1: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/04/01(水) 10:31:33.38 ID:w+Y5NOKn0
おはようございます。
けいおん!から憂梓の短編を投下します。
この作品も、vipやpixivに投稿した作品の改訂版となっております。
地の文多め、ちょっと暗めではございますが、バッドエンドではございませんので、良ければお楽しみください。
SSWiki : ss.vip2ch.com
2: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/04/01(水) 10:34:27.89 ID:w+Y5NOKn0
「……あれ……憂は……?」
5月の終わりの、静かな青い夜だった。
浅い眠りから覚めた私は、隣にあった温もりがどこにもなくて、思わず身震いする。
抱きしめられながら眠りについたはずなのに、今、ベッドの上にあるのはちっぽけな私だけ。
3: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/04/01(水) 10:36:49.81 ID:w+Y5NOKn0
憂の唯先輩への愛情は、家族愛に属するものでも、留まるものでもなかった。
そして何より皮肉なのは、その想いに誰より嫌悪していたのはその憂自身だったのだ。
憂はその募る想いを吐き出すことも出来ず、自らへの嫌悪を開き直ることも出来ずに。
やってきた唯先輩の卒業と巣立ちを、あっけなく迎えてしまった。
4: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/04/01(水) 10:40:30.57 ID:w+Y5NOKn0
私は一緒に居られるだけでいいから。
いつか私がそう言った時、憂は寂しそうな、嬉しそうな、それでいて悲しそうな顔で曖昧に微笑んだ。
それ以来、そんな想いも言葉にはしなくなったけれど。
悲しませるくらいなら、私はただ、愛する他にないんだ。
5: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/04/01(水) 10:43:03.07 ID:w+Y5NOKn0
それから部屋に戻って、再びベッドに潜り込んだ私たちは、抱きしめ合って、静寂に耳をすませていた。
午前2時20分。夜の帳が下りて、小さな窓から溢れる青い月明かりだけが、私たちへ静かに降り注いでいる。
今、此処には、私と憂のふたりだけ。聞こえるのは静けさの奥に響き合う、命がふたつだけ。
眠ってしまうには惜しいくらい、静かで緩やかで、それでいて、
ほんの少し、悲しみや寂しさがさざ波を立てているような時間。
6: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/04/01(水) 10:46:40.14 ID:w+Y5NOKn0
「だけど、私……もう、梓ちゃんと、ふたりでいるの……手放せない……手放したくないよぉ……」
「梓ちゃんはいつも優しくて……可愛くて……温かくて……
もう隠せないよ……! 大好きってもっとたくさん伝えたいよ……!」
7: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/04/01(水) 10:49:16.55 ID:w+Y5NOKn0
私は、憂を愛してる。だけどそれは、ふたりぼっちでいる
逃げ場所を作ることなんかじゃ、決して無いんだ。無かったんだ。
もっともっと、憂を、憂が抱えるその想いも、丸ごと愛していたい。
8: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/04/01(水) 10:51:25.23 ID:w+Y5NOKn0
「憂……! ずっと一緒にいてよぉっ……! 私、憂のこと、本当に本当に愛してるから……!
だから! 死ぬまで、私と一緒に生きていってほしいの……!」
やっと、言えた。泣きながら、だけど。
9: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/04/01(水) 10:54:24.97 ID:w+Y5NOKn0
「ねぇ、憂。唯先輩には、二人で話そうね。私そばにいるから、ふたりで、ちゃんと」
「うん……そうする。ありがとう、梓ちゃん。私うまく……伝えられるかな……」
憂の表情が曇る。無理もない、だけど平気だよ。私がいる。
10: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/04/01(水) 10:58:17.73 ID:w+Y5NOKn0
以上でございます
ういあずはとっても好きなカップリングでございまして、妄想ひろがりんぐ!ってなかんじで書きました
今現在、このSS設定を下地にういあず夏のリゾート編を書いておりますので、
書き上がった暁には、そちらもよろしくお願いします
11:名無しNIPPER[sage]
2015/04/01(水) 16:10:55.74 ID:SoWry/m9O
すごく良かった
乙
12:名無しNIPPER[sage]
2015/04/01(水) 17:01:10.24 ID:21vo7/vro
綯い交ぜとか読めん
13:名無しNIPPER[sage]
2015/04/02(木) 00:12:57.87 ID:zIDJC+hDo
くっさ!うんこやんけ!
14: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/04/04(土) 05:59:06.12 ID:JO/9j/TF0
おはようございます。お久しぶりです。
今日はこれから、先に投下しました「ミッドナイト・エスケープ」の前日譚である短編を投下したいと思います。
以下注意書き↓
・「ミッドナイト・エスケープ」の前日譚ですが梓は出てきません。
15: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/04/04(土) 06:02:03.07 ID:JO/9j/TF0
「それから」
私は、お姉ちゃんを愛していました。
かけがえの無い家族として、たった一人の姉として−−そして、一人の女性として。
16: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/04/04(土) 06:05:49.77 ID:JO/9j/TF0
それからの日々は、痛みと共にありました。
同じ“女”で、血の繋がった“姉”。絶対に赦されない−−そんな事はすぐに解りました。
来る日も来る日も、私は姉の何気ない仕草や表情に
ときめく気持ちを必死に堪えて、隠して過ごしました。
17: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/04/04(土) 06:10:24.60 ID:JO/9j/TF0
梓ちゃんと出会ったのは、そんな春の日のことでした。
お姉ちゃんがいる軽音部が、新入生歓迎ライブで講堂のステージに
立っている時−−私の隣で、背伸びをして必死にステージを見ていた可愛い女の子。
18: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/04/04(土) 06:14:37.36 ID:JO/9j/TF0
そしてお姉ちゃんがこの家を出て大学の寮へ出発する前の日の夜。
お姉ちゃんは私の部屋へ「一緒に寝てもいい?」とやってきました。
私はどくん、と跳ねた心と最後の夜だという寂しさを抑えて、
「いいよ、入って?」というので精一杯でした。
19: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/04/04(土) 06:21:01.72 ID:JO/9j/TF0
しばらくして流した涙が赤い痕になって残り始めた頃−−
私の胸に抱きしめられていたお姉ちゃんは、もう涙声を隠さないで意を決したように、言いました。
「ねぇ、憂……キスしたことある?」
20: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/04/04(土) 06:23:36.69 ID:JO/9j/TF0
それからしばらくして、私が浅い眠りから目覚めると、そこにお姉ちゃんはいませんでした。
なんとなく、そんな気がしていたのは、やっぱり私たちが
どうしようもなく「似た者姉妹」だからなのでしょうか。
ベッドから起き上がって、立ち上がると、姿見に自分の顔が映ります。
21: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/04/04(土) 06:26:25.41 ID:JO/9j/TF0
以上でございます。
平沢姉妹は、互いを想い合う優しい姉妹だからこそ、愛に走れなかった、
そんな過去があるのかもしれないと思い、この話を書きました。
如何だったでしょうか。
次回は「ういあず、夏のリゾート編!」を予定しております。
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