都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達…… Part13

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308 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/12/27(木) 17:14:37.47 ID:XnjBon0L0

きっとクリスマスは大事な人と過ごしてるからみんな書き込めないのさー
予定がない事がばれるから書き込まないんじゃないんだよー
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/12/27(木) 22:59:30.39 ID:c3NfYIwKo
かわりに俺様が君達のオケツをゆっくりと撫でまわしてやろう
さあケツを差し出すのだ
310 :次世代ーズ EX 「悪の十字架」 1/2 ◆John//PW6. [sage]:2018/12/28(金) 01:52:34.81 ID:UvP9lMiqo
 



 「悪の十字架」

 都市伝説に詳しくない諸氏も一度は耳にしたことがあるであろう
 この話には様々な類話(バリエーション)が存在するが基本的な筋書きはほぼ一緒だ

 ある人が必要に駆られ、あるいは逼迫した状況下で
 10時に開業する施設へと向かうことになる、という場面から話が始まる
 場合によってはその際、24時間営業している店が存在しない時代の話なり
 そのような施設が存在しない僻地での出来事なり、といった補足説明が付くこともある
 そして、その人が施設へと辿り着き、貼り紙等で提示された情報を確認したとき
 思わずある台詞を吐いてしまう……、というのが共通した流れである

 この話は「青い血」、「悪魔の人形」、「恐怖のみそ汁」などといったジョーク系怪談に分類され
 あるいは「あぎょうさん」、「そうぶんぜ」、「よだそう」、「火竜そば」などの
 言葉遊び系ギャグ都市伝説と共に紹介されることが少なくない

 さて、今回の要諦は

 お察しの諸氏も多いことであろう
 この話は、所謂“実体化した都市伝説”として存在しているのであり
 それと契約した能力者が「組織」に所属している、という点である



 
311 :次世代ーズ EX 「悪の十字架」 2/2 ◆John//PW6. [sage]:2018/12/28(金) 01:53:28.23 ID:UvP9lMiqo
 



 朝、時刻は8時30分を少し過ぎた頃

 少年は一人、近隣のスーパー前に立っていた
 まだ幼さの残る顔つきだが、外見的に中学生か高校生くらいだろうか

 その日は祝日ということもあってか、スーパー周辺には彼以外の人影は無い
 少年は妙にニヤついたまま閉鎖された自動ドアに印字された字面を目で追っていた

   「 激安スーパー  10:00 〜 24:00 」


「ふ、フフ……、ふふふ、フッフッフ……」


 休みの日はこうして開店前のスーパー前に待機して過ごすのが彼の習慣であった
 そして、そう、ここからが彼の契約者としての異常性を発揮する場面でもある


「フッフッフ、アハッ、アッハッハ! アハッ! アハァァーーッッ!!
 そう! 何時だって! 開くのは10時! このスーパー開くの10時!!」


 ひとしきり笑った少年は自動ドアに向き直り
 おどけるように表情を百面相してその台詞を――口にする!


「開くの10時かぁぁー!! 悪の10時かぁぁーーっ!! 『悪の十字架』ァァーーッッ!!」


 するとどうしたことか!
 少年の隣に、いつの間にか奇天烈な格好の怪しい者が立っているではないか!


「悪の十字架ー! 悪の十字架ー! 悪の十字架ー! (♦ww♦)」


 その者は端正なタキシード姿で、表は黒に裏は真っ赤なマントを羽織るという
 ステレオタイプなヨーロッパ型吸血鬼の格好をしているではないか!

 そう、この者こそが少年と契約を交わした「悪の十字架」が人として現界した姿
 謂わば、「悪の十字架の悪魔」である!
 ――繰り返すが彼はあくまで悪魔と称し、吸血鬼では無い。外見がいくら吸血鬼寄りだとしても、だ


「悪の十字架ァァーーッッ!! 悪の十字架アアーーッッ!! アッハハハハハハーッ!!」
「悪の十字架ー! 悪の十字架ー! フォハッ、フォハッハ、フォハハーーッ! (♦ww♦)」


 少年と悪魔は同時に叫び、同時に哄笑した
 何がおかしいのかは傍目には不明であるし、そもそも彼らは怪しい者達と呼ばれるに相応しい状況だ

 ここで一度、この少年の能力について言及しておきたい
 彼の能力の発動条件は、通常「10時開業の施設の前で、開業前の時間に待機すること」であり
 発動する能力とは、「『悪の十字架』を唱えることで、『悪の十字架の悪魔』を召喚すること」である

 ――そう、たったこれだけの能力である
 正直なところ、何の役に立つ能力なのかは全く不明である
 ついでに触れておくが、「組織」の調査によると「悪の十字架の悪魔」の身体能力は
 平均的な成人男性の身体能力を数段階下回る程度のものであった


 正直、少年と悪魔の存在を「組織」も持て余し気味だったようだが
 つい先日、晴れて彼らの新たな所属が∂ナンバーへと決定した
 「組織」内でも比較的新しく設立された部門である

 まあそんなことは彼らにとってさほど深刻な内容でも無かった
 少年と悪魔は開店前のスーパーの前に立ち、引き続き高笑いを続けている


 彼らが一体どのような活躍を繰り広げるのか、まだ誰にも分からない









□□■
312 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2018/12/28(金) 01:58:33.14 ID:UvP9lMiqo
 
こんばんは
今投下したのはEXの方です
関係者各位、よろしくお願いします

ちなみにですがこの悪魔
別に発動条件を満たさずとも普通に召喚できます
そもそも悪魔の自由意志で消えたり現れたりできます
契約者も把握済みで普通に呼び出したり一緒にご飯食べたりする
313 :次世代ーズ EX 「青い血」 1/3 ◆John//PW6. [sage]:2018/12/28(金) 02:00:18.92 ID:UvP9lMiqo
 



 「青い血」――初っ端からネタバレするとジョーク系怪談である

 筋書きが一定していない分、話のバリエーションは豊富で
 「青い血」というワードについても冒頭で意味深に言及されるか全く触れられないこともある

 具体的な話の筋としては
 お昼には必ずお弁当を食べるようにと、おじいさんがおばあさんに釘を刺される穏当なものから
 無人島に漂着して極度の飢えに苛まれるパターン、売店で供される「青い血のジュース」というパターン
 さらには教室に広がった青い血を恐る恐る舐めたり、見知らぬ男に無理矢理なにかを飲まされたり、という過激なものまで
 要するに枚挙に暇が無い、のだが肝心の締めは全て同じ
 最後の「あ〜美味ち」 → 「あーおいち」 → 「青い血」なオチがつく

 最初はそれっぽい雰囲気で始めるのがコツだが
 どう足掻こうとくだらない結末を迎えるため、ギャグ系怪談としてまとめられている
 それどころか都市伝説という括りで紹介されることも無いではない


 以上が「青い血」の一般的な概要である


 さて、都市伝説原理主義者の黒服諸君には残念なお知らせだが
 この「青い血」、あろうことか既に都市伝説として実体化してしまっている

 そればかりか都市伝説管理集団「組織」の備品としてばっちり登録、管理されている


 一体どういうことなのか?
 それをこれから紹介するとしよう






 
314 :次世代ーズ EX 「青い血」 2/3 ◆John//PW6. [sage]:2018/12/28(金) 02:01:02.60 ID:UvP9lMiqo
 

 まず「青い血」の外見的特徴から説明する

 これは大部分が金で構成された、やや歪な形状の小さな杯である
 外形はWDH:30x30x70(mm)の直方体に収まる程度のものだ

 杯の中はおよそ15mlの青い液体によって満たされている
 この液体、「組織」の調査では一応「組成が人間の血液に近い」と判明している

 杯から液体が全て除去されると
 「杯の中から青い液体が毎分約5ml出現する」という現象が発生する
 そしておおむね3分ほどで杯は再び青い液体によって満たされるのである

 「青い血」は現在「組織」穏健派のPナンバーによって厳重に管理されており
 取り扱いはたとえ実験目的であってもP-No.上位管理者、俗に言う一桁ナンバー複数名の承認が必要となる

 また、「青い血」を許可なく各種媒体によって記録すること
 さらには如何なる理由あれ「青い血」が記録された媒体を「組織」外部へ持ち出すことは厳禁とされ
 違反者は厳罰に処される、そんな規定まで付いている

 加えてこの「青い血」、管理区分は「禁忌指定」に分類されている
 大多数の流出性器物が分類される「二種指定」をすっ飛ばして堂々の「禁忌指定」である
 この時点でお察しの黒服諸君も多いだろうが、こうした取扱既定には「青い血」の特性が深く関わってくる



 実は先述した外見的特徴についてだが、通常の方法ではあのように観測はできない
 具体的に言うと、一般人を含めた契約者や都市伝説、黒服各位が「青い血」を直接視認した場合
 「これまでに飲食してきたなかで最も美味と感じた飲食物」か
 「まだ飲食したことは無いが口にすればきっと最高に美味だと感じる飲食物」として認識する
 直接視認せずとも「青い血」の数メートル以内に接近した段階で好みの飲食物の香りを感じるようになる
 そして、こうした飲食物を何が何でも口にしたいという耐えがたい欲求が生じてしまい
 影響を受けた者は手段を選ばずに「青い血」を摂取しようと狂暴化する

 では鏡映しにしたり、映像や写真等で見たり、などの間接的に観測した場合は問題無いかと言うと
 当然そんな筈は無く、ばっちり影響を受けてしまうことが分かっている
 要するに、「青い血」は認識汚染を含む強力な精神干渉能力を有しており直接間接を問わず影響を及ぼす物品なのである

 それなら強化系や防護系などの能力の行使や精神干渉に対する高い抵抗値を持っていれば対抗可能かと言うと
 多少は影響を緩和できるという程度で、結局一時しのぎにしかならないということも判明している

 上述の外見的特徴は、精神干渉に高い抵抗性能を持つ黒服が
 特殊な条件付けを受けた上で、脳みそに悪影響を及ぼす薬剤を投与されることで
 はじめて「青い血」の影響を回避して観測しえた情報である
 一般黒服諸君にはとてもじゃないがオススメできない手法だ


 
315 :次世代ーズ EX 「青い血」 3/3 ◆John//PW6. [sage]:2018/12/28(金) 02:01:46.60 ID:UvP9lMiqo
 

 続いて、この「青い血」を摂取した場合どうなるのかについて説明する
 ――説明する間でも無さそうだが話のついでだ


『これよりPナンバー関係者外秘の歳末器物実験を開始します』
「離せ! 離せ! うわああああああああああああっ!!」


 「青い血」を特殊な手法を使用せずに通常視認した場合
 視認者が欲する飲食物として認識され、摂取したい強い欲求に駆られる点は先に触れた通りである


『P-No.2020、目の前にある物が何に見えるか答えてください』
「離せ! はな――、あれは……、穏健派の、高級クラブでしか食べれない……、幻の骨付きスペアリブ……!?」
『良いでしょう。研究班、P-No.2020へ「青い血」任意量の投与を許可します』
「了かい、かい口する」
「おい待て! 何する! あ、んごあっ! ああがっ! ああがっ!!」


 そして「青い血」を摂取すると、途端に抗い難い強烈な多幸感、恍惚、そして性的絶頂を体感するハメになる


「んんあーっ ああーっ あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛っっ
「きょうせい開口を解じょする」
「んごあっ ごっごほっげほっ!! あっ ああーっ おいちいっ ああっおいちいいいっっ


 症状はおおよそ10分から20分程度で治まるが
 ここで注目したいのは「青い血」を摂取すると強力な依存性が形成される点である


「離せぇぇぇぇっっ 離せよぉぉぉぉぉっっ もっと食わせろぉぉぉぉぉっっ
「予ていどおり、P-No.2020をいち時収ようする」
『許可します、退出してください』
「食わせろぉぉぉっっ もっとあるんだろぉぉっ スペアリブぅぅぅっっ 食わせろよ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛おお゛っっ


 一度依存性が形成されると、対象者は狂暴化してあらゆる手段を講じてでも再び「青い血」を摂取しようとするようになる
 狂暴化はおおむね24時間前後継続するが、特筆すべきはその間「青い血」以外の精神干渉系能力が全く効かなくなる点だ
 継続時間を過ぎると狂暴化自体は鎮静するものの
 再度「青い血」を認識した途端に狂暴化して「青い血」を摂取しようと周囲に暴力を振るうようになるのである
 ついでに依存性が一度でも形成されてしまうと都市伝説能力や霊薬等で依存性を除去することができなくなる

 補足しておくと、先述した外見的特徴の部分で触れたように
 「青い血」単純認識による場合でも、「青い血」を摂取しようと狂暴化するが
 「青い血」摂取後の狂暴化は、単純認識時の比では無い位に危険度が増す

 とまあこうした特性の故に「青い血」は「禁忌指定」として厳重に管理されている、というわけである
 幸いなことに「青い血」関連の大規模事故はこれまでのところまだ発生していないが
 伝染災害を危険視した幹部達によって取扱方針が制定されることになった

 ここまで「青い血」の危険性ばかり説明するような内容になってしまったが、一応この物品にもそれなりの展望がある
 「青い血」を特定の薬剤で稀釈し精神干渉系能力の被害者に対して適切に投与することで
 依存性や狂暴化を極力抑えたまま、影響を受けた精神干渉を無効化、あるいは大幅に低減できる効用が期待されている
 現時点ではまだ実用段階に至っていないが、近い将来にも試験的運用が開始される予定らしい

 「組織」研究者の今後の活躍を祈ろうではないか









□□■
316 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2018/12/28(金) 02:09:07.01 ID:UvP9lMiqo
 
こんばんは

ところでwikiまとめですが
整理途中で大問題が見つかりました

移行がうまく行ってなかったのか
IME辞書登録された語句の内、次世代ーズ関連の特定の語句が
登録から脱落した状態で数ヶ月そのままだったことが判明しました

なのでこれまで投下分にばっちりミスが残っていますね
多分聡明な読者の皆様といえど多分気付かれていない自信があります
が、それはそれとして己が赦せないのでセルフお仕置きの時間だ😌
 
 
 
 
 
317 :次世代ーズ EX 「一方その頃」 1/2 ◆John//PW6. [sage]:2018/12/28(金) 02:10:40.92 ID:UvP9lMiqo
 



 九月

 まだ夏の気配を色濃く残しつつも、秋の朱空へと染まりゆく頃
 日没の迫る学校町の通学路で、それは起きた


「見せちゃうぞ……、見せちゃうぞ見せちゃうぞンばアアぁぁああーーッッ!!」

「いやあああああああっホントに出たぁぁぁぁアアアアアっっ!!??」
「ああーーっっ!! 変態っっ!! 露出魔だああぁぁぁぁーーっっ!!」
「キャアあああああああああっっ!! もっくんのより小さくて薄汚いよォォおおーーっっ!!」


 この町の南区にある商業高校のJKギャルたちが
 突如現れた露出狂のおじさんを前に、三者三様の絶叫を上げ、脱兎の如く逃げ出した


「――っふ、ふヒッ! ふ、ふひひ、ふヒンッ!! ふ、うっふふふふ、ふヒッヒ、ヒヒヒッ!!」


 その男はティアドロップ型のサングラスと大きなマスクで顔面を隠し
 九月だというのにトレンチコートを着込んでいる
 そして当然、コートの下は全裸であった
 これ以上の説明は不要であろう


「ふヒヒッ!! た、短小って……小汚いって……ッッ アハッ アハハハッ ヒンッ たまらんっ


 おじさんはJKの悲鳴の一部に甚く反応しているようで
 実際のところ彼は軽く達していた

 警察が直ちに介入すべき事案であるが
 幸か不幸か、周辺に巡回中の巡査は見当たらないようである
 更に付け加えると先程の悲鳴はかなりの音量で響いた筈だが未だ人の気配は無い


「ふふ、ウッフフ、……はあ、最高だった   ――さて」


 おじさんは全開にしたコートを羽織り直してボタンを留める
 そして後方へと振り返った



 其処に蠢くは無数の人影だ
 何時の頃からか此処、学校町の黄昏時に出現するようになった魔性

 それは「逢魔時の影」と呼ばれていた


「ここから先は通行料を頂くが、――よろしいかな」


 
318 :次世代ーズ EX 「一方その頃」 2/2 ◆John//PW6. [sage]:2018/12/28(金) 02:11:19.10 ID:UvP9lMiqo
 

 場に居た「逢魔時の影」は全滅した


 おじさんは溜息を吐いた
 先程まで「影」であった残りカスが風に乗って消滅する
 手刀を引き戻すと、周辺の大気に微かな黒色の稲妻が奔った


 そろそろ純情JKの通報を受けたお巡りがやって来る頃合いだろう


 彼は高く跳躍
 最も近場に位置する鉄塔の頂点へと降り立ち、其処に佇んだ


 陽は既に暮れている
 夕闇はじきに光無き夜を誘う

 薄明の世界に包まれた学校町を見下ろすおじさんは
 やがて目を細め、遠景の一点を注視した


「さてさて」


 夕陽が死に、大地を夜の帳が抱き始める時分
 おじさんの眼は“彼”を捉えていた


 「繰り返す飛び降り」と化した少女、東一葉と共に直前まで談笑していたようだが
 “彼”――早渡脩寿もまた、この露出狂の男を眼差していた


 “彼”はこちらに気付いている


 おじさんの双眸は、獲物を見定めたかの如く、さらに細められた


「『七尾』の残党め、この町で一体何を企んでいる」
















□□■
319 :次世代ーズ EX ◆John//PW6. [sage]:2018/12/28(金) 02:16:40.98 ID:UvP9lMiqo
 
 
 
アクマの人に土下座でございます
「逢魔時の影」、お借りしました
ありがとうございます

本格的に【9月】をやっていきますが、年末は働き詰めが決定した上
年越しを職場で迎えるっぽい💢ので、次来るのは年明けです


皆様、どうぞ良いお年をお迎え下さい
 
 
 
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2019/01/01(火) 01:48:39.05 ID:YTGbKHpF0
明けましておめでとうございます
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2019/01/01(火) 01:51:44.02 ID:YTGbKHpF0
>>320途中送信
今年はこのスレ10周年らしいので
楽しくやっていけたらと思います
ついでにまた人で賑わうようになれば嬉しい
322 :次世代ーズ EX 「七尾時代の年越し」 1/2 ◆John//PW6. [sage]:2019/01/04(金) 03:07:41.89 ID:/ElaL/Wro
 



 数年前の元日の話だ



 つい先ほど日付が変わり、新しい年を迎えたばかりの真夜中

 「七尾」チャイルドスクール、研究棟の一室
 テーブルにはピザや寿司の食い残しや、掛け蕎麦の空椀が乱雑に置かれている

 そして、テーブルから離れた側では
 西陣織紬を着込んだ男子と、Yシャツの上から白衣を羽織った男が
 今しがた入室してきた鏡餅の着ぐるみを着用した男子を見て爆笑していた


 「早渡wwwwお前wwなんだその格好はよwwwwww」
 「アッハハハハハ! おい早渡、一体誰にやられた! アハッ!」


 腹を抱えて笑いに笑う二人組を、早渡と呼ばれた男子は半ば憔悴した半眼で睨みつけた


「うるせえぞ一伐、大体こういうのはお前の仕事だろうが……!」
「いやwwwwww早渡wwお前、良く似合ってるぜwwwwww最ッ高だよwwwwww」
「ハハハッ! で、誰にやられたよ早渡、空七ちゃん達か?」
「オメーのお仲間にだよ! トランジ! あのアマども、日頃の恨みとばかり寄ってたかって揉みくちゃに……!!」


 彼ら、ANクラス関係者がこんな時間まで起きているのはさほど珍しいことではない
 ましてや年末年始だ
 この時期は冬休みとして設定されており
 特に年明けから三箇日にかけては、普通クラス寮も消灯時間が平時より若干緩めになる

 これから彼らは普通クラス高学年を対象として、サプライズのお年玉配布へと向かう所であった
 通常のお年玉配布は元旦夜明け後に個々の生活指導教員から一人千円ずつ支給されるが
 研究棟からのお年玉ということで別途二千円札の配布が電撃的に決定したのである

 無論、金の出所に関してロクでもない経緯があったりするのは此処だけの秘密だ


「脩寿――、ちょっ、何その格好!」


 早渡の背後から部屋に入って来たのは
 ANクラス同級生の女子二名、空七とふわるだ

 二人とも早渡の格好を見るなり、一伐やトランジに負けず劣らずの爆笑を始めた
 特にふわるはツボに嵌ったらしく、しゃがみ込んで両手で顔を隠しつつお腹から湧き出る笑いに全身を揺すっていた

 不意にふわるが片手をずらして早渡を見た ――目が合う
 片手を振り上げてこのッ!! と凄むと
 体格に似合った小さな悲鳴を上げて空七の後ろに隠れ、爆笑し続けていた


「でも、本当に、その格好、脩寿が、自分で、着たの?」
「違えよ笑うな空七! 女子研究員どもが無理やり着せやがったんだぞ!?」


 笑いで切れ切れになった空七の問いに、早渡は噛みつくように応じる

 連中、女性研究員達はトイレ帰りの早渡を事前警告もなく急襲した
 本格的な捕獲デバイスを装備して殴り込んで来たので事前から計画でも練っていたんだろう



 
323 :次世代ーズ EX 「七尾時代の年越し」 2/2 ◆John//PW6. [sage]:2019/01/04(金) 03:08:31.39 ID:/ElaL/Wro
 

「それだけじゃねえ!! これ見ろ!! ご丁寧に首輪まで嵌めやがって!!」


 着ぐるみと顔の隙間に手を突っ込み、無理やり押し広げて首筋を見せつける
 首には言葉通りの首輪が装着されていた。緑のLEDが規則的に点滅しているやつだ

 この首輪は普段からセクハラ大魔王などとありがたくない称号で専ら有名な早渡脩寿が
 新年早々女子寮へ乗り込んで悪いことをしないようにと女性研究員達が強制的に装着した一品だ

 具体的に言うと、早渡が女子寮のテリトリーに足を踏み入れた瞬間
 神経活動妨害パルスが彼の全身を襲い、激痛と共に七転八倒の末、行動不能にする物騒な代物である


「そんなに信用ないのかよ、俺は!!」
「お前の場合自業自得でしょ」
「んーぬぬ……!! 俺はガキには興味無えんだよッ!! 大人のお姉さん一択だろおがァァッッ!!」


 新たに入室してきた円伶が早渡に至極真っ当な意見を突き刺してきた
 後ろに続く飛鳥博士は早渡の格好に目を丸くしている

 早渡は密かに空七を睨んだ
 彼女は顔を背けて隠している積りだろうが肩を震わせている
 未だに笑い足りないらしく、爆笑を必死に押し留めているものと見える

 着ぐるみはともかく首輪の方は十中八九佳川の特製品だろう
 あの女、きっと安全な場所からワイン片手にこのザマをモニターしているに違いない

 悪いが佳川、お前の好きなようにはさせねえ
 オレ様の名に懸けて年頭から早速伝説を残してやるぜ
 首輪なんざ怖くねえ、初っ端から女子寮にブッ込んでやるからよ、覚悟しとけよ女子職員ども

 早渡の中に黒い獰猛な笑みが広がった瞬間であった


「普通クラスの先生達って、まだ理事に呼び出されてんの?」
「そ、だからサプライズは俺達でやんなくちゃいけないってワケだ」
「クリスマスの機材トラブルの件、大問題になってるみたいだな」


 ひとしきり笑った後の一伐とトランジ、そして円伶の会話は早渡の耳になど入っていない


「じゃ、女性陣も揃ったことだし。E5の普通クラスにサプライズお年玉、行くか!」
「「「おー」」」
「あ、早渡。お前一応初っ端から飛ばしていくのは控えろよ? この時期のお姉様方はちょっと優しくないぞ?」
「それが怖くて早渡ハーレム王国が築けるかッつー話だろうがよ!!」
「お前マジでやめときな早渡、大河内研究員が今度お前が問題起こしたら去勢するって公言してたの忘れたの?」


 音頭を取るトランジこと星虎次博士、それに応じる一伐、空七、ふわるの三人
 そして早渡に釘を刺すトランジと、それに吼える早渡、に再度釘を打ち込む円伶
 ついでにそのやり取りを呆れたような笑いと共に見守る飛鳥博士
 彼らはわいのわいのやりながら部屋を後にする


 この後、期待通りというかやっぱりというか
 お年玉を個々の部屋長へ渡す道中、普通クラスの男子達に煽られた早渡は
 「男を見せてやらあ!!」などと理解不能な絶叫を上げながら女子寮への突撃を実行した

 無論、首輪の効果は抜群であったのは言う間でも無い話だ





 これが、「七尾」が襲撃を受け、そして解体する、その年の元日の出来事だ

 今にして思えば、あのときの俺、こと早渡脩寿は
 久し振りに屈託なく爆笑する九宮空七を、本当に久し振りに見たのだ






□□■
324 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2019/01/04(金) 03:10:39.87 ID:/ElaL/Wro
 
明けましておめでとうございます
本年も宜しくお願い致します

年始は投下分の整理を進めようと思います……
325 :次世代ーズ ◆John//PW6. :2019/01/23(水) 21:53:53.51 ID:wVaou1aSo
 

○前回の話

 >>209-216
 ※今回の話は作中時間軸で【9月】の出来事です



○三行あらすじ
 東区中学でいよっち先輩の“取り込まれ”をなんとかした (>>178-186, >>197-203
 「モスマン」に襲撃されたけど脱出に成功した(>>209-216
 良かったね!



○時系列

●【9月】
 ・早渡、「組織」所属契約者と戦闘

 ・「怪奇同盟」に挨拶へ     (アクマの人とクロス)

 ・東中で花房直斗、栗井戸聖夜から三年前の事件を聞く
  その際にいよっち先輩と出会う
  その後、診療所で「先生」から「狐」について聞く     (花子さんとかの人とクロス)

 ・東中を再訪、いよっち先輩が自分を取り戻す
  「モスマン」の襲撃から脱出

 ・「ピエロ」、学校町を目指す

 ・早渡、また「ラルム」へ     ☜ 今回はここ!

 ・∂ナンバーの会合
  「肉屋」侵入を予知


●【10月】
 ・「肉屋」戦 (9月終盤か、10月初頭?)
 ・「ピエロ」、学校町へ侵入


●【11月】
 ・「組織」主催の戦技披露会実施

 ・診療所で「人狼イベント」

 ・「バビロンの大淫婦」、消滅
 ・角田ら、「狐」配下と交戦
  新宮ひかり、上記交戦へ介入

 ・「ピエロ」、東区にて放火を開始、契約者らにより阻止される

 ・暗殺者二名がひかり、桐生院兄弟と交戦     (鳥居の人とクロス)

 ・「ピエロ」中枢、東区放火組に撤退か自害を指示






 
326 :次世代ーズ 31 「おさそい」 1/5 ◆John//PW6. :2019/01/23(水) 21:55:12.36 ID:wVaou1aSo
 









 今


 俺は


 何を考えていた?



 いけない、ボーッとしてた

 顔を上げる

 店内の照明が眩しい、慣れるまで目を細めた



 俺は今日も「ラルム」に来ていた
 学校で面倒な用事で捕まったので、ここに着いたのは夕暮れだ
 外の陽はもう落ちてるかもしれない

 意味もなく深呼吸する

 いよっち先輩はその後、高奈先輩の自宅に居ることになった
 結局東区中学から逃げ出して以降は直接会ってはいない
 「お嬢は面倒見いいから問題ねえよ」とは半井さんの台詞だが
 迷惑かけてないかちょっとだけ心配だ


 あの夜、いよっち先輩を連れ出したあの夜
 「モスマン」と戦ってどうだった
 俺はまるで動けてなかった。昔よりも駄目になってる
 立ち回りを振り返れば基礎的な心得すら抜け落ちていた
 これはブランクの所為でも、前のように技が編めなくなった所為でもない

 腑抜けてる

 学校町まで乗り込んできといて、これはまずい
 組織の変なのから逃げたときもそうだったけど危機意識が全然ない
 やばいよ
 大体夏休みは普通に動けただろ俺!?
 一体なんでだ、とか考えてる場合じゃないな。今まで以上に自主トレで遅れを取り戻さないと
 するとメニューは、だ。やっぱり“尾”を出したり消したりとか、制御を一からやってくしか


「あの……脩寿くん」
「うえっ」


 いつの間にかテーブルの傍に千十ちゃんがいた
 思わず変な声が出ちまった


「食事をお持ちしました、『野菜と厚切りベーコンのたっぷりラクレット』です
 ……なにか考えごとしてたの?」

「うん、ちょっと」

「そっか……」


 お、気の所為か千十ちゃん何だかもじもじしてる?


「あのね、脩寿くん。あの……、最近は毎日ずっと『ラルム』に来てるよね」
「ッッ!? あああ、あの、迷惑だった!?」

 
327 :次世代ーズ 31 「おさそい」 2/5 ◆John//PW6. :2019/01/23(水) 21:56:07.04 ID:wVaou1aSo
 


 千十ちゃんの言いたいことは分かるぞ

 ここんとこずっと「ラルム」にやってきては夕飯食べるようにしてたからな
 なんというか、いよっち先輩を探しに行く夜は必ず「ラルム」に寄ってたし
 つまり最近はずっと通いっぱなしだ

 で、「ラルム」はちょっとお洒落なイタリアンでフレンチのカフェ、だ
 店長さん曰く学生さんでも気軽に入れるようなお店にしたいってことだが
 正直なところ、俺のような奴がのこのこやってきて良い雰囲気の場所ではない


「ごめん千十ちゃん、さすがに迷惑だったよね」
「あっちがっ違うよ、そうじゃないの! ただ、あの……その」


 迷惑では、ない? だとしたら何だろうか?
 しかし千十ちゃんは見るからに言い辛そうな感じだ
 体の内側で、緊張が高まる
 俺は固唾を飲んで千十ちゃんの次の言葉を待った


「あの、あのね。うちって、他のお店より値段が高めでしょう?
 だからその、脩寿くんのお財布が、大変じゃないかなって……」


 千十ちゃんは内緒の話をするように声を潜めてそんなことを言う
 俺は思わず周囲を見回した
 よし大丈夫、普段はよく見るおばちゃんズの姿はなく
 対面で座る老夫婦と、サマーセーターのお姉さん以外にお客さんはいない
 今日の「ラルム」は普段より空いている。まあ平日の夕方だしな


「大丈夫! 全然平気だし! 痛くないし!」
「あの、脩寿くんって、自炊とかしてる? ご飯作るのって楽しいよ!」
「うん、自炊はするよ。独りで住んでると一応やらないとね。ただね」


 自炊、というワードに、この半年間が一気に思い起こされた
 今年の四月、学校町に引っ越してきてから初めて自炊をすることになった

 楽しかった
 作れる料理のレパートリーも増えた
 これ買う必要あるのかって鍋も買った。本当に楽しかったんだ

 でもね
 多分、独り暮らしな人間は体験済みなんだろうけど
 独りで食べるものを作って、独りで食べるんだよね
 これだけだと当たり前のことなんだけど
 実際に体験すると

 死にたくなる、寂しさのあまり


「というわけで独りで食べてると頭おかしくなりそうになるんだ!」

「そ、そうだったんだ……」

「だから外食のありがたみがよく分かるようになったんだよ!
 他人が作ってくれたものを食べられる幸せ! 最高に尊い!」

「だったら、あのね! あの、もし良かったら
 私のお家に、夕ご飯、食べに来ない? ど、……どうかな」

「えっ」

 
328 :次世代ーズ 31 「おさそい」 3/5 ◆John//PW6. :2019/01/23(水) 21:56:53.66 ID:wVaou1aSo
 



 千十ちゃん
 今、なんて

 夕ご飯を? 千十ちゃんのお家で? 食べる?


「うええあああの、そんな! 悪いよ!」

「気にしないで! あの、私のお姉ちゃんも、脩寿くんに会いたがってるし!
 それに、あの、久しぶりに色々、脩寿くんともお話したいし、だからあの、 ……だめ、かな」

「駄目じゃないけど!     でもほんとに、     いいの?」

「……脩寿くんが来てくれると、嬉しいです」

「是が非でも行きますよろしくお願いします」



 正直に白状します
 心のなかでは狂喜乱舞してます
 顔面もニヤけそうになるのを堪えてます

 落ち着け、俺!
 落ち着けるか馬鹿!!


「それじゃあ、あの、来週の金曜日はどうかな?
 その日ならお姉ちゃんも空いてるから」

「行きます、絶ッッ対に行きます」

「……! うん! ありがとう」


 笑顔でそう返す千十ちゃんの顔は
 暖色な照明の下でも分かるほど真っ赤になっていた

 思わず見惚れそうになりながら、不意に誰かの視線に気づく

 キッチンの方からコトリーちゃんと店長さんがこっちを窺っていた

 しばらく目が合った後、二人はゆっくり横にスライドして隠れてしまった



 待て

 どっから見られてたんだ!? 全部!? 全部か!?

























 
329 :次世代ーズ 31 「おさそい」 4/5 ◆John//PW6. :2019/01/23(水) 21:57:34.45 ID:wVaou1aSo
 









 陽はとうに暮れて、夜

 闇に紛れるようにして
 マジカル☆ソレイユは東区路上の一角を調べ回っていた


「えーと、ここでこう来て、こう動くとしたら
 ここに抱き枕を仕掛けるとして……あとは、そうね……」


 彼女はスクール水着の上から羽織りものを着て
 白の長手袋に白のニーソックスという格好だが、傍から見ればコスプレ趣味の危ない痴女だろう
 一応彼女に言わせれば、これは契約者としての活動装束なわけだが、傍から見れば危ないコスプレ女である


「あの男、ラルムでも見たから怪しいと思ったけど
 毎日のように東区を徘徊してるみたいね、いやらしい
 こそこそ変態行為の下調べをやってたってわけね、いやらしい
 でも、――この私とメリーから逃げられるなんて思ったら大間違いって理解させてやるわ」


 屈んだソレイユはビニールテープを路面に貼り付けている
 近場に光源がないため分かり辛いが、既にこの一帯には彼女によって無数のテープが貼られていた

 その様子を背後から相棒のメリーが眺めていた
 ソレイユの持ち込んだ段ボール箱の上に乗っかったメリーは
 むうむう鳴きながらソレイユに対し複雑な眼差しを注いでいた

 メリー
 「メリーさんの電話」と呼ばれる都市伝説
 それが実体化した存在がこの、白い体毛に黒い顔の、羊のぬいぐるみである

 そう、羊のぬいぐるみである
 原話(オリジナル)では外国製の人形と説明されるが
 明言されない場合が多いものの、おおむね「ヒト型の人形」という点は共通している
 何故羊のぬいぐるみの姿で実体化したのか謎であるが、今はそれが語られるときではない


 
330 :次世代ーズ 31 「おさそい」 5/5 ◆John//PW6. :2019/01/23(水) 21:58:13.77 ID:wVaou1aSo
 

「ねー、ソレイユちゃん、ほんとにやるのー?」

「自信があるわ! アイツは明日、必ずこの道を通る!
 100%の確立よ! 断言していいわ! 作戦は成功する!」

「むぅー」


 「本当に作戦を実行するのか」という意味で訊いたのだが
 「本当に作戦は成功するのか」の方で取られてしまった
 仕方がない、ソレイユは頑固だし一度決めたら中々考えを変えないタイプだ
 仕方がない、のだがそれ故にメリーは心配しているのだ
 そもそもソレイユが目を付けた“彼”が、あの変態クマの正体である確証はない
 それを確かめてからでも遅くはない筈なのだが、彼女は何故か“彼”こそ変態クマであると信じ切っている


「そういえば学校で千十と話しててね、今度友達を紹介したいって言われて」

「え、お友達ー?」

「そそ、しかも契約者で、男子よ。多分『組織』所属じゃないかもって話
 勿論私のことは黙っててほしいってことにしたけど、でもまさか男子苦手な千十がね
 珍しいこともあるものだわ」

「男子のお友達ー」

「まあどんな奴なのか知らないけど、ちょっとは興味あるわね
 千十が嬉しそうに話すくらいだからさ」

「わたしも会ってみたいなのー」

「そのうちね」


 よし、ソレイユは立ち上がった
 明日の準備が完了したようである


「あの変態クマに触手で全身を撫で回された屈辱……、一度たりとも忘れちゃいないわ」


 彼女の言葉に怒りと決意が籠った
 ソレイユの決意は固い。最早メリーが説得する余地がない程に


「明日の放課後決行するわ! いざ爆殺! 変態クマ!!」
「あっ……爆殺はやり過ぎだと思うのー」



















□■□
331 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2019/01/23(水) 22:09:00.79 ID:wVaou1aSo
 

>>330
 × 確立
 ○ 確率

 wikiをあらかた整理しました
 本編は【9月】を書いていきます
 エゴが溜まると突発的に【11月】のピエロなエピソードを投下するかもです
 ひとまず次回は早渡脩寿がマジカル☆ソレイユに襲われます
 以上です


 
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/27(日) 23:39:49.85 ID:SCYZvxF1o
乙です
なんだよ早渡、お前、家で夕食食べようイベント発生させて
その上次回はマジカル☆ソレイユに襲われる(意味深)なんて……ハーレムルート開拓する気かよ?!
333 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2019/01/30(水) 18:32:08.62 ID:WUV7HQbGo
 
>>332
ありがとうございます
もげろ!イベントを積み上げすぎるとあとでたいへんなことになりますが
早渡に関してはガンガン積み上げていこうと思っています😊

ところで小さい頃の早渡の好みのタイプは、長身で巨乳でブロンドの年上女性だった筈ですが
どういう心境の変化があって今に至っているか、よく分かっていない……
 
334 :次世代ーズ 前回 >>326-330 ◆John//PW6. [sage]:2019/02/06(水) 00:12:52.12 ID:Qm5h1XQro
 




 この日の放課後も俺は東区を散策していた

 目的もなく単に歩き回っているだけかというとそれも違う

 理由あって大家さんが管理していた物件を片っ端から探し回っているんだが
 ネットで紹介されてる以外にも多数の物件を所有していたらしく、これが中々見つからない
 越して来てからというもの、歩き回ったり人づてに訊いたりして探索を続けてきたけど
 あんまり成果は上がっていない

 で、今探しているのは東区にあるという貸家だ
 「戸建ての物件」なことと、「大分前に、住んでた一家が全員失踪した」という怪しい曰くくらいしか情報がない
 いや特に二番目の、いかにも人の興味を引きそうな話題ならすぐに見つかるだろと思っていたが、甘かった
 同じクラスのダチ公曰く、東区にはそういう噂のある物件は意外と多い、らしい
 七月からずっと探し回っていたものの、色々あったおかげでまだ特定には至っていない


 まあ焦りは禁物だな
 前方を歩いている女子高生の背中をぼんやりと眺めながら、そんなことを考えていた
 あの制服は東区にある高校か、あの高校って確か自宅アパートに近かったような気もする
 正直なところ、商業高校に行く! って決めてなければ、東区の高校へ行くべきだった
 若干後悔してるところも少しあるが、まあそんなことはいいか


 「狐」の件も花房君達のおかげである程度情報を手に入れたし
 いよっち先輩の方も一段落ついたわけだし
 「狐」周りで大きな動きがあるまでは、しばらくこっちに専念してもいいかもだ

 にしても、さすがに最近はラルムに通い過ぎだったな
 足るを知るってやつだ。これからは週一、……いや週二にしよう
 というわけで今日はラルムへ行かないけど、大家さんのためにも探索は続けないとな
 それに地道に続けていけば、必ず手掛かりにも行き当たるはずだ


 角を曲がった


 しっかし最近は色々あってまともに東区を散策するのが本当に久し振りだ
 ここんとこずっと、いよっち先輩に会おうと中学辺りをうろついてたし



「ぎゃーっ!! 誰かーっ!!」



 色々考えていたところに
 割って入った絶叫


 俺の身体は身構えていた


 妙なのは、このとき脳裏を走ったのが
 「誰か襲われたのか?」ではなく、「なんだ今のは?」だったことだ

 声色がなんというか、わざとらしくなかったか
 演技っぽかったというか


 ていうか前にもあったな似たようなことが
 確かコトリーちゃんが赤マントに襲われてたときか



「誰かーっっ!! あ、赤マントがーっっ!!」



 「赤マント」!?
 野郎!! またか!?



 
335 :次世代ーズ 32 「エンカウント side.A」 2/9 ◆John//PW6. [sage]:2019/02/06(水) 00:14:11.18 ID:Qm5h1XQro
 

 一瞬、躊躇した

 何故だ? 何をためらった?




 とにかく、声のする方向へと、走る




 いや、でもおかしい

 絶叫の響き方からして声の主はそう遠く離れていない

 この距離で何かANなり異常があっとしたら
 まず何か気配というか“波”を感知できるはずだ


 感覚なら既に押し広げている


 “波”は感じた
 でもこれは「赤マント」のものじゃない
 「赤マント」の“波”は、概ね共通して錆び付いたような鉄のニオイ
 だが付近から感じるのはむしろ、乾燥したような、灼け付くようなニオイだ
 「赤マント」のそれではない

 そんなことは現場に辿り着けば分かる


 なのに何かが腹の奥底に違和のように貼りついてる

 何だこれは? 誘い出されてる、そんな感覚なのか?




 迷いを振り切るように

 路地に躍り出た




 声は確かにこっちから響いてきたはず
 だがどうだ
 人影も、ANの姿もない

 いやでも“波”は強くなってる
 これは間違いない

 そして、嫌なことに
 “波”は前方にある電柱から放たれている


 さらに嫌なことに
 普通、人間なりANなりから発される“波”ってのは
 そもそもが生命的な何らかのエネルギーっつう、確かそんな話だった

 だがなんか、前方から感じる“波”はちょっと違う
 生命的な要素がこれっぽっちも感じられない
 まるで物か何かに、“波”だけが貼りついているかのような“感触”だ

 こんな譬えが当を得てんのか微妙だけど
 「人間だと思って近寄ってみたら人形でした」みたいな感じだ


 なにこのホラー展開






 
336 :次世代ーズ 32 「エンカウント side.A」 3/9 ◆John//PW6. [sage]:2019/02/06(水) 00:14:54.36 ID:Qm5h1XQro
 

 走ってきた所為か鼓動が速まっているのを無理やり無視して
 俺は電柱に近づいていく


 電柱の裏に、なにか居た
 いや、あった


 緑色をした、細長いぬいるぐみだ
 珍妙なキャラクターだ
 身長は1メートルもないサイズだ


 そこは重要じゃない


 問題なのは
 このぬいぐるみの表面を這うように流れる
 無数の赤い光だ


 間違いない
 “波”の正体はこの赤い光だ


 ぬいぐるみの頭部は幾重にも巻きつけられるように
 さらに身体の表面も不規則な形で
 赤い糸のようなものが縛り付けてある


 糸の上を脈打つように
 赤い光が走っていく


 これは、“呪詛”ではない
 その判断はほぼ直観だった


 そして


 この時点でようやく気付いた


 このぬいぐるみ自体がANなのでは、ない


 ましてや、ぬいぐるみが生きているわけでも、ない


 単純に、ただの物に、“波”が、文字通り“貼りついて”いるだけだ


 つまりこれは罠だ




 咄嗟に振り返った

 “黒棒”を出すより前に、速く




 誰かが、居た










 
337 :次世代ーズ 32 「エンカウント side.A」 4/9 ◆John//PW6. [sage]:2019/02/06(水) 00:15:38.82 ID:Qm5h1XQro
 

 考えるより先に手が動く
 “黒棒”を生成して叩き込もうと、標的をよく見て―― 一瞬、思考が停止した


 目の前に居るのは、女の子だった
 そしてこの子の格好が、なかなか強烈だった


 薄い生地のマントっぽいのを羽織っており
 その下からスクールな水着っぽいのを着ている


 視線が、泳ぐ


 やたら目を引く赤い髪の女の子は
 物凄い表情で俺を睨みつけている


 一拍遅れて、気付く

 彼女は白い長手袋で覆った手で
 俺の顔面に棒きれを突き付けている

 いや、これ棒きれとかそういうアレじゃない
 先程感知した“波”と同種の、しかしぬいぐるみから発されていたそれとは比にならない圧で
 俺に対して彼女の“波”が放たれている

 棒きれではない
 これは、彼女の、“杖”だ


 OK、落ち着け俺

 彼女の格好は世に言うところのコスプレってやつだ
 そこはいい、彼女のちょっと露出高めの容姿に呆気に取られたのはいいとしよう

 なんで俺はこの子に睨まれてるんだ

 なんで俺はこんなに緊張してるんだ?
 どうして鼓動がこうも速くなってるんだ?

 まあ待て、落ち着け俺
 とりあえずこういうときは話し合いだ
 何故に俺をこんなえらい表情で睨んでくるのか、理由を聞き出しても怒られはしないだろう




「観念しなさい、この変態クマ」




 俺が口を開くより前に、彼女が言い放ってきた

 ほぼ同時に、耳元を高熱の塊がかすめていった

 直後、背後から破裂音が響いた




「言っとくけど、余計な真似したら消し炭にするわよ」




 低い、冷たい声だった
 脅迫するかのような、というより脅迫そのものだ


 一体俺が何をした!?
 いや、俺は一体何をしてしまったんだ!?


 
338 :次世代ーズ 32 「エンカウント side.A」 5/9 ◆John//PW6. [sage]:2019/02/06(水) 00:16:24.40 ID:Qm5h1XQro
 

 落ち着け、まずは整理しろ俺

 俺を罠に嵌めたのはまず間違いなくこの女の子だ
 だが罠を張って俺を待ち構えてたにしては、殺意や悪意の類はまったく感じない

 そうだな、これはなんというか
 純粋な、混じりっ気なしの、文字通りの怒り……だろう多分

 そう、彼女は俺に対して怒りを抱いている
 それも凄まじいほどの怒気だ

 そして彼女は確か、俺を「変態クマ」と呼んだ
 当然の話だがこんなワードに心当たりはない

 何かを勘違いされてる可能性が高い

 そして
 彼女が杖から放った灼熱の塊
 間違いなくこの女の子はANホルダーだ

 そして
 背後を振り返る余裕は勿論なかったものの
 灼熱の塊は、恐らくブロック塀だか何だかに直撃して破裂していた
 そのとき感知した“波”から推測するに、彼女のANは、十中八九炎熱系だ



 つまり、俺の、天敵だ
 直撃したら、大変なことになる
 最悪、死ぬ



「覚悟なさい、アンタが今までやってきたことを後悔させてやるわ」



 今まで誠実に生きてきましたと胸張って言えるわけじゃないが
 でも少なくとも目の前のこの子をここまで怒らせるような真似はした覚えがない
 というか、そもそもこの子とは初対面のはず

 クソッ、心臓が滅茶苦茶ドコドコ鳴ってやがる
 これはアレだ、「僕はやってません」とか「何のことだか分からないなあHAHAHA」とか
 迂闊な言い方したら大変なことになっちゃうやつだ
 落ち着け、慎重に言葉を選ぶんだ俺



「ごめん、あの、身に覚えがないんだけど」

「覚えがない。へえ、そんなこと言うの
 一言目がよりによってそれ? ふざけてるの?
 今まであれだけやりたい放題やって、身に覚えがないっていうわけ?」



 うわあ、めっちゃ怒ってる
 口振りが冷静な分、怒りがこっちに突き刺さってくる



「そう、とぼけるつもりなのね
 あらそう、なら数日前に東区の中学校で
 『学校の怪談』の女の子相手を追い詰めて
 いやらしいことをしようとしていたのも、身に覚えがないって言うのね?
 あの日一緒だった『人面犬』達はお仲間かしら? 今日は独りだから弱腰なわけ? 違うわよねえ?」



 待て
 今の話は、なんだ?
 まさかいよっち先輩のことか?
 だとしたら待て、何だその「いやらしいこと」ってのは!?
 人面犬ってのは半井さん達のことだよな? どういうことだ!? 身に覚えがないんだけど!?


 
339 :次世代ーズ 32 「エンカウント side.A」 6/9 ◆John//PW6. [sage]:2019/02/06(水) 00:17:08.29 ID:Qm5h1XQro
 

「独りでもあれだけやりたい放題やってたわよねえ
 知らないとでも言うの? いい加減になさいよこの変態!
 アンタが私の体を、その、アンタのいやらしい触手で、私のおし、その、……体を撫で回したことも知らないって言うの!?
 ヌルヌルのベチョベチョにするって言い放って、エロ……くっ……、あっ、や、やらしいことしようと迫ってきたこともとぼける気ね!?」

「待って本当に身に覚えがないんだけど!?」



 OK、誓っていい
 かつてセクハラ大魔王などと不名誉な仇名で呼ばれていた暗黒時代ならともかく
 「七つ星」を経て学校町へやって来た俺は、誓ってそんな罰当たりなことはしていない
 ついでに言っておくとセクハラ大魔王な七尾時代だって、セクハラに及んだのは年上の女性職員だけだ!
 というわけで俺ではない!!
 完全に人違いじゃねえか!? とばっちりもいいとこだよ!!
 とにかくこの女の子にそこんとこを理解してもらわないと



「そう、しらばっくれる気ね。いいわ、いいわよ。そっちがその気なら――!!」



 物凄い圧が、俺を叩きつけた

 一瞬、体が吹っ飛んだと錯覚するほどの圧だ

 ヤバい、呼吸ができない

 落ち着け俺、向こうはちょっと話が通じない感じだ

 こういうときは一旦逃げないと危ない



「――こっちにも考えがあるわ
 あくまでシラを切り続けるつもりなら
 本当のことを話したくなるまで、体 の 端 か ら 灰 に し て い っ て や る わ 」



 逃げ切れるのか、これ

 体が、動かない

 金縛りに、掛かったかのように

 完全に、“波”の圧に、射竦められた

 ヤバイ

 逃げないと、この女の子に、殺される



「逃げられるなんて思っちゃいないでしょうね?
 言っておくけど、前の私と同じだなんて思ってたら、死ぬほど後悔させてやるわよ」



 足が動かない


 目を見張る


 動けないならせめて、この状況を、どうにかして凌がねえと



「アアヴ・エ・ファイ、ヴァスヴォーシュ・アント          (炎の鎖、私の戦意)
 アルヴィル・ノッド・アルヴィル――          (強く、より強く――)」




 
340 :次世代ーズ 32 「エンカウント side.A」 7/9 ◆John//PW6. [sage]:2019/02/06(水) 00:17:59.31 ID:Qm5h1XQro
 

 やべえぞ呪文まで唱え始めた

 これは脅しでも何でもない

 証拠に、女の子の杖を起点に、“波”の圧が増している


 このままだと


 やられる


 殺される


 どうする、どうする俺!?


 “黒棒”や“尾”では歯が立たない、ならどうする!?


 どうする!?




「――って、待って!!」



 ほぼ、思考停止しかかっていた俺の頭に

 聞き慣れた声が、飛び込んできた



「待って!! ありすちゃん!! 駄目!!」



 思わず

 その声の主を、目で追った

 その子は東区の高校の制服を着ていた



「あり……ソレイユちゃん! 駄目! 待って!!」



 その女の子は、俺に杖を向けていた子と俺との間に割って入った

 コスプレの子の前に、立ちはだかるかのように両手を広げた

 コスプレの子から、俺を守るように



「千十ちゃん!?」
「千十ぉ!!??」



 俺と、コスプレの子の声がほぼ重なった
 間に入ったのは千十ちゃんだった

 でも、なんで千十ちゃんがここに?






 
341 :次世代ーズ 32 「エンカウント side.A」 8/9 ◆John//PW6. [sage]:2019/02/06(水) 00:19:00.53 ID:Qm5h1XQro
 

「ちょっ、千十!! 何やってるのよ、こっちに来て!!」
「待ってあり、……ソレイユちゃん、脩寿くんと何かあったの!?」
「千十!! ソイツから離れて!! ソイツが変態クマよ!! 早くこっち来て!!」
「変態クマって……」



 千十ちゃんは言い掛け、振り返った
 俺と目が合う

 心臓が、凍り付きそうになった

 千十ちゃんの顔は、蒼ざめていた
 感覚が押し拡がった今、千十ちゃんの感情が突き刺さるほどこちらに伝わってきた

 千十ちゃんが抱いているのは、強い恐怖だ

 彼女は、俺から目を背け

 コスプレの子へと向き直った



「変態クマって、前に話してた痴漢してくるクマのぬいぐるみのこと?」
「そうよ! だから、早くソイツから離れて!!」



 息が、詰まりそうになった



「違うよ、脩寿くんじゃないよ! そんなことをするような人じゃないよ!!」



 千十ちゃんの言葉に
 一拍遅れて、理解が追いついた
 彼女は、俺を庇っているのか



「そうだよね脩寿くん、そんなことやってないよね」



 指が、手が、僅かに震える
 動ける、もう動ける



 千十ちゃんは俺の方を向いていた
 その顔にはまだ恐怖が刻まれているし
 今にも泣き出しそうな表情だった



 俺は、千十ちゃんに応えた



「本当に身に覚えがないんだ、俺はそんなこと、やってない」
「ほら! 脩寿くんじゃないよ! だから……ソレイユちゃん、お願い。杖を下ろして?」



 ソレイユ、そう呼ばれたコスプレの子を見た

 彼女は千十ちゃんに困惑に満ちた眼差しを向けていたが



 やがて、ゆっくりと、俺に突き付けていた杖を、下ろした



 
342 :次世代ーズ 32 「エンカウント side.A」 9/9 ◆John//PW6. [sage]:2019/02/06(水) 00:19:39.21 ID:Qm5h1XQro
 

「千十、とにかくこっちに来て。早く」



 千十ちゃんは躊躇しているのか、再び俺に顔を向けた



 喉がカラカラだ
 心臓が早鐘のように収縮を繰り返してる



「俺は大丈夫、千十ちゃん。ありがと」



 それだけを搾り出した



 千十ちゃんは俺の方を見たまま二、三歩踏み出した
 それより先にコスプレの子が早足で千十ちゃんに歩み寄った
 依然、俺を睨みつけている



「ソレイユちゃん」
「ダメ、まだ信用できない」



 杖の代わりに取り出したのは携帯だった

 俺は口を強く結んだ
 そうでもしないと、全身から力が抜け落ちそうだったからだ

 コスプレの子はどこかに電話していた



「メリー」



 彼女は俺を睨んだまま
 それだけを通話先へ告げると



 千十ちゃんごと消失した



「は、あ」



 今度こそ本当に、力が抜けた
 辛うじて踏みとどまった

 完全にあの子の怒気に圧されていた



 助かった
 千十ちゃんに、助けられた



 それを理解するのに、どれくらいの時間が経ったろう



 俺はその場に坐りこんでしまった






□■□
343 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2019/02/06(水) 00:20:31.11 ID:Qm5h1XQro
 

 早渡脩寿
   炎が天敵
   直撃すると多分死ぬ
   あと毒にも弱い

 日向ありす=マジカル☆ソレイユ
   変態クマ絶対許さないガール
   今回ので気づく人は気づいたかもしれませんが、彼女はある単発リスペクトなキャラです

 遠倉千十
   ありすとは同級生
   スゴい怖がり、契約者同士や都市伝説戦がとても怖い





 以上が side.A
 次回、早ければ今週末に side.B やります
 続きます

 
344 :代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2019/02/11(月) 16:04:48.68 ID:MdjjXc/co
今週末無理くさい……
345 : ◆John//PW6. [sage]:2019/02/11(月) 17:06:01.51 ID:P44/tLNXo
そういや週明けてたや……orz
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/13(水) 19:17:28.27 ID:ruEfGyeuo
ええんやで
ゆっくりいこうや
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2019/02/13(水) 20:31:52.87 ID:c1ZFq1pF0
まあこのスレは俺以外にプロの読者がいないだろうからな…(ズの人乙)
感想はまとめてぶん投げるのが趣味なんだぜ

昔のネタを発見して読み返してる内に懐かしさで死にそうになった
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/22(金) 20:23:23.96 ID:sNS5MRPlo
今更ですがまた道南で地震発生と聞いて
皆様方は御無事だろうか……
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/30(土) 11:13:40.23 ID:RpW6QSvH0
今年こそはとエイプリルフールに合わせて組織爆破予告のカウントダウンタイマーを作成しようとしたが
技術力不足でちょっと無理そうだな
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2019/05/26(日) 03:08:52.76 ID:3lR00lVH0
 
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2019/05/26(日) 03:09:47.01 ID:3lR00lVH0
 
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/05/28(火) 11:04:09.40 ID:sNQMiIR/o
十数年前にもう終わったと思っていたけどまさかこのスレが生き残っていたとは……
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/05/28(火) 22:16:03.59 ID:ewLw4CDmo
5,6年くらい前からずっと過疎ってるけど
一昨年はちょっとだけ盛り上がってたけど
ゆっくりしてってね!
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/06/15(土) 20:59:29.51 ID:WijZcjeN0
「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」スレ、10周年おめでとうございます


「組織」

A-No.   花子
B-No.   ギザ十
C-No.   花子
D-No.   花子
E-No.   八尺様
F-No.   ハーメルン
G-No.   花子
H-No.   花子
I-No.   バール
J-No.   彷徨うみさき
K-No.   はないちもんめ
L-No.   闇子
M-No.   バール、次世代ーズ
N-No.   犬神憑き
O-No.   占い師と少女
P-No.   次世代ーズ
Q-No.   ハンバーグ
R-No.   シャドーマン
S-No.   花子
T-No.   T
U-No.   彷徨うみさき
V-No.   バール
W-No.   魔法の銃弾
X-No.   花子
Y-No.   やる気ない
Z-No.   三面鏡
β-No.   シャドーマン
Δ-No.   DKG
ο-No.   プラモデル
π-No.   三面鏡
φ-No.   DKG
χ-No.   シャドーマン
Ω-No.   DKG
о-No.   鳥居
х-No.   シャドーマン
Я-No.   シャドーマン
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/07/16(火) 22:42:30.76 ID:ph3DDB2To
 
「はい!やって参りました!『サキュバスラジオ』第1回目の放送でっす!」
「パーソナリティはアタシ、しがないサキュバスが務めまーす」
「いや普段はこんなテンション高くないの!日のある内は弱いんだけど夜になると強くなるのだ!」
「というわけで今夜はガンガンやっていくぞ!」

「えーさて、このラジオはなんと今回が初放送なんです…が!」
「なんとなんと、始まる前からお便りが既に2通も届いてるわけなんですよ!」
「これはもう読むしかないでしょ!アタシすごく嬉しい!今までこんなにはしゃいだ事多分生まれて初めてかも!」

「じゃあ記念すべき1通目、読みますよ?読むからね?」
「しかも結構長いんだよね、これは気合入るね!」
「えー…っと、ラジオネーム『ハンバーグ大好き』さんからのお便りです」

「『こんにちは、ぼくは小学生です』 おお、小学生の男の子から!
 小さい子からのお便りですよ!!小さい子がこのラジオの事知ってるってのは嬉しいね!」

「えーっと、
 『親が共働きなので家に帰るといつも一人です
  ぼくはマンションに住んでますがとなりの部屋にはきれいなお姉さんがいます』
 …あー分かりましたよ、もう分かりました!ハンバーグ大好きくんはお姉さんの事が好きなんだね?
 それでこのお便りは恋愛相談ってわけね!アタシはそういうの得意だからね!任せといて!」

「で、続きは、と…
 『いつもお姉さんがご飯を作ってくれるので、ぼくはお姉さんのお家で夕ご飯を食べます
  お姉さんのお家はくさいです。何のにおいかお姉さんに聞いたらビールのにおいだよと教えてくれました
  でもお父さんもビールを飲みますがこんなにくさくないです』
 Oh…これは、小学生ならではの…無邪気な一言が乙女心をキズつけるやつですよ!
 ハンバーグ大好きくん!仮にお姉さんの事が臭かったとしても、本人にそれを言っちゃ駄目だからね!傷ついちゃうから!」

「『お姉さんは恋人をぼしゅう中だそうです。でもお姉さんは料理は出来てもそうじが出来ないし家の中がくさいです
  お姉さんは夜のお仕事をしているのでよく見るとお肌も荒れています。この前はあんまり見ないでって言われました
  ある日、お姉さんが実は私はサキュバスなんだよって教えてくれました』
 おっ!急になんか、サキュバスラジオっぽくなってきたね!お姉さんのカミングアウト!
 これはもしかして、ハンバーグ大好きくんの事を信頼できる人間だって、お姉さんは思ったのかな?
 普通はね、人間社会に潜り込んで生活してるサキュバスは自分がサキュバスですって言ったりしないからね
 住んでる環境とかにもよるけど、相当信頼できるこの人になら全部バレても大丈夫だって思える人にじゃないと、打ち明けないものだし
 でも小学生に打ち明けちゃうサキュバス…、これは不思議っちゃあ不思議だけどな……
 あとねー、臭いとかお肌が荒れてるとか、女の人に軽々しく言っちゃ駄目だからね!将来大人になった時に女の子に嫌われちゃうぞ?
 お姉さんに直接言うんだったら、『たまには掃除した方がいいと思う』とか、『掃除の出来るお姉さんは素敵だと思う』とか
 言い方をよく考えてから伝えようね!アタシとの約束だよ?
 それで、ええと、続きは…
 『ぼくはサキュバスだからくさいんじゃないかって思いました』
 関係ないよそれ!?サキュバスは臭くないよ!!むしろいい匂いするんだぞ!!なんでそんな酷い事言うの!?
 もう!ちょっとハンバーグ大好きくんはデリカシーが足りなさ過ぎ!お母さんにさ、『女の人にデリカシーが無いって言われた』って言って!
 女の子に言っちゃいけない事をね、お母さんに教えてもらいなさい!!
 君の事、クラスの女子から嫌われてんじゃないかって本気で心配になってきちゃうよ…」

 
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/07/16(火) 22:52:31.02 ID:ph3DDB2To
 
「『お仕事中にかっこいい男の人が何人も来るそうですが、お姉さんはあまり相手にされなくてさみしいそうです
  最近、お姉さんはぼくを見ながら、もう年下の男の子でもいいから早くおよめに行きたいわって言います』
 あ……これ良くないやつだ。状況が生々しすぎる…。こっちの心にもきそう…。このお姉さんはいっぱい傷ついてるね…
 それで余裕が無くなっちゃってるんだ…。あのね、ハンバーグ大好きくん、そのお姉さんの事はそっとしてあげて?
 多分自分でもよくない状況だって分かってるはずだから、多分……。お姉さんがサキュバスならいつか必ず乗り越えるはずだから
 うん、そう信じたい…
 それで続きは…
 『でも料理が出来てもそうじが出来ないし、お肌も荒れてるし、くさい人はけっこんできないと思います
  このお姉さんはけっこんできると思いますか? おしえてください』
 余計なお世話ッ!!ハンバーグ大好きくん!?そういう事、お姉さんには聞いてないよね!?
 駄目だからね!?そういうの一番メンタル抉るやつだからね!!あとお姉さんにはもっと優しくしてあげて!!可哀想だよ!!」

「はー!もう!君はね、お母さんから『デリカシー』って言葉の意味をしっかり習っておくべきだとアタシは思うな!
 サキュバスとか関係なくね、女の子の心ってのは強い部分もあるけど弱い部分もあるものなの
 女の子には臭いとか、結婚できないとか、そういう言葉を使っちゃ駄目なんだよ?
 人を傷つけるような事ばっかり考える大人にはなって欲しくないからね?いい?『デ・リ・カ・シー』!大事だからね!」

「1回目からすごく説教臭くなっちゃった…。あ待って、まだ続きがある
 『あと、ぼくがご飯食べてる時にくさいストッキングをぬいでポイする人は[ピーーー]ばいいと思います』
 アウト!!なんで[ピーーー]ばいいとか言うの!!それ一番使っちゃ駄目なやつ!!サキュバスだって一生懸命生きてるんだぞ!!
 確かにだよ!?ご飯中にストッキングを脱いじゃうのはマナー違反じゃないかなって思うけど!!
 他人に軽々しく[ピーーー]とか言っちゃ駄目!!」

「アタシは…、ハンバーグ大好きくんの将来が本気で心配です…
 お父さんお母さんがこのラジオ聞いてたら、今度家族会議した方がいいですよ、絶対
 あとお隣のサキュバスさんにも優しくしてあげてください。彼女は愛に飢えてるだけなんです。多分…」

「1回目からテンションが下がってしまった…
 ええい!無理矢理上げていくからね!気を取り直して2通目のお便りいきます!」

「ええと、ラジオネーム…せ…『聖教会付き特殊部隊≪アビゲイル≫隊員コードネーム≪パウラ≫』
 な…長いですねー…。これ、読んじゃって大丈夫なやつかな…?」

「じゃ、じゃあ読みます…
 『はじめまして。初めてご相談させて頂きます
  単刀直入にお伺いしますが、≪サキュバス≫の弱点と効率的な討伐方法を若輩者の私にご教授頂けますでしょうか
  同族だからこそ知りうる情報を公開して頂けますと幸いです』 …待ってなにこれ
 ちょっと…なに、これ
 これ、ヤバイやつだよね?い、言っておくけどアタシ知らないからね?ていうか知ってたとしても教えるわけないでしょ!!
 『組織』に所属してるようなサキュバスとは違うんだよ!?アタシらみたいなのは戦闘力ゼロだからね!?
 戦えないサキュバスだって結構いるんだよ!?アタシも平和思想の持ち主だし!!なんで討伐するの!?やめて!!
 人間社会で生活してる大多数のサキュバスは省エネ生活送ってるから!清く慎ましい生活してるから!
 男をいきなり襲うみたいな犯罪みたいな事しないから!たまにやらかして警察か『組織』のお世話になるのもいるけど!!
 ていうかこのお便り、『同族』って書いてるよね!?えっなに?アタシがサキュバスだって知ってるって事!?
 もしかして目を付けられんの!?えっ嘘、えっ!?ヤバイやつじゃんこれ!?えっ?逃げなきゃ…!!」

「と、というわけで、『サキュバスラジオ』はこれで終了です!次回未定!さよなら!!」                    【終】
 
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/07/16(火) 22:58:32.82 ID:ph3DDB2To
令和になってから本スレがめがっさ重いが何があった…

ところでこのサキュバスは一体何を食って生きているのであろうか
 
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/07/18(木) 22:38:37.64 ID:E63e9bwco
これサキュバスさんしっかり食べるもの食べたら臭いと肌は大丈夫になるのにワンチャンあるんじゃ・・・
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/07/26(金) 10:25:08.45 ID:nXVRtAp30
そういや穏健派に所属の(Y-bニは言ってない)サキュバスって何食って生きてるんだ?
人間襲うのをある程度許容してんのかね?
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/18(金) 22:53:06.93 ID:pese5reF0
てすと
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/17(木) 19:32:28.96 ID:xh4d1uj30
亀だが次世代イベ大体読み終わった
残留思念の契約者とサイコメトリーの黒服が協力すれば狐の居所を特定できたのでは?と一瞬思ったが
お互いの発動条件と発動範囲が明確じゃないし無理ゲーかもな・・・
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/24(木) 06:45:08.72 ID:oLSu3Cx6o
一度触れちゃうとどう展開して決着したのか気になるもんですね
363 :単発:チームワークの勝利だ! [sage]:2021/12/22(水) 23:53:12.64 ID:Z6E8RoIW0

 これは、都市伝説と戦うために都市伝説と契約した能力者達の物語である。



 高速併走型と呼ばれる都市伝説は、実に種類が豊富である。
 一番の有名どころは、「ダッシュ婆」「ターボおばあちゃん」等と呼ばれる、人間とは思えぬスピードで追いかけてくる老婆の都市伝説だろう。
 高速老婆系だけでも、たとえばバスケットボールをドリブルしながら車やバイクに並走しボールを叩きつけててくる「ドリブル婆」。たとえば棺桶を担ぎながら並走した車やバイクの運転手を捕まえて棺桶に入れて火葬場に運ぶ「棺桶婆」。
 老婆以外でも、「高速でハイハイをする赤ちゃん」「ミサイル跨る女子高生」「スキップする少女」などなど。ご当地限定の存在もあげていけばキリがないほどだ。
 そんな高速系都市伝説の一体、「ホッピングばあちゃん」は苛立ちを隠すことなくそこをはね飛び回っていた。
「えぇい……うるさいんだよ、さっきから!」
 ホッピング……取手と足場の付いた棒の底面がばねで弾むようになっており、それに乗ってバランスを取りながら高く飛び跳ねて遊ぶ玩具でもって、「ホッピングばあちゃん」は地面にヒビを入れながら跳ね飛び続ける。
 がんっ、がんっ、がんっ、と、ホッピングが地面に着地し、飛び立つたびに地面にヒビが入る。貧相な老婆の見た目であるとはいえ、都市伝説である「ホッピングばあちゃん」が全体重をかけてフライングホッピングアタックをしたならば、その一撃を食らった者はただではすまない。
 聞こえ続ける耳障りな音を止めるべく、「ホッピングばあちゃん」は殺意をみなぎらせ続ける。
 ーーぱっぱらぱー!ぱらぱっぱっぱっぱー!!!!
 耳障りな音の正体は、トランペットだ。真夜中だというのに近所迷惑確定の大音量。それがずっと、鳴り響き続けている。
 ぱっぱらぱー!ぱらっぱっぱっぱっぱっぱー!!!!!
 いつもの夜のように道路を走る獲物を追いかけようとしていた「ホッピングばあちゃん」の耳に届いたその音は、「ホッピングばあちゃん」の背後から鳴り響き、そして「ホッピングばあちゃん」を追い越していった。
 なんという事であろう。「ホッピングばあちゃん」を追い越していったバイク、それを運転している者の後ろに、トランペットを構えた少年が座っていたのだ。
 危なっかしくも運転している者に背を向けた状態で座って、ぱっぱかぱっぱか、トランペットを吹き鳴らしているのだ。演奏はめちゃくちゃで、うるさいったらありゃしない。
 そもそも、トランペットにしてはなんだか音がおかしい。まるでラッパみたいにけたたましく鳴り響き続けているのだ。
 耳障りで、耳障りで、今宵の獲物はあれにしようと決めて追いかけているのだが。先ほどから全く追いつくことができない。
 追いかけっこの時間が続けば続きほど、「ホッピングばあちゃん」は苛立ち殺気立ち、冷静な判断ができなくなってきていた。
 ただただ、ただただ、トランペットのやかましい音を止めるために跳ね飛び続け。気づくことができなかった。

 己が、誘いだされていた事に。

 勢いよく、「ホッピングばっちゃん」はマンホールに着地した。その瞬間、びしり、とマンホールに大きくヒビが入り、砕ける。
 だからと言って、「ホッピングばあちゃん」がそこに落下していくことはない。マンホールが砕けるのと、「ホッピングばあちゃん」が跳び上がるのはほぼ同時だからだ。
 ただ。
「え」
 砕けたマンホールの下から。白い、白い……アルビノのように真白で、血のように赤い瞳のワニが飛び出してくることを「ホッピングばあちゃん」は予想しきれてはおらず。
 そして、その真白いワニは、まるでアメリカのパニック映画にでも出てきそうなモンスター級の……とてもじゃないが、その小さなマンホールから飛び出してくるには無理があるほどの巨体を誇っていて。
 ばくんっ、と。
 「ホッピングばあちゃん」は、一口であっさりと、全身のみ込まれて。
 ばきり、べきり、ぼきり、と。よく咀嚼して飲み込まれる音は、トランペットのやかましい音でかき消された。


「よく誘い出してくれたねー。助かった助かった。私の「下水道の白いワニ」は、下水道が主なテリトリーだからマンホールから長く飛び出すことできなくってさー」
 よーしよしよしよしよしよしよし、と己が契約している「下水道の白いワニ」を撫でてやりながら女はそう言った。
 バイクを運転していた男は深々とため息をつきながら、疲れ切った眼差しでもって自身が契約している「トランペット小僧」と共に女をにらむ。
「だからって、囮作戦はきつい」
 ぱーぺー。
 「トランペット小僧」も、契約者の男の言葉に賛同するようにトランペットを鳴らした。
 「下水道の白いワニ」の契約者は「ごっめーん☆」と反省度合いの薄い返答を返す。
「「首無しライダー」や「ゴーストライダー」とバイク勝負できるあなたなら、「ホッピングばあちゃん」相手でも大丈夫だと思って」
「後ろに「トランペット小僧」乗せた状態だときついんだよ!今回こそは死ぬかと思ったわ!!」
 ぱぱぱー。
 抗議の声もトランペットの音も「下水道の白いワニ」の契約者は華麗に聞き流す。
「だって、あなた達の能力っていつでもどこでもトランペットを出現させて演奏する、ってだけでしょ」
「水の上を歩くこともできるわ。「トランペット小僧」が出現するのは、池の真ん中の水面だからな」
 ぱっぱー。
「せいぜいそれくらいでしょう。なら、一番できる事はトランペットの音量を生かしての囮。あなた達が誘い出して私が倒す。最高のチームワーク!」
「こっちの負担があまりにも大きすぎる」
 ぱぱー。
「気にしない気にしない。ま、これからもよろしくねー」
 あまりにも反省度合いがない「下水道の白いワニ」の契約者。
 その様子に、「トランペット小僧」の契約者は静かに、「トランペット小僧」へとGOサインを出す。
「耳元大音量。GO」
 ぱぱぱぱーぱぱぱぱぱぱぱ!ぱぱぱぱっぱぱっぱぱーぱぱぱー!!!!!!!
「グワーッ!?耳元大音量グワーッ!!??」
 耳元で盛大にトランペットを吹き鳴らされ、悶絶する「下水道の白いワニ」の契約者。
 そんな契約者を「下水道の白いワニ」は助けるでもなく、トランペットの音から逃れるように明らかにサイズ的に入れるはずのない下水道への入口へと身を滑らせ、吸い込まれて行くかのように下水土井へと姿を消した。


 後日。
「しばらく夢の中でもトランペットの音が聞こえ続けて寝不足」
 と、「下水道の白いワニ」の契約者は語ったそうだが。
 どう考えても、自業自得なのである。



364 :単発:腕のいいマッサージ師 [sage]:2021/12/23(木) 00:54:01.25 ID:WH4aLp1m0

 これは、都市伝説と契約しているが特に戦う事はない者の物語である。


 酷く肩がこっていた。
 いや、肩どころではない。全身がばっきばきのばっきばき。首、否、頭のてっぺんから足のつま先まで全身疲れ切って凝り固まっている。
 日々、ブラック企業で社畜として働く彼女の肉体とストレスは臨界点を突破してそろそろ壊れる寸前だった。
「知ってる?〇〇温泉にさ、腕のいいマッサージ師の人がいるんだよ。予約とってやったから温泉でゆっくりしてそのマッサージ師さんに身も心も癒してもらってきなさい。知ってた?「この会社、死体が出勤してる」って噂流れてるんだけど。その噂の原因、どう見てもあんただから。顔色が化粧で誤魔化せないレベルで死人色だから」
 同僚からそんな風に言われ、上司に「休ませてくれないとここで死ぬ!!!!!!」と自分の喉にナイフつきつけながら上司を脅して有休をもぎ取り。
 温泉で寝落ちして溺れて死ぬという事故を奇跡的に回避し、彼女は今、マッサージ台の上でうつぶせになっていた。
「あぁー……」
 と、マッサージ師の男性は彼女の背中に触れると同時、苦笑するような声を出す。
 マッサージ開始前の問診して、「日々10時間のパソコン業務。朝から晩までトイレの回数まで制限されてパソコンの前に拘束されている」事や、そのせいで全身凝り固まっているはずだという事を伝えたうえでのこの反応だ。
 凝り固まっている、のだと思うのだ。いや、もうその感覚すら当たり前のものになっているので断言はできないのだが。
 どうやら、マッサージ師の反応を見るに実際に凝っていたらしい。良かった。大袈裟だと思われたらどうしようかと不安だった。
「確かに、すごい事になっていますね……ここまでのお客様はめったにいらっしゃいません」
 わぁなんだか褒められたぞやったー。
 背中をさすられてその段階でなんだかぽかぽかと気持ちよく、頭がふわふわしていて頭の悪い言葉が浮かぶ。
 たださすっているだけではなく、背中に触れることで凝り具合などを確認してくれているようなのだが。正直、すでに気持ちがいい。なるほどここが天国か。
「ちょっと、本気でいかせていただきます。あぁ、緊張なさらず、リラックスしてくださいね。マッサージは、緊張していますと効果が半減しますから」
 はぁい、と自分でも間が抜けていると思う声を出す。
 緊張なんてしていない、最初はマッサージ師が若い青年だった上にアイドルも真っ青なレベルのくっっっっっっっっっっっそイケメンだった為に緊張していたが、青年の声は聴いているだけでもなんだか安心して気が抜ける声質で。触れてくる手もいやらしさや下心0のもので安心できる。
 それでははじめますね、と優しく声をかけながらマッサージ師は施術を開始する。まずは精神のリラックス度合いについていけないレベルで、まるで外骨格に覆われているかのような固さを誇っていた肩甲骨周りを中心に優しく撫でさすられていく。
 ただ撫でさするだけではなく、程よく手のひら全体に力を入れて、指で揉むようなピンポイントではなく手のひらによる面で刺激を与えてくれている。
 あ゛ぁ゛あ゛ーーーー、等と温泉に入った時にも出してしまった、だらしないおっさんのような声がまた上がってしまう。
 イケメン相手にこんな声を聞かれるという羞恥心は死んだ、もういない。
 押し揉まれ、ほぐされ、体はどんどんぐっでんぐっでんになっていく。
「座り仕事と言う事で、お尻からもキてるでしょうから。こちらもほぐしていきますね」
 ばっちこーい、と思いながらはぁいと返事をする。これはマッサージなのでお尻に触れられても問題ない。実際、お尻もばっきばきだったらしく、えっちな気分には一切ならずお゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ーーーー、とまただらしない声が漏れる気持ちよさだった。そうか、お尻も凝るのか。
 途中、なんだか指が体の中に入ってきたような気もしたが気のせいだろう。あまりの気持ちよさにそんな錯覚を引き起こす……そんな錯覚を感じるほどに心地いいのだ。
 寝そう。いや、だが寝てはいけない。勿体ない。
 指が体の中にずぶんっ、と入り込んで、何かしら抜き取られたような気がしたが気のせいだろう。すーー、っとその辺りが楽になっていっている事から察するに、凝りがほぐされる感覚のようだ。
 寝そうだけど勿体ない。あぁ、でも眠たい……。
 そのうち彼女は睡魔に敗北し、すやすやと眠りに落ちてしまっていた。
365 :単発:腕のいいマッサージ師 [sage]:2021/12/23(木) 00:54:53.45 ID:WH4aLp1m0

 にゅぽんっ。ずるずる。にゅぽぽぽんっ。
 死体かな?と錯覚するほどに冷たい体(温泉に入った後のはずなのにこれは相当ヤバイ)の客の体から、マッサージ師はそれを引きずり出す。
 肩甲骨周りに、腰回りに、尻に、太ももに。指を文字通り沈みこませて引きずりだす。
 引きずり出されたそれは、黒くぼやけていてはっきりと姿を視認する事は出来ない。引きずり出すと抵抗するようにじたばたと暴れる。
 暴れるそれを、マッサージ師は構うことなく傍らに用意していた袋にぽんぽんと放り込んでいた。袋の中にはもうずいぶんとそれがたまっていて、袋はうごうごと蠢いている。
 マッサージ師は、それを「業」と呼んでいた。疲労にストレスを始めとした負の精神が混ざり合い凝り固まった物。勤め人にはどうしても体に蓄積されてしまう「業」。
 「温泉街の按摩さん」と呼ばれる都市伝説と契約しているこのマッサージ師は、語られるその都市伝説に出てくる按摩さんと同様に人間の肉体に蓄積された「業」を抜き取る事ができた。
 最も、これは契約したマッサージ師当人のマッサージの腕がいいからでもある。この都市伝説は、マッサージの腕前までは与えてくれない。マッサージの腕前自体はマッサージ師が日々勉強し努力して会得したもの。熟練のマッサージの腕前あってこそ「温泉街の按摩さん」の能力は発動し、客を癒すことができるのだ。
 ……それにしても、本当、疲れ切っているお客さんだ。問診での会話等から察するにブラック企業で日々肉体と精神をすり減らしているのだろう。もはや、自身の状況から脱しようとする思考すら働かなくなっているに違いない。
 抜き取っても抜き取っても、「業」が出てくる出てくる。久々の大豊作だ。
 マッサージ師は知っている。人間の「業」は限りなく甘美であると。「温泉街の按摩さん」と契約して以降、「業」の味の虜となったマッサージ師にとってこの客はまさに最高のお客様だった。
 我慢しきれず、抜き取りたての「業」を一つ、口の中に放り込んで味わう。
 あぁ、あぁ、あぁ、なんてすばらしく甘美な味か!!!
 この調子で、お客様の「業」を全て抜き取って見せよう。マッサージの腕前がいいと評判が広がれば、この「業」をもっともっと、味わい続けることができるのだから……!


 マッサージ前半で寝落ちてしまった勿体なさに膝から崩れ落ちはしたが。彼女は生まれ変わった気分だった。
 視界が明るい。思考が限りなくクリアである。晴れ晴れしい、おろしたてのパンツを履いたかのような爽快感。
「よし、明日から頑張るぞ!」
 証拠は山のようにある。張り切っていこうじゃないか。
 労基へと会社を訴える決意を固めながら、彼女は帰路へとついた。




366 :単発:永遠の子供 [sage]:2021/12/23(木) 22:01:59.67 ID:WH4aLp1m0

 これは、都市伝説と戦うために都市伝説と契約した能力者に後に倒されるであろう者の物語である。


 お父さんの顔は覚えていない。と、言うより、多分、見たこともないのだと思う。
 少なくとも、ぼくが覚えている範囲では家にお父さんの姿は一度もなかった。
 お母さんは、ある日から家に帰ってこなくなった。どこに行ってしまったのか、生きているのか死んでいるのかさえ、わからない。
 お母さんが帰ってこなくなって、ぼくはおなかがすいた。家にあった物をなんとか食べていったけれど、そのうち食べられる物は何もなくなった。
 あぁ、このまま死んじゃうのかな、と、ぼんやりと思っていた時。目の前に、きらきらと輝くものが飛んできた。
『はじめまして!私はティンカーベル!』
 キラキラと輝くそれは、まるでお人形のように小さくて、背中から透明な羽根を生やした女の子。
 ティンカーベルと名乗った彼女はぼくの周りをきらきらと飛び回りながら。
『やっと見つけたわ、私のピーター!』
 感極まった声でぼくを「ピーター」と呼んで、そうして。
『さぁ、私と契約して!また一緒に遊びましょう、私のピーター!』
 ぼくに、契約を持ちかけてきた。

 契約して、ぼくは思い出した。
 ぼくはピーター。ピーターパン。迷子になった赤ん坊が永遠に歳を取らなくなった、永遠の子供。
 妖精のティンカーベルと共にネバーランドで暮らしていて、親とはぐれた子供をネバーランドに導く存在。
 すべてを思い出したぼくは、ティンカーベルの魔法の粉の力を借りて、窓から外を飛び出して夜空へと飛び立った。

 思い出したからには、ぼくには使命と言うものがある。
 だって、ぼくは「ピーターパン」なのだ。親とはぐれた子供達をネバーランドへと案内する役目がある。
 ぼくは世界中飛び回って、そういう子供を見つけては保護して回った。そのうち、親とはぐれた子供だけじゃなく、親にいじめられている子供も集めていった。
 だって、ぼくは「ピーターパン」。子供たちを守るのはぼくの役目、ぼくの使命。
 ネバーランドは子供のための、子供だけの島。永遠に子供だけがいる世界。
 この島を守るのだって、ぼくの大事な大事な使命なんだ。


「ぇ、あ……ピーター…………なんで……?」

 そう、ここは子供の島!

「っひ、や、やめ、そんな、どうして……っ!?」

 ここは「子供だけ」の島!

「なんで、なんで、そんな……そんなのって……」

 そう、だから。

「勝手に連れてきて!大人になりそうになったら、こんな…………身勝手じゃないか、この……」

 この島には、「大人」はいちゃいけない、

「この、殺人鬼が!!!」


 持ち上げた大人を、高い空から叩き落とした。
 何か言っていたようだけど無視する。だって、大人はみんな嘘つきだから。話を聞くだけ時間の無駄だ。
 おかしいな、なんでだろう。
 このネバーランドは子供の島なのに。いつの間にか、連れてきた子供がいなくなって代わりに大人がいる。
 なんでだろう、おかしいな。
 これは、きっと、誰かの陰謀に違いない。
 世界中飛び回って知ったところによると、世界には「組織」「アメリカ政府の陰謀論」「薔薇十字団」「メンバー」「MI6」「第三帝国」「占い愛好会」「首塚」「怪奇同盟」「教会」「レジスタンス」などなど、他にも代償色々と悪い大人達の集団がいるらしい。
 きっと、子供たちがいなくなるのは、そいつらの陰謀だ!
 ぼくは「ピーターパン」。永遠の子供。子供達をネバーランドに導いて、悪い大人から守護する者。
 そんな悪い大人たちの陰謀になんて、負けるもんか。
 何度、この島に大人が現れたって、ぼくが全部やっつけてやるんだ!!



 子供は何も知らない、わからない、気づかない。
 子供は「ピーターパン」と言う「永遠の子供」になって、大人になる機会を永遠に失ってしまって、何も理解できない、わからない。
 ただただ、自分は正しいとうぬぼれて、自分は子供たちのヒーローなのだとうぬぼれて、大人達を殺し続ける。
 それがどれだけ親しくした相手であっても、大人になれば容赦なく、残酷に殺してけたけたと笑う。

 子供は何も知らない、わからない、気づかない、理解しない。
 そう遠くない未来、とうとう誰かに退治されるその瞬間までも。
 己の咎に気づけることは、ない。



367 :単発:真夜中の決闘と言う悪夢 [sage]:2021/12/24(金) 00:44:18.52 ID:v3CHZFiY0

 これは、都市伝説と戦うためではないが契約している能力者と契約している都市伝説と、とある都市伝説の戦いの物語である。


 深夜、街中の空を飛び回るモノがいた。
 一見するとコウモリに見えるそれは、しかし、明らかにコウモリとは違うモノだった。
 一つ、それは単眼であり。一つ、それは人間より小柄な小人くらいの大きさで。一つ、何よりも。

 それの股間には、あまりにも、あまりにも、ご立派なブツがぶらりぶらん、とぶら下がっていた。

 こんなコウモリ、自然界には存在していないだろう。むしろしていてほしくない。主に股間のブツが。
 エレクチオン状態でもないというのにあまりにもご立派すぎる。小柄な体躯にあまりにも似合わない、不相応すぎるブツ。
 風に揺られてぶらんぶららん、股間のブツを揺らしながらそれは夜空を飛び回り、家々の窓を覗き獲物を探す。
 とは言え、カーテンを閉めている家も多い為にまともに中を覗けない家も多いのだが。
 ……見つけた。
 不用心にも、開け放たれたままのカーテン。部屋の中にはベッドに入って眠っている青年一人。
 それは獲物を見つけた喜びで、空中でくるりと一回転した。
 ばさり、青年が眠るその家まで近づいていく。
 流石に、窓には鍵がかかっているのだが。それにとってそんなものは障害にはならない。
 それの体は、窓の手前で煙へと変化して。するりと細い細い、目に見えない程の細い隙間を通って部屋の中へと侵入した。
 まるで硫黄のような匂いを纏いながらも、それは単眼のコウモリのような姿へと戻る。ぶるんっ、と、その拍子に股間のブツが揺れた。

 現実逃避としてそれの名称をまだ記していなかったが、いい加減、現実に向き合うとしよう。
 それは、「ポポバワ」と呼ばれる、アフリカ東部にある某国の某島にて目撃されたUMAの一種である。
 外見特徴については股間のブツに関する記述を除けば大体前述したとおりである。
 ……いや、もしかしたら、股間のブツについても大体正しい記述かもしれない。
 何故ならばこのUMAには、深夜に民家に入り込みその家の男を大きな股間のブツで犯すという話が伝わっているからだ。
 伝わる話の通りであれば、股間のブツの大きさも人々の噂に伝えられている通りで間違っていないのだろう。

 まぁとにかく、そういうUMAなのである。UMAも都市伝説の一種。都市伝説の性として、「ポポバワ」は言い伝えられている通りに行動する。
 すなわち、今、眠っている青年へと襲い掛かろうと、ゆっくり、近づいていく。
 青年は眠り続けており、まさに絶体絶命のピンチ。

 だが。
 そこに、救いの神が現れた!!

「ヘーイ青年!今日こそワタシとDOKIDOKI☆ブルーフィルムタイムでーす!」

 勢いよく扉を開け放ち、この発言をかましたのは欧米人と思わしきナイスな筋肉質な肉体を誇る男性だった。
 もしかしなくとも、救いの神ではなく不審者2号だった。
 突然の闖入者に驚いたのか、「ポポバワ」はギギギッ、と不気味な鳴き声をあげて青年から離れる。

「むむ、まさか、ワタシの愛しい人の元にフラチな不審都市伝説!……良いでしょう」

 ばっ、と、筋肉質な男性は服を脱ぎ捨てる。
 鍛えられた筋肉がよりわかりやすくあらわになり、そして、その体躯にふさわしいブツがぶるんばるんと揺れる。

「この「エイズ・サム」!愛しい人のタメに不審都市伝説を追い払いマース!」

 ギギギギギギギッ!!!!
 「ポポバワ」も、やっと見つけた獲物を奪われたくなかったのだろう。
 戦闘態勢をとった「エイズ・サム」に対して激しく威嚇のポーズをとる。
 互いの股間のご立派様は、戦いの興奮によってエレクチオン。あまりにも凶悪なエクスカリバーと化していた。


 かくて、真夜中の決闘が開始された。
 こんなあまりにもひど過ぎる決闘が繰り広げられているにも関わらず、「エイズ・サム」の契約者の青年はすやすやと幸せな夢を見続けていて。
 このあまりにもひど過ぎる決闘について知るのは、翌朝、ダブルノックダウン状態で倒れていた二体を発見しての事だったという。



368 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/12/26(日) 14:28:05.48 ID:qznTdO4Mo
乙です

ホッピングばあちゃんや首無しライダー、ゴーストライダーから逃げられるトランペット小僧の契約者なかなかの逸材では?

マッサージ、俺も是非お世話になりたいのですが、このイケメンマッサージ師にはどこで出逢えるのでしょうか!?

ネバーランド勢……黒幕はティンカーベルでしょうか……やはり妖精は悪……っ

最期の絵面の汚さがやばいwwwwwwwwwwww

久々に楽しめました!
369 :年末単発祭り:デリカシーは投げ捨てて [sage]:2021/12/26(日) 23:28:49.17 ID:AmuOz4zK0

 これは、都市伝説と戦うために都市伝説と契約した能力者達が、一つ、戦いを終えた後の物語である。


「はぁ……っ」
 目の前で力尽き、消えていく刃物を持った「トイレの花子さん」を油断なく見つめながら、彼女はがっくりと膝をついた。
 激しい戦闘で、体中ボロボロだ。そもそも、彼女の契約都市伝説は、そこまで戦闘向きの都市伝説ではないのだ。
 それでもこうして相手を撃破できたのは、彼女の実力故か。
「契約者様、しっかり!」
 おろおろと、そんな彼女を気遣うのは、彼女の契約都市伝説である「カマキリ男爵」。身なりのいい服装をした人間より少し大きいくらいのカマキリの姿をしたナイスミドルである。
 「カマキリ男爵」との契約によって彼女が得た力は、ピアノの才能と腕をカマキリに変える能力。カマキリの腕のままでもピアノを弾けるという謎の力もある。
 とにかく、腕をカマキリの腕に変えて、それで戦闘を行っていたのだ。互いに互いを切り裂き合った結果、生き残った彼女はそれでもボロボロだった。
 体中、切り傷まみれ。幸い、傷の一つ一つは深くない為出血はそこまででもないのだが、じくじくと全身が傷む。
「私は平気…………それより、あいつは……あっちは、どうなったんだろ……」
 「カマキリ男爵」にそう答えながら、彼女はクラスメイトが戦っているはずの廊下の向こう側へと視線を向けた。
 「トイレの花子さん」との戦闘を開始した彼女に、横殴りするように襲い掛かってきた「紫ババア」。クラスメイトは、その「紫ババア」の相手を買って出てくれたのだ。
 一対二の状況は流石に厳しかったのでありがたい、が。
「……あいつ、契約都市伝説、戦闘向きじゃないって言ってたのに」
 具体的にどんな都市伝説と契約しているのかまではまだ聞けていなかったが、直接、戦闘に使えるようなものではないと聞いていた。
 それなのに、彼女を助けようと「紫ババア」の相手を、買って出てくれた。
「助けに、いかないと……」
「け、契約者様。しかし、そのお怪我では……!」
 よろめきながらも、彼女は立ち上がろうとする。
 助けないと、助けないと。
 互いに都市伝説契約者であると判明してから、積極的に交流するようになった彼。他人に対する扱いはぞんざいなようでいて、なんだかんだ都市伝説絡みで相談にも乗ってくれた彼を死なせる訳にはいかないのだ。
 なんとか、彼女が立ち上がったところで……人影が、見えた。
「あ、そっちも終わってたか」
「……!無事、だったんだね」
 彼だ。服がボロボロになっていて血が滲んで見えるが、こちらよりずっと余裕そうだった。
 少しだけ、ほっとする。
「振り切れたの?」
「いや、殴り倒した」
「なぐりたおした」
 思わずオウム返ししてしまった。都市伝説って殴り倒せるものだっけ。それとも彼がちょっと逸脱人なんだろうか。
「怪我は……?」
「舐めたから治った。そっちは…………かなり切られたな。手当するよ」
 大丈夫、と答えようとして……先程の彼のセリフが、少し引っかかった。
 舐めたから治った?
 疑問を浮かべた次の瞬間、彼の顔が近づいてきて。

 ぺろり、と、頬を舐められた。

「おぎゃっはぁああああああああああああああああああああああああ!!!!????」
「なんだ今の悲鳴」
「契約者様。乙女としてその悲鳴はどうかと」
 彼と「カマキリ男爵」からダブルでツッコミが飛んできたがそれどころではない。
 むしろ、ツッコミたいのはこちらの方だ。
「い、いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい、今、何をっ!?」
「舐めた」
 即答された。
 いや、舐めたって、突然、何をしてくるのか。
 パニックになりつつ、舐められた頬に触れて、気づいた。
「え……?傷、治って……?」
 その辺りも、切りつけられて血が滲んでいたはずなのに。そこだけ、痛みが消えている。恐る恐る振れれば、切り傷が消滅しているようだった。
「「舐めたら治る」。それが俺の契約都市伝説だ」
「なるほど……できれば、言ってから行動、してほしかったな……!」
 心の準備が必要だ、これは。
 彼も彼だ。なんの躊躇もなく、人の顔を舐めないでほしい。
 いくら恋愛的な意味では意識していないと言っても、クラスでそこそこモテる方である彼にこんな事されたら流石に焦る。
 彼女のそんな心境に、彼は気づいてはいない様子でじっと、彼女の様子を観察していた。
「…………本当、あちこちボロボロだな」
「え」
 とさっ、と。
 優しく、床の上に押し倒される。
「ちょっとじっとしてろ。残りの傷も治す」
「え…………あ、いや、待って、残りの傷も、って」
 彼の契約都市伝説は「舐めたら治る」で。
 そして、私は全身、ズタボロ切傷だらけな訳で。
 それを治す、と言う事は、つまり。
「傷、深くなさそうでよかった。内部まで傷ついてると舐めるの難しいしな。じゃ、まずは腕から」
「いやいやいやいやいや待って待って待って待ってストップ!!!タイム!!!!!いや止まってくれないし!?これくらい大丈夫!大丈夫だかrひゃぁん!!??」
「女の体に変に傷残したくないしな」
「気遣いっ!?でも捨てて!今はその気遣い捨てて!!!ってか、「カマキリ男爵」!ヘルプ!へるぷみーーーーっ!!??」
 あちこち、いやらしさは一切なく舐められ、傷を癒されていく。
 いやらしさはないというのに、その舌遣いにぞくぞくしたものを感じてしまい、思わず契約都市伝説である「カマキリ男爵」に助けを求めるも。
「…………ごゆっくり。どうか、契約者様をしっかり癒してくださいませ」
「あぁ、任せろ。次、太ももな」
「いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!????」
 契約者を気遣う「カマキリ男爵」によってGOサインが出てしまい。
 夜の校舎に彼女の悲鳴は盛大に響き渡った。

 そうして、何か大切なものを失いつつも。彼女の体には傷一つ、残されることはなかったのだった。


370 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/12/27(月) 15:24:58.02 ID:rKgmrGVQ0
計測開始
371 :年末単発祭り:バーニングガール [sage]:2021/12/27(月) 15:49:50.73 ID:rKgmrGVQ0

 これは、都市伝説から身を守るために都市伝説と契約する事になった能力者の物語である。


 べちゃ、べちゃ、べちゃ。
 べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ、べちゃっ!!
 足音が近づいてくる。べとべとぬちゃぬちゃとした、気持ちの悪い、ぬるぬるとした者の足音が。
 追いかけてくる、追いかけてくる。夜の闇の中、それはずっと、私を追いかけてきている。
 逃げても逃げても、追いかけられる。助けを求めようにも、走り続けて、苦しくて、うまく声が出ない。
 こんな時に限って、誰ともすれ違う事もない。そんなど田舎と言う訳でもないのに、この時間はもう、人があまり外に出歩いていないとでもいうのだろうか。
 ちらり、と、肩越しに少しだけ、改めてその追いかけてくる者の姿を確認する。
 それは、黒い人間の姿をしていた。全身が黒い。黒々としていてぬめぬめしている。どうやら、黒いオイルのようなものが全身を覆っているらしい。そのせいで足音はべちゃべちゃとしていて、黒い油の足跡を地面に残していっている。黒い姿は闇に溶け込むようで、しかし、赤々と光る眼と、その手に持つナイフの刃が月明かりに照らされて光っているせいで完全には溶け込めていなかった。
 私は、それにかれこれ数十分は追いかけられていた。ここまで走り続けられた自分を偉いと思いつつ、そろそろ体力も脚も限界が訪れようとしていた。
 不気味なそれにつかまってしまったら、どうなってしまうかわからない。赤々と光るその目は、私を「獲物」として見ているようにしか見えなかった。
 なんで、どうして。どうして街中に、こんな、化け物が。
 疑問を浮かべたところで答えは出ないし、どうにもならない。足音は、どんどん、どんどんと近づいてきているのだ。
 そして。
「っきゃ……!?」
 とうとう、脚の限界が来た。無様に転び、転がる。そうなってしまえば、立ち上がろうにも立ち上がる事はできなくて。
「ぁ…………」
 黒いオイルまみれのそれが、私を見下ろしてくる。ぽた、ぽたっ、と、落ちてきた黒いオイルが私のコートを汚す。
 手が、伸びてくる、オイルまみれの手が。ナイフが、振り上げられる。月明かりがナイフの光に反射する。
 向けられるのは、害意、悪意。それと、性欲のようなもの。
 このままだと、私、は。

【敵対存在:「オラン・ミニャク」。マレーシア発祥都市伝説が一つ】

 こちらのコートをつかみ取ろうとする手の動きが、振り下ろされようとするナイフの動きが。
 黒いオイルまみれのそれの動きの一つ一つが、やけにスローモーションのように遅く感じて。自分だけ、時間の流れが変わってしまったような錯覚の中、妙な声が聞こえた。

【全身が黒い油まみれのナイフを持った男。女性を暴行する事件が複数回発生済】

 このままだと、私もその被害者の一人になる、と。
 聞こえてくる妙な声によって、認識させられる。

 ……嫌だ。
 嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ!!!
 そんなの、絶対に、嫌だ!!!!!

【契約を実行しますか?】

 その言葉の意味はわからなかった。
 けれど、契約とやらをすればどうになかるのではないか、と。
 何故か、そう思ったから。


「けい、やくを…………実行……する……!!」


 絞りだした声で、叫んで。
 直後、ざわり、自分の中を炎が走り抜けたかのような熱を感じた。
 熱い、と。自分が燃え尽きるのではないかと言う錯覚は、ほんの一瞬。
 その一瞬の直後、私は契約の実行によって何がなされたかを理解し。そして、世界のスピードが元に戻る。
 ナイフが、私に向かって、一気に振り下ろされて。それが私に届くよりも先に、私は、その力を解き放った。

「っぎ、ぃ、ぎゃああああああああああああああああああああっ!!??」
 それの……聞こえてきた声によれば「オラン・ミニャク」とか言う名前らしい存在が、燃え上がる。
 炎は、「オラン・ミニャク」の体を覆いつくしていたオイルに点火し、さらに強く激しく燃え上がる。
「わ、わわわわ……っ」
 燃え移ってはひとたまりもない。
 みっともなくも、地面をはいずって燃え上がり苦しみもだえる「オラン・ミニャク」から離れた。
「おの、れ……!契約者だった、とは…………畜生がぁあああああ!!!!」
 吠え声のような、おたけびのような、断末魔のような。そんな叫び声をあげながら、「オラン・ミニャク」が最後の抵抗と言わんばかりに私に迫る。
 その恐ろしさに、悍ましさに、私はさらにその力を。
 「人体発火現象」……それの、「間の体に含まれる遺伝子の中には発火性のものがあり、それが突然発火する」と言う説に基づいた都市伝説の力をさらに引き出して、「オラン・ミニャク」をさらに燃え上がらせた。
 苦しみの声が聞こえる。油が、人体が焼けていく嫌な臭いが辺りに広がる。
 「オラン・ミニャク」を焼いた炎は、幸いにもか、それとも特殊な炎故他に燃え移る事はないのか。「オラン・ミニャク」だけを燃やし尽くして。
 後には、人の形をした炭と、真っ黒こげになったナイフだけが、残された。
 その残った炭も、風に吹かれてさらさらと崩れて、風に流されて消えていって。
 最後には、座り込んだ私だけが、残された。


 これが、私が「人体発火現象」と契約したきっかけ。
 人を、人の形をした都市伝説だけを燃やし、燃やし尽くす力。
 恐ろしい力だとは思う。
 けれど、それ以上に恐ろしい存在に襲われた時、身を守れるのはこの力しかないのも事実。
「人の形してないのに襲われたらアウトなんだけどなぁ……」
 そういう時は、どうすればいいのやら。
 不安に思いつつも、私はこの力をコントロールする術を学んでいかなければ、と。そう認識する。


 死にたくないなら使いこなせ。殺したくないなら使いこなせ。
 これは、そういう力なのだから。

372 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/12/27(月) 15:51:08.44 ID:rKgmrGVQ0
約25分で書きあがり確認
373 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/12/27(月) 23:16:08.56 ID:rKgmrGVQ0

 これは、特に契約者を持たない野良都市伝説達の物語である。


 真夜中、とある山奥の車道。車も通る事のないその時間帯に、人影が集まっていた。
 おかしな光景である。こんな時間に、こんな山奥の車道に人が集まっていて。しかも、その大半が老婆なのだ。
 現場に、新たな人影が姿を現す。それもまた、異常だった。それは女子高生。どこからどう見ても、どこにでもいそうな平凡な女子高生。
 ひらり、膝丈のスカートを揺らしながらその女子高生はそこに集まっていた人影の群れへと近づいていく。
「……あ!女子高生のお姉ちゃん!こんばんは!」
「こんばんは、マリちゃん」
 女子高生に、一人の少女が近づく。マリちゃんと呼んだその少女が飛びついてきたのを、女子高生は優しく抱きとめる。
 ……マリちゃんの体は、うっすらと透けていた。まるで、幽霊のように。いや、「幽霊」なのだ。このマリちゃんは。それでも、マリちゃんの方から触れたいと思ってくれればこうして触れられる。体温までは感じられないのが、少しばかり寂しいが。
「皆さん、ごめんなさい。すっかり遅くなっちゃって」
「ひっひっひ、気にするんじゃないよ。あたしらが早すぎただけさ」
「無事、辿り着けたならいいんじゃよ。あんたもマリちゃんも、後でババ達がおやつあげるからね」
 老婆達はけらけらと笑いながら女子高生達にそう言ってみせた。完全に、自分の孫に接するような態度だ。この老婆達に実際に孫が存在するかどうかは謎だが。
 異様な集団は、みな和気あいあいと楽し気に話している。一番多いのは老婆であるが、中には鹿の胴体に老婆の頭部がついた者や牛の頭部をした着物姿の女性等あからさまな異形も存在していた。ある種一番異様なのは赤ん坊か。老婆達にかまってもらってきゃっきゃっと笑っているが、こんな時間にこんな場所にいるのはおかしい、
 また、リヤカーや自転車を整備している様子の人物もいた。真剣に、まるで真剣勝負に赴く直前のような雰囲気だ。

 そう。
 この場に集まった者達はまさに、真剣勝負の為に集まっているのだ。

「すっみませーん!大遅刻ーーーー!!!」
 と、現場に新たな人物が姿を見せた。マリちゃんと同じくらいか、少し年上程度のランドセルを背負った少女だ。
 正直、こんな時間に外を出歩いていたら大人から咎められそうである。それは、女子高生にも言える事だが。
「もう、みんな来ちゃってる?」
「そうだねぇ。そろそろ、始まりの時間だよ」
「整備してる組が整備する時間があったからえぇじゃろよ……あんたは、乗り物の整備はいらんのかえ?」
「私のは、その場で精製するタイプだから平気です」
 わいわいとおしゃべりしつつ、自然と皆横一列に並び始める。真剣勝負の、スタートラインに。
 数人の老婆が、異形の姿をした者達が、リヤカーを装備したおばちゃんが、自転車に乗り込んだ真面目なサラリーマンが、赤ん坊が、少女が、女子高生が。
 スタートラインに、ついた。
「それじゃあ、今年も私がスタートの合図をしますねぇ」
 よぼよぼの、腰の曲がった老婆が競技用ピストルを構える。この老婆もまた、真剣勝負の参加者ではあるが。こうして自ら、スタートの合図をする役目を担っていた。
 それくらいはハンデだ、とでもいうように。
「それでは、用意……!」
 皆が、構えて。
「スタート!」
 ぱぁんっ!と、音が鳴り響くと同時。
 一斉に、皆が駆けだし始めた。

「いっ、けぇええええええええええええええええ!!!!」
 ごぅんっ!!と、轟音と共に女子高生は己の相棒たるミサイルを呼び出した。それにまたがり、一気に加速し頭一つ抜ける。
 「ミサイルにまたがる女子高生」そのものでもある彼女の疾走スタイルはこれだ。
 高速走行型都市伝説によるフリースタイル競争において、ミサイルにまたがるのは違法ではない。
「ふぇふぇふぇ、相変わらず派手だねぇ!」
「でもねぇ、ババ達も簡単には負けないよぉ!!」
 「ターボばあちゃん」「ジェット婆」は、ぐんぐんと加速し、「ミサイルにまたがる女子高生」の後を追いかける。
「ばあさん達には負けんぞい!」
「そうじゃいそうじゃい!知名度では劣るが、スピードではそうそう負けん!」
 「ダッシュ爺ちゃん」「鞠つきじじい」も負けじと並走する。「鞠つきじじい」はその名の通り、鞠をつきながらも恐ろしいスピードで走っていた。
 ぽんぽんぽん、と、鞠をつく音は一つではない。
「み、みんな早い……でも、負けないもん!」
 マリちゃん……「鞠つきマリちゃん」もまた、鞠をつきながら皆へと追いすがる。その足元を、「高速赤ちゃん」がきゃっきゃっと楽しそうにハイハイで爆走してついてきていた。「高速赤ちゃん」は、これが勝負事であるとわかっているかどうか不明であるが。当人が楽しそうなので問題ないのだろう。
「く、速い……!私だって、80kmは出せているはずなのに……!」
 悔し気に「リヤカーおばさん」はそう呟く。少なくとも80km以上のスピードで走れると言われている彼女は、どうにもその語られるスピードに縛られがちだ。都市伝説とはどうしてもそういうものなのである。
 その点で言うと。
「うぉおおおおおおおお!!!!!!!!
374 :年末単発祭り:夜に駆ける   【途中送信申し訳ない!】 [sage]:2021/12/27(月) 23:30:01.75 ID:rKgmrGVQ0
 ひらり、膝丈のスカートを揺らしながらその女子高生はそこに集まっていた人影の群れへと近づいていく。
「……あ!女子高生のお姉ちゃん!こんばんは!」
「こんばんは、マリちゃん」
 女子高生に、一人の少女が近づく。マリちゃんと呼んだその少女が飛びついてきたのを、女子高生は優しく抱きとめる。
 ……マリちゃんの体は、うっすらと透けていた。まるで、幽霊のように。いや、「幽霊」なのだ。このマリちゃんは。それでも、マリちゃんの方から触れたいと思ってくれればこうして触れられる。体温までは感じられないのが、少しばかり寂しいが。
「皆さん、ごめんなさい。すっかり遅くなっちゃって」
「ひっひっひ、気にするんじゃないよ。あたしらが早すぎただけさ」
「無事、辿り着けたならいいんじゃよ。あんたもマリちゃんも、後でババ達がおやつあげるからね」
 老婆達はけらけらと笑いながら女子高生達にそう言ってみせた。完全に、自分の孫に接するような態度だ。この老婆達に実際に孫が存在するかどうかは謎だが。
 異様な集団は、みな和気あいあいと楽し気に話している。一番多いのは老婆であるが、中には鹿の胴体に老婆の頭部がついた者や牛の頭部をした着物姿の女性等あからさまな異形も存在していた。ある種一番異様なのは赤ん坊か。老婆達にかまってもらってきゃっきゃっと笑っているが、こんな時間にこんな場所にいるのはおかしい、
 また、リヤカーや自転車を整備している様子の人物もいた。真剣に、まるで真剣勝負に赴く直前のような雰囲気だ。

 そう。
 この場に集まった者達はまさに、真剣勝負の為に集まっているのだ。

「すっみませーん!大遅刻ーーーー!!!」
 と、現場に新たな人物が姿を見せた。マリちゃんと同じくらいか、少し年上程度のランドセルを背負った少女だ。
 正直、こんな時間に外を出歩いていたら大人から咎められそうである。それは、女子高生にも言える事だが。
「もう、みんな来ちゃってる?」
「そうだねぇ。そろそろ、始まりの時間だよ」
「整備してる組が整備する時間があったからえぇじゃろよ……あんたは、乗り物の整備はいらんのかえ?」
「私のは、その場で精製するタイプだから平気です」
 わいわいとおしゃべりしつつ、自然と皆横一列に並び始める。真剣勝負の、スタートラインに。
 数人の老婆が、異形の姿をした者達が、リヤカーを装備したおばちゃんが、自転車に乗り込んだ真面目なサラリーマンが、赤ん坊が、少女が、女子高生が。
 スタートラインに、ついた。
「それじゃあ、今年も私がスタートの合図をしますねぇ」
 よぼよぼの、腰の曲がった老婆が競技用ピストルを構える。この老婆もまた、真剣勝負の参加者ではあるが。こうして自ら、スタートの合図をする役目を担っていた。
 それくらいはハンデだ、とでもいうように。
「それでは、用意……!」
 皆が、構えて。
「スタート!」
 ぱぁんっ!と、音が鳴り響くと同時。
 一斉に、皆が駆けだし始めた。
375 :年末単発祭り:夜に駆ける   【データ量の関係で1レス収まらなかった……orz】 [sage]:2021/12/27(月) 23:31:15.44 ID:rKgmrGVQ0


「いっ、けぇええええええええええええええええ!!!!」
 ごぅんっ!!と、轟音と共に女子高生は己の相棒たるミサイルを呼び出した。それにまたがり、一気に加速し頭一つ抜ける。
 「ミサイルにまたがる女子高生」そのものでもある彼女の疾走スタイルはこれだ。
 高速走行型都市伝説によるフリースタイル競争において、ミサイルにまたがるのは違法ではない。
「ふぇふぇふぇ、相変わらず派手だねぇ!」
「でもねぇ、ババ達も簡単には負けないよぉ!!」
 「ターボばあちゃん」「ジェット婆」は、ぐんぐんと加速し、「ミサイルにまたがる女子高生」の後を追いかける。
「ばあさん達には負けんぞい!」
「そうじゃいそうじゃい!知名度では劣るが、スピードではそうそう負けん!」
 「ダッシュ爺ちゃん」「鞠つきじじい」も負けじと並走する。「鞠つきじじい」はその名の通り、鞠をつきながらも恐ろしいスピードで走っていた。
 ぽんぽんぽん、と、鞠をつく音は一つではない。
「み、みんな早い……でも、負けないもん!」
 マリちゃん……「鞠つきマリちゃん」もまた、鞠をつきながら皆へと追いすがる。その足元を、「高速赤ちゃん」がきゃっきゃっと楽しそうにハイハイで爆走してついてきていた。「高速赤ちゃん」は、これが勝負事であるとわかっているかどうか不明であるが。当人が楽しそうなので問題ないのだろう。
「く、速い……!私だって、80kmは出せているはずなのに……!」
 悔し気に「リヤカーおばさん」はそう呟く。少なくとも80km以上のスピードで走れると言われている彼女は、どうにもその語られるスピードに縛られがちだ。都市伝説とはどうしてもそういうものなのである。
 その点で言うと。
「うぉおおおおおおおお!!!!!!!!今年こそは負けん!!!!!時速100kmの壁…………超えて見せる……っ!」
 「100キロで走る車と並走する自転車に乗ったまじめなサラリーマン風おじさん」もまた、語られるスピードに縛られがちだが。その壁を、気合で突破しようとしていた。
 負けられない。そんな意地が彼らにはある。
 高速並走型都市伝説達は皆、己のスピードに誇りを持っている。
 これは、その誇りをかけた真剣勝負。
「モ゛ぉ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ォ゛オ゛オ゛!!!!!!」
「ぴぃぇえええええええええええ!!!!!」
 「牛女」が、「ぴょんぴょんババア」が、雄たけび上げながら追いすがる。
「負ける、もんかぁ!!!知名度が低くたってねぇ!!!速度は鍛えられるんだよ!!」
「ラン・ラン・ルー♪」
 「峠のよつんばい女」が、「首都高ドナ〇ド」が、自分達の前を走る者達を追い抜こうと隙を伺う。
「ふっふーん♪ボクは追い上げ型だー!」
 と、ランドセルを背負った「スキップする少女」が、普段、車相手にやっているように対戦相手達をスキップしながらすり抜けて追い抜いていく。追い上げ型、と言うよりも、「車の間をスキップしながらすり抜けていく」と語られているために、前に走っていてもらわないとスピードが出せないともいう。
 デッドヒートが繰り広げられていき、ゴールとして決めているラインが見えてきた……その時、だった。
(……!来る!!)
 ミサイルにまたがりスピードを上げ続けながら、「ミサイルにまたがる女子高生」は後方からの気配に気づいていた。彼女だけではなく、この勝負に参加しているほぼ全員が、気づいていた事だろう。
 スタートの合図を出した、彼女が。
 ………………来る!
 追い上げてくるのは、光。光そのもの。「光速ばばあ」と呼ばれる彼女は光そのもののスピードで駆ける。光の速度故姿は見えない。それでも来ているのだと、わかる。本能が告げてくる。
「これだけ、ハンデもらって…………負けられるかぁああああああああっ!!!!!」
「超えてやる、光の壁だって!!!!」
「これが!わしらの生きざまじゃああああああああああ!!!!!」
「らんらんるー♪」

 駆ける、駆ける、ゴールに向かって。
 勝負の行方は、参加者達だけが知っている。




376 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/12/29(水) 13:23:02.56 ID:EpRmvOFmo
にわかに読み物が増えてうれしみ


ペロペロくんとカマキリちゃんはこの後お互いに特殊な性癖に目覚めてハッピーエンドになればいい。
ペロペロくんは、こう、鈍感すぎて手遅れになったくらいで癖に目覚めていただきたい。

人体発火現象さん、解釈を極めて全て焼き尽くすウーマンになれるまで生き延びてほしい。

走り屋系は婆勢力があまりに強いwwww
ミサイルのJKも大概だけど、光速は卑怯だwwww
377 :年末単発祭りマン:「夜に駆ける」に脱字を発見したお詫びをかねた補足 [sage]:2021/12/29(水) 17:27:01.79 ID:i7rhNExS0
■単発「夜に駆ける」にてレースに出場していた高速並走型都市伝説一覧
・ミサイルにまたがる女子高生:読んで字のごとく。自動車を追いかけたり追い抜いたりするだけで攻撃はしない。「フロイト的な精神分析では、ミサイルやロケットなどの兵器は男性原理を表す」とも言われているが特に関係はおそらくない
・鞠つきマリちゃん:鞠つきをしている最中に車に轢き逃げされた少女の幽霊が、鞠をつきながら自動車を追いかける
・ぴょんぴょんババア:夜にぴょんぴょん跳びはねる老婆タイプと、鹿の胴体に老婆の頭の2タイプが存在。今回出場したのは後者
・牛女:着物を着て牛頭な四つん這いの女、もしくは牛の胴体に般若の頭の怪物の2タイプが存在。今回出場したのは前者
・高速赤ちゃん:高速でハイハイしながら追いかけてくる赤ん坊。きゃっきゃっ
・リヤカーおばさん:リヤカーを引いたおばさんが時速80kmの車と競争する。北海道出身なので恐らく雪道に強い
・100キロで走る車と並走する自転車に乗ったまじめなサラリーマン風おじさん;名前の長さでは出場者で並ぶ者はいない
・スキップする少女:白いブラウス、赤いスカート、ランドセル姿の少女。岡山の津山インターチェンジ付近にて時速80kmでスキップしながら車と車の間をすり抜けていく
・ターボばあちゃん:細かく色んな呼び名で存在するターボな速度で走るおばあちゃん
・ジェット婆:こちらはジェットな速度で走るおばあちゃん
・ダッシュ爺ちゃん:高速並走型は婆だけじゃない。爺もいる!
・鞠つきじじい:鞠つきしながら車を追いかける爺。マリちゃんとは特に関係ない
・峠のよつんばい女:別名「高速女」。四つん這いで車を追いかけてくる。ゴクミ似とのうわさ
・首都高ド〇ルド:首都高で爆走するドナ〇ド。貴様、何故ここにいる!?
・光速ばばあ;高速並走型最上位。その速さ光のごとし。故に視認不可。ピカピカの実は食べていない

※今回、「バスケばあちゃん」「ホッピング婆ちゃん」「棺桶婆」「ホッピング婆」等、そこそこ積極的に物理攻撃しかけてくるタイプは参加しておりません
378 :年末単発祭りマン:ホッピング婆二回言ってるな? [sage]:2021/12/29(水) 17:43:01.63 ID:i7rhNExS0
■訂正
※今回、「バスケばあちゃん」「ホッピング婆ちゃん」「棺桶婆」「ボンネット婆」等、そこそこ積極的に物理攻撃しかけてくるタイプは参加しておりません
379 :年末単発祭り:道踏み外して外道歩み [sage]:2021/12/29(水) 23:31:14.80 ID:i7rhNExS0

 これは都市伝説と戦うために都市伝説と契約し、道を踏み外した者の物語である。


 血の臭いがする。焼け焦げた臭いがする。薬品の臭いがする。水の臭いがする。錆ついた臭いがする。腐り落ちた臭いがする。
 ありとあらゆる死につながる臭いが、そこには充満していた。
 「組織」所属の黒服と契約者、合計二十三人。その全てが絶命し、今、最後の一人もまさに命を散らそうとしていた。
「か、ふ……」
 決して、彼らが弱かった訳ではない。討伐任務につくような面子である。弱いはずがないのだ。
 「口裂け女」「白い壁の穴」「南極のニンゲン」「ケンタウロス」「青頭巾の火」「ドンドコドン」「ストリガ」「鏡のピエロ」「ジャンパイア」「カシマさん」「エンドロップ」…………どの契約者も、この討伐任務に参加するにふさわしいだけの実力者だった。
 だというのに、このざまだ。
 生き残った最後の一人、「骨折した箇所が治癒した場合、骨は以前より強くなる」は、契約しているその都市伝説の力で持って全身の骨折を治癒していきながら、なんとか立ち上がる。
 じゃきり、皮膚を貫いて飛び出した骨を剣のように構えて、討伐対象を見据えた。
「へぇ、まだやんのか」
 討伐対象は、そんな彼を見下し嗤う。
「その出血量で助かるとでも思っているのか?」
 わかっている。脇腹から、首筋から流れる血は止まる様子はない。自分の都市伝説で治癒できるのは骨折だけだ。この出血はどうにもならない。
 そうだとしても、戦う意思を捨てるつもりはなかった。この場で、この討伐対象を倒さなければいけない。
「……お前は」
「うん?」
「お前は…………お前の中には、何人いる?」
 意識が霞んでいくのを叱咤しながらも、そう問いかければ。
 討伐対象は、酷く、酷く、凶悪な笑みを浮かべ、答える。
「十五人だな。ま、「組織」の黒服化した契約者三十五人殺してこの人数。なかなかの豊作だと思わないか?」
「…………なんて、事を」
「そういう都市伝説だからな、私の「臓器の記憶」と言う都市伝説は」
 嗤う討伐対象、「臓器の記憶」の契約者の背中には、蛾のような羽根が生えている。「モスマン」の契約者の臓器を取り込んで奪った羽根が。
 「臓器の記憶」の契約者の左腕は、熊のように変化している。「ファラミーヌ」の契約者の臓器を取り込んで奪った力の一部を引き出している。
 「臓器の記憶」の契約者の右手には注射器が握られている。「注射男」の契約者の臓器を取り込んで奪った注射器が。
 …………そういう、能力なのだ。移植された臓器の元の持ち主の記憶を引き継ぐだけのはずの都市伝説は、契約者を得た事によって悍ましい進化を遂げた。移植された臓器の持ち主が都市伝説契約者、もしくは都市伝説であった場合、その力の一部を扱えるようになる、と言うものに。
 事実に気付いた「臓器の記憶」の契約者は、使えそうな能力の持ち主を次々と殺して臓器を奪っていった。人間の体に収められる臓器の数も種類もたかが知れているはずなのだが、その数をオーバーしても取り込み続けた……もはや、移植ではなく、「臓器を取り込む」事で能力を奪えるように進化してしまったのだろう。
 これ以上……これ以上、「臓器の記憶」の契約者に力を与えてはいけない。どんどんと、止めることが難しくなってしまう。
 骨の剣を、構える。「臓器の記憶」の契約者もまた、熊のような腕を振り上げ、モスマンの羽根で浮かび上がる。
「欲しいな、「骨折した箇所が治癒した場合、骨は以前より強くなる」…………その力を手に入れりゃあ、私はもっと!もっと強くなれる!」
「そう、簡単に……奪えると、思うなぁっ!!!」
 地面が抉れるほどに踏み込み、一気に接近する。心臓の位置を骨の剣が貫くが、「臓器の記憶」の契約者は彼を嘲笑うだけだ。
「心臓一個やられた程度で死ぬとでも?心臓のストックなら、まだある」
 取り込んだかずだけ心臓があるとでもいうように嘲笑い。「ファラミーヌ」の熊の腕が、「アクロバティックサラサラ」のスピードでもって彼の胴体へと突き入れられる。
「ぐ……っ!」
380 :年末単発祭り:道踏み外して外道歩み [sage]:2021/12/29(水) 23:32:18.15 ID:i7rhNExS0

「さぁ、お前の心臓も、もらった……?」
 がしり、と。骨の剣を生やしているのとは逆手で持って、彼は己の胴体に突き入れられた「臓器の記憶」の契約者の腕を、掴んだ。その手から、ぶきびきと皮膚を貫いて骨が飛び出し、「臓器の記憶」の契約者の腕へと突き刺さっていく。
「…………ただでは死なんぞ!この体の臓器の一部も!お前なんぞには、くれてやらん!!」
 骨が、飛び出す。彼の体中から一斉に。彼の体内の臓器をずたずたに切り裂き、引き裂き、使い物にならなくしながら。目の前の「臓器の記憶」の契約者へと、四方八方取り囲み、一斉に襲い掛かる。
 突き刺し、引き裂き。骨の檻に閉じ込めるように。そのままさらにさらに、ズタズタに。
 流石の「臓器の記憶」の契約者も、その攻撃から逃れようと暴れ出す。
 暴れ、骨の刃が、槍が、檻が、へし折られて破壊され。破壊されたはしから再生し、さらに丈夫な刃に、槍に、檻へと変わり、「臓器の記憶」の契約者へと襲い掛かり閉じ込める。
「っき、さまぁあああああああああああ!!??」
「俺が、死ぬまで!!!!お前を、殺し続ける!!!!!」
 どちらが死ぬのが先か。
 どちらが殺しきるのが先か。
 二人の、徹底的な殺し合いは、そう長くは続かなかった。

「は、ぁ…………くっそが。七回は死んだぞ」
 ぼたぼたと、全身出血しながらも「臓器の記憶」の契約者は生き延びていた。少しばかり遊びすぎたとほんのりと反省する。
 傷も治さず、ぐちゃぐちゃと「骨折した箇所が治癒した場合、骨は以前より強くなる」の死体を漁る。
「……くそが。心臓も、肝臓も、肺も……何もかも、ぐっちゃぐちゃじゃねぇか。これじゃあ使えない。畜生、もったいねぇ……」
 血まみれの手を死体から引き抜いた。
 あまりにも勿体ないが、仕方ない。思考を切り替えていくしかなさそうだ。
 通常であればそう簡単に切り替えられるものでもないかもしれないが。「臓器の記憶」の契約者にとっては容易いことである。
 別の意識に、切り替えればいいのだ。取り込んでいる別の意識に。
 軽く首を振り、ぶつんっ、と、テレビのチャンネルでも切り替えるかのように、意識を入れ替える。
「…………うん、しばらくは俺が動きましょうか……まずは、傷の手当ですね。えぇと、「蝦蟇の油」、黒服のどれかが持ってないですかね」
 今度は、死体が残っているタイプの黒服の死体を漁り始める。あったあった、と「蝦蟇の油」を取り出して、己の傷の治療を始めた。
「ストックしていた臓器をそこそこ使ってしまったのは事実ですし。しばらくは契約者狙いではなくストック補充に勤めるとしましょう。死ににくいという強みは捨てちゃだめですからね」
 己の中の他の意識達にそう語りかけるようにしながら、今後について思案する。
 ……自分は、「早期の記憶」は、増長しすぎない限り最強なのだ。
 今後もそうあり続けるために、自分「達」は動くべきである。


「俺「私「僕「わらわ「わしは、最強だ」」」」」

 いくつかの声は重なりながら、いくつかの意識は重なりながら、意見がたがえる事はなく。

 「臓器の記憶」は、まだまだ殺し続けるだろう。
 まだまだ、奪い続けるだろう。

 その命を、誰かに散らされる、その瞬間まで。



381 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/12/30(木) 10:28:23.57 ID:ZfhKixtJo
乙です
骨折さんいいヤツだったのに……
外道な臓器な記憶さんには数ではなく特級の個をぶつけるか飽和攻撃で死ぬまで[ピーーー]感じですかねえ
命のストックはこう、羨ましい
382 :年末単発祭り:襲われる条件を考えるとつまり [sage]:2021/12/31(金) 23:50:02.78 ID:hdugN44c0

 これは、都市伝説と戦う為に都市伝説と契約し、「組織」に所属する契約者の物語である。


「恋人ばかりを襲う、ね」
「どうやらそのようで」
 黒服と並び歩きながら、少女は保温水筒片手にふぅむと思案する。
 このところ、男女二人連れが何者かに襲われ、負傷したり命を落としたりと言う事件が頻発している。
 「組織」の調査によれば、案の定と言うべきか都市伝説の仕業らしい。
「「ザ・フック」。「キャンディマン」とも呼ばれる者。元々はアメリカの都市伝説ですね」
「「キャンディマン」って映画じゃなかったっけ?」
「その映画を元に生まれた都市伝説、と言っていいでしょう。厳密には、元となった話が映画化する際に、アメリカの都市伝説的要素と組み合わせられた、と言うべきかもしれません」
 物語の「キャンディマン」……道化師のような服装をして、「可愛い子にお菓子を!」を言いながら飴を中心としたお菓子を売り歩く男。それが子供をさらっていくという、土地の者でないよそ者が子供を連れ去っていく都市伝説の物語。
 それと、「精神病院から脱走した、右腕が鈎爪の殺人鬼」の都市伝説。
 二つが混ざり合った存在が、「ザ・フック」であり「キャンディマン」。後者で語られている内容では、停車中の車に乗っていたカップルを襲おうとしていた。今回のカップル襲撃も、その逸話故だろう。
「これは偏見かも知れないんだけど。アメリカの都市伝説ってさ、カップル襲う系そこそこ多くない?気のせい?」
「……具体例がぱっとでる訳ではないので偏見とは思いますが」
 否定はしきれない、と言うような表情を浮かべる黒服。少女の偏見は、恐らくアメリカ産のホラー映画の影響ではなかろうか。あれでは、カップルは基本イチャついて殺されるのが役目なのだから。
 とまれ、少女は保温水筒の紐をくるくると弄びつつ、黒服からもらった情報を頭の中で整理する。
「カップルを主に襲う、って事は。おびき出すとしたらカップルっぽい男女で、って言うのが一番?」
「そういう事になるのではないでしょうか。たまたま遭遇するよりは、戦闘力を持つ者が囮となっておびき寄せるのが、一番確実で安全ですので」
「……そうなると、あたしの出番はなさげかな」
 少女の言葉に、おや、と黒服は彼女を見つめた。
 何よ、と怪訝そうに少女は黒服を見つめ返す。
「何故、そのようにお考えに?」
「だって、カップルっぽい男女でおびき寄せるんでしょ?なら、あつぃ、出番ないじゃない」
 恋人いないしー、と、ぶんぶんぶぶん、保温水筒を振り回す少女。なかなかに丈夫な水筒のはずなので、ぶつかると痛いので大変と危ないから止めてほしいと黒服はひっそり思う。言っても止めてくれなさそうなので黙っているが。
「あくまで、カップルに見えればいい、と言う事ですし。お呼びがかからない、と言う事はないでしょう。備えていてくださった方がありがたいです」
「そういうもん?」
「そういうものです」
 カップルのふり、さえできればいいのだ。ならば、この少女と同じくらいの年頃に見える契約者と一緒に行動してもらうという事はありえる。出番がない、と言う事はないだろう。
 ……何故だか、少女が複雑そうな表情を浮かべた気がしたが、気のせいだろう。ただの見間違いだ。
 伝えるべき事を伝え、では、と少女と別れようと、したところで。

 ひらりっ、と。
 出現した漆黒のマントが、黒服と少女を包み込む。直後、二人の姿は消えて。一瞬前まで少女がいたその位地に振り下ろされた鈎爪は獲物を捕らえる事なく空振る。
383 :年末単発祭り:襲われる条件を考えるとつまり [sage]:2021/12/31(金) 23:51:00.58 ID:hdugN44c0

「噂をすれば影、ですね」
 漆黒のマントを纏った黒服は、少女を狙った下手人、「ザ・フック」を睨んだ。
 まさか、自分達の元へとやってくるとは思わなかった。同じ感想を、黒服のマントの内側に包まれた少女も抱いたようで。
「なるほど、結構節穴みたいね。あいつ」
「そのようで」
 鋭い、赤黒くさびた汚れがこびりついた鈎爪が執拗に自分達へと襲い掛かる。
 ひらり、ひらりと、黒服は人間時代に契約していた「黒マント」の力による短距離転移を活用してそれを避けていた。本来の「黒マント」のテリトリーは学校のトイレだが、契約によって無理矢理、派生元である「赤マント」の「人さらいの赤マント」に似た力を引き出しているのだ。
 とは言え、やはり本家と比べれば転移能力に関しては赤子に近い。攻撃を避ける事には使えるが長距離移動には使えない程度のもの。それでも、こうした戦闘では十二分に使える力。
「あなたは……」
「こっちは、いつでも使える。見ればわかるでしょ」
 保温水筒を手に、少女は笑う。黒服に片腕で抱きかかえられた状態のまま、保温水筒の蓋を外し始める。
「あいつの足を止められる?」
「まぁ、やってみましょう」
 流れるように連続して鈎爪で攻撃してくる「ザ・フック」を見据え。黒服は「黒マント」の力を発動する。
「腕と脚、どちらが欲しいですか?」

 黒服の問いを、「ザ・フック」は聞いていた。
 そのうえで、攻撃の手は止めず、答える。
「そうだな、まずは、脚をよこせぇえええええ!!!!!!!」
 足を奪えば、この社会人と女子高生のカップルを徹底的に痛めつけて、弄んで、苦しめて、殺せる。
 そう考えてのあまりに身勝手なその返答に。
「了承いたしました」
 黒服はにこり、微笑んで。

 男の悲鳴が、響き渡った。

「脚、いただきましたよ」
 「ザ・フック」が答えたその直後。一瞬で。黒服は「ザ・フック」の脚をもぎ取っていた。
 それが、「黒マント」としての力なのだ。「赤マント」の派生である「黒マント」は、好きな色を聞いてくる「赤マント」と違い、聞くのは体の部位。そして、答えたその部位をもぎ取って[ピーーー]、と言われているのだ。
 その気になれば心臓等を質問に混ぜて、心臓をもぎ取っての一撃必殺も狙えなくもないが。流石に警戒されるのか心臓をもぎ取れたためしはない。人間時代も、黒服になってからも。
 とにかく、「ザ・フック」の脚をもぎ取った。動きを封じた。そうなれば、もう、こちらのもの。
「ありがと黒服。それじゃあ」
 保温水筒の蓋を開けて、少女はにやり、残酷に、愛らしく、微笑んで。
「ばいばぁ〜い」
 中に入っていたお湯を全て、「ザ・フック」に振りかけた。お湯をかぶった「ザ・フック」の悲鳴が止まる……ぼぅっ、と、呆けたような。そんな表情になって。そしてその体は急速に衰弱していって。
 衰弱しきった命は静かに消え失せて、その存在毎、消えた。

「事前準備が必要とはいえ。やはり強力な力ですね。あなたの「お風呂坊主」の力は」
「正直、あなたの「黒マント」の方が強いと思うんだけど」
 面倒なのよこれ、と少女はぼやく。
 「お風呂坊主」は、風呂の湯をかけた対象のありとあらゆる欲望を奪い取り、衰弱死させる都市伝説だ。一応、都市伝説本体も存在するのだが。出現時間が夜八時の風呂場と言うあまりにも限定されたものなのでめったに顔を合わせない。絶対にその時間には入浴しないからだ。最初に出会った際に「お風呂坊主」に裸を見られてぶん殴って以来、少女はずっとそうしている。
 逸話通りの力を振るうために必要なのは、風呂の湯。なぜか、自分が入浴した後の風呂の湯じゃないといけないのが一番困る。本当困る。毎度、入浴後の風呂の残り湯を念の為取っておかなきゃならない身になってほしい。
「とにかく、お疲れ様でした。後処理はお任せください。お仕事料は後日お支払いします」
「は〜い。期待してるわね」
 まぁ、危険は去ったのだ。一仕事終えた少女は、晴れやかな笑みを浮かべたのだった。


384 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/01/01(土) 00:55:16.32 ID:hQxwMWpAo
ひゅー年末最後の投稿お疲れ様だぜ

この少女黒マントに懸想してるね! 俺の中のザ・フックがフックショットしてるから間違ぇねえ!
俄かに読み物が湧いて楽しかったぜ!
少女の残り湯で一杯やりながら初日の出を迎えようぜ!
385 :新年単発 ◆AaMV0hIAII [sage]:2022/01/01(土) 20:00:04.73 ID:U3VRfQe6o
 
「明けましておめでとうございます!! 早速ですが初日の出を見に行きませんか!?」
「あけおめ、アポなしでいきなりやって来て言う事がそれかよ」
「いいでしょ! 貴方どうせ年末年始暇ですし! それに独身の一人暮らしですし! 独身ですしおすし!」
「勝手に俺を暇扱いするな! 独身を強調するな! まだ学生だぞ!?」

 日付が変わって数時間経ったあたりで、担当の黒服が突然訪問してきた
 この正月はいつも通りネット配信を眺めつつ食っちゃ寝してヌクヌク過ごす予定だったのに
 何が悲しくて「組織」の仕事仲間と元旦を過ごさなきゃなんねーんだ……てか黒服のテンション高過ぎだろ

「さあさあさあ! 車出しますから着替えて着替えて! 今年は絶景のスポットを見つけてあるんですから!」
「うわおい押すな押すな! 炬燵から俺を押し出すんじゃねえ!」





 数時間後
 ちゅうぶちほー、某所
 俺は黒服にほぼ無理矢理連行され、車に揺られてここにやって来た
 遠方に富士山が確認できる。成程、確かに初日の出を拝むには持って来いだな

「いいでしょ! いいでしょ!? 人も居ないし! 誉めてくれてもいいんですよ!?」

 テンションと距離感が若干ウザい黒服の存在を除けば、の話だが
 コイツ普段からこんな感じだったか?

「あ! ほらほら! もうそろそろ日が昇りますよ!」
「いや待て、まだ日の出の時刻じゃなくね?」

 黒服の指差す先には確かに赤い陽光のようなものが富士山の端から揺らめいている
 だがまだ空全体は暗いままだし、俺が言った通り日の出まではまだ数時間ある

「あれ? あれっ!? な、なんだか様子がおかしいですね……!?」
「おいおいおいおい、様子がおかしいなんてもんじゃねえぞ!? 何だあれは!?」

 地平線からゆっくりと、しかし確実に昇り始めたのは、日の出なんてもんじゃない
 もっと赤い赤い、禍々しい何かだ! 全体がマグマのように煮え滾り、熱を帯びた光源が徐々に姿を現しつつあった

「なんですかアレ!? ねえなんですかアレ!? かっ、顔がありますよ!?」
「うるせえ離せ! どさくさに紛れて首を締め上げんじゃねえ!!」

『うっふっふ…… ふっふっふ…… ふっハッハッ……! アーッハッハッハ……!!』

 なんだこのエコー掛かった魔王笑いは!? 方向的に光源から聞こえるようだが!?

『尺の都合で早速真名解放せねばならんが、そうよオレこそ! 【空亡】そのものよ!
     恐れよ! 慄け!  ( ゚∀゚ ) アーッハッハッ八ッ八ッノヽッノヽッノヽッノ \ / \ / \ 』

「なんだあのさいたま(AA)の劣化コピーめいた太陽は!?」

「【空亡】!? いま【空亡】って言ってましたよね!?」


 【空亡】
 それは日本の誇る重要文化財「百鬼夜行絵巻」より生まれ出でた創作上の怪異である
 いや、厳密には絵巻に描かれたとある場面の拡大解釈から生み出された怪異と言っていい
 有象無象の魑魅魍魎共を退散させるほどの力をもつ【夜明け】、その真っ赤な球体が実は怪異なのでは? という誤解から生じたとされるソレは
 曲解や拡大解釈、ネット上での紆余曲折を経て各種創作作品に登場する強キャラクラスのクリーチャーとして君臨するに至ったのである! なんならラスボス張ってる作品すらあるやべーヤツだ!!
 
386 :新年単発 ◆AaMV0hIAII [sage]:2022/01/01(土) 20:01:01.62 ID:U3VRfQe6o
 
「どうすんだよ!! あんなんどうやって対処すんだよ!!」
「契約者さん落ち着いてください! 私が『組織』に応援を呼びます! その間、なんとかして凌いでください!」
「えっ? 俺がアレをなんとかすんの? 一人で?」

 大慌てで電話を始めた黒服を前にしばらく固まる
 再び【空亡】の方を見ると、やっこさんは相変わらずバカ笑いを大音量で響かせながら徐々に高度を増していた
 これもうヤバくね? 隠蔽できるレベルなのこれ? 大丈夫?

 呆けること数秒
 いっけね、俺がなんとかしないといけないんだった
 そうなるともう仕方がない、俺が旧年中に新調した日本刀の出番だろう
 こんなこともあろうかと、防寒コートの下に忍ばせてこの場所まで持ち込んできたのだ

 一応俺も「組織」に所属し、変態的な都市伝説や契約者共を相手に戦いまくってきた身だ
 「組織」からのお仕事報酬、ボーナスその他を貯めに貯めまくって用意した大金をふんだんに投入し
 細かい点までオーダーをつけて一流の職人に打って頂いた、まさに俺の為だけの、世界に唯一つの刀!!

 三百万ちょい超なお値段になったのはここだけの秘密だ
 ちなみに黒服は俺が金を溜め込んでいることを知っており、その金を使って三泊四日の豪華温泉旅行にありつけるものと企んでいたようだが、そうは行くか
 有り金は全てこの刀に投入した! お前の好き勝手にはさせねえぜ! ざまぁ見な黒服ゥ!!

 おっと興奮しすぎたな
 俺はコートを払って改めて腰に差した刀の具合を確かめる…… 抜刀するには絶好調だ!
 かくして俺は【刃物は魔を払う】の能力を発動した。あでも待てよ、このまま【空亡】を斬ったとして、俺の刀、持つかな?
 つーか斬ると言っても俺の射程は刀の間合い程度なんだが!? この状態でどうやって戦えと!?

『ホーハッハッ!! アッハァ!! そもそもオレはクリスマスイブの学校町で【性の6時間】を発動してメリクリ淫乱ピンク地獄を創ってやる予定だったのだわ!!
   ところが前日の晩に調子に乗りまくっていたオレは睡眠導入剤と大量のアルコールそしてバイアグ(一部規制を挟みました、ご了承ください)を摂取し!!
     その所為で意識を回復したのが26日の晩だったのだ!! 実に!! 72時間も!! 無駄にし腐ったのだわさ!! おのれ!! おのれ学校町ォ!!』

「学校町関係ねえだろそれ!? てかお前も学校町関係者かよ!? てか学校町で何やらかそうとしてたんだオメーは!?」

『オレは納得いかんぞ!! 絶対に許さんぞ!! こうなったら学校町に復讐の炎を!! そう思い立ったオレは!!
   こうして富士山より偽りの初日の出として登場し!! そのまま上空遊泳で学校町へ移動を続け!! かの空を真っ赤に焦がし!!
     そのうえで学校町の住民の脳ミソを茹で上げ!! いやんあはんおほん?ちょっとだけよー? なあけおめ灼熱ピンク地獄を創り出そうと決意したのだわさ!!』

「どんだけピンク地獄に未練あんだよ!? オメーのが脳みそピンクじゃねーか!!」

『うるせえ!! オレはやるぞ!! すべては淫乱ピンクのために!! オレは!! 真っ赤に輝く!!
     ( ゚∀゚ ) アーッ ハッハッ 八ッ八ッ ノヽッノヽッ ノヽッノヽッノヽッ ノヽ ッ ノ \ ッ / \ ッ / \ ッ ノ \ ッ / \ ッ / \ ッ』

「クソッ! 思った以上に俗っぽいロクでもないヤツだった!!」

 【空亡】は相変わらず魔王笑いを続けながら、天空で禍々しい輝きを放っている
 なんか気温も上がってねーか!? クソッ! この状態で戦えってのかよ!?
 俺は半ばヤケになって鯉口を切った





 その時だった!!





 
387 :新年単発 ◆AaMV0hIAII [sage]:2022/01/01(土) 20:02:02.06 ID:U3VRfQe6o
 
          「だぁぁぁぁぁぁぁぁラッシャイ!!」          「とぉぉぉぉぉおおおうウ!!」
     『 ( ゚Д゚ ) ウボォお゙お゙お゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙お゙お゙お゙お゙オ゙オ゙オ゙才゙才゙才゙才゙オ゙オ゙オ゙お゙お゙お゙オオッッ!?』

 天高く跳躍し四肢を広げる影二つ!! 【空亡】をバックにクロスするかの如く一閃!!
 それと同時に【空亡】が断末魔めいた絶叫を上げるではないか!? 一体何が起こったというのか!?
 ついでに言っておくと【刃物は魔を払う】の契約者は未だ刀を抜いていない。一体何が起こったというのか!?

 目の前で繰り広げられている事態に仰天する契約者の前に、影の一つが着地した!
 着地の瞬間、その衝撃で大地を揺るがし、やおら立ち上がったその正体は!?

「どうも、いい子いい子でお馴染みの【思考盗聴警察】の神田です
 皆さん実にお久し振りですね。何年振りでしょうか? 元気でやっていたでしょうか?
 この神田、本来なら 『都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……』 スレの10周年を記念してカッコよくキメる予定だったのですが
 温めたネタを行方不明にするわ、あろうことか10周年記念日を盛大にド忘れするわ、その他諸々恥ずかしい思いするわで登場がこのタイミングになったというね
 いやもうそれもこれもこの神田の不徳の致すところ! それはさておき各種連載の作者様方、そして年末単発祭りの作者様、乙でございます
 個人的にビンビンきたのは【カマキリ男爵】の契約者と【舐めたら治る】の契約者のイチャイチャですね!! 年末から何やってやがる!! いいぞもっとやれ!!」

『 ( ゚A゚ ) オレの!! オレの大事な(規制しました、ご安心ください)がぁ!! 真っ赤に裂けてぇ!! 真っ赤っかぁぁ!!!!』

「ご安心を、【空亡】はこの神田が直接対処しました」

「く、黒服!! コイツは何者だ!? 『組織』の応援か!?」
「いっいいえ!! 『組織』のプロファイルには該当がありません!! 何者か不明です!!」

 遠方から響くかわいそうな【空亡】の悲鳴を背景に、【思考盗聴警察】の神田は混乱している契約者と黒服に一礼
 そして混乱したままの二人から、もう一つの着地した影へと半身を向ける

「私と呼吸を合わせるように【空亡】へ必殺の一撃を打ち込み、一瞬にして(規制済、重ねてご安心ください)を引き裂いた、貴方は一体……?」

「ぬう……、ここで会ったがウン年目。【思考盗聴警察】、まさか私の顔を忘れたとは言うまいね?」

「なっ、貴様は……!!」

 未だ昏い夜明け前の闇に紛れるようにして佇んでいたもう一つの影
 ゆっくりと神田に向けて歩み寄り、遂にその正体を現す!!

「馬鹿なッ!! 【犬面人】!? 貴様は確か学校町のょぅι゛ょおパンツ騒動に巻き込まれて死んだはずでは!?」

「ところがどっこい生きてたのよ、私の身を焼き焦がすこの絶望が、私を生き永らえさせたのだ……!!」

 なんと現れたるは体が人間! 頭部がイッヌ、もとい犬! の【犬面人】ではないか!?
 【人面犬】は存在するが【犬面人】なるは聞いたことがない!! 読者諸氏も概ね同意見であろう!!
 
388 :ところで作者はこの黒服が男性であるとは一言も書いていない。つまり……後は分かるね? ◆AaMV0hIAII [sage]:2022/01/01(土) 20:03:16.89 ID:U3VRfQe6o
 
「私は某所避難所で本来不要な保守活動に勤しんでいたのだが、その傍らで主に某スレ登場キャラ達のごく一部を相手にセクハラもといスキンシップに励んでいたのよ (避難所管理人様、関係者各位、その節はすいませんでした)
 忘れもしない……。私は偶然出会ったTさん家のリカちゃんに一目惚れした (Tさんの作者様、その節はすいませんでした)
 私は、リカちゃんにこの高鳴る想いを知ってほしく、猛アタックを開始した……!! (Tさんの作者様、その節は本当すいませんでした)
 リカちゃんは私に反応せず、まったく反応してくれず…… しかし時折気まぐれに私の半身を綿飴のように引き裂いた!! (Tさんの作者様、その節はマジですいませんでした)
 私は思い上がっていたよ……。リカちゃんは私に気があるものと! リカちゃんのお茶目な暴力は好意の裏返しだと! しかし! 彼女は去った! 去ったのだ! そして、この哀れな中年男だけが残された!!
 それでも! 私は覚悟していた! 永訣の日が来ることを! そして! 私がリカちゃんを愛した日々に、あの遠くも懐かしい日々に偽りはない!!
 だが、私には遣り残したことが……まだある」

「私と決着をつける気か」

「如何にも。 【思考盗聴警察】、君と学校町で相見えたあの日から、雌雄を決するこの日が来るのを心待ちにしていた」

 置いてけぼりの契約者と黒服両氏の困惑を余所に、【思考盗聴警察】と【犬面人】は二人だけの世界に没入していく
 そして、突如【犬面人】の体が激しく燃え上がった! それと同時に【犬面人】の周囲に火炎の渦が形成される!

「この姿を取っていたのは、ひとえにリカちゃんへの愛ゆえに! 自らの存在をも捻じ曲げ、リカちゃんへ愛を捧げ続けたゆえだ!
 【人面犬】ではキモがられるだろうと考え、姿を偽って人面犬身の姿を反転させた! かくして私は【犬面人】と化した!!
 そして! 【思考盗聴警察】!! 君との対決のために、私は真の姿を現す!! よく目に焼き付けておきたまえ!! 我が雄姿を!!」

「そういうことでしたか。私の【思考盗聴警察】ですら貴方の真の姿を看破できなかった――! 【人面犬】、いいえ! 【祝融】!!」

「真名……解放!!」

 なんということか!
 灼熱の烈風が吹き荒れる中、【犬面人】の姿が溶けるようにして【人面犬】の姿に変わったではないか!
 否! 否! 【人面犬】に非ず、【人面犬】に非ず!! その姿は瞬く間に膨れ上がり――巨大な獣身へと変貌したではないか!!


 【祝融】
 古来中国の、炎神である
 その姿は獣身人面、伝えられる神話によっては天帝の名を受け神をも倒す程の力を持つ
 火を司るため火災に遭うことの譬えとして「祝融に遇う」との表現があるほどにその存在は畏れられていた


「この目出度き日に、君と雌雄を決することができるとはな! 僥倖だ! 【祝融】として君を倒すぞ! 【思考盗聴警察】!!」

 厳かに、そして堂々たるその威風で以て【犬面人】、もとい【祝融】は戦闘態勢に入る
   その構えは、なんたることか! 蠱惑する女豹のポーズ、それそのものではないか!?

「神である貴方にそこまで言って頂けるとは実に光栄です、総力をもってお相手しましょう! 【祝融】!!」

 対するは【思考盗聴警察】! 古の神を前にして全く動ずることはない!
   彼が取った構えは、なんたることか! 勇猛なる戦士だけが扱えるとされる、荒ぶる鷲のポーズではないか!?


 富士山をバックに両雄が対峙する……!!
 そして富士山の頭頂は徐々にであるが、今度こそ本当に白み始めている!!


「あーもうそろそろ本当に夜が明けますよ!」
「ところで【空亡】の方はいいのか?」
「応援に向かってる『組織』の人達に回収するよう伝えてあります! 実質戦闘不能でしょうし! それよりはいこれ! 手作りの茄子の煮浸しですよ!」
「おっ、ホカホカじゃん。悪いねぇ。これで鷹が飛んで来ればかなり縁起いいぞ」

 両雄の対決など余所に、契約者と黒服は仲良く肩を並べて初日の出が昇るのを待っていた
 たとえ眼前で今まさに【思考盗聴警察】と【祝融】の対決が始まろうとも、自分らには関係のない話だ

 さっきまでちょっと空気に呑まれて圧倒されたたのはここだけの秘密だ


 そして
 幾許かの静寂の後、両雄が動いた!!


               「謹賀新年ッッ!!」               「明けましておめでとぉぉぉぉぉおおおうウ!!」









   【糸冬】
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/01/01(土) 22:13:32.35 ID:NraSwV8D0
乙です
新年早々、げらっげらに笑わせていただいております
390 :年明け単発祭り:めぇ!めぇ!めぇ!! [sage]:2022/01/01(土) 22:53:29.10 ID:NraSwV8D0

 これは、都市伝説と戦う訳では特になかったが都市伝説と多重契約し、都市伝説と戦う能力者の物語である。


 めぇ!
「おらぁっ!」
 めぇ!めぇ!!
「ごらぁっ!!」
 めぇ!めぇ!!めぇ!!!
「えぇい、鬱陶しいぞ貴様っ!!!」
 次々と現れ、タックル仕掛けてくる金毛羊の群れを前に、灰色の毛におおわれ羊か山羊のような角を持ったアメリカ産都市伝説……「ゴートマン」は苛立った声をあげた。
 潰しても、潰しても、羊達は姿を現す。
 めぇ!めぇ!めぇ!めぇ!めぇ!!
 羊とて、ただの羊ではない。その羊達には植物のような茎が繋がっていた。羊は、まるで瓢箪の木に似た木からぶら下がる実から飛び出し、柔軟な茎に繋がったままめぇめぇ鳴きつつ「ゴートマン」へとタックルを仕掛けてくるのだ。
 それに指示を出している高校生くらいの少年は、羊の木の上の方の枝に腰かけ、子羊を抱いて「ゴートマン」を見下ろしている。
「貴様!この「バロメッツ」の契約者!さっさと降りて来い!」
「え、やだ」
 めぇ!
 少年の言葉に肯定するように、抱かれている子羊……「バロメッツ」の本体が愛らしい鳴き声をあげる。
 せっかく、この街でひと暴れしてやろうと思ったのに面倒な奴に見つかってしまった、と「ゴートマン」は己の迂闊さを呪った。
 たまたま見かけた少年を襲おうとしたところ、突然生えた巨大な木。それに実った実は一気に成長して、こうして羊を生み出し「ゴートマン」に絶え間なく攻撃を仕掛けて来てた。
 ……とは言え、「ゴートマン」に決定的なダメージを与えられている訳ではない。そもそも「バロメッツ」自体、攻撃的な都市伝説ではないのだ。
 別名「スキタイ人の羊」「ダッタン人の羊」「リコポデウム」等の名前をもつ「バロメッツ」。引っ張っても曲げても折れる事のない柔軟な茎をもつ瓢箪の木に似た木の実が熟し、そこから生きた羊が顔を出す。羊は茎で届く範囲の草を食らいつくすと儚く力尽き、残った金毛羊の毛や肉を人間が有効活用したり狼が食べたりする。
 そんな、戦闘的ではない都市伝説相手に倒されるほど自分は弱くない。これでも「ゴートマン」としてはそこそこ強い方ではある。だからこそ、アメリカでは都市伝説の退治屋に目を付けられ、国外逃亡するはめになったのだ。
 この、妙に都市伝説が集まりまくっている街であれば、大多数の都市伝説に紛れてうまくやれると思ったというのに……!
「どれだけっ!羊を出しゃあ気が済むんだ!」
 飛び掛かってきた羊を屠る。羊が一匹。隙を見て角頭突きを仕掛けてきた羊を蹴り飛ばす。羊が二匹。茎の柔軟さを利用し、フライングボディ羊アタックしてこようとした羊の胴体を貫く。羊が三匹。
「………ぐ、ぅ!?」
 おかしい。
 一瞬、めまい。いや、これは、意識が、遠のい、て。
「……っ、しま、った」
 これは。何度倒されても「バロメッツ」を生み出し続けていたのは……。
 木の上から見下ろしてきていた少年の笑みが深まったのを見て。「ゴートマン」は己の敗北を悟った。


「いやぁ、いつもいつもすみません」
「えぇ、まったく」
 山積みになった羊の死体と、まだ元気でその辺の草を食べている羊の群れ。それを前に、黒服は深々とため息をついた。
「「ゴートマン」の捕縛に協力してくださったのは、ありがたいのですが……」
「僕ですと、こういう手段しかないんですよね。「羊を数えると眠たくなる」には、大量の羊が必要なので」
 めぇ!
 「バロメッツ」の契約者に抱っこされた、子羊の姿をとった「バロメッツ」本体が契約者に同意する。この契約者、「バロメッツ」以外に先程口にした「羊を数えると眠たくなる」と契約している。
 多重契約、というやつだ。都市伝説に飲み込まれるリスクが高まる為、多重契約と言う行為はあまり推奨されるものではない。属性的に似ていれば飲み込まれリスクは下がるのだとしても、だ。
 どっちも羊属性だから大丈夫いける、で多重契約して飲み込まれずにすんでいるこの契約者は、運がいいのか元々の心の器の容量が大きかったのか。そもそもどちらの都市伝説もそこまで容量を食わないのか。そのどれかだろう。「バロメッツ」と「羊を数えると眠たくなる」は、同じカテゴリに入れていい存在ではない。羊以外共通点がない。そもそも、「バロメッツ」は植物属性なのでは?と言う都市伝説研究者とているというのに。
 とにかく、多重契約によって、この契約者は大量に「バロメッツ」を出現させ、出現させた羊を強制的に相手に数えさせて「羊を数えると眠たくなる」を発動。契約によって強まった力により相手を眠らせてしまうのだ。相手を無力化するのには便利である。のだが。
 欠点は、見ての通り大量の羊が残される事だ。呼び出した羊を、この契約者は自主的に消せないのである。出したら出しっぱなしだ。
「ほら、「バロメッツ」は美味しいですから。「組織」の皆さんで美味しく食べてください。ジンギスカンとか」
「「バロメッツ」の羊の肉は、どちらかと言うと蟹の味に近いのですが」
「ならカニ鍋いけますね。肉以外も、「バロメッツ」は蹄まで羊毛ですから無駄がないです」
 めぇ!
 契約者に褒められたと思っている「バロメッツ」が得意げな顔をしている。得意げな顔をするくらいなら、この大量の羊をどうにかしてほしい。
「……なんとか、「組織」関係者で分配はします。そちらも、一頭くらいは自分でなんとかするように」
「そんな!「バロメッツ」の前で羊を食えと!?」
 めぇ!!
 呼び出した羊の処理を自分でする気が一切ない様子の「バロメッツ」契約者。
 いい加減、それくらいは自分で責任とってほしい。黒服は、そう願わずにはいられなかった。



391 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/01/02(日) 00:13:01.83 ID:JFGcCr18o
乙です

空亡の扱いの軽さもさることながら犬面人……お前……え、めっちゃ格高い系変態おじさんだったの?!
長いことこのスレに居ましたが、ええ、驚愕ですわ
思考盗聴警察の神田さんもお久しぶりです
平和な年明け初笑いでしたwwwwww

蟹味の羊とか組織で大人気になるのでは
バロメッツ鍋で一杯いきたいですなあ
臭みとかなさそう
392 :年明け単発祭り:単発から連載へってよくあるけど連載になるほど話は浮かんでいない [sage]:2022/01/03(月) 00:01:53.61 ID:xRtPLQ1a0

 これは都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者の、なんか評判っぽい奴らに関する別の話である。


 「舐めたら治る」。その名の通り、舐めた箇所の負傷を治療する都市伝説だ。基本的に負傷を癒すものであり病気や毒への対処はできないものの、貴重な治療系の都市伝説。
 その使い手が美少女であったならば、喜んで負傷する野郎共が発生していたかもしれない。
 だが、男である。この都市伝説の契約者は男子高校生である。平均よりは顔が整っているかもしれないが、男である事に変わりはない。故に、彼に舐められるためにわざと負傷する、なんて事を好き好んで行うような者はいない。もしかしたらそんな夢見る変態、ではなく夢見る女子が存在する可能性は微粒子レベルであるかもしれないが、少なくともそのような存在は確認されていない。
 当然の如く、「カマキリ男爵」の契約者とてそんな変態な思考へは行きつかない。むしろ、初めて「嵌めたら治る」の能力を身をもって味わった際に、全身舐めまわされて若干トラウマになってしまったくらいだ。決して変な性癖には目覚めていない。決して変な性癖には目覚めていない。大事な事なので二度言うレベルで「カマキリ男爵」の契約者は自分に言い聞かせる。
(第一、私とあいつじゃ釣り合わないでしょうに……)
 学校の休み時間、ちらりこそり、「舐めたら治る」の契約者へと視線を向ける。彼は幼馴染なのだという女子生徒と、何やら楽し気に話している最中だった。幼馴染。それだけで一定の色々にアドバンテージが存在する強すぎる存在。周囲から恋仲なんじゃないかとからかわれていた際に「こいつだけはない」「昔から一緒に居過ぎて恋愛的な目で見るとか無理」と二人共言っていたから、まぁ恋仲ではないんだろうけれど。
(……いやいや。何考えてるの)
 あれは治療行為だった。あれは治療行為だったのだ。変な行為ではない。治療行為だ。だから、変に意識する必要はない。
 いや、ある意味、意識する必要はあるか。もう二度と、あの治療行為を受けたくない。変な性癖目覚めたくない。その為にも、今後、敵対的な都市伝説との戦闘を行う際は負傷してはいけない。なんとしても負傷してはいけないのだ。絶対に負傷してはいけない都市伝説バトルを行う必要がある。
 もっと鍛えないとな、と「カマキリ男爵」の契約者は強く誓った。

 だと、言うのに。
「あー、いったた……強敵だったね」
「ソウダネ」
 今、「カマキリ男爵」の契約者は「お風呂坊主」の契約者と一緒に、ぼろぼろの状態で座り込んでいた。全身、切り傷だらけ。
 うん、あの「猿夢」はとても……強敵だった。一応、防御力も高める装備で来たつもりだったが、関係なかった。ずったぼろだ。
「ちょっと待ってて、あたしの担当の黒服に、来てもらうから」
 そう言いながら、「お風呂坊主」の契約者が携帯端末で担当黒服へと連絡を開始する。
 あぁ、でも彼女と一緒の戦闘で良かったかもしれない。彼女の担当黒服が、「蝦蟇の油」を持ってきてくれるはずだ。舐めまわされることはない。良かった良かった。
 安堵の息を吐き出すと、ひらりっ、と視界に黒いマントが翻った。さっそく、来てくれたよう、だ。
「なんでいる!!!!!!!???????」
「え、怪我人出たって聞いたから。お前らか」
 何故!?何故に!!!???
 黒服によって連れてこられたらしい「舐めたら治る」の契約者が、二人に駆け寄ってくる。
「黒服さん!!!!なんで!!!!!!こいつを!!!!!!!!???????」
「戦闘直後で満身創痍とは思えぬ叫びにこちらが大変驚いているのはさておき。ちょうど、彼の保護者の方々と情報のやり取りをしていた最中でしたので……怪我人が出たのなら自分が行く、と彼が」
 おのれ、タイミング!!!!!!!!!!!!!!!!!
 全力で雄たけびあげる「カマキリ男爵」の契約者の様子に、黒服も「お風呂坊主」の契約者も、何事、と言わんばかりの表情だ。つまり、二人共、まだ被害にあった事はないという事か。
「全く、二人共こんなひどい怪我して」
 手が、伸びてくる。傷口に触らないように気を使いながら、「舐めたら治る」の契約者は「カマキリ男爵」の契約者の手を取って。
「っちょ、ま、だ、男爵!男しゃーーーーーっく!!!!来て!ヘルプ、たすk「まずは、ここから」おぼはぁあああああああああああああああああ!!!!!!!!???????」
「悲鳴が酷い」
 ぺろり。舌が、手の甲の傷を舐めた。ぞくっ、とした感覚が背筋を走り抜け、傷がすぅ、と消えていく。
 舌は肌から離れる事なく、そのまま、腕へと。
「え、何それ。え、何その治療の仕方」
「……そういえば。治療系の都市伝説とは聞いていましたが、どのようなものか具体的に聞いていませんでしたね」
 「お風呂坊主」の契約者と黒服が何やら言っている気がしたが、もはや「カマキリ男爵」の契約者には聞こえていない。
 そして、普段は自身のテリトリーたる学校の音楽室からあまり出てこない「カマキリ男爵」はここにいないので助けてもらえない。
 よって。
「全身切り刻まれた感じか。じゃ、前みたいに続けるぞ」
「みぎゃあああああああああああああああああああ!!!!!?????」
393 :年明け単発祭り:単発から連載へってよくあるけど連載になるほど話は浮かんでいない [sage]:2022/01/03(月) 00:03:23.63 ID:xRtPLQ1a0




 〜 色気のない悲鳴と共に投下してはいけないネタスレ一歩手前の光景が繰り広げられています
                   悲鳴が止むまで、なんかマッスルな人々のポージングでお待ちください 〜


.
394 :年明け単発祭り:単発から連載へってよくあるけど連載になるほど話は浮かんでいない [sage]:2022/01/03(月) 00:06:30.14 ID:xRtPLQ1a0

 数分後。
「よし、治ったな」
「モウオヨメニイケナイ」
 全身に使うとなるとそこそこ能力を発動し続けるので疲れる筈なのだが、特に疲労も見せず、これでいいなって顔をしている「舐めたら治る」の契約者と、三角座りで落ち込む「カマキリ男爵」の契約者。
 そして、あまりの光景にうっかり静止もできず逃亡もできなかった「お風呂坊主」の契約者とその担当黒服。
 くるり、「舐めたら治る」の契約者の視線が、次のターゲット、ではなく、治療対象へと向けられた。
「こっちも酷いな。痛いだろ?すぐに治す」
 その声は、本当に「お風呂坊主」の契約者を気遣っている声で。「カマキリ男爵」の契約者に対してと同様に下心は一切なく。ただ純粋に怪我人を治そうとする意志に満ちていて。
 だからこそ、「お風呂坊主」の契約者は逃げそびれて、「舐めたら治る」の契約者に腕を取られた時点で正気に戻った。黒服も同じくらいのタイミングで正気に戻ったが、もう遅い。
「っく、くくくく黒服!今からマッハで「蝦蟇の油」をもってk「指先もボロボロじゃないかお前。ちぎれかけてないのが奇跡だ」うぼはぁああああああああああああああ!!!!!!!????????」
「こっちも悲鳴が酷い」
 ちゃぷりっ、と。手の指を口に含まれて、「お風呂坊主」の契約者は悲鳴を上げた。ちろちろと舌が指を這いまわり傷を癒すのだが、それと同時によくわからない、わかっちゃいけない感覚が全身を駆け抜ける。
 善意なのだ。どこまでも善意で下心がない。だからこそ、質が悪い。
「今どき古い考えかもしれないけど。二人共女なんだから、もうちょっと怪我とか気をつけろよ。傷跡残ったらどうするんだ」
「っひ!?ちょ、舐めながら喋るの止めっ、くすぐった」
「黒服さん、ちょっとこいつ抑えといて。暴れられると舐めにくい」
 じたばた
 舌から逃れようと暴れる「お風呂坊主」の契約者。それを、「舐めたら治る」の契約者は片手でがっしり肩の辺りを掴みながら、逆手で優しく腕を持ち上げて舐めていっている。ただ肩と腕を抑えられているだけなのに、「舐めたら治る」の契約者の力が強いのか、押さえつけるコツでも掴んでいるのか妙に動きづらく逃げられない。
 「お風呂坊主」の契約者の悲鳴と、「舐めたら治る」の契約者の言葉。その二つの板挟みになった黒服は、すばやく思考を巡らせた。
 すなわち、今、己がすべき事は。
「えっ」
 がしり、「お風呂坊主」の契約者の体を、押さえつける。
「彼女、油断すると細かい傷は治療しなくていいと放置しようとするんですよ。しっかりお願いします」
「任せろ」
「裏切者おぉおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」

 月下にて悲鳴が上がる。
 それでも、「猿夢」と言う悪夢は一つ退治され、少女達の体には傷一つ残らない。
 素晴らしい、ハッピーエンドを迎える事に成功した物語である。


「どこがハッピーエンドだぁああああ!!!!!!!!!!!」
「モウオヨメニイケナイ」






395 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/01/03(月) 00:57:56.57 ID:+xkW0zIX0

単発の人乙です!
でかしたぞ「舐めたら治る」の契約者!
2人とも特殊性癖に目覚めればいいんだ!
傍目から見れば黒服まで加わってこれはかなりいかがわしい光景なんじゃないかねえ!
オババも爺さんとちちくり合ってた若い頃を思い出しちまったよ!
396 :年明け単発祭り:無限の夢幻 [sage]:2022/01/04(火) 01:25:07.51 ID:ieOHxila0

 これは、都市伝説と戦う為と言うより教え子達を守る為に都市伝説と契約した能力者の物語である。



 放課後、日が沈みゆく時刻。
 こつ、こつ、こつ、と足音を響かせながら、教師が一人校舎の中を歩き回っていた。校舎内に生徒が残っていたら、そろそろ帰りなさいと帰宅を促す。学園祭なんかの時期は多少仕方ない部分はあるが。そうではない時期にあまり遅くまで残って居られても困る。
「……それでさぁ。上半身しかない女子生徒が、ずるずると這いずりながら追いかけてきて……」
「っちょ、怖い。想像すると怖いから止めてってば」
「這いずっている……すなわち、スカートの中を覗けるな……」
 生徒達がおしゃべりしている声。まだいたか、と教室の扉を開き生徒に声をかける。
「こら、いつまで残っている。もう帰りなさい」
「あ、先生……え、もうそんな時間?」
「やっべ、そろそろ帰らないと特売の時間間に合わない」
「はーい、帰りまーす」
 言い訳せず反論せず帰ってくれる生徒は実にありがたい。帰っていく生徒達を見送り、教室の中をさっと整えると再び見回りに戻る。
 ……それにしても、くだらない会話をしていたものだ。おそらく、あれは「てけてけ」の話だろう。何故、そういうありもしない存在について楽しげに、無責任に噂できるのだろうか。
 そんなものは実在しない。それでいいだろうに。
 あぁやって、無責任に噂するから……。
「…………」
 こつ、こつ、こつ、こつ、こつ。
 ずる、ずる、ずる、ずる、ずる。
 何かが、這いずる音。無視して廊下を進むが、その音はずっとついてくる。
 こつ、こつ、こつ、こつ、こつ、こつ、こつ、こつ。
 ずる、ずる、ずる、ずる、ずる、ずる、ずる、ずる。
 足音は、どこまでも、どこまでもついてくる。一定の距離を保ちながら、ずっとずっと。まっすぐな廊下をいつまでもついてくる。
 仕方ない、と歩みを止める事はせずにちらりと背後を伺う。
「……やはり、か」
 ずる、ずる、ずる。
 先ほど生徒達が噂していた通りの、上半身だけの女生徒が。ずるずるずるり、恐らく切断面が丸見えなのだろう腹の辺りから血を廊下に垂れ流しながら追いかけてきていた。掃除が面倒だから止めてほしい。
「あぁ、やっと気づいてくれたぁ」
 にたり、と。上半身だけの女生徒が、笑う。
「「てけてけ」。死んだ場所とされる電車の踏切で出るパターンと、何故だか知らないが学校で出現するパターン。大きく分けて二つの説があったな」
 あぁ、忌々しい。そんなものの存在信じたくもないのだが、生徒の安全のためを思えば調べずにはいられない。この街はあまりにも都市伝説が出現しやすくて。知識はあればあるだけ生徒を守りやすくなるのだから。
 けらけらけらららら、「てけてけ」は笑いながらも這いずり続け、追いかけてくる。
 さて、対処法は……覚えては、いるが。
「知ってるなら、これからされる事、わかってるよねぇ!?」
 すっく、と、「てけてけ」が肘を使って起き上がる。そうして、教師へ一気に飛び掛かろうとした。
 飛び掛かろうとしたのだろう。
「……あ、れぇ?」
 だが、届くことはない。何度も飛びつこうとするのだが、「てけてけ」と教師との距離が、縮まらない。
「な、なんでぇ?」
「気づいていなかったようだな」
 まっすぐまあっすぐ、どれだけ歩き続けても、廊下が終わらない。窓の外の風景がいつまで経っても変わらない。「てけてけ」はずっと廊下をはいずっていたから、なおさら気づかなかったのだろう。
「この廊下、いつまで経っても終わらないと。気づいていなかった時点でそちらの負けだ」
「…………!け、契約者ぁ!?しかも、これはぁ……」
 こつ、こつ、こつ、こつ、こつ。
 歩み続ける。いつまでも終わらない廊下を……「無限廊下」を。
「今更気づいても遅い。もう捕えた」
 「無限廊下」。いつまで進んでも進めない。どこまでもどこまでも廊下が続く。そんな学校の怪談、都市伝説。
 都市伝説の存在を知り、それと契約できると言う事を知り。たまたま遭遇した「無限廊下」と交渉ができた為、契約は成立した。
 どんな建物であろうと廊下を歩き続けることで「無限廊下」と言う異空間を生み出す力。それだけと言えばそれだけ。
 だが、「無限廊下」には、時として恐ろしいオチがつく事がある。そこに入り込んでしまった者は、永遠に、その「無限廊下」を彷徨い続ける、と言うオチが。永遠に続く夢幻のような廊下を彷徨わせるという事。
「……お前には、ずっとこの無限の夢幻の中で這いずり回っていてもらおう」
「ぐ…………ぐぐぐぐぐぐ…………!」
 必死に、「てけてけ」は飛び掛かろうとする。しかし、距離は縮まらない。もはや「無限廊下」に囚われた彼女は、そのまま……「無限廊下」から教師が解放してやるまで、ずっと、そこで彷徨い続けるしかない。直接[ピーーー]ことはできないが、うまく発動してしまえば問答無用に近いのだ。
 こつ、こつ、こつ、と。そのまま、教師は「無限廊下」の空間から立ち去っていこうとして。
「逃がす、かぁっ!!」
「!」
 ひゅっ!と。頬を何かが霞めた。見れば、「てけてけ」の両手に鎌が出現している。それを投擲してきたらしい。
 舌打ち一つ。油断した。「てけてけ」は「無限廊下」に捕えていたものの、それが投擲する物にまで効果が及んでいなかった。と言うより、「てけてけ」が「カシマさん」の逸話と混じって鎌を持っている可能性を失念してそこまで力を発動させていなかった。気を付けねば。
 だが、一撃でこちらを仕留められなかったなら、どちらにせよ向こうの負けだ。
 改めて、「無限廊下」の空間から脱出する。背後からの怨嗟の声は無視して。そのままこつ、こつ、こつ、と。元の校舎の廊下を進み、階段を下りていく。
397 :年明け単発祭り:無限の夢幻 [sage]:2022/01/04(火) 01:26:14.40 ID:ieOHxila0
「先生、さような……あれ、先生。怪我」
 と、途中で男子生徒とすれ違い、先ほど頬を鎌が霞めた時の傷に気付かれた。
 帰ろうとしていた生徒だったが、踵を返し近づいてくる。
「大した怪我ではないし問題ない。校長に報告せねばならないし、生徒を煩わせる訳には」
「駄目です。つまり、なんか都市伝説と遭遇して怪我したんですね?……全く」
 流石に生徒相手に「無限廊下」を使う訳にはいかず、距離を詰められて。
 べろり、頬を舐められた。傷が一瞬で癒えて、消える。
「先生の契約都市伝説、戦闘向きって訳じゃないんですから無理は駄目ですよ」
「……同じく、戦闘に適していない都市伝説と契約している君には言われたくないし、君は相手の意志を無視して強制治療する性格をなんとかするように」
「俺は戦闘では無理だと思ったら適任者に任せるし、怪我人放っておくのは性に合いません」
 ではさようなら、と改めて帰っていく男子生徒。
 あれの被害者はおそらく自分だけではないのだろうな、と少しばかり遠い目をしながら。教師は改めて、報告へと向かっていった。


398 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/01/04(火) 16:04:48.89 ID:nGT11V63o
単発乙です
舐めたら治るの契約者……一切の下心なく親切心で治癒してるんだろうけど
ためらいもなく教師の頬を舐める光景を多感な年頃の女子生徒に目撃されたら
教師が女性の場合は背徳的なおねショタ、男性の場合はもっと危険な関係にしか見えず
多感な年頃の女子生徒の性癖に悪影響ががが!
399 :年明け単発祭り:夢を抱き飛ぶ [sage]:2022/01/04(火) 17:41:22.43 ID:ieOHxila0

 これは、都市伝説と戦う為に都市伝説と契約し、そして飲み込まれて行こうとしている者の物語である。


 UFOに乗るのが夢だった。
 夜の空、星の海を飛び回るのが夢だった。
 その夢は「UFO」との契約によって叶うかと思っていた。
 残念ながら、自分が契約した「UFO」は乗り込めるようなタイプではなかった。まぁ、手のひらサイズと言う愛らしい大きさなので仕方ないだろう。
 それでも偵察なり、そのサイズの癖にくそ強力なビームを放てたり。何度も助けてもらった。
 動きも愛らしいその「UFO」と助け合いながら、都市伝説と戦ったり色々とやってきた。

 そして、その限界が来ようとしていた。

「い、ぐ、ぅ……」
 血が止まらない。
 ギリギリ、なんとかあの恐ろしい契約者から逃げ出す事はできた。あれは、一体どんな多重契約者だったのだろうか。いくつもの都市伝説の能力を使うあの男に、自分達は全くかなわなかった。
「「UFO」……」
 力なく「UFO」は点滅する。その小さな体は、あの恐ろしい契約者に殴り飛ばされ半分以上欠けてしまっていた。
 自分も、「UFO」も。このままでは、どちらも死ぬのだろう。
「……何か……何か、助ける、方法は……」
 自分は、いい。
 せめて、「UFO」だけでも助けたかった。この小さな命に、消えてほしくなかった。
 どんどん、「UFO」の点滅は弱々しくなっていく。かすかに、その小さな体は光へと変わっていこうとしていた。
 何か、何か、なにか、なにか、ナニカ…………。
「……あぁ、そうだ」
 あるじゃないか。「UFO」だけでも助かればいいのなら、きっと、簡単なはずだ。
 よろよろと座り込む。どうせ、もう立っていられない。
 「UFO」はこちらの考えを悟ったのだろうか。やや慌てたような点滅をする。点滅によるモールス信号での意思表示。伝えられた言葉に、笑う。
「…………駄目だ。契約は切らない。このまま、私は死ぬ。だから、君はもう少し、耐えてくれ」
 ちかちかと、「UFO」は点滅を繰り返す。必死に契約を切ろうとする意思が伝わる。
 だが、契約は切らない。解除しない。ゆっくりと、自分自身が変化していくのを感じながら笑う。
「私が先に[ピーーー]ば。君は私を飲みこめるだろう」
 実のところ、自分と「UFO」との契約はギリギリのものだった。だからこそ、この「UFO」はこんな愛らしいサイズになってしまったのだ。心の器、とやらが自分は小さかったという事。
 そんな自分が、[ピーーー]ば。契約を維持したまま死んでいこうとすれば。「UFO」は、自分と言う存在を飲み込むだろう。そうして、もっと力を増すはずだ。
 そうすれば、「UFO」は助かる。「UFO」だけでも助けることができる。自分はどうせ助からないから、せめて。
「今までありがとう、「UFO」……君のおかげで、ずいぶんと楽しい生活をさせてもらったよ」
 意識が、引きずり込まれる。あぁ、こっちが先に死なないと。けれど、これはきちんと、伝えないと。
「君は、私の事など忘れて幸せに、新しい契約者を見つけるなりして幸せに生きるといい。今度は…………私のような半端な器しかない人間じゃなく、もっと……大きな器を持った者と………………契約、するんだよ」
 これだけ、なんとか伝えて。
 意識も、命も、魂も、引きずり込まれた。



 夜の空を、星の海を「UFO」は飛ぶ。ちかちか、ちかちか、点滅しながら飛び回る。
 起きない。起きない、起きない、起きてくれない。
 飲み込んだその人は、自分の中で眠っている。起きてくれない。何度呼び掛けても、起きない。
 死んでほしくなくて飲み込んだ。なのに、意識が戻らない。
 ちかちか、ちかちか、点滅しながら「UFO」は飛び回る。
 飲み込んでしまった大事な契約者を起こしてくれる人を探して、どこまでも、どこまでも。

 夜の空を、星の海を飛び回る。
 彼の人が目覚める日が来るのかどうか。
 誰も、わからない。

 ただただ、「UFO」は飛び続ける。
 契約者を目覚めさせるという夢を抱いて、どこまでも、どこまでも。



400 :年明けそろそろ単発じゃなくなってきた祭り:治療行為への覚悟完了 [sage]:2022/01/04(火) 23:33:14.95 ID:ieOHxila0

 これは、都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達の、特に戦ってはいないちょっとした日常の一幕である。


「それでは。「「舐めたら治る」被害者の会による告発会を始めます」
「なんだそれ」
「名前の通りよ!!!!!」
 そう、名前の通りの会でしかない。
 たとえ親切心からであろうとも、下心がなかろうとも。「舐めたら治る」を発動させるために舐められるのは色々と大切なものを失ってしまう。特に、全身やられると一気に大事なものが消えうせる。モウオヨメニイケナイ。
 そんな想いを抱きながら、「カマキリ男爵」の契約者と「お風呂坊主」の契約者。そしてついでに「無限廊下」の契約者たる教師が「舐めたら治る」の契約者に向き合っていた。「舐めたら治る」の契約者は「解せない」と言う表情を浮かべていた。解しろ。
「まぁいいや。話は聞くから、腕立て伏せは続けてていい?」
「いいけど。なんで背中に「カマキリ男爵」乗せて腕立て伏せしてんの?」
「ただ腕立て伏せするだけだと負荷が足りない」
「何言ってんのこいつ」
 何言ってんのこいつ。白い目を向けられても気にする様子なく、「舐めたら治る」の契約者は背に「カマキリ男爵」を乗せたまま腕立て伏せをしていた。
 「カマキリ男爵」はカマキリではあるが、大きさは人間よりも少し大きい。それなりの重さがあるはずなのにその重みを感じていないかのような動きだ。「カマキリ男爵」は、宇宙猫みたいな表情(いや、カマキリに表情なんてないかもしれないが)でそのまま大人しくしていた。なんだこの光景。
 まぁ、話を聞くのならば問題ないだろう。訴えを開始する。
「とにかく、あれよ。こちらの意志をガン無視して舐めまわすのは止めてほしい」
「迅速に治療しないと痕が残るだろ」
「残っても問題ないって言ってるよね!?」
「契約者様。乙女のお体に傷跡が残るのは、この「カマキリ男爵」反対でございます」
「しまった身内に裏切者がいた!!??」
 宇宙猫状態から脱出した「カマキリ男爵」の言葉に頭を抱える「カマキリ男爵」の契約者。そうだ、こいつはそういう奴だった。だから、全身舐めまわされているのを止めてくれなかったのだ。なんて奴だ。
「と、言うか。先生も被害にあってた時点で本当、もう…………躊躇0なんだなって改めて認識したわ」
「……こちらは、全身はやられてないからな。頬やら手の甲を治療された事があるだけで」
 「お風呂坊主」契約者が頭を抱えている様子に、「無限廊下」の教師はそう弁明した。そして、自分が教え子達のように全身舐めまわされる結果になったら……と、想像し……静かに遠くを見た。窓の外は今日も空が綺麗だ。
「いや、本当さ。もっとこう。躊躇するとかないの?舐めるんだよ?」
「傷の治療に躊躇も何もないだろ」
「くそっ!覚悟が完了しすぎている!!」 
「え、と言うか。先生相手でも、全身怪我してたら全身舐めるの?」
「そりゃするだろ。治療しなきゃダメなんだし」
 静かに、静かに。「無限廊下」の教師はさらに遠くを見ていた。生徒想いであり、生徒の為であれば存在を認めたくもない都市伝説と契約する程度には意志力が強い教師ではあったが。もしかしたら辱めの類には耐性がないのかもしれない。治療なのだが。
 絶対に、全身に傷を負うような事態にはなってはいけないのだと、教師は決意を固めていたが、未来はどうなるかわからない。先の事など、未来予測系都市伝説と契約でもしていない限り分る筈はないのだから。
 なお、その遠くへと現実逃避されていた意識は。
「……万が一。万が一だけどさ。「昇天カーセッ●ス」とか「もげろ」で。股間が犠牲になってても使うと……?」
「待て」
 「お風呂坊主」契約者の震える声での疑問で一気に引き戻されていた。女子高生がなんて都市伝説の話題を口にしているのか。どちらも男の急所が犠牲になる都市伝説ではないか。
 そんなものは食らいたくもないし、それを「舐めたら治る」によって治療するとなると、絵面があんまりにも……。
「え、もちろん使うよ。そんな大事な場所、ちゃんと治さないとダメだろう」




「え。なんだこの時間が止まったみたいな沈黙」
「至極当然の反応でございますよ、「舐めたら治る」の契約者様」
 腕立て伏せ続けつつ、自身を見て固まっている三人相手に首をかしげる「舐めたら治る」の契約者に「カマキリ男爵」はいち早く正気を取り戻してツッコミを入れた。
 覚悟が……覚悟が、あまりにも完了しすぎている。と、言うより。もはや舐めるという行為を心の底から治療行為としか思っていないようで。あまりにも、認識が一般とかけ離れ過ぎていた。
「都市伝説と関わった契約者とはいえ。そこまで覚悟が完了と申しますか。認識がズレていらっしゃるのもまた、珍しい」
「そうか?いやまぁ、俺も周りが周りだし、多少は一般とズレてるって認識はあるけど」
 あまりにもズレすぎている。そのせいで己の契約者含め三人が、意識を宇宙の彼方へ飛ばしてしまっている現実に「カマキリ男爵」はどうしたものかと思案した。もしかしたら三人共SAN値チェックに失敗したのかもしれない。一時的発狂で酷い結果を引かなければいいのだが。
「と、言うか。「カマキリ男爵」も、俺が他人を治療する事に関しては止めないんだろう?」
「確かに、契約者様も「お風呂坊主」の契約者様も。乙女であるというのにあまりにも自身の怪我に対して無頓着でございますので。治療には反対いたしません」
「なら、問題ないな」
「問題ある」
 なんとか、「無限廊下」の教師の意識が現実に戻ってきた。教師として、教え子より先に復活せねばならないという意志が強かったのだろう。
「……今度、君の保護者とはじっくり、話し合う必要がありそうだ」
「え!?ちょ、それは止めてくださいよ。義父さんは仕事色々忙しいんですから」
 ようやく慌てだした「舐めたら治る」の契約者。それでも腕立て伏せを続けているのだから強者だ。そろそろ百回を超えていそうなのだがスピードが落ちない。身体能力化け物か。「舐めたら治る」には身体能力強化等ないはずなのに。
 深く深く、教師はため息をついた。まぁ、保護者と話し合うとしても。「舐めたら治る」の契約者が能力を使う事は止めないのだろう。せめて飲み込まれる事ないようにと思うし、自分達はなるべく負傷すべきではない。
「……そうそう。覚悟は決まらないものだ」
 舐められる覚悟より、負傷しないように努力する覚悟の方が勝る事実。
 固まったままの女子二人もそうなるのだろう。きっと。

 今後、彼女らがどれだけ「舐めたら治る」によって治療されるのか。
 それは全て、彼女らの運命次第である。



401 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/01/05(水) 07:41:47.69 ID:IxB7Pgmdo
舐めたら治る君被害者めちゃくちゃ作ってそうwwwwww
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/01/05(水) 07:47:33.34 ID:IxB7Pgmdo
彷徨うことになったUFOが狩られる側に回らないようにと祈っております
403 :年明け単発祭り:満足するために [sage]:2022/01/05(水) 17:40:05.68 ID:Xyehbh0O0

 これは、都市伝説と戦う為ではなく、ただただ身勝手に契約した能力者の物語である。


 カタカタと、暗い部屋の中にキーボードを叩く音が鳴り響く。他の音は、せいぜいヘッドフォンからかすかに漏れ出す音楽くらいか。
 カタカタ、カタカタ、お手本のようなきれいなブラインドタッチによって文章が形になっていっている。
 決して、人を引き続ける文章ではない。ただただ書き散らしているに等しい。思うがまま書き垂らした散文に近い。まぁ、日記なんてそんなものだろう。誰かが読むことを前提に書いた日記は、もはや日記ではない。
「……よし」
 こんなところだろう。もしかしたら誤字脱字その他もろもろあるかもしれないが、後で直せばいいだけの事だ。書いている最中には気づかないけれど、後になって読み直したら気づくなんて日記に限らずよくある事である。
 名前さえ、間違えていなければいいのだ。
 ターゲットの名前さえ間違えていなければ、問題ない。
 かちりと投稿をクリックし、ブログをネット上へと投稿した。
 これでいい、とニタリと笑う。さて、どれくらいで効果が発動するか。実に楽しみだ。

 効果は、思ったよりも早く発動してくれた。
 ターゲットに関する話題を書いたブログを投稿してから12日程経って、そのターゲットが交通事故にあったという緊急ニュースが流れてきた。これで死ぬにせよ、生き延びるにせよ、自分が契約している「デスブログ」の効果が発動したことに変わりはない。
 「デスブログ」の発動条件と効果は単純明快。自分のブログに不幸な目にあわせたい相手に関する話題を書く。なんだったら、特定個人ではなく会社とか特定組織とか。なんだったら国単位でもいい。そうしてブログで話題に出した対象を不幸にする。そんな力だ。
 別に、ブログで話題に出せば無差別に発動する訳ではない。契約の力によって発動させたい時だけ発動させることができる。不幸の度合いや具体的な内容までは決められないし、どれくらい時間が経つと発動するのかもわからないのが欠点だが、それ以外は実に使い勝手がいい能力である。
 強制発動能力ではないおかげもあって、今のところ私が犯人であるとは疑われていない。いくつかの都市伝説絡みの組織が私を警戒してはいるようだが、決定的な証拠をつかめてはいないのだろう。
 正直なところ、そういう都市伝説絡みの組織相手にもこの「デスブログ」を発動してやりたいところなのだが……流石に、自分のブログで話題に出してしまうと、あちらに私を狙う大義名分を与えてしまいかねない。
 だから、私は毎日気ままにブログを書き散らし、不幸を与えたない対象がいたらそれに関する話題を書いて発動させる。それで満足することにしているのだ。
 私にとって目障りな相手を不幸にできる。それで満足してあげるのだ。あぁ、なんて私は心が広いんだろう。
「そろそろ出番でーす!」
「あ、はーい!」
 ネットニュースを見ていた携帯端末から視線を外す。いけない、そろそろ時間だ。
 グループのみんなと一緒に立ち上がり、舞台セットへと向かう。
「それでは、今回のゲスト!FOXGIRLSのみなさんでーす!」
「「「「「こーんにーちフォーックス♡」」」」」
 可愛らしさを意識した声でみんなと一緒に言えば、盛り上がった返事が返ってくる。
 あぁ、なんて充実した日々。なんてすばらしい日々。
 この間、番組内でこちらを弄り倒してきたむかつく野郎も交通事故にあってスッキリしたし。
 さぁ、今日も気持ち悪い野郎共に愛想と媚びを振りまいて、稼がせてもらいましょうか!



404 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/01/07(金) 06:50:49.13 ID:qkyGj5lLo
●OXGIRLSやべえやつしか居ねえ気配がむんむんするぜ……!
405 :年明け単発祭り:これが私のお狐さんだ [sage]:2022/01/07(金) 12:08:42.98 ID:9eOYmDK70

 これは都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した魔法少女の物語である。


「お疲れ様でしたー」
 バラエティ番組の収録を終え、衣装も脱いで私服に戻ったアイドルグループ「FOXGIRLS」のメンバー達。まだまだアイドルグループとしては新人であり、人気もそこまで高い訳ではない為、帰宅の際に事務所に送ってもらう、みたいな待遇は残念ながらまだない。
「それでは皆さん、お気をつけてお帰りください。最近、変質者が出るというお話もありますからね」
 生真面目なマネージャーは心配そうに五人にそう声をかけた。本当ならば送ってあげたいけれど他の仕事があって無理、と言う様子だ。
 大丈夫ですよぉ、とメンバーの一人はけらけらと笑った。
「お父さんにお迎え頼むんで平気でーす」
「私も、お姉ちゃんが車で迎えに来てくれるから……大丈夫」
「変質者?……よかろう。我が愛機ブラックメタリックハイパーフォックス号に追いつけるかどうか、試してやる」
「スピード違反で捕まるとかないようにねリーダー。ぼくはタクシー呼ぶつもりだから平気」
「変なのと遭遇したら、すぐ110番できるよう構えておきますから。安心してください」
 それぞれ、マネージャーを安心させるようにそう言って見せる。
 いっそ、マネージャーの方が心配なくらいだ。複数の新人アイドルやグループのマネージャーと言う激務を担わされているブラック社畜な様子とか。見た目実に頼りないからむしろそっちが変質者に襲われないかとか、色々。
 担当アイドル達の返答にひとまずはほっとしつつも。
「いいですか。何かあったら、すぐにこちらに連絡してくださいね?」
 等と言って、マネージャーは次の仕事に向かっていく。いや本当、いつか倒れないかな。
「もー、マネージャーちゃん、いっつも過保護なんだからー」
「心配してくれてるんだよ。あの人、いい人だもん」
 余計な心配かけないようにしなくちゃな……と思いながら、他のみんなとはテレビ局の前で別れる事にする。
 メンバーの一人が、黒塗りのいかにも立派な自家用車に乗り込んで帰っていく様子を見守っていると、とんとんっ、とリーダーに肩を叩かれた。
「他の三人は車での帰宅だから大丈夫だろうが。主は平気か?歩きだろう」
 予備のヘルメットを持って来ようか、と言う表情を浮かべているリーダー。
 キャラ作り……ではなく普段からこういう喋り方と言う変わり者な点はあるが、きちんとメンバーを心配してくれているしっかりした人だ。喋り方がちょっとアレだけど。
「平気!ほら、いつでも110番でおまわりさん呼べるようにしておくし。ちゃんと悲鳴もあげるから」
「……いざ、危険が迫った際咄嗟にそれができる者はそうそう、おらんのだが…………本当、気をつけろよ」
「うん。リーダーこそ、スピード違反とかスピード違反とかスピード違反に気を付けてね?」
「ふん。そんなもので捕まるような半端な速度など出さんわ」
 それはもっと駄目なのでは……?と疑問に思ったが、リーダーはそのまま、バイクに乗りこんで帰っていった。あぁ、一瞬で見えなくなる。どれくらいのスピードなんだろう、あれ……いつか本当にスピード違反で捕まって変なニュースにならないといいのだが。
 とまれ、帰路につく。徒歩帰宅だが、途中で電車に乗るのだし平気だ。問題ない。夜遅い時間だけど、平気。怖くない。
 だって、私は……。

「きゃあああああああああああああっ!!!!!」

 ある程度歩いたところで、悲鳴が聞こえてきた。周囲を見回す。おそらく、悲鳴を聞いたのは私一人。
「……もう!」
 放っておくことなんてできない。悲鳴の方向へと駆け出す。
 あぁ、これを放っておくことができないから。私は、これと契約したのだ。


「誰か……誰かぁっ!!」
「うるせぇ!暴れるんじゃねぇ!」
 1人の女性が襲われている。全身包帯まみれの注射器を持った男に。それが「注射男」等と呼ばれる都市伝説と契約した存在であると、襲われている女性はわからないだろう。都市伝説であろうとそうじゃなかろうと、これは変質者であるし犯罪者だ。女性を注射器の中の薬品で昏倒させた後、股間の注射器を刺そうとしているからなおさらだ。
 注射を刺そうにも、女性は暴れる。それでも馬乗りになって押さえつけ、注射しようとした。
 その時!
「そこまでよ!!!」
 凛とした声が響き渡り、「注射男」は、襲われていた女性は、思わずそちらの方向を見た。
 そこには、人影一つ。月光をバックに、びしりとポーズを決めていた。
「我が名は魔法少女お狐仮面!罪なき女性を襲う変質者め!私が相手だ!!」
 凛々しく叫ぶそれは、少女のようだった。少女のはずだ。体格的にも声からしても。
 しかし。
 問題はその纏う魔法少女めいた衣装だった。
「……変態だーーーーーーーーーーっ!!!???」
 思わず叫んだ「注射男」は悪くないだろう。
 明らかにパンチラしそうなギリギリ丈のマイクロミニスカート。ふわふわお狐毛皮のニーブーツ。胸元・へそ・二の腕完全露出。必要最低限だけを覆った狐の毛皮。そもそも、股間辺りだけはマイクロミニスカートで半端に布で覆っているせいで余計に変態っぽい。狐耳と尻尾とか狐手グローブとか、狐仮面が気にならない変態ファッション。否、痴女ファッションだ。
「だまれ!変態はそちら!!いざ、勝負っ!!!!!」
 恥ずかしさを押し隠しながら、魔法少女お狐仮面……「おたねさん」の契約者たるアイドル少女は、「注射男」に殴りかかった。
 「おたねさん」。悪人だけをいじめる正義の狐の妖怪。少なくとも彼女はそう認識していたから。
 故に、彼女はアイドルを続けながらも正義の魔法少女として、日々、羞恥心に抗いながら戦うのだった


406 :年明け単発祭り:これが私のお狐さんだ都市伝説補足 [sage]:2022/01/07(金) 13:41:58.82 ID:9eOYmDK70
■おたねさん
鳥取県境港市に伝わる。
女に化けるのが得意な狐で、善人は欺かず、悪人だけをいじめるという。
盗人を探し出したり、災いを知らせたりなどもしたという。
(佐藤徳堯『山陰の民話 第一集』)

■今回の単発の契約者の場合
契約によって変身能力会得。
魔法少女の如き姿(本人談/ちょっと恥ずかしい)になり、抜群の身体能力によって相手を叩き伏せる他、狐らしく様々な姿に化けることができる。
また、伝承通り盗人を探知したり、災いを感じ取ることもできる。
407 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/01/10(月) 00:51:48.40 ID:38RG+nNto
改めて単発の人乙です

「チームワークの勝利だ!」   トランペット小僧は契約者ともトランペットでコミュニケーション取ってるんですかね
「腕のいいマッサージ師」   マッサージ師のゲテモノ食い……いやそれで誰かが幸せになれるならそれでいいのか……? ブラック企業と戦う決意を固めたお姉さんの明日はどっちだ
「永遠の子供」   ピーターパンの契約者じゃなくてティンカーベルの契約者なのか……もしかするとティンカーベルを自称して人間の子供を破滅されるタイプの妖精かもしれんな
「真夜中の決闘と言う悪夢」   久々に兄貴っぽいの見た。多分6年くらいかな? 「ポポバワ」なんて初めて知りましたがtwitterで一時期話題だったようですね(一体どの界隈に……いや考えない方がいいだろう)お下品でした♡
「デリカシーは投げ捨てて」   性癖歪む系その@ カマキリ男爵もいい性格してましたが「舐めたら治る」に全部もっていかれた。良かったです♡
「バーニングガール」   「人体発火現象」の契約者がこれからどうなるのか気になる良作品でした。闇堕ちするならそれも良し。個人的には「舐めたら治る」の被害者になるのが良し
「夜に駆ける」   契約者ではなく登場人物全員が都市伝説というところがポイントですね。これで契約者をゲットしたらどうなってしまうんだ……個人的に「ミサイルにまたがる女子高生」のスピンオフが見たい。戦ってほしい(何と?)そして見られてほしい(何を?)
「道踏み外して外道歩み」   シリアスいいですよね。でもこれ最初読んだとき、一個上に登場した「光速ばばあ」ぶつけたらどうなるんだ? と考えてしまった
「襲われる条件を考えるとつまり」   読み返すと黒服が良い味だしてるが「お風呂坊主」の契約者との距離感がほどよいですね。まさかここからあんなことになるとはこの時点では思ってなかったよ
「めぇ!めぇ!めぇ!!」   「バロメッツ」の契約者は絶対線細い系マイペース青年に違いない。連載になったら「舐めたら治る」と仲良くなるやつだと思う。組織内売店にしばらく羊肉が並ぶ光景まではっきりイメージできました
「単発から連載へってよくあるけど連載になるほど話は浮かんでいない」   性癖歪む系そのA まさかの「お風呂坊主」契約者&黒服コンビの再登場。絵面があまりにも酷すぎるいいぞもっとやれ!!(性癖歪んでほしい♡)
「無限の夢幻」   「無限廊下」と契約した先生はいい先生なんでしょうけど、最後に登場した「舐めたら治る」に全部もっていかれた(超えてはいけない一線超えてほしい♡)
「夢を抱き飛ぶ」   相手はもしや「臓器の記憶」の契約者なのでは? と思いましたが真相は闇の中。契約者が死んだらどうなるのか問題への1つの回答とも読めるんですが、個人的に次誰かと契約したら契約者の意識は完全に戻らなくなると思う
「治療行為への覚悟完了」   性癖歪む系そのB まさか被害者の会が結成するとは思ってなかった……読めば読むほど組織は女性向けの治癒契約者を別に用意した方がいいのでは? と思いました(それはそれとして変な癖に目覚めてほしい♡)
「満足するために」   「デスブログ」はこうブラックなユーモアな感じの短編でしたがここから世にも奇妙な物語みたいな展開になりそう。読みたいようで怖い。けど続きが読みたい
「これが私のお狐さんだ」   まさかのFOXGIRLS第二弾。まさか土着の妖怪と契約した結果魔法少女っぽい姿になるとは……ふと疑問に思ったのですが普段のアイドル衣装とどっちがきわどいのだろう

まさかVIPから生まれた「都戦都契」が10年以上続くとは思ってなかったのですが、シェアワールドなんだからこのコンセプトを外部で利用する人が現れるんじゃないかとひそかに期待してたのですが……そんなことはなかったな!(誰か知ってたら教えてね♡)
あと最近知ったけどこのスレR-18っぽいところに立ってるんですね……エロ
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