しNIPPER[saga]
2017/12/05(火) 00:21:31.11 ID:HHfyV3AE0
【2/4】
──あなたはお兄ちゃんなんだから。
──お兄ちゃんなんだから、わざとでも負けてあげなさい。
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