過去ログ - 「大好きですよ、先輩」
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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 18:13:40.59 ID:aOE4kkNGo
「彼女」と出会ったのは、いつもと変わらぬ放課後。 
部活終わりで重い足取りの僕を

「先輩」

と呼ぶ声がしたのだ。
だが、僕を先輩と呼ぶ人間など部活にもいないものだから、僕はそのまま歩を進めた。

「……予想通りの反応です」

声がさっきより近くで聞こえた。
どうやら、声の主は僕を追って来ているらしい。
このまま振りきるのもなんなのでそこで僕は振り返る。

どんっ、と胸に小さな衝撃。

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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 18:24:16.75 ID:aOE4kkNGo
「やっと止まってくれましたね、先輩……」

ぶつかったことなど無かったかのように、目の前の女生徒は言葉を続ける。
口元まで届きそうなほどに伸びたボサボサの髪。
かろうじて見える口元は、少し不気味に曲がっている。
以下略



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 18:52:57.02 ID:aOE4kkNGo
しかし目の前の女生徒の事など僕は全く知らない。
先輩、と呼ぶからには一年なのだろうが……そのぐらいの情報ではさっぱりだ。

「……初対面、です」

以下略



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 19:27:31.55 ID:aOE4kkNGo
家に帰ってから、僕はしばらくその子について考えていた。
いきなり現れ、いきなり告白して……そしていきなり消えた女の子。
手がかりは一つ……一年三組。
今まで一度も見たことのないような先輩が、急に一年の教室に来たら。
何か勘ぐられないだろうか?それとも、完全に無視だろうか?
以下略



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 20:15:20.29 ID:aOE4kkNGo
次の日、昼休み。
僕は教室で相変わらず悶々としていた。
昨日の女の子の事はもちろん気になってはいたのだが、やはり一年の教室まで行こうという気になれず。
気にし過ぎなのは、分かっていた。
誰も自分の事など気にしていないのだから。
以下略



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 20:43:42.67 ID:aOE4kkNGo
幸い、教室にほとんど人影は無く、いたとしても他人の事など気にしていないタイプの人ばかり。
というか、僕のことなど気にしないと言うのが正しいのだろうか。

「……先輩、どうしたんですか?」

以下略



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 21:32:18.24 ID:aOE4kkNGo
昼休みも半分過ぎた時間になると、図書室の中に残っている人影も少なく、形だけの図書委員の姿すらもない。
まぁ、だからここに来たのだが。

「……静かですね」

以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/12/06(金) 21:32:59.88 ID:aOE4kkNGo
つづく


9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/12/06(金) 21:53:49.10 ID:BpD1zKnHo
乙です
期待大


10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/12/07(土) 00:48:37.93 ID:COD12KL7o
いろはす〜?


11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/07(土) 01:05:14.38 ID:MQWg0cbmo
一度行動を共にすると、不思議な事にやけに気になってしまうもので。
あの子と別れた後も、頭の片隅にずっと引っかかっていた。
気付けば放課後になっていたようで、僕は急いで部活へと向かう。
急ぐ理由もないのに、急ぐ。

以下略



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/07(土) 01:11:21.40 ID:MQWg0cbmo
血の味を嘔吐で全部吐き出すと、僕は第二体育館の日陰に座り込んだ。
第一体育館じゃないのは、もちろん見つからないようにするためだ。
別に僕を見つけようとする人なんていないのにもかかわらず、だけれど。

「……先輩、やっぱりここにいました」
以下略



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/07(土) 01:17:29.39 ID:MQWg0cbmo
「……先輩」

何も言わずにしばらく時間が流れて、その子が口を開く。
1時間経ったような気もするし、5分程度だったような気もする。
熱かった体もすっかり冷めて、喉はいつも通りに戻っているのに。
以下略



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/07(土) 01:25:33.31 ID:MQWg0cbmo
「……」

何も聞いてこなかった僕への、失望なのか。
彼女はそれから口を開くことは無く。
目線の先の分からぬ彼女の方を、僕は見れずにいた。
以下略



15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/07(土) 01:28:39.42 ID:MQWg0cbmo
いつもの帰路、足音は二つ。
普通なら囃し立てられでもするのかもしれないが、この距離感では帰る方向が同じの二人としか見えないだろう。
別にそう見えて欲しいわけではないのだけれど。

「……」
以下略



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/07(土) 01:30:07.15 ID:MQWg0cbmo
その日の夜は、僕なりに少し荒れた。
壁を殴ることはしない、物を壊すこともしない。
自分を壊すことすら出来ない僕に、壊せるものなんてありやしない。
だから僕は自己嫌悪する。
僕なんて、嫌いだ。


17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/08(日) 20:05:35.43 ID:qKtWFbOBo
次の日、僕は部活へ行かなかった。
サボった事がないわけじゃないのだけれど、その日はいつもより罪悪感が酷かった。
自分なんていなくても、何か変わるわけではないのに。

「……先輩?」
以下略



18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/08(日) 20:28:32.51 ID:qKtWFbOBo
こんな時間に帰っては、親から何か聞かれるかもしれない。
心配してくれてるのは分かってるし、親として当然なのだろうけど。
今の気持ちで、素直に受け止めることは出来なそう。

「……先輩」
以下略



19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/08(日) 20:53:18.82 ID:qKtWFbOBo
謝罪の言葉と共に、彼女を離す僕。
なんだか凄く悪いことをしてしまったような気がして、気が動転して何を言ったかはよく分からない。
そんな僕に彼女はくすりと笑って

「……むしろ嬉しかったです、から」
以下略



20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/08(日) 23:16:58.74 ID:qKtWFbOBo
彼女はゆっくりと、じんわりと僕の中へと入ってきている。
今こうして風呂の中で天井を見上げている間にも、ふと視界の隅に彼女が浮かぶ。
告白を受けた時は、こんなことになるなんて想像もしていなかった。
頬が熱いのはきっと、湯気のせいだけではない。
結局、その日は寝るまで熱が取れずじまいだった。
以下略



21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/12/08(日) 23:25:31.71 ID:qKtWFbOBo
つづく


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