過去ログ - 【ガルパン】かくして、私は逸見エリカの肩の上に収まった
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1:名無しNIPPER[saga]
2016/11/21(月) 23:17:43.92 ID:20H76wQV0
・地の文マシマシ、というかカチューシャ視点で進行
・劇場版のカチューシャと逸見エリカの関係から
SS初めてなので不慣れですが、よろしくお願いします。

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2:名無しNIPPER[saga]
2016/11/21(月) 23:19:41.60 ID:20H76wQV0
無情にもIS-2から白旗が上がる音が聞こえて、2両のパーシングは轟々と私達から離れていった。
全速力で走る戦車の駆動音がこんなにも空気を震わせているのに、何故かいつも撃破の音だけは耳にしっかりと突き刺さる。

できれば、もう一両ぐらいはここで倒してしまいたかった。
後方から猛烈な勢いで大洗車両を撃破して進むセンチュリオン、乗り込むのは島田流忍者戦法を使いこなす大学選抜大隊長。
以下略



3:名無しNIPPER[saga]
2016/11/21(月) 23:21:17.32 ID:20H76wQV0
自分でもそんな気分になるのは珍しいと思っている。
試合では常に最善を尽くしていると確信しているし、私の指揮には自負と責任を持っていた。
今までは。

でも何故か、今日は、今日のこの試合だけはどうも心の奥から打ち寄せる後悔の波をとどめることができない。
以下略



4:名無しNIPPER[saga]
2016/11/21(月) 23:23:07.49 ID:20H76wQV0
「……カチューシャ隊長、わだすは隊長のただかいかた、いがったと思いますよ」

私のIS-2の装填手が、柄にもなく芯のあることを不意に言ってきた。

「ちょっと何よ! 私を評価する気!?」
以下略



5:名無しNIPPER[saga]
2016/11/21(月) 23:24:59.05 ID:20H76wQV0
「…………」

「…………」

全員揃ってしばしの沈黙。
以下略



6:名無しNIPPER[saga]
2016/11/21(月) 23:28:30.95 ID:20H76wQV0
今できることはミホーシャたちの健闘を祈ることだけ。

勝利こそが大洗を救う道。
私の戦車道がその轍を少しでも踏み固められたはずだと今は願いたい。

以下略



7:名無しNIPPER[saga]
2016/11/21(月) 23:30:03.24 ID:20H76wQV0
黒森峰のティーガーUからひらりと飛び降りたところの黒森峰の副隊長と目が合った。

その奥で、大洗のポルシェティーガーの4人組は、モーターが火を噴いてしまった愛機のメンテナンスをしている。

「あら、エリカじゃない」
以下略



8:名無しNIPPER[saga]
2016/11/21(月) 23:32:20.69 ID:20H76wQV0
逸見エリカ、黒森峰の副隊長。
西住まほの忠実な副官にして彼女もまた西住流の信奉者。
言ってしまえば忠犬。……それは言い過ぎかしら。

「あなた、さっき『スリップストリーム』が何か分かってなかったでしょ」
以下略



9:名無しNIPPER[saga]
2016/11/21(月) 23:34:03.20 ID:20H76wQV0
「いまは!関係ないでしょう!! まほ隊長と、それから……みほに勝利が懸かってるんですから! 応援しましょう!」

エリカは頬を赤く染めている。なんだ、こんな可愛い顔もできたんじゃない。

「まあ、エリカの言うとおりね。応援に集中すべきだわ」
以下略



10:名無しNIPPER[saga]
2016/11/21(月) 23:37:24.09 ID:20H76wQV0
フラッグ戦にしろ、殲滅戦にしろ、戦車道の試合で撃破された後というのは当然暇になる。
高校生の公式試合は普通フラッグ戦で行うから、隊長である私がこうして撃破されて暇になるなんてのは随分と久しぶりの感覚だった。
それだけに、最後まで戦いきれなかったという感情がどうしても付きまとう。

「できれば、最後まで戦っていたかったわ」
以下略



11:名無しNIPPER[saga]
2016/11/21(月) 23:41:26.72 ID:20H76wQV0
「さっき高地を登るときだって、まるでおあずけを食らった飼い犬みたいだったわ」

「なっ……! ……それなら、あの時のあなたなんか『203高地ね!』だなんて、ソ連だのロシアだのがそれ言っちゃ死亡フラグなんですよ。ほら案の定こうなったじゃないですか」

「あ、案の定とは何よ! プラウダは最善を尽くしたわ!」
以下略



12:名無しNIPPER[saga]
2016/11/21(月) 23:44:27.51 ID:20H76wQV0
しばらく私達の間に、昼過ぎの緩んだ風が流れる。
次に口を開いたのも私だった。

「……ねえ、『信じるのと崇拝するのは違う』って、高地の麓でまほが言ったこと覚えてる?」

以下略



13:名無しNIPPER[saga]
2016/11/21(月) 23:47:55.27 ID:20H76wQV0
「プラウダは、みんな私を庇って倒された。優秀なチームメイトがみんな私のT-34を逃がすためにあそこでやられた。

 クラーラは状況の判断に優れてて作戦理解度も高い。ニーナやアリーナ達はまだ一年生なのに、KV-2という取り回しの難しい戦車を上手いこと使ってるわ。

 それに……ノンナ。
以下略



14:名無しNIPPER[saga]
2016/11/21(月) 23:51:26.26 ID:20H76wQV0
ここでエリカはようやく私の方を向いた。

厳密に言えば、私の方へと「視線を下げた」。

「なにか、気になることでも、あるんですか」
以下略



15:名無しNIPPER[saga]
2016/11/21(月) 23:54:19.29 ID:20H76wQV0
「え?」 彼女はいまいち質問の意味を測りかねているようだった。

「私の周りにはたくさんの優秀な人がいた。その人達はみんなあの雨の中で去っていった。
 
 それは全て私の車両を守るため。
以下略



16:名無しNIPPER[saga]
2016/11/21(月) 23:59:34.92 ID:20H76wQV0
「ノンナは私のことを『この戦いに必要な人』と言った。でもそれってノンナが私のことを崇拝していたからじゃないかって。

 私が、プラウダに強権をしく小さな暴君だったからじゃないかって。

 そう考えたらどうしても、震えが止まらなくなっちゃった。
以下略



17:名無しNIPPER[saga]
2016/11/22(火) 00:03:35.47 ID:HqDGEy5S0
エリカは黙って聞いてくれていた。そして事も無げに口を開いた。

「プラウダの『隊長』はあなたですから。私が同じ状況であってもそうします」

エリカは涼しげな顔をして言う。
以下略



18:名無しNIPPER[saga]
2016/11/22(火) 00:06:20.23 ID:HqDGEy5S0



「そんな意味じゃない!」

以下略



19:名無しNIPPER[saga]
2016/11/22(火) 00:08:12.87 ID:HqDGEy5S0
私としては何気なく返した「忠実」という言葉だったが、これがどうもエリカの琴線に触れたらしいことはわかった。

「ああもう! 面倒だから敬語なんてやめるわ! どいつもこいつも忠犬だ駄犬だと!」

「私はそんなこと言ってないけど……」
以下略



20:名無しNIPPER[saga]
2016/11/22(火) 00:12:47.59 ID:HqDGEy5S0
「違うのよ! 隊長が私の飼い主だから付き従ってるんじゃない。

 隊長が隊長として筋を通してて、私の戦車道を前に進めてくれる人だから私は隊長についていこうと決めたのよ。

 ノンナさんもクラーラさんも、他のプラウダの人だって、みんなカチューシャの戦車道が何かを見せてくれることを期待してる。
以下略



21:名無しNIPPER[saga]
2016/11/22(火) 00:15:03.40 ID:HqDGEy5S0
「あなたは信頼されてるのよ。この試合を勝利に導く存在として信頼されてる。

 今にその結果をまほ隊長とみほが出してくれるわ。

 だから静かに状況を見守ってなさい」
以下略



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