過去ログ - 藤原肇「実家での夜、隣の部屋には彼」
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1: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2017/04/20(木) 23:49:35.70 ID:H6PFm5MZ0

何かが起きることもなく。



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2: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2017/04/20(木) 23:50:18.75 ID:H6PFm5MZ0

モバマスSSです。
一応地の文形式。




3: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2017/04/20(木) 23:54:28.59 ID:H6PFm5MZ0

「一人寝るのは寝るのじゃないよ 枕担いで横に立つ」、という言葉を思い出しました。
落語のとある演目にある、一人身寂しく夜を過ごす男についての都々逸だったと記憶しています。
今の私は、まさに枕を担いでいるような状態、とでも言った方が良いのでしょうか。
しかし、部屋には私一人だけど、一人ではありません。
以下略



4: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2017/04/20(木) 23:56:13.32 ID:H6PFm5MZ0


私が眠っている部屋、その隣の部屋にPさんがいます。

2階にある私の部屋は、元々はふすまで仕切られた2つの部屋でした。
以下略



5: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2017/04/20(木) 23:59:19.80 ID:H6PFm5MZ0

・・・

大きなお仕事を終えた私はまとまったお休みをいただくことになり、実家に戻ることにしました。
するとPさんも、「近況報告を親御さんとおじいさんにしたいから」という理由で付いてくることに。
以下略



6: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2017/04/21(金) 00:01:13.24 ID:jwvtHNfB0

最寄りの駅に降り立つと、東京から岡山までの新幹線、そこから約3、40分の赤穂線という長い旅程の疲れが一気に吹き飛びました。
駅から実家まではそれなりに距離があったのですが、彼と会話をしながら――以前彼がやってきたときに巡った場所の話、小さい頃私が良く遊んだ公園の話などなど――歩いていると、あっという間に実家へ到着してしまいました。
会話の途中、あまりの熱の入りように、彼から何度か諭されることに。

以下略



7: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2017/04/21(金) 00:04:04.87 ID:jwvtHNfB0

実家へ到着し家族としばらく会話をした後、私は作務衣を着てから工房へと向かいました。
器づくりに行き詰っていた時に、何かきっかけをと思って門を叩いたアイドルの道です。
アイドルになって気付いたこと、初めて知ることが出来たことを器に表現したい、そう思っておじいちゃんに申し出ました。

以下略



8: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2017/04/21(金) 00:05:36.00 ID:jwvtHNfB0

そうして器が完成しました。

完成した私の器を、おじいちゃんが眉間に皺を寄せ、まじまじと見ます。
「この辺に桟切を出すのだろう。あとは……」
以下略



9: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2017/04/21(金) 00:06:49.78 ID:jwvtHNfB0

Pさんは携帯電話の画面を指差し、慌てて外に出ていきました。
おそらく仕事関係の電話がかかってきたのでしょう。
彼が出てしばらくすると、おじいちゃんはふうと息を吐きました。

以下略



10: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2017/04/21(金) 00:08:25.36 ID:jwvtHNfB0

・・・

夕食は、私のアイドルとしての近況報告も兼ねながら、というものになりました。
しかし、次第に食も進み、お酒も進み――むしろこっちが原因だけど――お父さんとおじいちゃん、そしてPさんによる、私の自慢大会が始まりました。
以下略



11: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2017/04/21(金) 00:10:36.35 ID:jwvtHNfB0

「うちの肇は世界一の娘だぞ。君、わかっとるな?」
「勿論ですよ! 肇を必ずトップアイドルにしてみせます!」

お父さんの問いにPさんは即答します。最初は「肇さん」と少し他人行儀に呼んでいた彼もお酒が入るにつれ、普段通り「肇」と私の名前を呼んでいます。
以下略



12: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2017/04/21(金) 00:12:26.40 ID:jwvtHNfB0

しばらくすると、酔ったお父さんは畳の上で仰向けになり、おじいちゃんとPさんの二人は縁側に場所を移して飲み直しています。
先程と打って変わって、静かに会話をしています。
おじいちゃんの言葉にPさんが耳を傾け、時々相槌を打ちながらお酌をしています。

以下略



13: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2017/04/21(金) 00:14:37.45 ID:jwvtHNfB0

そうして私、おじいちゃん、Pさんという順で座る形に。
縁側の戸を開けているので、外からはそよそよと涼しい風が流れてきます。
外は雲が少なく、星がよく出ています。
東京ではほとんど見られない、煌めきが散りばめられた空です。
以下略



14: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2017/04/21(金) 00:17:08.61 ID:jwvtHNfB0

「そうか」と、おじいちゃんは何度も頷きました。
心なしか優しい目つきでした。
「良い友と、良きパートナーに出会ったな」

以下略



15: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2017/04/21(金) 00:18:59.62 ID:jwvtHNfB0

「実を言うと、最初肇がアイドルになりたいと言ったとき、私は反対だった」
おじいちゃんはそう言いました。
私は驚きました。なぜなら初めて聞いたことだったから。
私がアイドルになりたいと言ったとき、おじいちゃんは何も言わずにただ頷いていただけだったから。
以下略



16: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2017/04/21(金) 00:21:06.44 ID:jwvtHNfB0

「アイドルになって芸能界に行くということは、普通の若者が経験するはずだった青春を犠牲にする、ということでもあったからな」

地元の高校に毎日通い、友達と遊び、勉学に励み、そして恋愛の一つや二つでも経験しただろう。
陶芸という特殊な道に進みたいと思っている肇だからこそ、本格的にその道に進む前は、普通の女性らしい青春を謳歌してほしかった、と。
以下略



17: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2017/04/21(金) 00:22:52.76 ID:jwvtHNfB0

「だからな、君、ちゃんと責任を取りなさい」
……ん?

「責任、ですか」
以下略



18: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2017/04/21(金) 00:24:25.72 ID:jwvtHNfB0

さあ大変と言わんばかりに、Pさんは今までに見たことがないほど口ごもっています。

「そうだろう。肇をアイドルにしたいと君が家にやって来たとき、君は『全責任をもって一生をかけてでもプロデュースする』と言ったじゃないか」
「た、確かに言いましたけど、ですが…」
以下略



19: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2017/04/21(金) 00:25:20.88 ID:jwvtHNfB0

嫌なわけがありません。むしろ万々歳です。
それに彼の出かかった言葉、本心でしょうか。本心だったら飛び上がってしまいそうな言葉です。
良いぞおじいちゃんもっと言って、などと心の中で煽っていたけど、いざ私に求められると何も言えない。
顔を赤くしたまま、私は何も言わずにただ伏し目がちになるだけです。
以下略



20: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2017/04/21(金) 00:26:46.25 ID:jwvtHNfB0

おじいちゃんは「寝る」という一言の後、ご機嫌な足取りで寝室へと消えていきました。

それから私とPさんの会話はちょっとぎこちなくなり、次第に会話が途切れてしまいました。
居間ではテレビの音と、お父さんのいびきだけが響いています。居心地の良い空間に、居心地の悪い沈黙が広がります。
以下略



21: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2017/04/21(金) 00:28:02.98 ID:jwvtHNfB0

「え? ここ、ですか? でも、ここって……」
「そうなのよ。肇の部屋なんだけど、もとは2つの部屋だったからこんな風に分けられるのよ」

上の方でガタガタと音がしていると思ったら、こういうことでした。
以下略



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