都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達…… Part13

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80 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2017/07/06(木) 20:33:02.79 ID:w7DfirXHo
 

シャドーマンの人、お疲れ様です!
恥ずかしながら「ヴォルカニック」シリーズをさっきググって知ったのですが、良いものですね
個人的にヴォルカニック・バレットさんがエロかっこ良かったです

その昔は、サイコショッカーとかダークネクロフィアとか
ああいうデザインが好きだったのですがいつの間にか
ファイレクシアの巨大戦車とか召喚獣メガラニカとか
ああいうデザインが好きになっていました、あぶない

 
81 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2017/07/06(木) 22:10:18.97 ID:w7DfirXHo
 



 この話は【11月】の【「バビロンの大淫婦」消滅後】の時間軸です
 この話は前スレ 998-999(次世代ーズ)、本スレ >>68(鳥居の人)の続きになります



 
82 :次世代ーズ 「気づいた」 1/5 ◆John//PW6. [sage]:2017/07/06(木) 22:11:59.00 ID:w7DfirXHo
 

「お兄ちゃまたち気をつけて」


 突如背後に出現した「ピエロ」側の二人組に向けて
 正確にはこちらと彼ら二人を隔てるように生成された氷壁に向けて
 手鏡を構えながら、彼女、新宮ひかりは桐生院の兄弟に警戒を促した


「タートルネックをきてる人は、あたしと同じで現実を上書きする能力だよ
 スーツのふとっちょの方はちょっとむずかしいの
 知ろうとしたり見ようとしたら発動するタイプみたいなんだけど」

「知ろうとしたら発動するタイプ?」

「そうなの轟九お兄ちゃま」


 ひかりの説明は概ね正確だった
 廃工場にて初めて対峙した際、二人組について「ロンギヌスの槍」の能力で読み取っていた
 しかし同時に、彼らについて知り得たのはそこまでだった
 それ以上を読み取ろうとしたとき、「槍」の接続が“切断”された所為だ
 “切断”の原因は不明、恐らくスーツの方の能力であることは検討がつく
 それ故、彼女はそれ以上のリーディングを断念したのだ


「ひかりちゃん、何か他に手がかりは無いかな?
 あの二人組はひかりちゃんに何か言わなかった?」

「えっとね、真降お兄ちゃま
 さいしょにあったとき、あたしの能力がとても都合がわるいって言ってたの
 それから――ライダーのおじちゃまも、あたしの能力にカウンターを掛けるタイプって」

「ひかりちゃんの能力、カウンタータイプ、ということはつまり」

「認識されたら発動するタイプ、ってとこか?
 敵さんの視点で考えりゃ手の内が読まれるのは避けたいってわけか
 見知ったらカウンター……死んだり発狂する系、って言やあ『くねくね』か『夜刀神』の系統か」

「いえ、兄さん。先程から潮風の匂いが増している。海の怪異かもしれない」

「海か、なら『海難法師』かその類か?」


 周囲を油断なく警戒しつつ、真降と轟九の兄弟は思考を巡らせる
 だがそろそろ頃合いだ、二人組が何時仕掛けてきてもおかしくは無い


「真降、俺たちの周囲に氷柱を作ってくれ、それも頑丈な奴な」


 前方から目を離さず、轟九は弟にそれだけを告げる
 氷の壁越しに黒い影が上へ上へ昇っていくのが確認できた


「ああぁぁぁぁぁぁぁ」


 氷壁の頂上より姿を現したのはスーツの方だった
 先程の微笑みとは異質な、無数の皺が刻まれた笑顔だ
 裂けているのではないかと錯覚するほど口角が引き伸ばされている


「ひかひかりちゃん、んんいまそっちにいいいくからねぇぇぇ」


 だが氷壁の上から顔を出したのはスーツの方だけでは無かった
 彼と一緒によじ登ってきたのは、肉が焦げ、皮膚が焼け爛れた道化達だ
 なんということだ、先程の「火遊び」に巻き込まれた筈の「ピエロ」達ではないか
 彼らは焼死した筈では無かったというのか


「ひかりちゃんが俺をまってる、はやくはやく『はいれたはいれた』したいしたい」

「ウフ、ウフフ」「ニンゲン、イッパイ……」「オニク、オニク、うぇるだん、ばーべきゅー」



 
83 :次世代ーズ 「気づいた」 2/5 ◆John//PW6. [sage]:2017/07/06(木) 22:12:38.00 ID:w7DfirXHo
 

『どうにもウチのが見苦しくて悪いね』


何処からともなく響くその声は、あのタートルネックの青年のものだ


『さて、君たちも君たちで随分と厄介そうだ
 正直、高級の馳走を前に僕も如何手を付けようか迷っていたよ
 こんな嬉しい状況は滅多に無いからね。そう、だから、慎重に正攻法で行くことにした』


 当然のことだが

 何の前触れもなく

 彼は、新宮ひかりの真正面に出現した


「ふぁいやー!!!!」


 ひかりが「アルキメデスの鏡」を発動したのは彼の出現と同時だ
 噴出する爆炎が「アブラカダブラ」の契約者を飲み込み、後方の氷壁を一気に蒸発させる


 だが


 「カダブラ」は健在だ、左手を翳して炎を禦いでいるのが辛うじて視認できる
 炎の中に居る彼の顔が、悪意に歪んだ


「まずい!」


 真降が警告を発したとき、ひかりが片手で「槍」を握りしめていた


「――そに害なす者との空間を『虚無』に書き換えよ」


 爆炎の噴出音にかき消されるかのような小さな声で、ひかりは唱える
 その直後、爆炎を引き裂くように金色の矢が乱射された
 機関銃めいて撃ち込まれる幾多の矢は、正確にひかりと真降へ向けられていた

 だが全ての矢はひかりが創造した「虚無」へと飲み込まれていく

 金色の矢には見覚えがある、真降はそう思い起こした
 先刻から東区の上空を飛翔し、次々と「ピエロ」達を射抜いていった、あの矢だ


「なるほど、『矢』を“奪った”のか」


 低い、吐き捨てるような調子でひかりが呟く


「“奪った”とは聞こえが悪い、ただ“拝借”しただけさ」


 遂に爆炎の壁から「カダブラ」の青年が姿を現した

 その瞬間、「カダブラ」の横面が太い氷柱によって殴り飛ばされた


「させるかっ! 阿呆っっ!!」


 桐生院轟九の一撃だ
 弟が生成した氷柱をへし折り、それで殴り付けたのだ

 のだが

 「カダブラ」はその直後に“転移”したようだ
 ひかりと兄弟にやや距離を置く位置に再出現する


 
84 :次世代ーズ 「気づいた」 3/5 ◆John//PW6. [sage]:2017/07/06(木) 22:13:24.17 ID:w7DfirXHo
 

「『カダブラ』のぉぉぉぉぉぉ!! 俺の獲物にぃぃぃ手を出すなぁぁぁぁぁ!!!」


 声が割り込む
 「海からやってくるモノ」の契約者だ
 今や完全に消滅した氷の壁から民家の壁へと
 四つん這いの体で張り付き、不快害虫のように蠢いていた


「ひかりちゃんに『はいれた』するのは俺の仕事だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 更にはゾンビさながらの外見をした「ピエロ」達が
 緩慢な動作ではあるが徐々にひかりと兄弟へ向かっている
 先程の「アルキメデス」により下半身を完全に炭化させられた数名は
 地面を這いながらもこちらへ詰めてくる


「兄さん、ひかりちゃんを!」


 真降は瞬時に氷の剣を生成し「カダブラ」に対し一気に距離を詰める
 振るい上げた剣の間合いはタートネックの襲撃者を捉えた


「人を[ピーーー]したことはあるかい?」


 剣の筋を、しかし「カダブラ」は紙一重で回避する
 つい先程は轟九の膂力で顎を正確に殴り飛ばされた筈だ
 しかし回避の足捌きだけ見てもまるで効いている様子が無いのは何故だ


「[ピーーー]しの味を楽しんでみたくは無いか? 君のことだ、いまに 病 み つ き に な る 」


 「カダブラ」の足が、不意に鈍った
 突きを仕掛けるなら今だ、だがこれは――
 罠の匂いを察知し、真降は寸前で踏みとどまる


「惜しい」


 「カダブラ」の、最早隠すことのない悪意に満ちた声を聞いた
 だが、真降は彼の顔を見てはいなかった

 剣の切っ先は寸前で止められている
 そして、それは「カダブラ」にでは無く、真降と「カダブラ」の間に出現した女性に向けられていた

 スーツ姿のOLだ
 若い女性だ、様子から見て先程仕事が終わって、これから帰るといった体のOLだった
 先程まではこの場に居なかった、というより、そもそもこの場でひかりと落ち合ったとき、他の人の姿は無かった筈だ


「え?」


 呆気に取られた、正しくそのような表情で、彼女はそれだけを口にしていた
 彼女は何処からやって来たのか、何故この場に出現したのか


「君がすべきだったことは、寸止めじゃあ無い」


 それはいきなりだった
 OLの胸から、鋭い氷柱のような物が飛び出した


「[ピーーー]しを味わうことだ、OK?」

「え、へ?」


 状況が未だよく分かっていないスーツの女性は
 やがて、自分のシャツに鮮やかな赤が拡がっていくのに気づいたようだ

 
85 :次世代ーズ 「気づいた」 4/5 ◆John//PW6. [sage]:2017/07/06(木) 22:14:20.24 ID:w7DfirXHo
 

 「カダブラ」は満足そうに薄く嗤うと、まるでゴミを放り捨てるかのように腕を振るう
 真横から響く、堅い物が砕ける音、真降が眼だけを動かして確認する
 先程の女性だ、「カダブラ」に投げ捨てられ、民家のブロック塀に激突したのだ
 先程の破砕音はブロックが破壊された音だ、女性は地面に崩れ、激しく痙攣していた

 その瞬間、嗤う「カダブラ」の体が大きく、ブレた
 彼の立っていた箇所から、アスファルトを貫くように鋭い氷柱が生成されている
 だが「カダブラ」は寸前で回避したのか、大した怪我は無く、その真横に再出現していた


「おやおや、怒ったかな? 氷使い」


 相変わらぬ嘲りを顔面に貼り付かせ、彼は真降と対峙する
 真降は飽くまで平時と変わらぬ冷静な眼差しのままだ


「どうした『契約者』、早く僕を[ピーーー]しに来なよ
 ああ、安心しなって、『肉の楯』なら幾らでも代わりがあるんだから
 それとも、年増は好みでは無いかな? 確か、君は中央高校の子だったかい?
 ブレザーの子は良いものだね、どうせ[ピーーー]なら、君の見知った顔の方が嬉しいかな?」


 「カブラダ」は愉快そうに顔を歪めている
 彼の手にはいつの間にか、氷の剣が握られていた
 「アブラカダブラ」の能力により生成されたものだろうか

 真降は思案する
 ひかりちゃんが話したように彼の能力が事象改竄系だったとしても、だ
 やろうと思えば彼は直接対峙する間でも無く、僕らを[ピーーー]れた筈だ
 であれば、何故それをしない? しないのでは無く、出来ないのか?
 つまり彼の能力は万能では無い?

 真降は能力を発動した
 アスファルトを突き破るにように次々と氷柱を生成
 全て「カダブラ」狙いだ


 眼前の敵は哄笑を響かせながら回避行動を開始した


「真降お兄ちゃま! あの女の人は生きてるよ!」

「危ねぇひかりちゃん! 今は駄目だ!!」


 未だに痙攣を繰り返す女性に駆け寄ろうとしたひかりを、轟九はすんでの所で制止した

 真降が「カダブラ」に踏み込んだのと同時に、「ピエロ」が急に活性化した
 アクロバティックに轟九とひかりを襲い出した「ピエロ」共を
 轟九がほぼ独りで捌いていたのだ


「こんな閉所でさっきみたく『アルキメデス』をぶっ放すワケにもいかねえ――しなあっ!!」

「チョ、待ッ、オボァァァァァァァ……」

「ドウセ死ヌナラ、きれーナオ姉サンニ[ピーーー]サレタカッ、オゴァァァァァ……」

「ナンデコンナイケメン野郎にけつヲ叩カレナキャ、アゴォォォォォォォォ……」


 へし折った新たな氷柱で「ピエロ」共を次々と殴り飛ばしていく
 威勢の良かった「ピエロ」も彼の暴力を侮っていたようだ
 そのお陰で場の道化はほぼ蹴散らされていた


「真降! 油断すん――」


 不意に、先程から漂っていた潮風の匂いが、一際強まった

 轟九は言い掛け、突如大地を蹴る
 スーツの中年男が、ひかりの直ぐ傍に出現していたからだ

 逃がしはしない、「海から」の契約者の腹部に、轟九の蹴りがめり込む

 
86 :次世代ーズ 「気づいた」 4/5 ◆John//PW6. [sage]:2017/07/06(木) 22:15:02.67 ID:w7DfirXHo
 

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 奇声を上げた「海から」の契約者の体が面白い程に吹っ飛ぶ
 彼はアスファルトの上を転げ回りながら、何とか四つん這いになってこちらを向いた

 その顔面に、轟九は一切攻撃を加えなかった
 だが、まるでギャグ漫画のように顔の中心がめり込んでいるのはどういうわけだ?
 「海から」の契約者は先程から奇声を発しているが、声を上げる口は最早彼の顔面には無かった

 いや、単にめり込んでいるのでは無い
 まるで顔の中心へと顔面の皮膚が呑まれるかのように、表皮が蠢いている


「うううううぅぅぅぅぅうううううぅぅぅぅぅううううぅぅうっぅぅぅぅぅううぅぅぅううううううぅぅぅぅぅぅぅうううぅぅぅっぅぅうううう
 ひかりちゃんひかりちゃんひかりちゃんひかりちゃんひかりちゃんひかりちゃんひかりちゃひかひかひか」


 それは、大地を伝って、それを聞く者の腹の底を揺さぶるような、低い声だった


「ひかりちゃん、あれを見ちゃ駄目な!!」


 「海から」の契約者を睨み付けたまま、手に持っていた氷柱を打ち捨てると
 新たな氷柱をへし折り、肩で担ぐような体勢を取った

 大きく踏み込み、氷柱を投擲する
 切っ先を真っ直ぐ、「海から」の顔面に向けて


「ぼごぉぉぉぉっっ!!!」


 寸分違わぬ正確さで、氷柱は彼の顔面へ突き刺さった
 いや、突き刺さっただけでは無い、それは完全に頭部を貫通していた


(思った通りだな)


 轟九は心の中で舌打ちする
 蹴りを叩き込んだ瞬間、彼は直感めいた違和を覚えていたが
 氷柱の貫通で勘が確信に変わった


(手応えが完全に人間のそれじゃあ無え――!!)


「うふ、うふふふふ、うふふうふふ、そうか、そうかそうか、そういうことか
 とうけつののうりょく、きょうりょくなみつど、οなんばー」


 氷柱が頭部を貫通してなお、スーツの男は低い言葉を発していた
 四つん這いのまま、今や電柱を昇り切って頂上からこちらを見下ろしている


「οナンバー?」


 「海から」の声に反応したのはタートルネックの青年だった
 「カダブラ」の双眸に、先程までは無かった冷たい光が混じる


「そうか、なるほど。するとつまり君は、あれの子息か」


 回避を止め、彼はおもむろに桐生院真降へと向き直った


「真降!! こいつら相手に手加減は無しだ!!」


 「カダブラ」の呟きを掻き消す勢いで轟九の怒号が飛ぶ

 真降は「カダブラ」に対し、構えを取った

 その手に握られていたのは――彼の「七星剣」だ




□■□
87 :影の ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2017/07/06(木) 23:14:59.29 ID:XZeb4OXlO
いやー胸糞悪い敵ってのはいいな!
ボコボコにしやすいし救いようがないっていうか
そして最期が気になってくるものよ
最期の瞬間こそ悪の輝き!(暴走
次世代ーズの人乙ですのん、これは皆頑張れ
88 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2017/07/07(金) 00:41:34.45 ID:JdN7X+hIo

独り反省会をしている場合では無かった
鳥居の人に土下座orz でございます……
真降君が優しいからといって「カダブラ」は彼を挑発し過ぎた
当初の予定よりも野太いフラグが立ったのは決して気の所為では無い

個人的に次か次の次で決着が付くかも、という算段ですが、鳥居の人の沙汰を待ちます
スケジュール等で書けそうに無い場合は私に申し付けください
責任を持って始末を付けますの
89 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2017/07/07(金) 03:26:59.65 ID:JdN7X+hIo
 
というわけで、改めまして鳥居の人、ありがとうございます! orz
前回の続きを書くのが遅れて申し訳ないです……!
>>82-86>>68の続きとなります
ひかりちゃんや真降君と轟九兄さんの言い回しがこれで良いのか自信が無くなってきました
おかしな所やミス等あれば教えて頂けるとありがたいです……!

>>87
この二人は逝く時も愉快そうに笑いながらドロップしそうで
今の時点で次世代ーズの中の人はぐんなりしています
個人的には疾走感あふれる戦闘を描くことが当面の課題です

もう一編書こうとしたが、間に合わなかった……
 
90 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2017/07/07(金) 12:47:38.70 ID:JdN7X+hIo

昨夜の一件で思い知ったこと……
それは眠いときに推敲するとほぼ間違いなく誤字る……
にくい、自分がにくい

>>88
読み返すとあまりに冷たい自分の物言いに愕然とした……

鳥居の人、無理はなさらずの方向でお願いします!
続きを書いて下さるのであれば次世代ーズも嬉しいのですが
鳥居の人はお忙しいという話を目にしている手前
無理にお願いするわけには……と思っておりますので!
>>88は「書くのがしんどそうであれば私に投げて貰って全然OKです!」
くらいの意味で捉えて貰えたら、と思います orz
91 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage !red_res]:2017/07/07(金) 14:41:38.39 ID:JdN7X+hIo
 

   この話には事前警告が必要であると「次世代ーズ」が判断した
   暴力、およびグロテスク描写が含まれています
   苦手な方は>>101までスキップして下さい

   この話は【11月】の時点、>>82-86(次世代―ズ)とほぼ同時刻の出来事になります

 
92 :次世代ーズ 「一日目の夜」 1/9 ◆John//PW6. [sage]:2017/07/07(金) 14:43:33.40 ID:JdN7X+hIo
 



「状況はどうです?」

「上々、といった所でしょうか
 ようやく『組織』も事態を把握したようです
 ここまで粘れたのならベストを尽くした方だと思いますよ」


 女の返答に「ピエロ」は胸を撫で下ろした
 首尾はそこそこ上手くいったようだ


「ただ、そうですね
 『組織』よりも早い段階で
 『レジスタンス』配下と思しき対象が動いた点をどう読むか
 現状、不安材料が無いわけではありませんが、十分に想定の範囲内です」

「『一ツ眼』や『組織』関係者の能力で
 『ピエロ』が若干名、支配権を奪われてます
 我々の方で処理した方がよろしいでしょうか?」

「問題はありません。予定より早く“彼女”が学校町へ到着しました」
「“彼女”? まさか、あの、“女神”さんですか!?」
「あら、隊長さんも気になってました?」


 隊長と呼ばれた「ピエロ」は、取り繕うように笑って誤魔化した


「いやあ、“女神”さんに惚れてる仲間も多いもんで……」
「中々楽しいことになりそうですね。特に今日と明日は」


 女は機嫌良さそうに「ピエロ」からモニターの方へ向き直る
 壁面に設置された複数の画面には様々な映像が表示されていた


「“先生”方の具合はいかがです?」

「こちらもまずまず、と言った所でしょうか
 『アブラカダブラ』と『やってくるモノ』は現在、事象改竄系能力者を追跡中のようです」

「事象改竄に全知の観測、か。おっかねえな、学校町の契約者は」
「まだまだこんなものではありませんよ。序盤ですらありません」


 「ピエロ」の隊長は感嘆したように首を振る一方で、女の声は弾んでいる
 まるで、学校町で現在進行中の事態が楽しくて仕方ないといった雰囲気だ


「ただ、対象の能力者が幼少の女児のようで
 少々『やってくるモノ』が没頭している様子なのは気掛かりですね
 まあ、『カダブラ』の子が一緒なので手綱は握れるでしょう。心配はありません」

「お若い“先生”方はどうでしょうか?
 アシストが必要ならいつでも駒を動かせますが」

「それが……」


 直前まで上機嫌だった女の声色が曇る
 「ピエロ」は彼女の顔色を伺いつつ、モニターの方へ視線を向けた


「こちらの“眼”からロストしたようなのです
 一人は『七尾』出身者なのですが、問題児で……、こちらの指示を聞いているのかどうか……
 まあこちらも“寄生”の子が一緒なので、いざというときはストッパーになってくれると思うのですが……」

「最後にトレースできた座標は残っておりますでしょうか?」
「南区、ですね」
「一応、当該地区で待機している『ピエロ』達に指示を出します」
「すいません、お願いしますね」


 女の言葉を受けて、「ピエロ」の隊長は足早にその場を去った
 女はモニターに目を向けたまま、深い溜息を吐いた


「これだから『七尾』の子は……まったく……」

 
93 :次世代ーズ 「一日目の夜」 2/9 ◆John//PW6. [sage]:2017/07/07(金) 14:44:15.87 ID:JdN7X+hIo
 



 学校町、某所
 其処は廃工場なのか廃ビルなのか
 兎に角人気が全く無い筈のその場所に“彼女”達は居た


 開けたその場の中心に佇むのは“彼女”だ
 胸の一部と腰周りを申し訳程度に隠したと言っても過言ではない装束の他は
 透けるベールのようなものを羽織っており、このまま道を征けば衆目を奪うには十分過ぎる

 と言うより、その格好で出歩けば即座に国家権力が飛んできそうな程に肌の露出は甚だしかった

 いや、露出の多い装束というよりもむしろ全裸の上から局部のみをギリギリ隠した容姿と表現すべきか?

 加えて“彼女”の豊満な肉体が公然猥褻の度合いを弥増しに高めているのは、ある種の必然だった

 それもその筈、“彼女”は愛欲と戦闘の神格と契約を結んだ能力者だったからである


 周囲には大量の「ピエロ」が“彼女”を包囲するかのように平伏している
 この「ピエロ」達は一つの共通点で以ってこの場に集っていた
 「一ツ眼」の“魔”、あるいは契約者による“支配”、あるいは淫魔による“魅了”
 そう、学校町に於いて精神干渉系の能力を受けた「ピエロ」達は自動的にこの場に向かっていたのだ
 全ては“彼女”が事前に仕込んでおいたフラグなのだが、「ピエロ」達がこの事実を知っているのかは明らかでは無い

 いずれにせよこの場の「ピエロ」達は“彼女”の力能によって、今や干渉を完全に“上書き”されていた


「あなた達ニ――」


 “彼女”が口を開く
 その声は「ピエロ」で無くとも心狂わせるには十分過ぎる程の官能を湛えていた


「――“お願い”をしたのは誰カナ? ワタシに教えテネ」


 “彼女”の声に聴覚を擽られた「ピエロ」達は我先に体を起こし
 “彼女”の姿を直視した途端、彼らは性的絶頂に達した


「ああーッッ!! 女神サマーーッッ!!」
「駄目ぇっ シコシコしてないのに いっぱいピュッピュしちゃうよォォォーーーッっ
「パパが! パパがやれって!! 『一ツ眼』のパパがやれって言ったのォォーー!!
「俺は悪くないんだ女神サマッ!! あっ 『組織』のっ 女の子がッ! やれって!! だからッ
「女神さまお許しください 俺達は悪くないンだぁぁァァぁァァッッ!!! あっ また出るゥゥっ!!」


「みんナ、いい子だヨ 悪い子は独りもいナイ だからいっぱい気持ち良くナぁレ


「あアーーっ 女神サマァァァァぁぁッッ!!!!」
「うソォォっ!?!?!? 一回出たのにィまだ出るヨぉぉぉぉ
「もうオレここで死んでもいいッ!! 死にたいッ気持ちイイッッ!! 女神さまン殺してェェェ!!


 異様な光景であった
 たとえそれがこれから学校町で繰り広げられる惨劇の序章であったとしても

 己の性欲を猛り狂わせながら銘々が欲望に絶叫するその様は
 その光景は異様と呼ぶより他無かった



 「イナンナ」

 それが彼女の契約した神格の名だ
 古のシュメールより伝わる性愛と美、豊穣、そして戦争を司る女神である
 その女神はメソポタミアに於いてイシュタルと、ギリシアではアプロディテと崇められ
 ローマではヴィーナスと、ユダヤ教やキリスト教ではバビロン、あるいは淫婦共の母と見做された存在である

 その神格と契約した能力者は人間の女だったが
 彼女が神格に呑まれてしまったのか、それとも人格のみをこの女神に書き換えられてしまったのか
 今となっては誰にも知り得ぬ話であるし、そのようなことは当事者にとってもどうでも良いことなのだろう

 
94 :次世代ーズ 「一日目の夜」 3/9 ◆John//PW6. [sage]:2017/07/07(金) 14:44:48.07 ID:JdN7X+hIo
 

 “彼女”、「イナンナ」と契約した能力者は大きく二つの力能を有する
 一つは、愛欲の神格としての側面。つまり、己の愛欲により全てを飲み込み、愛する“魅了”の力能
 そしてもう一つが、戦闘の神格としての側面。即ち、敵対した存在全てを嬲り殺しにする“殺戮”の力能である

 そして現在
 “彼女”の能力下にある「ピエロ」達は
 “彼女”の“魅了”により新たな命令を刷り込まれつつあった


「みんなの“パパ”と“ママ”ハ、みんなに愛をくれたヨネ?」

「うんッ! 『一ツ眼』のパパんはいっぱい愛してくれたァァァァァぁぁッッ!!」
「『組織』の子ッ ママんッッ ああああンンんンんんっっ ボク愛されてるぅぅぅぅぅっっ!★!★!」


 「イナンナ」の“魅了”は、神格のそれである為か強力な干渉を誇る
 “彼女”には過去に「狐」による魅了者の乗っ取りを何度か実施したという噂もある程だ
 熟達した契約者であっても、“彼女”の“魅了”を受けてしまえば、その出力と密度により決して長くは“もたない”だろう


「受け取った愛ハ、“パパ”と“ママ”に返さなくチゃネ

「ふぁッ!? ンン あっ ああァァーーッっ んアアーーっ!!!!」


 “彼女”の最も近くに居た「ピエロ」の頭を、“彼女”は優しく撫でつけた
 その瞬間、その「ピエロ」は自らの睾丸を握力で握り潰し、白目を剥きながら、文字通り昇天した


「でモ、そのままのやり方じゃあ“パパ”と“ママ”は愛を受け取ってくれなイヨ? そんなノ、悲しいヨネ? 嫌だヨネ?」

「えっ??? やだやだやだァァァァッっ!!」
「女神サマっ!! オレたち、どうすればいいッ!? 助けてヨぉぉッ!!」


「うン だかラ、出来る所からヤればいいんダヨ★ みんなでも出来ルヨ!」


「どぉうすればいいンのォォ????
「教えて女神さまン! どうやれば、パパにLOVEを怨返し出来るンんッっ!?!?」


「それはネぇ


 “彼女”は「ピエロ」達に向けて、きゅうと笑む
 それを見た「ピエロ」の何人かは更に射精を繰り返した
 敵からの干渉を歪める形で刷り込まれる命令はほぼ完成の域に達しつつある


「『一ツ眼』は今、学校町の大きなお屋敷に食客として迎えられているンだッテ
 でネ、そのお屋敷のお坊ちゃんハ、この町の大きな高校に通ってるって聞いタノ★
 分かるかナ、ブレザーの子どもたちダヨ? その高校の子どもたちなら、愛を受け取ってくれるかモネ


「ほントッ!? ほんトにッっ!? 高校生に愛を返死てもいいンッ!?!?」
「おホぉぉォォンッッッ!! 妊活カーニバルの開催だァァっっっ!!!!」
「高校生…… ブレザー…… かわいいかわいい……
「高校生ってもう赤ちゃん作れるよねェェっ! ヤっちゃっていいンだよねェェッッ!!」
「いっぱいいっぱい頑張らないとォォ 女神サマも頑張れって言ってるんだからァ 頑張らないトぉぉ


「みんな頑張レ “パパ”も“ママ”もきっと喜んでくれルヨ


「うんンんんンンン!! 頑張るゥゥゥウウゥぅぅううぅうぅゥゥゥぅぅぅううッッ!!!」
「中央高校 でも危険すぎるッ!! 中央高校は“結界”あるからッっ 駄目ぇッッ!!」
「お前バカだろォォ!! 放課後を狙えばいいンだよぉぉぉぉぉぉんんん!!」
「そっかぁぁ、放課後 放課後にデート レッスン 種付けレッスン 頑張らなくちゃ



 新たな命令を植え付けられて狂喜の渦に飲まれた「ピエロ」達を満足気に眺めながら
 まるで新しい玩具にはしゃぐ子供達を愛おしく見詰める母親のように、“彼女”は微笑んだ



「そうダヨ
 愛を恩返しするなラ、まず弱い所からヤってかなイト ダヨ


 
95 :次世代ーズ 「一日目の夜」 4/9 ◆John//PW6. [sage]:2017/07/07(金) 14:45:18.35 ID:JdN7X+hIo
 

「全員動くなァァッッ!! 『組織』だぁぁッッ!!」


 「組織」の黒服達が怒号と共に現場を急襲したとき
 既にその場所には誰も存在しなかった

 まるで以前に遺棄されてそのまま時間だけが経過したかのように
 静寂のみが空間を支配している

 二点、違和があるのだとすれば
 矢張り先程まで此処に何者かが、それも多数の者が居たと思わせるぬるい気温と
 男達の体臭のようなそれに加え何やら酷い臭いが混じっている、特有の空気だろうか


「くそッ! 間に合わなかったかッ!?」
「主任、改めて確認しますが」


 悪態をつく黒服に対し、部下と思しき者が声を掛ける


「現場での察知系能力の行使は――」

「許可できない! リスクが大き過ぎる
 くそ、例の報告が無ければ、あわや大惨事だったぞ……」


 主任と呼ばれた黒服は歯噛みしながら頭髪を掻き毟った
 彼ら過激派と言えど、ここまで勝手に振る舞う「ピエロ」達を前に
 全てを穏健派に押し付けて傍観役に徹する真似は出来なかった

 かつて「狐」の案件で過激派と強硬派の一部が暴走した挙句
 貴重な手掛かりを無駄にし、「狐」をも取り逃がしてしまった彼らは
 「狐」の案件に関わることこそ出来ないが「ピエロ」ならば、と対処を開始したのだ


「まさか察知系能力へのカウンターとは、やられましたね」

「感心している場合じゃないッ!! 初動が早ければまだ封じ込めも出来たが、こうもなってはッ!!」

「やはりこの件、裏で『狐』が絡んでいるのでしょうか?」


 部下の一人が疑問を呈する
 その言葉に主任は手を止め、目を閉じた


「まだ判断を出すのは早計、それが現段階での幹部達の判断だ
 だが、状況から推察するに『ピエロ』が『狐』の陽動を担っているという見方を排除することは出来ない――!!」

「『狐』が本格的に学校町制圧に動き出した、とか?
 三年前の件があるでしょうから、『狐』も策を練ってると見るのが自然でしょうし」

「『狐』の案件は穏健派の連中が何とかするだろう
 いや何とかして貰わないことにはこっちだって困るんだッ!!
 俺達は何としてでも『ピエロ』を討伐し、その中枢を押さえるぞッ!! いいなッッ!?」


 主任の言葉にその場の部下全員が首肯した


 此処からは人海戦術だ
 個々の黒服達はこの場に居た筈の大量の「ピエロ」達を見つけ出すべく夜の学校町を奔走することになる


 だが果たして、「狐」と「ピエロ」との間に繋がりなど存在するのだろうか

 彼ら黒服の私見は、最終的にどのような末路を辿ることになるのか

 今はまだ、誰にも分からない






 
96 :次世代ーズ 「一日目の夜」 5/9 ◆John//PW6. [sage]:2017/07/07(金) 14:45:52.10 ID:JdN7X+hIo
 



 学校町南区、某ビル屋上



 彼女は放課後、別の学校の友人と一緒に南区を回っていた
 移動屋台が集まる南区の一角で新作のクレープを楽しんだ後
 キッチンカーに陳列されるお菓子を眺めながら時間までお喋りして
 それから、楽しい気分のまま、友達と別れる――筈だった、筈だったのだ



 彼女は震えながら目の前に横たわる友達を凝視していた
 友達はもう、体を動かすことは無かった。でも、生きてる筈だ
 根拠の無い思い込みだけが、今の彼女にとって唯一希望を繋ぐ糸だった

 生きてる筈だ、生きてなきゃダメなんだ。死んでなんかない。死んでなんか

 友達の顔面には血と肉の花が咲いていた
 最早、何処が眼で何処が口なのかも分からない程、ぐちゃぐちゃにされている
 鼻があった筈の部分は盛り上がりも何も無く、顔面が削り取られたかのような状態だった
 赤い中に見える白い物は骨、いや違う。白い、ご飯粒のような物が、友達の顔の中で蠢いている

 思わず目を背けたくなる。が、出来ない
 出来る筈が無い

 喉の奥から酸っぱい物が込み上げるのを彼女は必死で押し留めた


「それじゃ、もう一度聞くね?」


 自分と友達を、こんな目に遭わせた元凶が
 直ぐ耳元で囁いた


「キミは南区の商業高校、一年生。だから知ってる筈なんだ
 さわたり、しゅうじゅ。名前、知ってるだろ? ホントのこと言ってよ、ねえ」

「うっぐっ、しっ、知らないっ! ほん、とにっ、知らないっ、ぅうン、ですっ!!」

「さわたりしゅうじゅだよ、早渡脩寿。知ってんだろ? なあ!?」

「ごめっ、なさい゙っ、わたっ、しっ、ほんとにっ、知らなっ、ぅあっ」


 元凶の少年は、女子の肢体を優しく撫でつけた
 少女は先刻まで着ていた筈の制服を剥ぎ取られ、今や下着のみの姿で、無理矢理横たえられていた
 彼女の白い腹部は少年の爪で引き裂かれ、裂傷の中から内臓が大きくはみ出ている
 引き裂かれたのは腹だけでは無い、女子のふくらはぎから踵にかけてが、ずたずたに切り刻まれている

 不意に少年は手に取っていた少女のはらわたを指で弄んだ

「ゔっ、ぅぁあっっ、やめ゙っ、ぅぅううあああっっ、お゙ぉ゙ぉ゙っ」

 彼女は顔を背けてお腹の中身を吐き戻した
 先程食べたクレープだったモノが屋上の床を汚した


「あ〜あ、きッたないゲロ吐いちゃってさぁ、ホントくッせえな」
「でもこのゲロ、美味しそう」


 別の声は少女の反対側からだ
 女の子だ、少女と年齢は同じ位だ
 ただ、その声は彼女のそれに比べて幼い

 内臓を弄ばれる彼女を挟むようにして
 元凶の少年と、彼の連れである少女が両脇を詰めていた
 吐き戻した側にその少女は詰めていたので、吐瀉物が彼女と少女の間に広がっていた


 おもむろに連れの少女は
 吐いた彼女の口を己の口で塞いだ
 艶めかしく口元が蠢く。彼女の眼は恐怖で見開かれた

 ややあって少女は口を離した
 大量の唾液が白い糸を引いて二人の間を伝う
 少女は蕩けたような表情を浮かべていたが、彼女の方は錯乱したように悲鳴を上げていた

 
97 :次世代ーズ 「一日目の夜」 6/9 ◆John//PW6. [sage]:2017/07/07(金) 14:46:22.56 ID:JdN7X+hIo
 

「お姉ちゃんのゲロ、酸っぱくて、甘くて、美味しい
 女の子の味がする


 少女は囁き声でそっと彼女の耳たぶを噛む


「うぁ、ぅああぁあ゙あ゙ぁ゙ぁ゙っ!!」


 目を見開いたまま、女子生徒は泣いていた
 まるで幼い子供がただ感情のままに泣き叫ぶように


「マヒルの変態、ふ、変態マヒル、ふぅッ」


 その様を前に、少年は押し殺した声で嗤っていた


「じゃあ何、ホントになにも知らないんだ
 早渡脩寿はモテないのな、ゴミはゴミのままで安心だわ」


 少年は満面の笑みに顔を歪め
 泣いている彼女の肩に手を回した
 震える彼女の耳元で彼は、甘く、囁く


「キミのふくらはぎ、柔っかくて、ぷにぷにで
 甘くて、だからとっても、美味しかった」

「いやぁ、ああっ、ああぁぁ゙っ、あ゙あ゙あ゙っ」

「正直今すぐ食っちゃいたい
 優しくするから、ふ、気持ちくしながら、ふッ、ふぅッ
 命令が無ければ、ふぅッ、イかせながら食っちまうのに」


 少年は自分の右手の先を噛んだ
 噛む度に口内からバキバキという音が響く
 事実、彼は自身の指先の骨を歯で噛み砕いていたのだ


「ふぅーッ、我慢しなくっちゃ、クソみたいな命令でも
 ふひッ、命令は絶対だって、ふぅッ、先生も言ってた、くひッ
 だから、だから俺は、ひぃッ、我慢しなくっちゃあなあ、くひぃッ」


 込み上げる笑いを窒息させ
 少年は唸るように押し殺した声を漏らした
 右手の先を噛む口からは血が垂れ始めるが構う様子は無い


「大丈夫、お姉ちゃんのこと、きっと正義の味方が救けに来てくれる」


 耳の縁を何度も舐め上げながら
 少女は女子生徒の耳元でそっと囁いた
 女子の側からは決して見えないのだから分かりはしないだろう
 柔らかく、優しく囁くその少女の目元は、愉快な物を見詰めるかのように歪んでいることを


「だって、正義の味方の好物は恐怖と絶望だもの
 ヒーローの御馳走はね、あなたの泣き叫ぶ声なんだよ
 あなたの苦しむ悲鳴だよ、だから、もっともっと、大きな声で救けを呼ばなくちゃ」

「ごっ、ごろ゙ざな゙い゙でっ!! たっ、たっ、たすっ、たすけてくださいっ!!」

「もっと大きな声で泣かないと、誰にも聞こえないよ?」

「だずげでぐだざ――ぉおおおお゙お゙お゙っ!!」


 彼女の命乞いは途中で遮られた
 少年が彼女の傷口に手を深く押し込んだ所為だ


 その様子を見て、少女は嘲笑った


 
98 :次世代ーズ 「一日目の夜」 7/9 ◆John//PW6. [sage]:2017/07/07(金) 14:46:55.43 ID:JdN7X+hIo
 

「あのなあ、泣けば何もかも許されるって
 本気でそう思ってんのか? なあ? だから泣いてんのか?」

「ごめ゙んなさっっ、ぁぁ、ぁあああ゙っ、ごべっ、ぉ゙ぉ゙っ、ぃやだっ、ごべんっ、あ゙あ゙」


 少年の声は飽くまで静かだ
 内臓を直接弄ばれた少女の吐瀉物には既に血が混じり始めている


「もうお互い子どもじゃ無いんだからさぁ、弁えなよ
 ――で、キミとこの子、俺はどっちを見過ごすべきだと思う?」

「ぃゃ、ぃゃ、やでず、も゙う、ゆる゙してください゙っ」

「選べよ? でなきゃ、俺に聞こえるように命乞いしなきゃ
 ほら、しっかりやれよ、お姉ちゃんもう高校生だよね? 16歳だよねえ!?」

「ごめん゙な゙さい! ゆるじでぐだざい゙っ、うぁぁ゙、ぁああああ゙あ゙」

「もっと大きな声でぇッ!!」

「ごめんな゙ざい゙っ!! ゆどぅ、ぁっ、ぅおおおお゙お゙、お゙お゙っ、ごろ゙さな゙いでくださいっ、ああ、ぁぁぁ゙ぁ゙」

「なんだ、言えるじゃないの」


 少年は無邪気に微笑みながら、横たわった彼女の友人に手を掛けた
 途端に先程まで動かなかった友人の顔面から激しい呼気が聞こえ始めた
 辛うじて鼻があった部分が蠢いて、断続的に血の混じった息を噴き散らした

 息を吹き返したのでは無い、少年に掴まれ、神経に爪を立てられた激痛に呻いているのだ


「じゃあ、この子を、キミの代わりに[ピーーー]していいよね? ねっ?」

「だめ゙でずっ、やっ、やべでっっ、ぅおお゙お゙っ、ああああ゙、いやだあ゙あ゙あ゙」

「さっきから鼻水とか涙とかゲロとか撒き散らしやがって、やる気あんのか? お前?」

「ごの゙ごわ゙っ、だい゙ぜづな゙っ、とも゙っ、ぉぉぉ゙ぉ゙、どぼだぢなん゙でずっ、だがだっ、ごどさだい゙でっ!!」

「はーい、よく言えましたっっ、と」


 少年は急に興が削がれたとでも言いたげな投げやりな口調で立ち上がった
 そしてそのまま、横たわった友人の脇腹を、蹴り込んだ


「や゙べでぐだざい゙っっ!!」


 友人を庇う様に、女子生徒は友人に覆い被さった
 その途端に、彼女は耐えていた嘔吐を繰り返した
 最早吐瀉物では無く、彼女の口から吐き出された血が、友人の顔に掛かった


「お望み通り、お前のオトモダチは助けてやるよ
 それからお前のこともなあ、なあ、嬉しいだろ? ちゃんと感謝しろよ、感謝も出来ねえのかお前はッ!!」


 少年は友人を庇う女子生徒の頭髪を掴んで揺さぶった
 言葉こそキレた調子だが、彼の顔には未だ微笑みが貼り付いている


「ありがどお゙ござい゙ま゙すっ、こどさな゙いでぐでで、あり゙がどお゙ございまっ、ぅぁ、すっ、ぁぁ゙ぁ゙」

「そうそう、感謝は大事だよー? そんなの誰でも知ってるよー
 じゃあ、キミとオトモダチを見逃してあげるんだから、キミのカゾクを[ピーーー]しちゃってもいいよね??」


 突然の少年の提案に
 女子生徒は言葉を吐き出すでも無くただ呼吸を繰り返した
 少年が何を言っているのか、彼女には直ぐには理解出来なかった


 
99 :次世代ーズ 「一日目の夜」 8/9 ◆John//PW6. [sage]:2017/07/07(金) 14:47:25.78 ID:JdN7X+hIo
 

「この世はね、シンプルな理屈で成り立ってるんだ
 トレードオフ、等価交換、何だっていいよ。兎に角、何かを犠牲にしないと何も得られないんだ
 分かるっしょ? 俺はキミとオトモダチを助けたよね? だからその分、俺は何かを奪わなきゃいけない」


 再び、少年の顔が悪意に歪む
 その表情は年頃の悪戯少年のそれと比するには余りにも残忍に過ぎた


「キミはオトモダチとカゾクを天秤に掛けて、オトモダチを選びました!
 だからそのトレードに、俺はキミのカゾクを食っていいってわけ! いいシステムだよなあ、ほんっと」

「えっ、あっ、あの゙っ、なに゙を゙、言ってん゙かっわがっ、ああ゙あ゙あ゙」


 漸く女子が顔を上げ、口を開くが最後までは話せなかった
 少年の蹴りが腹部に直撃したからだ


「だーかーらー、俺は今からキミのカゾクをみんな[ピーーー]しちゃいまーす! ッてわけ!
 楽しいなあ、たッのしいなあ♪ うッきうッき遠ッ足、たッのしいなあ♪ 俺ッてほんッと、あったまいいー♪」

「かぁクンばっかりずるいよ、そろそろ私も混ぜてね」


 直前まで微笑みながら状況を傍観していた少女も、漸く彼に声を掛けた


「よく見てろ、ゲロ女」


 少年が彼女の頭髪を掴み、無理矢理顔を上げさせた
 不意に、彼の顔が溶けた。しかしそれも一瞬だった

 直後、少年の顔は女になっていた
 顔だけではない、体つきも女のそれに変化していた
 正確には、彼の目の前に居る女子生徒の姿と、瓜二つになっていた


「これで」


 少年、いや、直前まで少年だった、自分と同じ顔の少女はきゅうと笑う
 顔面全体に少女に対する嘲りが刻まれているような笑顔だった


「お前のお袋も、親父も、俺の正体を疑わない
 俺はお前の振りをしてお家に帰ればいいんだからなあ
 可哀想に、お前の親は、ここでお前が死にそうになってるのに気づかないんだよ
 そして」


 彼は女子生徒の耳元に顔を近づけた
 押し殺したように嗤うその声も、おぞましいことに彼女のそれと同じだ


「俺に食い[ピーーー]されて、死ぬ。ちょろい人生だよなあ、お前のカゾクはさあ」

「やめ゙っ、やめ゙でぐだざい゙っ!!」

「じゃあ、止めてみろよ、ゲロ女。お前の情報はこっちにあんだからよ」


 ひらひらと彼女の前で見せびらかせる様に振るのは
 女子生徒が持っていた筈の携帯と、生徒手帳だ


「俺は今日からお前に成り代わる。お前はここで震えてろ
 あ、大声で救けを呼べば、正義の味方気取りが来てくれるかもよ♪」

「やべで……、やべでぐだざい゙、だでがっ、たずげで……!」

「ああ、そうだ
 いいこと思いついたよ
 よーく見ててね、ゲロ女」

 
100 :次世代ーズ 「一日目の夜」 9/9 ◆John//PW6. [sage]:2017/07/07(金) 14:47:56.24 ID:JdN7X+hIo
 

 女子生徒の顔をした少年は彼女の携帯を弄り始めた
 少女の方も少年の傍に寄り、携帯を覗き込む


「で、どれだ? こっから見ればいいのか?」

「かぁクン、これだよ、これ。そのままタップして」

「おうおう、なーる。あ、待て。よし、――ああ、お母さん、うん、わたし!
 今から帰るね、うん。今日の晩御飯なぁに? あっ、そうなんだ
 うん、わかった。早く帰るね。うん。えへへ、お母さん、いつもありがとね!」


 携帯に向かって話す少年の声は、普段の彼女のそれだ
 漸く状況が飲み込めた女子生徒の眼が恐怖で見開いた
 今、女子に化けた少年は、何処へ電話を掛けているというのだ


「お前のカゾク、マジでちょろいなあ、ゲロ女。もう攻略完了でつまんねーわ、マジちょろ」


 女子の声で少年はそう言い捨てると、出し抜けに服を脱ぎ始めた
 まるで最初からそうする積りだったかの動作で
 先程引き剥がされた彼女の制服を拾い上げると、そのまま着替え出した


「うは、メス臭え服だな。これで俺はもうお前なんだわ
 誰が見ても完璧な。だろ、マヒル?」

「うん、凄く似合ってるよ」

「そらそーよ、制服は元々このゲロ女のだしなあ!」


 二人の声が、状況を理解した女子の耳に突き刺さる


「じゃあ、俺たちはお前ん家で 夕メシ 食って くっから
 気が向いたら、 お袋の味 って奴を教えに来てやるよ」


 それだけ告げて、少年と少女はビルの屋上から飛び降りて行った



 二人は行ってしまった



 取り残された女子生徒は、震えていた

 あれは幻覚だったのか? あの少年の顔は自分の顔になった
 自分の声に成り代わって、自分の制服を着て、行ってしまった

 魔法か何かなのか? それとも全部、悪い夢なのか?

 混乱する頭の中で、しかし、女子生徒の中で恐怖が膨れ上がる

 自分と友人を襲撃したあの二人は、自分の姿を奪って行ってしまった
 あの男は、私の家族を[ピーーー]と言った。それははっきりしている
 このままでは、家族があの化け物に[ピーーー]されてしまう


「あ、あ゙あ゙……」


 恐怖が、急速に膨れ上がっていく
 不意に、先程、あの男に足を掴まれて
 ゆっくりとふくらはぎを食い千切られる感触が蘇ってきた


 ああやって、私の家族を食い[ピーーー]積りなんだ


「いや゙だ……! だれ゙が……、だれ゙が、ぅお゙っ、だっ、だずげでぐだざい゙……!」


  頭の中が、ぐちゃぐちゃになる
  もう、息が吸えない、苦しい



□■□
101 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2017/07/07(金) 14:48:27.41 ID:JdN7X+hIo
 
[   ]

@一部の「ピエロ」達は学校町内の小中高に通う児童生徒の襲撃を企図
A現在、「ピエロ」関係者で学校町で何らかの行動を取っている、もしくは何らかの影響を与えているのは以下の人員



・呪術「アブラカダブラ」の契約者
  ……事象改竄系能力
     本人の設定した通りに世界を改変する
     ★「死毒」から離脱し、現在ひかりちゃんを追跡中

・怪異「海からやってくるモノ」の契約者
  ……察知系能力へのカウンター能力者
     察知系能力者を狂死させる能力を有する
     ★「死毒」から離脱し、現在ひかりちゃんを追跡中

・伝説「サルガッソー」の契約者
  ……不可視の海「サルガッソー」を発現
     圏内の対象を粘度の高い海水で封[ピーーー]る
     不可視の藻類を制御することで対象の扼殺も可能
     彼らの当初の計画では上記「やってくるモノ」の契約者との連携で学校町の住人を鏖[ピーーー]る予定だった
     ※現在、まだ学校町へ到達していない

・神格「イナンナ」の契約者(?)
  ……性愛の神としての側面、強度の精神干渉“魅了”能力と
     軍神としての側面、多数の武器生成と身体強化能力を有する
     また彼女の同僚から借りたという、「カーマの弓矢」を装備している
     今回の計画では前線に出る戦闘要員では無いし、本人もその気は無い
     ※現在、「ピエロ」と共に所在不明

・伝説「███████████」の契約者
  ……下衆
     何らかの変身能力を有する
     「七尾」出身者で「早渡脩寿」を探している
     ※現在、所在不明

・都市伝説「ゴキブリを食べて死んだ男」他の契約者
  ……口内から大量のハエの幼虫・ゴキブリの幼虫を生成する
     上記「███████████」の契約者とバディを組んで行動中
     ※現在、所在不明






 
102 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2017/07/07(金) 14:49:01.49 ID:JdN7X+hIo
 
全方位に土下座 orz
特に花子さんとかの人に土下座 orz
前スレ最後の方で話していた嬉しくない方のR-18Gです

恐らく次回辺りでRナンバーの乱野憐子が登場します

あと今だから言いますが
当初のあらすじでは後半登場の二人組に立ち向かうのは
いよっち先輩の予定でした
 
103 :罪深い赤薔薇の花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2017/07/07(金) 21:23:59.31 ID:6h853yF5o
皆様乙でーす
ここんとここっち全然顔出せて無くてごめんよぉおおおまともに続きも読めてねぇ0(:3 )〜(  ﹃゚。)

もそもそと続きのようなもん書いてたりはするんで今度こそ近日中に……投下……したい……
気持ち浮き沈みの沈みの最中もあって遅くなったら本当すまぬ
ピエロ誘惑していかなきゃ…
104 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ :2017/07/08(土) 14:27:52.80 ID:RfoxUnmb0
馬鹿なので夏風邪でひっくり返っている鳥居の人参上!
ようやっとポカリの味がわかるようになってきた…
週末は塩バターラーメン食べる予定だったのに、固形物が喉を通らない

次世代ーズの人乙でーす!
キャラ再現完璧っす!ありがとう!
是非続き書かせていただきたいけど、少々お時間いただきたい。
桐生院兄妹の父、蘇芳と「カダブラ」は面識ありという感じですか?

シャドーメンの人もお久しぶり&乙でーす!
カードゲーム詳しくないけど、熱く戦っていることはわかるぜ!
花子さんとかの人もお久しぶりです!まったり行きましょう!
105 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2017/07/08(土) 20:34:08.36 ID:KzN2NtKRo
 
皆さまお疲れ様です

>>103
無理は禁物ですぞ
特にこの梅雨から夏に掛けての時期はやばい

>>104
ありがとうございます!
お時間、了解です! ですがご自愛ください!
自分もその昔、丁度この時期にぶっ倒れたことがあり
その時にポカリはちょい濃度高めに作ると良い感じということを学びました
(効き目には個人差があるのでご注意)

>桐生院兄妹の父、蘇芳と「カダブラ」は面識ありという感じですか?
蘇芳さんが彼ら暗殺者を知っているかは……分かりませんが
少なくとも「海からの」も「カダブラ」も蘇芳さんのこともるりさんのことも知っています
基本、「ピエロ」サイドに登場するピエロじゃない人物たちは裏世界の住人なので
「組織」の構成員や鬼灯さんといった方々についても知っている、という感じですね

これからもっと色んな生き物が登場します
そして何か書く度に土下座(特に花子さんとかの人とシャドーマンの人へ土下座)することになりそうです
106 : [sage]:2017/07/08(土) 22:33:12.98 ID:YVRqe4KX0

ピエロに魅了かけたら一般人の被害が増えちゃうのか
もっと魅了かけなきゃ

あ、魅了かけたら別のとこ行っちゃうてことは
周囲に魅了かけてピエロ集めようとしてもほとんど集まんないやん
途中でサキュ達もなんかおかしいて気付くなこれ
107 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2017/07/11(火) 08:01:39.90 ID:LQ0D+mrzo
 
>>108
もっと魅了掛けるんですか!?(いけない)
天地さんのストレスが心配だ
ん?
サキュバスが「ピエロ」魅了→「ピエロ」の魅了を女神が上書き→「ピエロ」は学生を集中的に襲撃か
→サキュバスの魅了激化→「ピエロ」の妊活が加速→天地さんキレる(?)→遂にモンスの天使が解き放たれる
→天使と淫魔が町中に→(見た目が)アルマゲドン勃発
……大丈夫かしら(すっとぼけ)
108 :罪深い赤薔薇の花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2017/07/12(水) 11:02:40.63 ID:DDdCr3tro
>>107
一番俺が大丈夫じゃないです(被害出過ぎると収集つけられなくなって今後のこととかうにゃーうにゃーして爆発四散する)
109 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2017/07/14(金) 12:56:17.34 ID:u0TXsHTwo
 
あ、あー……
少なくとも「ピエロ」の学校襲撃は
そもそも「ピエロ」が襲撃を実行できるのか、って問題があり
都市伝説「ピエロの誘拐団」からの推測で「子供を狙いそう」って所は見当がつくと思うので
当然「組織」も潜伏で学校近辺の警戒に当たる、っていう風に考えています

問題はその後の方ですが
騒動翌日のニュースで「芽香(?)市内でピエロの仮装集団が出現し暴動が発生、市内は一時騒然」
という感じの記事が地方紙の片隅に載りそう(「組織」が情報操作済み)、という程度で想定しています

今、「夢の国」の時の話を振り返ってるんですが
夢の国勢力が暴れ回ってた時、一般人はそれに気づいてたのか、とか
表向きはどういう風に捉えられてたのか、とか、「組織」がどういう風に情報操作したのか、とか
(たしかあの時も結構収拾がやばそうなことが立て続けに起こってた覚えが)
そういう部分を主に見返して参考にしてます
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2017/07/15(土) 04:37:06.03 ID:TK5FZKSW0
次世代ーズの人…ちょっと待ってほしい…
お兄さんはハートフルラブコメって聞いてたんだけど
これじゃハートフルボッコ展開なんだけど…
なんなの…みんな黒の軍勢なの…
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/20(日) 02:23:35.36 ID:xo7lcsCP0
お盆にすら誰もいないとは
さては呪いでも流行ったか?
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/21(月) 17:20:18.72 ID:V3Jf0g2Uo
呪いかどうかは知らんが季節外れの寒さにやられて夏風邪なら引いたぜ
113 :ソニータイマー(酉忘れた) ◆PbVYcDLpwCZE [sagesaga]:2017/09/21(木) 17:08:48.50 ID:g8crryNTo
>>8
亀レスにもほどがあるけど答えますよー

1 七つの大罪って何者ですか?
幼馴染の仲良しグループだったと思います
目的とか経緯とかはそのうち考えようかと……ちょっとデータ消えちゃって色々設定忘れて……

2 堂寺と疾風の履いてる下着を教えてください
そんなん設定してな……たぶんボクサー型とかだと思います
疾風は変装次第で下着も変えたり変えなかったりするよ(見える可能性があると下着も変装するよ)

3 堂寺と疾風はどういう関係ですか?お互い好きですか?
普通に友達です

堂寺「好きってどういう……? そりゃあ友達としては好ましいと思ってるけど。
恋愛的な意味ならないよ。高校生の男子とか守備範囲外だよ〜せめて中1までだよね! 小学生のほうがもちろんいいけれど」
疾風「友達で同じ部活のメンバーだよ。堂寺君は物覚えがよくて神経衰弱とか無敵なんだよね……妬ましい。
え? 好きかって? なんで僕と堂寺君に……? もちろん嫌いじゃないよ。それにしても堂寺君の『ゲーム脳』って割とチート能力過ぎない? 妬ましい……」
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/23(土) 04:59:13.68 ID:0KIjT/q00
メリーさんや…連載はまだかの…
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/03(火) 16:09:04.16 ID:LIdqe1Xoo
 なんてこった……
 もう夏が終わってしまった……
 夏が終わったということは一年ももう終わるということだ……
 なんてことだ……
116 :1 [sage]:2017/10/03(火) 16:10:24.19 ID:LIdqe1Xoo
 


「あのう、すいません」

 逢魔ヶ刻を迎えた通学路
 制服姿の少女が、先を行く制服姿の少年に声を掛けた

 少年はおもむろに振り返る

「あの、ちょっといいですか?」

 そう声を掛ける少女の口は異常な程大きなマスクに覆われている
 どこの制服かは知らないが、たぶん、いや絶対市内の高校に違いない

 少年の目が彼女の顔から胸元へと滑った
 うむ、大きい

「あのう、私って、キレイですか?」
「あっはい最高だと思うッス!!」
「えっ、あっ、最高、ですか? ……じゃあ、これでも……」
「あっ、待って!! ストップストップ!!」

 彼女がマスクに手を掛けようとした所を、少年は慌てたように制止した
 彼はとっさに首から提げられたカメラを構える
 それは最早武器ではないかと思わせる程のごつい代物だ
 確実に諭吉君が50枚以上吹っ飛びそうな、そんなやばそうなカメラである

「ふひっ、やっぱファインダー越しが断然いいっッスねー!! 最高ッス!!」
「え、あ、あの……」
「マスク外したらもっと最高だと思うッス!! 良かったら外してもらってもいいッスか!?」
「あ……あの、じゃあ……こ、これでもキレイかーっっ!!!」

 少年の言葉に、彼女はマスクを外しながら叫んだ
 なんと彼女の口は耳元まで大きく裂けているではないか
 そう、彼女の正体は世に噂される都市伝説、「口裂け女」だ

 しかし少年に動ずる様子はない
 彼女がマスクを外し、裂けた口を曝け出した直後

 カメラから鋭いシャッター音が響いた

「ふっ、決まったッス……!!」

 少年の決め台詞とほぼ同時に、マスクを外した少女は後方へと倒れてしまった

 彼は一仕事終えたといった表情で少女を見下ろす

 問題ない、彼女は気を失っているようだ


「ふ……、ふふふっ、ぃいやっピぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃイイイイイイイイイッッ!!!!」

 
117 :2 [sage]:2017/10/03(火) 16:11:03.51 ID:LIdqe1Xoo
 

 通学路に歓喜の絶叫がこだまする
 少年はガッツポーズで小躍りを始めていた

「噂には聞いてたンスよお!! 『最近、制服型の「口裂け女」が徘徊してる』ってなあ!!
 放課後こうして張り込んでた甲斐があったってモンッスよおッ!! まじでっ!!!」

 少年は鼻息も荒く、仰向けに失神している少女に近づいていく
 勿論、その間に彼女にカメラを向けて何度もシャッターが切られた

「はあ……、マジかわいいッス……。ああ、いい……。もう最っ高ッス……!!」

 少年の名は難波津軍次
 実在化した「口裂け女」を瞬時に無力化した彼もまた只者ではない
 まあお察しの通り、彼は「写真を撮影されると魂を抜かれる」の契約者であり
 ついでに言うと「組織」所属であった
 更に言うと思春期であるが故のスケベである

 彼はまず、少女の肢体を、特に顔と胸元を嘗め回すように撮影していた
 やがて気が済んだのか、彼は数歩ほど下がると、唐突に地面にうつ伏せになった
 まるで匍匐前進でもするような姿勢だ
 丁度、倒れた少女のスカートを覗き込むような格好である

「ふっふっふ、あとは『組織』に引き渡すだけなンスけど、俺はそんな素直じゃないッスからね
 万が一『黒服』が到着するにしてもまだまだ時間に余裕はあるし、こっからがお楽しみだぜぇ……!!」

 下衆な声色で何やらいやらしいことを口にしつつ
 彼のレンズは無慈悲にも少女のスカートの中へ向けられた

「ひひひっ!! さ〜あ御開帳の時間ッスよぉぉ〜!! 『口裂け女』ちゃんはどんなの履痛でぇぇぇっ!!??」

「はーいストップそこまで」

 少年が乙女のスカートを暴こうとフラッシュを焚こうとする直前
 彼の頭頂部に物凄い勢いでヒールがめり込んだ

「痛でぇぇぇぇぇぇぇっっ!!??!!??」
「ったく、駆け付けたら案の定じゃないのよ……」

 彼は痛みを堪えながら、自分の頭をおもっきし踏み潰した元凶を睨んだ
 すぐ傍に立って少年に軽蔑の視線を送っているのはパンツスーツ姿の若い女性だ
 少年より少々年上のお姉さんのようにも見えるが、その正体は説明する間でもなく「組織」の「黒服」である
 つまり、実年齢は不明なのだ

「アンタ、そろそろ本当に担当のメガネに言いつけるわよ?」
「くっ! それで俺の弱みを握ったつもりッスかあ!? 暴力には屈しないッスよ!!」

「確か、『無力化後の必要以上の対象撮影は厳禁』、だっけ?
 カメラは没収、データは処理してナンバー経由で返却するから、覚悟してよね」

「なっ!? あっ俺のカメラがな、無いッ!?!?」

 少年が持っていた筈のカメラは、いつの間にか黒服の首に提げられている

「まったく……いくら相手が都市伝説とはいえ、何やっても許されるとは思わないことね」
「まだ何もしてねえッスよ!!! これからってときに邪魔が入っ、あっ、と、兎に角、まだ何もやってねえッスよ!!!」
「言い訳の上に、邪魔が入らなければそのままセクハラしてたってこと? 最っ低ね」
「ち、違っ!! だ、だって仕方ねえじゃねえッスかあ!!
 そりゃ性欲は自分で処理できるッスけどお!! 俺はファインダー越しじゃねえと興奮できねえンだぁぁぁぁっっっ!!!!」


 
118 :3 [sage]:2017/10/03(火) 16:12:01.02 ID:LIdqe1Xoo
 

 少年の言い訳がましい釈明に、黒服は冷ややかな眼差しで答えつつ
 手早い挙動で失神した「口裂け女」をお姫様だっこした

「精々きっついお仕置きでもされて反省しなさい。……じゃあね」

 最後の挨拶が非常に刺々しい
 黒服は「口裂け女」の少女を抱いて足早にその場を立ち去った

「ちっきしょぉぉ……、来んの速過ぎだろぉぉ、『組織』ィィ……」

 少年の口からは恨みがましい声が漏れ出るが
 実はこのとき、少年は隠し持っていたコンデジを取り出し
 密かにピントを合わせ、現場から立ち去る黒服の尻を、主に尻を執拗に撮影していたのだ

 実に、ものの数秒の犯行であった

「くっ、逆光でなければPラインまで撮影できたが……、いやこれはこれで良し!!」

 黒服が完全に視界から消えたのを見届けた後
 少年はコンデジの画面を覗き込んで撮影の出来を確認する

 そして少年は黒服が消えて行った先を物凄い形相で睨み付けた

「俺は絶対に諦めねえッス……!! 超自我の声(※性欲のこと)に従って撮影道を究めるまでなあっ……!!」








<終>
119 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2017/10/16(月) 18:19:04.71 ID:KO3LI5FA0
ここまで投下された皆さま乙ー!
鳥居の人、長く暗い鬱季を抜けて躁季に突入!さあ書くぞ!
ところで次世代の人に質問。
アブラカダブラの人と海からの人は、炎耐性はどれくらいありますか?
いや、このままいくとひかりが本格的に足手まといと化すので…
120 :「次世代ーズ」 ◆John//PW6. [sage]:2017/10/19(木) 08:06:55.68 ID:Dpk2Er25o
 
お待たせ!

>>119
お久しぶりです!
海からの人は耐性はないので勢いよく燃える筈です
燃やされたら興奮すると思います
カダブラの人は大抵どんなものでも耐性があります
炎を吸い取って相手の嫌なタイミングで返却したりします
カダブラはなるべく海からの人を攻撃から防護しますが飽きたら放置すると思う

>>110
すまない……!
元々「ピエロ」編は本筋と異質な話運びになる予定だったなので
ラブコメの方は本筋を追って頂きたく!

続きを速くアレしないと
121 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2017/11/14(火) 23:00:27.00 ID:9Rqj/fkFo
 
続きをアレすると言ってもう1ヵ月が経過しようとしている
今まで自分は何をしていたんだ
セルフツッコミせずにはいられない……


今夜は【9月】行きます

 
122 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2017/11/14(火) 23:01:21.09 ID:9Rqj/fkFo
 
○前回の話

>>61-65 次世代ーズ
※この話は作中時間軸で【9月】の出来事です
※この話は特に>>65の後の出来事となります



○時系列

●九月
・早渡、「組織」所属契約者と戦闘

・「怪奇同盟」に挨拶へ

・早渡、東中で東一葉と出会う
 花房直斗、角田慶次、栗井戸星夜から
 三年前の事件について知る

・金曜日、早渡は「ラルム」へ     ☜ 今回はこの後の話です

・東一葉、自分を取り戻す
 その夜の内に居候先を確保


・∂ナンバー、「肉屋」の侵入を予知
・「肉屋」戦


●十月
・「ピエロ」、学校町へ侵入


●十一月
・戦技披露会開催

・診療所で「人狼」イベント
 「人狼」終了後、東と早渡が遊びに来る

・バビロンの大淫婦、死亡

・角田ら、「狐」勢力と交戦
 赤鐘愛百合、アダム・ホワイト死亡、角田は重傷を負う

・新宮ひかり、角田らと「狐」の刺客に介入
 ・「ピエロ」側の暗殺者二名、ひかりらを牽制
・「ピエロ」、東区にて放火活動を開始するも妨害を受ける
・暗殺者二名、ひかり及び桐生院兄弟と交戦     ☜ >>82-86がここ

・上記と同時刻、早渡はモスマンにより重傷を負う
・同じ時間帯、イナンナによる「ピエロ」洗脳(魅了)     ☜ >>92-100がここ


・「狐」本戦?


 
123 :次世代ーズ ◆V64jkvSK0tu/ [sage]:2017/11/14(火) 23:04:12.59 ID:9Rqj/fkFo
 

「へえ、キミは春先に引っ越して来たばかりなんだ」
「はいまあ、でも直ぐ慣れるもんすよ。住めば都って言いますし」


 日没後、まだ夜の闇が完全には訪れていない頃

 商業高校の制服を着た男子が大きなトランクを持って
 コート姿の女性の後に従うように南区の歩道を進んでいた


「本当に親切で助かる。久し振りの学校町でちょっと戸惑っちゃって」
「いやぁまあ困ったときはお互い様っす」
「でもいいの? 人探してるんでしょう? 着いたらお姉さんも手伝おうかな?」
「そんな、気にしなくて大丈夫ですよ! 行き先も一緒ですし!」


 女性に先導され、商社ビル同士の隙間を進んでいく
 そこは表とは異なり一気に照明の届かなくなる影の世界だ


「ヤマダ君って学校でモテるでしょ? 優しいし気が利くし」
「無いっす! マジ無いっすよそれは! モテるだなんて可能性のカケラも無いっす!」
「そうなの? でも絶対モテるよ、ヤマダ君。意外と女の子たちに目を付けられてるかもよ?」
「えー、ど……どうっすかねー……」


 男子の方は控えめに見ても女性に対してデレデレの様子だ
 無理もない、コート着用のためはっきりと分かるわけでは無いが
 女性の容姿は思春期の男子にとって中々刺激的なスタイルのようだ


「重いトランクも運んで貰ってる訳だし、お姉さんにヤマダ君の人探し手伝わせてね」
「そんな! 悪いですって!」
「いいのいいの、お姉さんの知り合いに人探しのプロがいるから」
「プロ、ですか。探偵みたいな感じっすかね?」
「んーまあそんなとこかな」


 女性と男子は路地裏を縫うように進んでいく
 もう、そこは人気の全く無い一角だ
 繁華街の喧騒が何処か遠くに聞こえる


「ちなみに探してるのってどんな子なの?」
「幼稚園生くらいの男の子っすよ、知り合いの子なんですけど」
「へー、南区で迷子になっちゃったのかな?」
「ええ、もう居なくなって大分経つらしいんで自分のとこにも探してくれって連絡が」
「へー」


 ようやく女性はビルの前で立ち止まった
 陽も落ちており、灯りは遠くからの便り無い光のみだ
 その為おぼろげにしか分からないが兎に角古いビルのようだ

 古いビルの裏口に来ているらしい
 二人は今、やや錆び付いた金属製のドアの前に立っていた


「じゃあ、お姉さんは知り合いに連絡してみるから
 ヤマダ君、悪いけど最期の一仕事お願いできる?」
「任せてください!」
「そのドア開けたら階段があるから、地下のバーまでトランクを運んで欲しいの」
「了解っす!」


 女性の言葉に従い、男子はドアノブに手を掛ける
 意外と抵抗の強いドアは、金属の軋む音と共に押し開けられた
 内部から一気に生温かく、埃臭い空気が男子に向かって押し寄せてきた

 中に照明は無く、闇一色だった

 よし、一仕事だ

 地下へ続く階段へと運び込もうとしたトランクを、男子は横合いへと投げ捨て
 後方より振るい下ろされた警棒を、生成した“黒棒”で振り返ることなく受け止めた

 
124 :次世代ーズ ◆inf1WNjJ1sIa :2017/11/14(火) 23:05:02.84 ID:9Rqj/fkFo
 



          ●



「生成が甘いぜお姉さん。それとも“お巡りさん”と呼んだ方がいいか?」
「……っっ!?」


 「ラルム」に行ったものの千十ちゃんとコトリーちゃんには会えず
 おまけにバイトのお姉さんには絡まれるし、東高校の女子には睨まれるしで
 早々に退いた帰りに、「人面犬」の半井のおっさんから連絡があった
 聞けば「知り合いの『コロポックル』のガキンチョが一匹迷子になった」らしい
 で、即答で迷子捜しの手伝いに加わることになったが、早速都市伝説と遭遇だ

 はっきり言えば切っ掛けは偶然だ
 繁華街の手前で堂々と俺に声を掛けてくる都市伝説に会った
 普段なら適当に言い訳してナチュラルにその場を早急に立ち去るんだが
 このお姉さんから問題の『コロポックル』の子の“波”を微かに感知したとなれば話は別だ

 (お前は犬かよ)
 半井のおっさんにはイヤミ言われたが、まあなんだ
 事前に『コロポックル』の子の服から“波”を嗅いどいて正解だったな、うん


「まさか……っ、契約者だったなんて……!?」
「俺をこんな所まで誘い込んでどうする積りだったんだ、『偽警官』さん」
「くッ……!!」


 動揺を振り切るようにお姉さん、「偽警官」はコートを脱ぎ捨てた
 コートの下は警官の制服だったようだ

 「偽警官」の手が腰へと動いた、だが、その動きは予想出来てる

 “黒棒”の形成を崩し鞭のようにしならせる

 彼女の手を打ち据えると同時に得物を奪い取った
 旧式の回転式拳銃だ


「ぐぅ……っ!」
「 跪け 」
「うっ、ああっ!?」


 一気に畳み掛ける
 「偽警官」は膝から崩れ落ちた


「ちょっ、調子に乗るなよぉぉっ、ヤマダぁぁっ!!」
「 這い蹲れ 」
「ぐっ、んんッ うっ、あ゙っ


 一応断っておくが俺の名前は山田では無く早渡だ
 山田ってのは「偽警官」に会ったとき咄嗟に名乗った偽名だ

 彼女は完全にうつ伏せ状態になっていた
 時折痙攣したように身を震わせるが、もう立ち上がることは出来ないだろう


「こっ、……こんな、餓、鬼にぃぃっっ……っ


 何処となくエロっぽい声を上げてるのは気の所為ですかね?
 まあいい、倒れた「偽警官」を見下ろし
 そのとき初めて彼女の傍らに注射器が落ちているのに気づいた

 彼女の右手の直ぐ傍だ、直前まで隠し持っていたものか
 周囲の気配に警戒しながら、それを拾い上げ、遠くの灯りを元に確認してみる

 赤い薬剤が詰まった注射器だった


 
125 :次世代ーズ ◆rq441qm2oDFn [sage]:2017/11/14(火) 23:05:59.49 ID:9Rqj/fkFo
 

 「偽警官」のトランクに入っていたのは謎の白い粉の詰まった無数の袋
 色々疑惑と想像が働くものの、今俺が探しているのは「コロポックル」の少年だ

 廃ビルの中に踏み入り、階下へと進んでいく
 当然ながら灯りは無い、そして当然ながらその先に何らかの気配を感じる

 間違いなく都市伝説がいる、こちらを待ち構えているようだ
 だがそれだけじゃない、先程よりも件の「コロポックル」の子の“波”が強くなってる気がする

 恐らくここだ、ここにいる

 階段を下り切った直ぐ横にあったのは木製のドアだ


 蹴破るように中へ押し入る


 空間を無数の殺気が奔った

 だがあまりにも直線的、おまけに殺気の元は全てある一点だ

 手に持った“黒棒”を振るい、鞭のようにしならせる

 警戒しろ、油断するな、罠かもしれない

 “波の先触れ”に警戒しながら

 殺気の源へと“黒棒”の先端をやたらめったらにぶち込んでいく

 手応えは、あった


「げほっ、ンがっ、あ゙っ、ごっ!!」


 暗闇の向こうから押し殺した呻き声が断続的に響いた
 何というか、軽い、軽過ぎる

 気配と呻きの響き方からして相手は床に倒れているようだ
 少なくとも直前までの殺気は完全に消え失せていた

 ポケットをまさぐり携帯を引っ張り出す
 相手をボコボコに叩き伏せたとはいえ、こうも暗いと流石にやり辛い
 ライトを点けようと携帯を弄って、で、どれだ? あ、これか
 一瞬の眩しさの後に映ったのは真っ黒の塊が床に蹲っている光景だった
 いや、真っ黒の塊というより真っ黒に汚れた男がそこに居た
 よく確認すれば、何というか普通に居そうな髭面のおっさんだった


「ぐはっ、ごほっ、くっ、まさか、こんな、餓鬼に」
「上でも聞いたぜ、おんなじセリフ」


 “黒棒”を解き、鞭の形状にすると天井へと振り上げた
 先端が天井を突き破り、裏に這わされていた配線を掴んだ
 これを使おう、再び天井を突き破り一直線におっさんへ突き刺すと
 配線コードを利用する形でおっさんの体をがんじがらめにした
 そのまま一気に引っ張り上げる


「ぐおおおおっ、貴様ぁっ!?」


 丁度問題のおっさんは今、天井から吊り下げられるように縛り上げられていた
 見たか、これが修行の成果だ

 
126 :次世代ーズ 26 「流入者達」 4/6 ◆John//PW6. [sage]:2017/11/14(火) 23:08:17.55 ID:9Rqj/fkFo
 

「あんた、『臓器泥棒』だろ? 何だよ『漁って』たのか?」
「……ほう、餓鬼の分際で、ぐっ、俺のことを、ごほっ、知ってるような、口振りだな」
「臭いで分かんだよ、あんたにこびり付いた血の臭いがな」


 おっさん、正しくは「臓器泥棒」は闇の中で嗤っていた
 口から垂れ出た血反吐が荒い息で噴き飛ばされていた


「く、ごふっ……、これでは、どっちが化け物か、はぁ、分からんな」
「うるせえ俺は人間だ」


 「臓器泥棒」のぼやきに殆ど無意識で返していた
 ライトに照らされた「臓器泥棒」の目が敵意と憎悪で揺れている


「どこの手のモンだ、『組織』か、『首塚』か?」
「犯罪者に話す情報は無い」


 「臓器泥棒」が僅かに身動ぎしたが大きな呻きが漏れただけだった
 関節と骨を縫い付けるようにして配線コードを貫通させたので
 頑丈な都市伝説とはいえ、動くのは容易じゃないだろう
 ましてや天井から吊り下げられてるんじゃ尚更だ


「おっさん、あんた『コロポックル』の子供を誘拐したろ」
「さあ、知らんな」
「とぼけんなよ、市場で売り飛ばせば高い額になるからな。その子をどこへやった?」
「横からくすねに来たのか、糞餓鬼が。話すことは何も無い、何もな」


 「臓器泥棒」は無理矢理口角を吊り上げるようにして嗤っている
 汚い笑顔を俺に見せ付けるかのようにだ

 息を吐いた

 一応周囲の“波”に警戒してみせたが
 目の前の「臓器泥棒」以外に伏兵の気配は無さそうだ
 いや、部屋の隅の方が微妙に怪しい

 ライトを「臓器泥棒」の顔面に当てたまま、おもむろに周囲を見回す
 此処は長らく使われていないバーのようだった
 テーブルと椅子が床に転がっており大分埃が堆積していたらしい

 突如携帯が震える、「人面犬」の半井さんからだ
 即座に着信に応答する


『どうだ早渡! 見つかったか?』
「おっさん、ビンゴだ! 入ってきてくれ!」
『今行く!!』


 通話が切れた直後、階上からバタバタと大きな物音が響いた
 階段を何かが転がり込むように音がこちらへ近づいてきた


「早渡、どうだ!?」「れおん見つかったか兄ちゃん!?」


 異なる声が二つ、一つは北海道犬な「人面犬」の半井のおっさん
 もう一つはホワイトシェパードな「人面犬」の新谷さんだ


「なっ、何だよコイツは!? 誰なの!?」
「人身売買やってる犯罪者だよ。新谷さん悪い、こいつ見張っててくれ」
「ええ!? 見張る!?」
「大丈夫、近接タイプみたいだ。直接触れなきゃ問題は無いよ」


 殺した声で新谷さんにそう伝え、「臓器泥棒」の監視を任せた



 
127 :次世代ーズ 26 「流入者達」 5/6 ◆John//PW6. [sage]:2017/11/14(火) 23:09:04.43 ID:9Rqj/fkFo
 

「なあ早渡、上で転がってた姉ちゃんをやったのはお前か? 容赦ねえな」
「言っとくけどあの婦警さん俺を後ろからブン殴ろうとしたからね? [ピーーー]積りで来てたからね?」
「うへ、おっかねえ」


 先程気になった部屋の隅は、丁度バーのカウンター裏の部分だった
 半井さんと一緒に回り込むと、床に大きなバッグが放置されていた
 まるで子供が一人だけ入れそうなサイズのバッグだ


「ビンゴだ早渡」
「無事だよな?」


 ファスナーのには簡易的な気配殺しの結界が取り付けてあった
 誘拐屋が商品を隠すために使う初歩的な手だ
 むしり取るようにして引き千切った

 無事で居てくれよ
 ファスナーを一気に開き、ライトを照らす

 口をガムテープで塞がれた子供が居た
 顔面は涙と鼻水で汚れているが怪我は無さそうだ

 手を差し入れてそいつを抱き上げた










 もう用は済んだ、これ以上此処に留まる必要は無い
 階段を駆け上がって外へ出たとき、辺りは完全に夜の闇に染まっていた

 「偽警官」はまだ地面に倒れたままだった
 様子を見るにあのまま意識が落ちたらしい


「ったく、メソメソすんじゃねえ!」


 背後から半井のおっさんの押し殺した怒号が飛んだ
 顔だけ後ろへ向けると「コロポックル」の少年、れおんが何度も目を擦っている


「っとーにテメーってやつはよ、勝手に飛び出しやがって」
「まあいいじゃん、おっさん。無事で済んだんだしさ」
「駄目だ早渡、こういうときに甘やかすとつけあがんだよ!」


 口を塞いだガムテープと手足の拘束は既に解いてある
 一応“波”も確かめたがあの連中に何かされた形跡は無いようだった

 この子は自分で立てると言ったんだからそれだけで立派なもんだと思うがな
 俺がこれくらいの子供のときに同じことされたら間違いなく漏らしてる自信がある


「おい小僧、こいつにお礼言ったか!?」
「ごめんな、兄ちゃん、迷惑、かけて、ごめんな」


 まあ現に泣いてるんだから怖いもんは怖かったんだろう
 めっちゃ目玉をうるうるさせて謝られた


「気にすんなって、こういう日もあるさ」
「うん、ありがとな」


 それだけ言うとれおんはまた両目を激しく擦り出した
 これを可愛いと言ったら、まあ不謹慎だな、不謹慎だろうか

 
128 :次世代ーズ 26 「流入者達」 6/6 ◆John//PW6. [sage]:2017/11/14(火) 23:09:38.78 ID:9Rqj/fkFo
 

「で、どうする早渡。こいつらはほっとくか」
「後のことは『組織』に任せよう。もう捕捉されてるかもしれない。俺たちも此処に居ちゃまずい」
「よし、とっととずらかるか」


 新谷さんはれおんを慰めようとしてんのか、彼の手をしきりに舐め回している
 それを見て己のきゅんきゅんゲージの高まりを感じながら、半井のおっさんに生返事した


「じゃ、おっさん、念のため先行して様子を――」
「駄目だ! もう来てる!! 『組織』だ!!」
「ッッ!?」


 完全に不意を突かれた
 おっさんが睨んでる方向に視線をくれると、ビルの谷間から二名がこちらに向かっていた
 一人は女子だ、東区中学の制服を着ている
 もう一人は男子――なんてことだ!? 先日やり合った刀使いじゃねえか!?
 やべーぞ速く逃げないと!!


「新谷さんとおっさんはれおん連れて先に行け! 俺は、あれだ、何とかする!」
「よっしゃ、新谷! れおん乗せて走れ! 急げ!!」
「あっ、こらっ、待ちなさい!!」


 俺たちのやり取りが聞こえたのか聞こえなかったのか知らないが
 その場を走り去ろうとしたおっさんズを見てか、女子の方がこっちへ走り出した
 大丈夫だ、新谷さんと半井のおっさんは逃げ足が速い。問題ない
 するとヤバいのは俺か、俺だな


「そこから動かないで!!」


 女子の声が迫って来た
 咄嗟に“黒棒”、では無く、“黒棒”を一気に潰した布状の帯をがむしゃらに顔面に巻き付けた
 一応即席の覆面だ、大丈夫、まだ顔をはっきり見られた訳じゃない、無問題だ!

 女子の後方、刀使い男子の方を睨んだ
 奴もこっちを見ていた、完全に視線がかち合った

 あちらも俺が誰なのかに気付いている
 確実に

 大地を蹴る
 俺はビルの壁を走るように、上方へと駆け出した
 目指すは屋上だ、上に逃げてその後のことはそれから考える!


「あっ、待てっっ!!!」


 女子の可愛いらしい声を下方に聞きながら
 俺は滅茶苦茶に脚を動かした











□□■
129 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2017/11/14(火) 23:10:26.20 ID:9Rqj/fkFo
 

前から登場している人物

・早渡脩寿
 学校町の商業高校一年
 契約者で、学校町の都市伝説勢力には所属してない
 以前からの悩みは「不良と勘違いされること、特に妙なのに絡まれること」

・半井
 人面犬
 自称北海道犬の血を引くクールガイ
 直接の登場は次世代ーズ第1話振りになる



新しく登場する人物

・新谷
 人面犬、の筈だが口吻があり眉毛がある程度なので
 ほぼ犬にしか見えない。ホワイトシェパード
 半井のおっちゃんを慕っている
 近畿地方出身らしい

・れおん
 コロポックルの少年
 外見だけでなく本当に少年だそうだ
 新谷さんの背中に乗れる程にちんまい
 本当の名前は別にあるらしいが、本人曰く「れおんが本当の名前」
 コロポックルは闇市場で「珍しいため高く売れる」らしく、業者に狙われやすいという
 
130 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2017/11/14(火) 23:14:04.21 ID:9Rqj/fkFo
 
今回はここまで
今週中にまた頑張りたい

なお……>>123-125にかけてタイトルにミスがあり
トリップが狂ってますが完全にこちらの不手際です……
131 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2017/11/17(金) 21:54:29.58 ID:9QxRefeYo
 

○前回の話

>>123-128 次世代ーズ
※この話は作中時間軸で【9月】の出来事です



 
132 :次世代ーズ 27 「担当待ち」 1/3 ◆John//PW6. [sage]:2017/11/17(金) 21:55:32.44 ID:9QxRefeYo
 

 この部屋は照明があるとはいえ、暗い
 「組織」所属の契約者、サスガは椅子に座ったまま思案していた
 数時間前の件は先にメールで報告を済ませてある
 あとは担当の黒服に直接口頭で引き継ぎを行うだけだ


「フリーの契約者なのかなあの人達、『首塚』って雰囲気でも無かったし」


 サスガからやや距離を置いて佇んでいるのが
 先刻行動を共にした“モヒート”こと見辺 加賀実(みべ かがみ)だ
 彼女はサスガと異なる中学に通学する一年生で「コークロア」の契約者だ
 サスガの二つ下の後輩に当たり、「組織」の仕事では組まされることが多い

 数時間前、彼らは南区の繁華街を巡回していた
 その際に裏路地から都市伝説の気配を複数察知し
 追跡したところ、現場から逃走する契約者と都市伝説を発見した
 所謂“野良”の契約者による襲撃かと現場に駆け付けたところ、「偽警官」が倒れていた

 更に気配を感じ、付近の廃ビルを確認して地下のバー跡から
 天井より吊り下げられるように拘束されている「臓器泥棒」を発見
 この都市伝説二名の身元が近年発生していた人身売買事件の有力容疑者として
 「組織」のデータベースに登録されていたため、「臓器泥棒」と「偽警官」の捕獲を優先したのである

 この他、「偽警官」が所持していたと思しきトランクからは大量の白い粉末が
 バー跡からは複数の監禁用具が発見されており、二名の身柄と共に「組織」付の黒服へ引き渡してある
 詳細はこれより調査が進むだろうが
 この二名は恐らく「赤マント」や「狐」関連事件の裏で密かに活動していた人身売買の犯罪者だろう


「自警団のつもりか知らないけど、危ないからほんと止めて欲しいわ。まったく」


 “モヒート”は苛立ったようにそう独り言ちる
 やや置いて、彼女はちらとサスガを盗み見たが
 サスガは彼女の様子など意に介さず黙考を続けていた


 現場から逃走した契約者と都市伝説
 契約者には見覚えがあった、忘れもしない
 あれは以前、夜の東区中学で遭遇した契約者だった
 逃走の際に「人面犬」が一緒のようだったが、あれは契約者の仲間だろうか

 あれは何故あの場に居たのか
 あれは一体あの場で何をしていたのか

 都市伝説犯罪者との小競り合いだったのか、それとも
 あるいは仲間割れという線も否定できなくはない
 しかしサスガの直感がそれを否定していた
 ならば

 今回は容疑者の捕獲を優先し、現場から逃走した者の追跡は行わなかった
 一応メールでの報告には逃走者の存在を記載しているし口頭でも報告を行うつもりだ
 しかし


 
133 :次世代ーズ 27 「担当待ち」 2/3 ◆John//PW6. [sage]:2017/11/17(金) 21:56:20.19 ID:9QxRefeYo
 

「先輩、ねえ。ねえったら。……“オサスナ”」


 “モヒート”の声に現実へ引き戻される
 僅かに首を捻り彼女の方を見やれば、半眼でこちらを睨んでいた


「先輩、まただんまり?」
「じき担当が到着する時分だ、報告を終え次第本日は解散する」


 相変わらず彼女はじっとりサスガを睨んだままだ


「報告は俺がやる。お前は先に帰っても良い」
「そうじゃなくて」


 続きを口にしかけ、不意に“モヒート”は黙った
 代わりに部屋の入口へと視線を注いでいる

 視線の先を追うと、ドアの間から少女がこちらを覗いていた
 サスガと目が合ったのか、少女は小さな悲鳴を上げて引っ込んでしまった


「もう、いつから居たの」


 ドア越しの少女に声を掛ける“モヒート”の声は
 直前のサスガに向けた言葉と違って幾分か柔らかい


「来てたんなら挨拶してくれたっていいでしょ?」
「だって、真面目なお話、してたみたいだったし……」
「他の黒服さんに見つかったら怒られちゃうよ? 入って入って」


 もじもじしながら入って来たのは割烹着姿の少女だ
 外見は小学生中学年ほどだが実態は「組織」所属の都市伝説
 独り身の老人が入浴中に死亡し、追い炊きされ続けて死体が煮崩れを起こしたという怪談
 世に言う「人肉シチュー」が顕在化した存在である

 彼女は割烹着の裾をいじいじしながら頻繁にサスガの方をちらちら見ているようだ


「こんな所に来たら大変だから、ね?」
「ううー、でもー」
「“穏健派”所属が此処に居たら面倒だ。“モヒート”、送れ」


 突如サスガが口を開いたためか
 割烹着の少女はうぴゃいと謎の小さな叫びを上げて硬直してしまった

 言われた“モヒート”は半眼で冷たい一瞥をサスガに投げる
 フンと鼻を鳴らし割烹着の少女を連れ足早に部屋を出た

 
134 :次世代ーズ 27 「担当待ち」 3/3 ◆John//PW6. [sage]:2017/11/17(金) 21:57:51.37 ID:9QxRefeYo
 









「普通女子に向かってあんな口の利き方ってあり得ないわ、ほんと」
「仕方ないよ、お兄ちゃんもお姉ちゃんもお仕事終わったばかりなんだよね」
「アイツってば、いつもあんな感じだし。あれは絶対女子にモテないわね。うん絶対」


 暗い廊下を割烹着の少女が“モヒート”に連れられて行く
 目指すは少女が所属する穏健派のオフィスだ
 “モヒート”は実質サスガに帰れと言われたのを口実にもう帰るつもりだ
 折角待ってやってたのが馬鹿みたいだったと彼女は若干キレていた


「今日はどうしたの? 私たちに会いたくなっちゃった?」
「うん、あのね。黒服さんがいっぱいドーナツ買って来てて
 いっぱいあるから、お姉ちゃん達もおなか空いてないかなって」
「ああんもう、優しいなあ!」


 歩きながら“モヒート”は割烹着の少女を抱き締める
 もふもふされながら少女は先程よりボリュームを落とした声でもじもじし始めた


「えっと、それでね、お兄ちゃんの分も、持って行った方がいいかなー、って……」
「え、アイツ? 先輩のこと?」
「うん……」


 うーん
 少女の優しさに“モヒート”は苦笑を浮かべる


 “モヒート”は知っていた
 “オサスナ”ことサスガ先輩は甘いものが苦手であることを
















□□■
135 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2017/11/17(金) 21:58:56.23 ID:9QxRefeYo
 
前から登場していたの

サスガ
 フルネームは流石 丈(さすが たけし)、コードネームは“オサスナ”
 「組織」強硬派所属の中学三年生男子
 契約した都市伝説は「校庭に現れる落ち武者の霊」
 甘いものが苦手で、食は淡泊
 過去に早渡と交戦済み
 彼の活躍は以下を参照されたい
 早渡と交戦した回(早渡視点)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1483444899/206-211
 早渡と交戦した回(サスガ視点)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1483444899/216-220
 「偽警官」と交戦した回(“モヒート”と)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1483444899/610-611

モヒート
 本名は見辺 加賀実(みべ かがみ)、“モヒート”はコードネーム
 「組織」強硬派所属の中学一年生女子
 契約した都市伝説は「コークロア(_Mod.A)」
 彼女も過去に登場済み(詳しくは上記リンクをチェック)



今回初登場の

 割烹着の少女
 「組織」穏健派所属の女の子
 「人肉シチュー」の都市伝説である
 まるで給食の時間に割烹着を着た小学生の女の子といった容姿をしている
 彼女の外見は上記都市伝説からの関連が想定しえない形態だが真相は不明

 彼女は今回のように
 時折穏健派のオフィスを抜け出しては強硬派所属の彼らに会いに行く






 
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/01(金) 02:30:41.79 ID:qQoPleqs0
クリスマス暇?
俺と遊ばない?
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/01(金) 02:37:37.36 ID:qQoPleqs0
>136は忘れてほしい…忘れるんだいいな
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2017/12/02(土) 16:24:18.60 ID:s2QlkyhR0
皆さん乙です
クリスマスは例外なく過疎ってたからな
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 19:05:21.00 ID:QpNGUq6Fo
その裏切りを私は忘れない
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2017/12/03(日) 20:29:17.92 ID:UhosLhfl0
儂はアクマの人がサンタコスを書いてくれるのに望みをかけておるよ…
ノイちゃんも沢渡もサンタコス着ようぜ
141 :大王は伝説使徒 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2017/12/24(日) 22:33:10.26 ID:JEwpHkLf0
特に理由のないクリスマス投稿が都市伝説スレを襲う!

という訳でアーバントの人、もとい大王の人だよ。たぶんテンションおかしいけど、気のせい。
例によって伝説使徒のね……筆が進むんだよ。特にサッカー少年のほう。
今回の投稿で

●前回(>>12-18
人知れず伝説使徒を倒し、周辺の治安を守る少年がいた。
その少年は【こっくりさん】と契約し、その肉体を貸し与える事で、戦う力を得ていた。

さて……幼いうちに伝説使徒と関わってきた少年も、いよいよ中学生となる。
はたしてどんな未来が待ち受けているのか―――
142 :sample02-02 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2017/12/24(日) 22:34:05.48 ID:JEwpHkLf0
 少年は、そわそわしていた。

 少年の名は[服部 蹴斗(はっとりシュウト)]。今日から中学生となる。
 新しい出会い、より高レベルな部活動、そして……

『そんなに楽しみなんだ』

 頭の中に声が響く。
 蹴斗の隣には、【こっくりさん】と呼ばれる少年がいた。

 伝説使徒(アーバント)……それは人間どころか動物ですらない。
 しかし確実に知性を持って、そこに生きているという『ミーム』を持つ、不思議な存在。
 【こっくりさん】も、そのひとりである。

 蹴斗はより幼い頃に【こっくりさん】と契約した。
 その力で、身の回りにいる狂暴な伝説使徒を倒してきた。
 今となっては長い付き合いの相棒である。

「(あぁ、当然さ。だって……)」

 蹴斗は口ではなく心で唱えるように返事する。
 ふたりはもう、口ではなく心で通じ合えるほど深い繋がりを得ていた。

 そんな蹴斗が待っているのは、【こっくりさん】よりも古い親友である。
 その名は[又木 十三(またぎジュウゾウ)]。蹴斗とは幼馴染だ。

 とある事情により、親友は小学校の頃に遠くへ引っ越した。
 蹴斗はとても悲しんだが、再会の約束をして見送った。
 そんな親友との再会が、今日やっと果たされるのである。

 【こっくりさん】には、そういう友情は分かり難いものだった。
 それでも妙な温かさが、主である蹴斗から伝わった。
 不思議と、自分も楽しみになるような……

 ふと戸が開く。蹴斗は、入ってきた顔に見覚えがあった。

「おーい!……って」

 蹴斗の声に、親友の又木が手を振り返す。その後ろには……。





 猟銃を胸に抱えた、強面の大男が続いていた。





 思わず蹴斗は吹き出し、口を押さえる。
 ふと周りを見ると、クラスメイトの視線はこちらにあった。
 また、【こっくりさん】は十円玉の中に隠れたようだ。

「(もしかしてだけど、あれ……。)」
『うん、伝説使徒。普通のクラスメイトは気づいてないよ』
143 :sample02-02 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2017/12/24(日) 22:34:46.62 ID:JEwpHkLf0
 伝説使徒は『ミーム』によって構成されている。
 よって実体はなく光を反射しないため、目で見る事はできない。
 例外はあるが、確実に見えるようになる方法は2つ。

 1つ、伝説使徒のターゲットにされる事。
 もう1つ、伝説使徒と契約する事。

「(あれにオレしか気づいてないのか……敵じゃない、のか?)」
『殺し屋みたいな顔だけど、妙におとなしいよね。』

 考察する蹴斗達の方へ、又木は歩み寄る。
 そして一定距離を保つように、マタギのような風貌の強面伝説使徒がついていく。

「よ、久しぶり!」
「あ、あぁ、久しぶり。」

 又木の挨拶に、少し戸惑いつつ蹴斗は返す。
 後ろを気にしながら旧友を深めたが、これと言って変わったところはないようだ。

「変わりないようで良かったよ。」
「そういう蹴斗は、ちょっと大人びいた感じだな。」

 指摘されて気付く。伝説使徒との戦いは、常に命懸け。
 そんな世界で生きているうちに、普通の子どもとは言えなくなっていたようだ。
 ……現に今も、撃たれそうな恐怖と戦っている。

「あ、それで思い出した。今日は肝試し大会があるそうだぞ。」
「肝試し……」

 よくあるイベントである。暗い夜道をビビったり、一周回ってハイテンションで駆けたり。
 が、そういったものには噂……ミームが付随する。
 つまり肝試しの舞台は、伝説使徒の巣という他ない。

「あまり好きじゃないな……」

 伝説使徒は、人を襲ってミームを保つ。蹴斗は平穏主義者だ。
 犠牲者が出ないようできる限り倒したいが、クラスメイト全員を守り切れるかは怪しい。
 いっそ中止に追い込みたいが……。

「安心しろ、オレがいるから。」

 又木は自信満々に指差す。

「なぜか知らないんだけど、俺の周りだと心霊現象は起きないんだ。
 呪いの石は砕けるし、こっくりさんは失敗するし……。」
「(あぁ、コイツのせいか……。)」

 蹴斗の視線は大男に向く。目があったが、その思考は全く読めない。

『たぶんこの殺し屋マタギ、自分を【守護霊】だと思い込んでいるんだよ』
「(思い込む?)」
『伝説使徒では稀にあるんだ、自分が何者か分からないってこと。
 【守護霊】は武器を持たないはずだし、本当は【悪霊】なんじゃ……』
144 :sample02-02 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2017/12/24(日) 22:35:24.80 ID:JEwpHkLf0
 伝説使徒はミームによって自らを保つ。つまりミームとは手段である。
 このマタギの風貌をした殺し屋面の大男は、【守護霊】という手段で自らを保っているのだ。
 しかし【悪霊】として生まれた可能性もあるし、あるいはもっと異なる存在だったかもしれない。
 全ては謎に包まれている。

「だからオレと一緒に回ろうぜ、なんて―――」
「いや、ちょっと良いか?」

 又木の提案を、蹴斗は遮った。

「……信じてもらえないだろうけど、俺の周りではよく起こるんだ、そういうの。」
「えっ……じゃあ本当に付き合おうか?」
「いや、俺は俺で対処するから……別の班を守ってくれないか?」

 蹴斗は又木とヒソヒソと相談する。
 自分ひとりでは守り切れなくとも、又木の協力があれば負担が少なくなる。
 この大男を信用していいかは不明だが、親友である又木を信用した。

「とりあえず調べて、何も無かったら一緒に行こうぜ。」
「あ、あぁ、分かった。」

 そう言っている間に学校のチャイムが鳴る。入学式の時間だ。
 全員が席に座って数分後、教師が入ってくる。

「えーっと、初めまして。今日から俺が担任だ。宜しく。」
「「 雑ッ! 」」
「自己紹介は後々。先にちゃっちゃと並んで、入学式を済ませようぜ。」

 投げやりな態度の教師に渋々従い、全員が廊下に並ぶ。
 その間も、蹴斗は肝試しについて考えていた。

「(オレと十三以外にも、契約者とか居たらなぁ)」
『いるよ。』
「(えっ、マジか?)」

 蹴斗の思い煩いを、【こっくりさん】が払拭する。

『殺し屋マタギが入ってきた時、キミ以外にも反応していた生徒が居たんだ。
 確実に、見える人……おそらく契約者だろうね。顔は憶えたよ。』
「(ありがてぇ。後で教えてくれ。あとは……。)」

 入学式が始まり、校長の気だるい挨拶が行われている中、蹴斗は手袋をはめる。

「(こっくりさん……鳥居へ。)」
『あいさー。』

 右手の手袋に書かれた鳥居マークへ、【こっくりさん】が吸い込まれるように入っていく。
 そして左手の掌には、見づらく『Y』『N』と書かれていた。

「(肝試しの舞台には伝説使徒がいる?)」
『……Yes。』

 右手の指先が、左掌の『Y』を差す。
 そう、【こっくりさん】による儀式を、簡略化した手袋だ。

 いちいち儀式を行わないと、【こっくりさん】は全知なる情報源へアクセスできない。
 複雑な疑問であれば、50音表やタイプライターを使って儀式を始める。
 しかしこの手袋があれば、2択の疑問をすぐ解決できる。
145 :sample02-02 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2017/12/24(日) 22:37:41.29 ID:JEwpHkLf0
「(数は10体以上?)」
『……No。』
「(良かった、5体以下か?)」
『Yes。ちなみに、反応していた生徒は4人だったよ。』

 クラスメイトは約30人。5人ずつ別けるなら6組だ。
 蹴斗、又木に加え、4人の契約者を班長にすれば、襲われるリスクを軽減できる。

 そうこう思案している間に、入学式が終わる。
 クラスに戻ると、さっそく自己紹介が始まった。

『じゃあ、教えるからメモしといてね。』

 男子2名、女子2名が該当者だった。
 女子に任せるのは気が引ける……と思う反面、契約者なら他のクラスメイトより強いか、とも考える。
 一か八か、とりあえず試すか。

「―――という訳で、肝試しの班長だが。」
「はい先生!」
「なんだ、トイレか?」
「そうトイレ……じゃなく! 班長に立候補です。」

 そう言った後、又木と契約者4名を班長に推薦する。

「ふん……。」
「面倒くさいけど、まあ良いぜ。」

「アンタの推薦っていうのが気に入らないけど。」
「は、班長……できるかな……?」

 男女4人の反応はそれぞれだった。
 又木に視線を送ると、こくりと頷いてくれた。

「ま、くじ引きとか面倒くさいし、せっかくなんで6人にやってもらうか。
 という訳で、班長集合〜。」

 今回ばかりは教師のズボラに救われた、と思う蹴斗。
 契約者(+マタギの霊)は教師の前に集合した。

「班はざっくり別けるから、その間にしおり読んどけ。」
「じゃあ……『ドキドキ!? オンボロ旧校舎ツアー』?」

 教師曰く、貧乏性でいまだに取り壊せていない旧校舎をそのままホラースポットにしたらしい。
 定期的に清掃もするらしく、衛生面での問題はない。
 精神衛生上の問題は多々ありそうだが。

「色々あったらしいぞ。旧校舎でのいじめだとか、飛び降りだとか……。
 妖怪を見たって噂もある。しおりに纏めてあるから読んどけ。」

 以前知り合った『同業者』によると、ミームとは『生き残れるよう進化する情報』だそうだ。
 より伝達しやすく、より末永く語り継がれる【怪談】というミーム。
 それを伝説使徒が補強し、事実性を高める。その結果、【怪談】はより強くなる。
 新入生に語り継がれるこのしおりは、伝説使徒が生み出したミームの化身なのだろうか。

『ボク達にとっては、ありがたいぐらいだけど。』
「(人を襲う伝説使徒は、ごめんだね。)」
146 :sample02-02 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2017/12/24(日) 22:38:14.69 ID:JEwpHkLf0
 単なるエンターテインメントでは終わらない。過激化した伝説使徒は人を襲う。
 その方が語る側・聞く側も面白いのだ。だからミームは拡散される。
 不思議な事に、この脅威を生み出してしまったのは人間そのものである。
 しかし、それでも、守りたいものがある。蹴斗の決意は固い。

「じゃあ、時間になったら来いよ〜。」


―――夕刻

 このお遊びに付き合う、怖いもの知らずなクラスメイトが集う。
 班に分かれ、10分毎に異なるコースで旧校舎へ向かう……というルールだ。

「さっさと行くか……。」
「に、2番目は、私達……10分後だね……。」

 第1班が気怠そうに向かう。第2班も震えつつ準備していた。
 正直頼り難いが、危険を回避するぐらいはできると信じたい。

「(俺は第4班で、十三は第6班。大丈夫だと信じたいが……)」
「居たわね。吹き出しくん。」
「ふ、ふきだしって……あっ!」

 声をかけてきたのは、第3班の班長である女子。
 [神倉 美子(かみくらミコ)]。巫女の家系らしい。

「吹き出した上に班長に立候補だなんて、目立ちたがり屋さんね。
 おまけにアタシ達まで巻き込んで。」
「悪かったな。同じ契約者同士、伝説使徒を倒そうぜ?」
「……アンタ、ホントに能天気。」

 美子は呆れるような溜息をつく。そして蹴斗の反論を待つ間もなく続ける。

「契約者同士って本当に仲良しこよしかしら?
 アンタが思っているほど、伝説使徒との契約は平和なものじゃないわよ。」
「うっ……。」
「なにより。アンタごときに伝説使徒を倒せるの?
 強さも数も、何も分からない相手に、大した自信ですこと。」

 まったく反論できない蹴斗。そんな沈黙を破ったのは。

「分かるよ。」
「なに?」

 【こっくりさん】だった。蹴斗の肩にしがみ付きつつ、答える。

「蹴斗が分からない事は、ボクが教える。足りない力は、ボクが補う。
 それで良いでしょ? 『護符売りの美子』さん。」
「……詳しいのね、オチビさん。」
「チビじゃないやい! あと、君のことは【風のウワサ】で調べたよ。
 狡い商売だねぇ。まぁ契約者らしい儲け方だろうけど。」

 【こっくりさん】の挑発により、美子との険悪な空気が漂う。
 諍いがしたいわけではないのだが……と思う蹴斗だった。
147 :sample02-02 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2017/12/24(日) 22:38:52.03 ID:JEwpHkLf0
 ふと、表現しがたい殺気のようなものが背筋を襲う。

「ひっ。」
「あ……その顔、あの時と一緒だねぇ。」

 見回すと、又木が手を振ってやってくる。

「えっと、お話し中だった?」
「……別に?」

 そっぽを向いて去ろうとした美子だったが、立ち止まり。

「これ……1枚・千円だから、大事に使ってよね。
 アンタは……要らないでしょうね。」

 そういってお守りを4つも渡された。礼を言う暇もなく、第3班は出発する。

「4人分か……ありがたいな。」
『気に食わないけどね。』

 あとで班員に配ろうと決めつつ、又木の方を向きなおす。

「えっと……巫女さんだっけ? もしかして『見える人』って奴なのかな?」
「そうみたいだな。護符を作ってるらしいし。」
「……お前も、か?」

 後ろを向き、マタギの霊を見る。目は合うが、真意は分からない。
 正直、教えてもいいのかもしれない。
 ただ、あんな非日常的な世界を教えてしまって、本当に良いのか分からない。
 その時は、それが怖かった。

「第4班ー! 準備しろー!」
「悪い、行ってくるわ。」
「蹴斗!……気をつけろよ。」

 こうして、蹴斗の肝試しが始まる。



―――肝試し・第4班



「いや〜ん、こわ〜い。」
「「 大丈夫、俺が守るから。 」」
「……ハモった。」

 蹴斗は思わず、「お前ら2人が結婚してろ」と一蹴した。
 基本的に、肝試し大会とは娯楽なのだ。だからこうなるのも仕方ない。

「いやーでも神倉さんの護符があるから気が楽だな。」
「……美子さん、本職巫女なのね。」

 班の4人が護符をチラリと見て、懐にしまう。
148 :sample02-02 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2017/12/24(日) 22:39:45.21 ID:JEwpHkLf0
「これで〜、1回ぐらいは助かるのかな〜?」
「俺が身を挺して庇えば、2回ですよ。」
「何言ってるんだ、3回だろ。」

 蹴斗は思わず、「はいはい残機5つ」と一蹴した。
 正直、このまま終わればいいのにと思ってしまう。
 実は、こういうノリは嫌いじゃないのだ。

『そう上手くは行かないよねぇ』
「(最大5体、ちゃっちゃか追い払うか。)」

 そう会話していると、班の女子が。

「……ところで班長。……霊感って信じる?」
「ん? なんだ藪から棒に。」

 暗い印象の女子で、目の焦点は蹴斗ではなく虚空を向いていた。

「……班長の隣、霊がいる……って言ったら?」

 班員の3名が飛び上がる。蹴斗も少し飛び上がりそうになったが。

「あ〜……たぶん、守護霊的なサムシングだから、安心しろ?」
「……そう? 又木くんも、凄い守護霊、持ってるよね……。」
「わ、分かるのか?」
「……大きくて、強いって分かる……あと、優しいの。」

 優しい? と聞きかけてふと考えてみる。
 契約者ではないであろう彼女にとって、外見にとらわれない感覚というものがあるのかもしれない。
 あの霊は……優しい霊、なんだろうか?

「よく分からないけど〜、怖い霊とか居ないの〜?」
「居たら教えてくれよ、庇うからさ。」

 とりあえず辺りを見渡す。と、ぼわっと火の玉が浮かんでいた。

「「 ひ〜と〜だ〜まァ〜!? 」」
「……【人魂】?」

 普段なら警戒するが、ふと冷静になる。これは肝試し大会だ。

「あれさ、先生達のイタズラじゃね?」
「「 えっ? 」」
「霊感が無くても見えてるんだったら、ガチの火の玉じゃないか。
 ああいうイタズラグッズ、理科の実験で作った記憶あるし。」

 そう蹴斗が答えると、胸をなでおろす3人。
 しかし1人だけ、腑に落ちない様子の少女。

「何かおかしいか?」
「……あのね、私……あれが『キツネ』に見えるの……。」
「ッ!?(こっくりさん!)」
149 :sample02-02 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2017/12/24(日) 22:40:35.78 ID:JEwpHkLf0
 とっさに、蹴斗はポケットから十円玉を取り出し、火の玉目掛けて投げる。
 十円玉は不思議な軌道を描き、繁みの中へ入っていく。「痛ッ!」という声も聞こえた。

「ちょっと待ってろよ……!」
「……私も行く……。」

 茂みの中に居たのは……1匹のキツネだった。

「うぎゃ、見つかっちまいましたか。」
「……キツネさんが喋った。」

 どうやら【狐火】だったようだ……。しかしなんだろうか、このキツネ。
 いったん専門家に任せようと、蹴斗は【こっくりさん】に体を貸す。

「えっと、【妖狐】の一種だね。」
「……ヨウコ?」
「キツネの身体を乗っ取った伝説使徒さ。肉体があるから普通の人でも見えるし、声も聴ける。」
「……すごい。飼いたい。」

 思いっきり伝説使徒とか教えてるけど、大丈夫か?と不安になる蹴斗。
 それを他所に、【こっくりさん】はキツネを持ち上げる。

「放してくだせぇ。俺っちにゃあ、妻と3匹の子どもが居るんでさぁ。」
「知らないよ。それより、キミはここをテリトリーにしている伝説使徒?」
「一応そうでさぁ。あの校舎が使われてた頃から、人を化かして遊びつつ、憶えを良くしてもらってたんでさぁ。」

 どうやら大古株のようだ。それならしっかり話を付けたい。
 ……だからオマエ、撫でてる場合じゃないぞ、と蹴斗は言いたかった。

「……キツネさん、人を襲うの?」
「襲う……。『化かす』のは、手品みたいなものでして、人を傷つけるものじゃございません。
 人様に不利益を与えないよう、善処しているつもりではございます。」

 キツネが言うには、現在の関係……つまり毎年の『肝試し』を続けて貰いたいそうだ。
 しかし、人が傷ついたり、ましてや死人や行方不明が出ては、行事が中止となってしまう。
 そうなっては、下級妖怪達の住処が奪われてしまうという訳だ。

「お願いでさぁ、放してくだせぇ。俺っちも生きたい一心なんです。」
「だってさ。どうする蹴斗? ボクとしては倒したくないんだけど。」
「……蹴斗くん?」

 あ。口を滑らせやがった。もういいやと投げやりになる蹴斗。
 しかしキツネの処遇はどうしたものかと考えていると。

「……キツネさん……もっと火の玉、出せる?」
「出せまさぁ。もっと明るく照らす事もできますぜ。」
「……じゃあ、火の玉で……イルミネーションとか、アートを描くの……。
 そしたら今より……もっと有名になれるよ。」

 少女から意外な代案が出てきた。確かに、普通の化かし方よりは魅力的だ。
 『手品』から『魔術』への変化……さながら、旧校舎でのサーカス。

「有名に……それは面白い! では夏の夜までに猛特訓して、狐火絵の先駆者になってみせましょう!」
「よし、じゃあ彼女に免じて許してあげる。
 だから、この旧校舎近辺の治安維持をよろしく。そしたら口裏合わせてあげる。」
150 :sample02-02 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2017/12/24(日) 22:41:26.51 ID:JEwpHkLf0
 まさか、一件落着した。こんなにも平和的な伝説使徒との遭遇があっただろうか。
 これで安心して……。

「それは無理なご相談です。」
「……キツネさん。」
「俺っちは強くありません。人を傷つけないのも、強くないからでさぁ。
 特に……あの『新入り4体』を抑える力なんて、俺っちにはありません。」



 その時、悲鳴が鳴り響く。
 木々が揺れ、小動物がざわめく声も聞こえる。



「お願いでさぁ! あいつ等を……新入り共を倒してくだせぇ!
 『便町の透明人間狩り』でしょう!? あなた方ぐらいしか、頼りがないんです!」

 ……蹴斗は初めてだった。
 ここまで必死に、伝説使徒を倒してほしいと頼まれた事。その相手が、伝説使徒である事。

 だが、迷う必要はなかった。答えなんて最初から決まっている。

「すまない、行ってくる。班の皆を任せた。」
「……あ。」



「便町の……【透明人間】……。」



―――肝試し・第3班



「アンっタねぇ……1枚・千円よ? この1時間で何千円溶かしたと思う?」

 神倉 美子は戦っていた。敵は2体の【幽霊】だった。
 【男子生徒の霊】は消耗しているが、もう1体、【女子生徒の霊】はさっき来たばかりだ。

 美子の背後には、なぜか班員が眠りについていた。
 よく見ると、バリアのようなもので守られているように見える。

 さて、どう仕切り直すか……といったところで。

「居た!」

 そこに駆け付けたのは、蹴斗だった。

「アンタッ! どうしてここに!?」
「助けに来たんだよっ! 悪いかッ!?」
「要らないわよ助けなんて! お守りあげたんだから、さっさと逃げなさい!」

 そう受け答えしている間にも、【幽霊】は襲い掛かろうとしている。
151 :sample02-02 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2017/12/24(日) 22:43:00.04 ID:JEwpHkLf0
「ッ! 今隙を作るから、アンタは」
「悪いけど。」



「準備完了しているよ。」



『フェイズシフト……バトルフェイズ!』



 蹴斗の服装が変わる。和風の道着のようであり、それでいて要所に防具がある。
 その洗練された衣装の変化は、見るものを止めた。

「何よ……アンタの伝説使徒、【子どもの霊】じゃないの?」
「伝説使徒の力じゃないよ。蹴斗の『エフェクター』さ。」


 エフェクター(付与者)。この世界を生きる子供たちに与えられた、進化の力。
 伝説使徒に対し、特殊なエフェクトを与えて強化する事ができる。
 その種類・能力・応用性は未知数。

 服部 蹴斗は『フェイザー』の付与者である。
 伝説使徒が持つ能力の段階をシフトさせる「フェイズシフト」を可能にする。
 単に【こっくりさん】の能力を使うだけの「スタンバイフェイズ」、
 そしてミームの鎧を身に纏う「バトルフェイズ」を使いこなしている。


『能書きはどうでもいい……まずは男子の方からだ!』
「手柄、横取りするよ!」

 【男子生徒の霊】に対し、【こっくりさん】は飛び込んで殴りかかる。
 質量と情報を併せ持った拳は、易々と幽霊を吹き飛ばした。

 そんな隙に、【女子生徒の霊】は後ろに居た生徒を襲おうとしている。
 それに気づいたのは美子だけだった。

「後ろっ!」
『にも俺が居るんだな。』

 たじろぐ【女子生徒の霊】に気もかけず、霊体となった蹴斗はラリアットで首を刈る。
 蹴斗の身体は、【こっくりさん】の手袋へと吸い込まれるように高速移動する。

『オフサイド・トラップ……』
「ボンバー!」

 【女子生徒の霊】の顔面に、黒い球体を勢いよくぶつけた。
 蹴斗は、絶妙なタイミングで手袋の中へ回避していた。

「じゃあ、トドメ貰うよ。」
『やっちまえ!』
152 :sample02-02 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2017/12/24(日) 22:43:29.25 ID:JEwpHkLf0
 【こっくりさん】は胸元で黒い球体を増大させている。
 2体の幽霊は必死にもがこうとするが。

「悪霊封じ!」

 美子が投げた護符は、霊体に対する壁を作る護符だ。
 霊のいない場所で使えば結界として使えるが、逆に居る場所で使えば束縛に応用できる。

「必殺……ウィジャ・バウト!」

 結界から逃れられない幽霊2体を、押しつぶすような球体が上から降ってくる。
 幽霊2体はなす術もなく、その陰も残せず消滅した。



「……嘘。倒しちゃった。」
「あー、なんか強いって聞いて来たんだけど、強かったか?」
「【透明人間】の方が厄介過ぎて、比較対象にならないというか。」

 あっけにとられる美子を余所に、蹴斗と【こっくりさん】は雑談する。
 しかし、気を抜いてはいなかった。ここにいる伝説使徒は5体。
 【狐火】と【幽霊】2体を倒したので、まだ2体居るのだ。バトルフェイズを終了してはならない。

「神倉さん、護符はまだあるか?」
「え、あるわよ。作ろうと思えば作れるけど……。」
「じゃあ、あと2体張り切っていこうか。」

 戦う気満々の2人を見て、美子は溜息をつく。

「伝説使徒って……逃げたり、出会わないようにするものだと思っていたわ。」
「それが理想だけど、どうしようもない時はあるし、戦えない人もいるからな。」

 戦えるのだから戦う。それが契約者としての蹴斗だった。
 そして、仲間が居るなら、もっと戦える。



「一息ついたら行こうぜ……旧校舎。」






 ―――これは、『伝説使徒』と契約し、『伝説使徒』と戦う者達の物語―――
153 :大王は伝説使徒 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2017/12/24(日) 22:49:03.46 ID:JEwpHkLf0
という訳でサッカー少年でした。
知る人ぞ知る『ゴルゴマタギ』。出したさ余って登場させてしまいました。【守護霊】の一種……なのかなぁ?
あと巫女さんも登場。次回は本領発揮できるかな。

さて、なんと契約者5名+謎の守護霊でお送りする、大型連載に化けそうなんです。
名前は兄者と相談しつつ決めようかなぁ。契約伝説使徒は……既に決まってたり?
154 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2017/12/25(月) 01:38:42.38 ID:1wP55o3zo
 
 ま、間に合わなかった……
 しかも大王の人に先を越された!

 >>141-153
 お疲れ様です
 そうか、マタギはゴルゴマタギであったか
 今回気になったのは勿論エフェクターでしたね!
 まさかそちらの世界にもあるとは
 しかもモノでは無くこれは「異常」のような能力かな?
 名前が「フェイザー」という辺りなかなか攻めてきたなあ
 確かモジュレーション系エフェクターにも似たのがあった筈
 やはり考える所は似てくるか! 急がねばな!(急げるかな僕……)



 では自分も負けてられないので行きます
 今回の話は【12月】はクリスマスが舞台の寸話です
 ああ後1時間半で性の6時間が……終わっちゃう……
 
155 :次世代ーズ クリスマス ◆John//PW6. [sage]:2017/12/25(月) 01:42:37.34 ID:1wP55o3zo
 
 クリスマス

 コトリー「クリスマスですの! 書き入れ時ですの!!」
 セト  「こんばんは、タマちゃんと同じく『ラルム』の店員のセトです」

 コトリー「ハッ  ξ(ㆁoㆁ;)ξ 自己紹介まだでしたの!
      『ラルム』でアルバイトしてるコトリーですの!! タマは名前ですの!!」



 @クリスマスについて

 コトリー「『ラルム』の客層、普段は年配の夫婦さんが多いですの!
      でも今年は負けられませんわ! クリスマスが勝負ですの!!」
 セト  「頑張って事前にいろいろ準備したもんね……」

 コトリー「そして! 遂にクリスマス用の衣装が出来ましたの!
      てんちょーの意見はなるべく排除して決定してますの!!」
 セト  「私もタマちゃんもヒラヒラしたのが苦手で……
      店長は隙あらばメイド服を着せようとしてくるから、タマちゃんと全力で阻止しました!!」

 コトリー「これが届いた衣装ですの! 開けますのっ!! ξ(>д< )ξ <エイッ」

  パカッ

 コトリー「目を引く赤! これはまさしくクリスマスのサンタ服!」
 セト  「よかった、ヒラヒラじゃなくてモコモコしてるね。これなら」
 コトリー「あ、でも……これ……」 ☜ 手に取って改めてサンタ服をチェケラ
 セト  「スカート丈が……短い……」

 コトリー「胸元も開き過ぎですのっ!! ちょっとセクシー過ぎますのっ!!」
 セト  「うーん、でも、これくらいならいいかなって思うんだけど、……タマちゃん?」
 コトリー「一体誰がこんなっ!! あっもしかしてJD先輩の仕業ですのっ!?」

 JD先輩「あはっ★ ばれたー (๑ゝڡ ・๑)」



 Aそしてイブの夕方

 かやべ「来ーたーよー! せっちゃーん!!」
 ありす「おお、今日は『ラルム』も大賑わいね」
 まにわ「こんばんわ、真庭栞(まにわ しおり)です」
 ヒル山「同じく、ヒル山こと蒜山(ひるぜん)です」

 かやべ「せっちゃーん、今日はめっちゃ可愛いサンタ服じょん! いいないいなー!」 ナデナデナデ
 セト  「えへへ、今日はイブだしね!」
 かやべ「ほぅほぅ、これは店長さんチョイスじゃ無さそうだね、誰が選んだろう」 サワサワサワ
 セト  「ちょっとアヤちゃん!? どこ触ってるの!?」

 JD先輩「あらぁ、今日の『ラルム』の制服の話かしらぁ?」

 かやべ「そういう貴女はJD先輩さん!! ……っ!?!?」 フニフニフニフニ
 JD先輩「今夜はザベ子とセトがサンタガールでぇ、私がト・ナ・カ・イ 💛」
 かやべ(きわどい露出に、絶対領域チョイス、ではなく敢えて黒のガーター……、
      こんなドスケベトナカイのコスは初めて見るよ!? この女(ヒト)、理解(デキ)る……!!) モニモニモニ
 セト  「アヤちゃーん!! 変なとこ触るの止めてーっ!! いい加減にしないと怒るよーっ!?」
 
156 :次世代ーズ クリスマス ◆John//PW6. [sage]:2017/12/25(月) 01:43:08.08 ID:1wP55o3zo
 
 B色々頑張ったんです

 ありす「にしても今夜は凄いわね」
 ヒル山「いつもは爺さん婆さんが多いのになあ」
 まにわ「凄いよね、学生のカップルが多いって」

 コトリー「全てはこの日の為に頑張ったんですの!!」 フンスー
 セト  「事前に商工会とか色んな所にお知らせ出したよね」
 コトリー「クリスマスフェアのお値段を決めるのに、
      学校町のお店片っ端から偵察した上でこの価格ですの!!」 フンフン
 セト  「店長が広告費も奮発して、学生割引のクーポンまで用意して……」
 コトリー「クリスマスは恋人同士で過ごしたい学生さんのために!」
 セト  「お財布に優しいイブのデートプランまでシミュレートして割引を決めて!」

 コトリー「ほんとに……頑張った甲斐がありましたの……」 ポロポロ
 セト  「私達と同世代のお客さんがいっぱい来てくれるなんて、夢みたい」 グスッ
 ありす(感極まって泣き出したわ……すごく頑張ったのね)
 かやべ「あーもう、二人とも泣かないで! ほら、スマイルスマイル!」 アタマナデナデ

 in キッチン

 おばちゃん店員 (ふふっ、泣くには早いわよ二人とも……) ☜ 不敵な笑み
 おばあちゃん店員(なんせ今回のクリスマス・イブ作戦は、赤字必至の大サービス) ☜ すごい不敵な笑み
 おばちゃん店員 (このイブのキャンペーンをトリガーに学生間の口コミを狙った長期的作戦の一環!!)
 おばあちゃん店員(全ては『ラルム』のため! 店長さんには少々泣いてもらうがのぉぉ……!!)
 おばちゃん店員 (ふっ、セトちゃんもコトリーちゃんもまだまだ甘いわねえ) ☜ 実は衣装がきわどいのでホールに出られない
 おばあちゃん店員(ひっひっひっ、今宵が全ての始まりよ!!) ☜ 実はめっちゃ衣装がきわどいのでホールに出るのを禁じられた
 
157 :次世代ーズ クリスマス ◆John//PW6. [sage]:2017/12/25(月) 01:44:10.89 ID:1wP55o3zo
 
 Cとある「リリス」さんの場合

 リリス(こんばんは、隣町在住の『リリス』です)
 リリス(今、私は心の声で私から私に語り掛けてます)
 リリス(『リリス』って言ってもそんな大層なものじゃないし、『サキャバス』みたいなものだし……)
 リリス(今夜こそは男の人を誘惑して大人のデート……ってそんな勇気、私に無いし……)
 リリス(かと言って人肌恋しいのは寂しいし悲しいので、チラシで宣伝してたこのお店に来ちゃいましたー……)

 リリス(はぁー……来年こそは彼氏が欲しいー……)
 リリス(もう契約者じゃなくて、一般人の男性でもいいかなー……な、なーんて)

 チラッ

 JD先輩「あらぁ? 恋人同士かしらぁ?」
 女子  「……」
 男子  「あっ、えっ、まあ、そんなとこ、です」 ☜ めっちゃ照れてる
 女子  「……」 ☜ めっちゃ男子を睨んでる
 JD先輩「はいっ クロックムッシュとぉ、ホワイトチョコでっす
 男子  (ゴクッ)
 JD先輩「ごゆっくりどうぞ💛」 ニコッ
 男子  (やばッ……この人、すごい……可愛い……胸も、大きいし……)

 JD先輩「キミみたなカッコいい子なら、また『ラルム』に来てほしいなぁ」 ☜ 耳元で囁いた
 男子  「ッ?!   ッ」

 JD先輩(うーヤバい、男子クンめっちゃ私の胸見てた! 顔面真っ赤過ぎだろー!) プークスクス
 女子  (……) ゲシッ! フミッ!!
 男子  「あだっ!? い、痛いよっ!!」
 女子  「……店員さんの胸、見てたでしょ……」 ギゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!
 男子  「ちっ違っ!! あっ痛たたたたっ!!」
 JD先輩(あーヤバい! 楽しい!!) クスクス

 リリス(うあー!? あんなのダメだよー!!)
 リリス(恋人同士なのに誘惑して嫉妬させるなんて! あんなこと私には絶対無理!!)
 リリス(……でも、いいなー……あの店員さんみたく、私も……)
 リリス(ってダメダメ、私何考えてるの!?)

 リリス(でもこのお店、若い子多いなー……)
 リリス(店員さんも可愛いし、お客さんも可愛い男の子多いなー……)

 リリス(も、もし、もしも……)

 リリス(このお店で『性の六時間』が発動したりとかしたらー……)

 リリス(今、この場で、発動しちゃったりとかしたらー……)


 リリス( ) キュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン 💛💛💛


 リリス(ってダメ! 何考えてるの私!!) キュゥゥゥウン
 リリス(ダメったらダメ!! そんなの、そんなの……倫理的にとにかく絶対、ダメ!!) キュンキュン
 リリス(ふぅふぅ、落ち着いて私! こういう時こそ落ち着かないと……!)
 リリス(それに私、『性の六時間』なんて持ってないし……)
 リリス(これは妄想、ただの妄想……) フー フー

 コトリー「ちょっと! さっき何やってましたの!?」 ガルルルル
 JD先輩「さーなんのことかなー★ (>ε< )」
 コトリー「いい加減にしないとっ、キッチンに封印しますわよ!?」 ヷンヷンッ
 JD先輩「まってそれだけは勘弁してください」
 
158 :次世代ーズ クリスマス ◆John//PW6. [sage]:2017/12/25(月) 01:48:36.12 ID:1wP55o3zo
 
 Dメリークリスマス

 ありす(……)

 セト 「こちらボンゴレとポタージュになります! はいっどうぞごゆっくり!」

 ありす(これは閉店まで忙しくなりそうね……)
 ありす(アイツはまだ来てないみたいだけど)

 かやべ「お、おおっ、あ、ありす!!」 グイグイ
 ありす「えっ、あっ、何?」

 ヒル山「おほーっ!! 来たぞブッシュ・ド・ノエル!!」

 ありす「へっ? ヒル山、マジでやったの?」
 かやべ「こいつマジだよ、小遣いをケーキにつぎ込んだよ!」
 まにわ「まさか一本まるまる注文するなんて……!」
 かやべ「今年の流行りはノエルじゃないって聞いたよ!? いいのヒル山!?」
 ヒル山「安心しなって、こいつはあたしが全部食べ切る」
 かやべ「やめなって! 絶対エグいって!!」
 ヒル山「おーし、かやべぇ言ったな?」

 ありす(まったく、何やってんだか……)

 セト 「ありすちゃん、飲み物持ってくる? ドリンクバー飲み放題のクーポン使ったでしょ?」
 ありす「え、ああ大丈夫。それよりセト、今夜って早渡君は」 ヒソヒソ
 セト 「あ、うん。今日は脩寿くん来れないって言ってた」

 ありす(何やってんのかしらあのバカ……)

 セト 「あっ、でもね、アルバイトの前に電話してね
     脩寿くん、今日は子供たちの所でサンタさんの格好して、プレゼント配るんだって」
 ありす「へえ、アイツが……」
 セト 「脩寿くんも頑張ってるし、私も負けられないなって!
     それに向こうが終わったらこっちにも来るって……、あれ、ウメちゃん何してるの?」
 ありす「え? ああ、一人ブッシュドノエル早食い始めただけだから気にしないで」

 かやべ「エグいよー、もう半分行ったー……!?」
 ヒル山「録ってるかかやべぇ、おーし、こっからスパート掛けっぞ」
 まにわ「 」 ☜ 信じられないものを見るような目で首を振っている



 コトリー「みんな楽しんでるようで何よりですの! メリークリスマスですの!! ξ(>∇< )ξ 」



 おわり
159 :次世代ーズ クリスマス ◆John//PW6. [sage]:2017/12/25(月) 01:50:12.67 ID:1wP55o3zo
 




 セト: 遠倉千十。今年の1月に初登場。だが余り出番がなかったorz
 コトリー: コトリーちゃん。『ラルム』の店員さん。髪がツインテの縦ふわロールだ。以上

 JD先輩: 『ラルム』の店員さん。初登場は>>61。実はまだ名前が決まっていない

 ありす: 日向ありす。初登場は今年の1月。なのに余り出せなかったorz
 かやべ: 名前は「あやこ」。実は名前が出ていないが前スレの>>265で登場済み
 まにわ: フルネームは真庭栞。眼鏡っ子だ。大事なことなので二度言うが眼鏡っ子だ
 ヒル山: フルネームは蒜山宇女(ひるぜん うめ)。柔道経験者。一般人クラスでは強い

 おばちゃん店員: 『ラルム』の支柱。パート暦ウン十年のベテラン。今回の衣装はJD先輩が用意した
 おばあちゃん店員: 『ラルム』の心臓部。男一人の店長よりもはるかに頑丈。今回の衣装は自前

 店長: 『ラルム』の店長。今回出番がないのは店に居ないからではなく、キッチンで必死に働いているから

 リリン: 名前未定。すまない……。隣町(辺湖市)にあるキュートなランジェリー専門店の店員をやってる

 お気づきであろうか、寸話中で誤りをやっちまってることを……
 そう、彼女は『リリス』ではなく『リリン』が正解ッ……!!
 重ね重ねすいませんでしたッッ!! wikiで訂正します故、それで手打ちをッ! お慈悲をッッ!!


以上です……
すいません、ありがとうございます……
本編が全ッ然間に合って無いので間に合えばまた来ます
今更だがこのクリスマスの寸話、全然都市伝説要素が……
 
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/01/02(火) 10:30:16.05 ID:D+4IjmWq0
あけましておめでとう
大王も次世代ズも乙
161 :大王は伝説使徒 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2018/01/18(木) 21:40:15.91 ID:/pQzhGZ8O
次世代ーズさん乙ですの。クリスマスは良いですにゃあ
自分は【サンタクロース】ネタのワンパターンしかないもので、なかなか……
食事処がメインのネタでも書こうかなぁ(タコの手広げすぎ

そしてあけおめですの。いやー年男ですわ
日本中に犬が蔓延しているので、裂邪は苦しい1年でしょうなぁ
それはさておき、伝説使徒の続きをはじめませう

前回は>>142-152。肝試しを平和に終わらせるための戦いが始まります
162 :sample02-03 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2018/01/18(木) 21:41:01.17 ID:/pQzhGZ8O
「一息ついたら行こうぜ……旧校舎。」

 2体の伝説使徒を倒した[服部蹴斗]達は、旧校舎に居るであろう伝説使徒を目指す。
 【狐火】曰く、「新入り4体を倒してほしい」との事。
 そうすれば、人を襲う事はなくなる……と信じたいが。

「しかし、なるほどね……この森に伝説使徒がいない理由が分かったよ。」

 そう【こっくりさん】に言われて、改めて考えてみる。
 肝試しスポットなんか、伝説使徒の巣窟だというのに、前情報では5体しかいなかった。
 それは、この新入り達に居場所を奪われて逃げたからだろう。

「それってさ、新入り共を倒しても、また帰ってくるって事か?」
「それは、あのキツネを信じるしかないよねぇ……。」

 蹴斗が【こっくりさん】と話し合っていると、ふと手を合わせている[神倉美子]が目に映る。

「……無事天へ還れますように。」
「あーそういうのいいから。要らないから。」

 美子の祈りに、【こっくりさん】は一蹴した。
 アンタに何が分かるの、と諭そうとする美子だったが。

「元になった【生徒の霊】が仮に居たとしても、もう成仏してるよ。
 先の奴は『設定』を利用した野生の伝説使徒だよ。」

 そう、伝説使徒は「設定を借りて力を得る存在」である。
 たとえ生徒の霊が成仏しても、新しい伝説使徒が【生徒の霊】に成り代わる。
 そもそも人間が【生徒の霊】になる、という考え方がおかしいのかもしれない。
 
 そうやって【生徒の霊】は生き続けるのだ。

「……何よその理屈。伝説使徒が先なのか噂が先なのか、分からないわ。」
「実際ボク達も分からないんだよね。ミームってものが最初からあったのか。
 ただ、ボク達には命があって、姿は移ろいやすいものだよ。」

 美子の反論に、どこか物悲しそうに返す【こっくりさん】。
 『命』はあれど、能力や人格は変化してしまう。契約者がいない限り。
 その起源は、【こっくりさん】さえも知る事のできない禁断の領域……。

「つまりここは本来、妖怪達のイタズラ舞台ってだけだと。」
「幻覚を見せる【妖怪】も多いしなー。【幽霊】より戦闘能力がない【妖怪】だらけだったのかな?」

 蹴斗と【こっくりさん】は考察する。元々【幽霊】という伝説使徒すらいない森だったのでは、と。
 【幽霊】は呪い・恨みといった攻撃的な感情を有する事が多い。
 人を化かしてイタズラする程度の【妖怪】では、歯が立たなかったのだろう。

「……はぁ。アンタ達、ホント信じらんない。どこまで知っているの?」

 美子は深く溜息をつく。【こっくりさん】のような、喋る伝説使徒と会話しなかったのだろう。
 蹴斗にとっては、当たり前のような事が当たり前でないのだ。

「じゃあ【風のウワサ】も知らないんだね〜。」
「え、諺でしょ。でも正確には『風の便り』よ。」
「今度URL教えてやるから、メルアド教えてくれ。」

 一瞬戸惑う美子だったが、情報も大事だと思いつつ、渋々教える。
 しかしまったく何も思わない蹴斗に、握りこぶしを震わせるのだった。
163 :sample02-03 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2018/01/18(木) 21:41:33.21 ID:/pQzhGZ8O



―――肝試し・集合場所

 教師達が見守る中、何班かの生徒が帰ってくる。

「ふっ……難なくクリア。」
「何かバケモノを見た気がするんだけど……。」
「気づいたら居なくなってたのよね。何だったんだろう……。」

 早々に帰ってきたのは第1班。何かを見たと主張するが、特に被害はないようだ。

「こ、怖かった、ね……。私、気絶しちゃったかも……。」
「怖かった、な……。」「う、うん……。」

 次に帰った第2班は、何か含みのある恐怖を覚えたようだ。それを班長は知る由もなく。

「無事帰ってこれたな〜。何もなかった。」
「バイクの音が妙にうるさかったけど……ね。」

 第5班も無事帰還。バイクの音以外に気になるものはなかったようだ。

「いやー、本当に何もなかったな。」
「先生ー、ちゃんと仕掛けしたの?」

 そして第6班は又木十三。夜道の散歩を平和に終わらせたようだ。

 そんな4つの班に向けて、教師が一言。

「まぁ、何も仕掛けてないからな。」
「「 はぁ? 」」
「いやぁ、勝手に生徒が驚いて、噂になるから、安上がりだなって。」

 ある生徒は落胆し、またある生徒は戦慄した。
 何もない場所で怯えていたのか、ではあの時見たものは何だったのか……。

 そうしていると、また何名か戻ってくる。

「あれ〜、ココどこぉ〜?」
「俺達、旧校舎に向かってたはずだけど……。」
「おっ、第3・4班だな。遅いぞ〜……ん?」

 帰ってきた面々を見て、教師は気付く。……班長がいない。

「おい、服部と神倉はどうした?」
「あれ……いないっ!?」
「私達ぃ〜、火の玉を見つけてぇ〜」
「それを追いかけていたら、ここに……。」

 行方不明ともなると、責任問題である。
 教師達が一気にざわつく。集合して会議を始めた。



「……キツネさん、ありがとう。」
「お安い御用でしてぇ。迷わすだけでなく、道案内もお手の物でさぁ。」

 集合場所の片隅で、第3班の少女と【狐火】が会話する。
 どうやら、【狐火】の誘導能力によって、蹴斗達以外は無事帰る事ができたようだ。
164 :sample02-03 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2018/01/18(木) 21:42:10.73 ID:/pQzhGZ8O
「お礼にこの護符あげる……だから教えて。便町の【透明人間】の事。」
「えっと……お嬢さんは、どこまで知ってやす?」
「……便町は……私のいた町なの。」

 少女は小学校時代、便町に住んでいた。その時に起きたのが『透明人間騒動』である。
 殺傷事件が相次いで起こる、しかし犯人の痕跡も影も、全く見えてこない。
 一連の事件を【透明人間】の仕業であると人々は囃し立て、大騒動になったのだ。

 あまりの酷さに、諸学校は休校となった。外へ出る者さえ少なくなった。
 そんな事件が、ある日パタリと止んだ。別に真犯人が見つかった訳でもなかったのに。
 いつしか恐怖は完全に消えさり、便町は日常を取り戻した。

「そうでしたか……いやはや。犠牲者になってたかもしれやせんねぇ。
 しかし、その事件を解決してくれた英雄が2人いた。」
「……それが、蹴斗くん?」

 【狐火】は流暢に、それでいてどこかしんみりと話し続ける。

「奴は、妖怪達にも手を掛けた酷い奴でした。自分を世に広めるために、便町を恐怖で支配した。
 あるいは、他の町にも伝播し、より凶悪な伝説使徒になりえたでしょう。
 お嬢さんだけじゃありやせん。俺っちだって、救われたのやもしれません……。」

 【狐火】は首を振り、少女に背を向ける。

「俺っち、やっぱり行きます。恩をタダで受け取るなんて、ごめんでさぁ!」
「あ……、いってらっしゃい。」

 そこへ、又木が駆け寄ってくる。

「えっと、何か話してた?」
「……うん、キツネと話す、変な子なの……。だから、話しかけなくていいよ。」
「え? 猫とか話しかけるだろ? その、俺のせいで逃げたかなって。」

 又木は少しズレた感性を持っていた。むしろ、小動物に嫌われやすい体質を気にしたようだ。
 そんな又木は、本題というように顔色を変える。

「そうだ、蹴斗……服部蹴斗を知らないか? 班長だったよな。」
「……。」

 一瞬迷う少女だったが、大きく息を吸う。

「……又木くん、憶えてる? 『透明人間騒動』。」
「あぁ、オレ達の学校が休校になったアレだろ? 気づいたら落ち着いてて……。」
「あれ、蹴斗くんが倒してくれたの。」

 思わず息を呑む又木。ふとした記憶が蘇る。
 その記憶が、全ての辻褄を合わせた時、次の言葉を予測させた。

「蹴斗くん……守護霊の力で、今回も解決する気なの……。
 キツネさんも行ったけど……、アーバントっていう、危険なものと戦うの。」
「そんな、蹴斗が……ッ!」

 思わず、又木は旧校舎へと走り出した。
 何かできるという訳ではないが、それでも、走り出した。

「待ってろ、蹴斗!……これは。」

 駆けだす又木の道標か、火の玉が道を照らす。又木は信じて、その道を突き進んでいった。
165 :sample02-03 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2018/01/18(木) 21:42:39.92 ID:/pQzhGZ8O



―――旧校舎

 どことなく古びた香りのする、しかし最低限の手入れは施されている……。
 不可思議な建物が、そこに建っていた。

 旧校舎……肝試しの目的地であった場所だ。
 蹴斗と美子は、無事この場所へ辿り着いた。

「道中敵なし。たぶんここに、2体居るよね。」
「さっさと片付けるか!」

 気合を入れる蹴斗と【こっくりさん】に、美子は質問を投げかける。

「ところでさ。アタシ達以外はいないわけ? そんなのが居たら他の班でも何かあると思うけど。」
「そうだな。他の班も戦っているかもしれねぇ。」

 その会話を聞き、【こっくりさん】はハッとした表情を浮かべる。

「蹴斗、人数を占って。」
「了解、鳥居へ……。生徒は3人以上?」

 指差したのは「No」だった。それを見て何故と叫ぶ美子だったが、蹴斗は渋い顔になる。

「……これ、ボク達狙いだね。」
「はぁ、どういう意味!?」
「昔オレら、目立つ事やったせいで、伝説使徒から目の敵にされてるんだ。今回もその口だと思う。」

 いざ気づくと、美子が申し訳なくなる。自分達のせいで、妙な事件に巻き込まれるのだから。

「ふーん、そうですか。」
「いや、その……。」
「つ・ま・り、超絶最強巫女のアタシはどうでもいいと。ついでだと! いいじゃない……!」

 何故か美子に火が付いた。
 面倒くさいタイプだと思ってはいたが、ここまで面倒とは思っていなかったため、困惑する2人だった。



 そうこうやっている内に、問題の教室へ着く。
 『ずれる音楽室』……物が勝手に動く教室だそうだ。

「まぁ、【幽霊】が動かしているだけでしょうね。」
「そう考えちまうのも職業病だよなー。教師のイタズラとは思えねぇっていう。」

 美子と蹴斗が言い合っている時だった。

「ッ!?」「危ねぇ!」

 椅子が急に襲い掛かってきた。とっさに椅子を見るが……何もいない。

「まさか!?」

 何かに気づいたと同時に、椅子や楽器が投げるように飛んでいく。
 そして、全ての物体が、まるで何かを中心とするように宙を漂う。

「間違いない……【ポルターガイスト】!」
「はっ!? また見えない敵かよ!」
166 :sample02-03 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2018/01/18(木) 21:43:13.49 ID:/pQzhGZ8O
 【ポルターガイスト】、あらゆる物体を動かす怪奇現象である。
 それがここまで攻撃的な伝説使徒として暴れているのも珍しい。

「神倉は!?」
「大丈夫よ、積極的には狙われてないみたい。」
「完全に、ボク達を倒して名を挙げたい伝説使徒か……。」

 伝説使徒間にもミームというものはある。
 特にテリトリーを誇示するために、名声や脅威度を示す事がある。
 【ポルターガイスト】は、『便町の透明人間狩り』を倒して異名を得たいようだ。

「だけどねぇ……!」

 【こっくりさん】は黒球を作って投げ飛ばす。
 黒球は漂う物体を避けて中央にヒット……せずに、壁にぶつかって消滅した。

「外れた?!」
「ちぃ、本体を隠すためのブラフか……。どこに居る?」

 実体を持たない伝説使徒にも、核がある。それを砕けば倒せるのだ。
 普通なら、能力の影響範囲内のどこかに核は存在するはずなのだが。
 そう思考する間にも、椅子や楽器を投げて攻撃してるため、息する暇も見つけづらい。

「【こっくりさん】、分かるか?」
「一瞬だけなら。でも逃げられて終わりだし、十円玉を引っ掛けるのも難しいかな。」
「神倉さんは、何か手があるか?」
「5分稼いでくれたら、とっておきの技を使うけど?」

 5分……少年サッカーのインターバルが10分だから、それの半分か。
 蹴斗にとっては短い時間だと判断し、サムズアップする。

「さてっと。5分で勝てるか、本職巫女が出てくるか……。」
「先に言うけど、負ける気はないからね。【ポルターガイスト】。」

 蹴斗はフェイズシフトし、【こっくりさん】を身に纏う。
 幽体となった蹴斗は音楽室を飛び回る。

「核は、どーこだ……!」

 一方、美子は廊下で舞を踊っていた。

「見てなさい……巫女の本気。」



―――3分後

「はぁ、はぁ……。」
「くっそ、どこにもいない……。」

 【ポルターガイスト】の核は見つからない。
 椅子や楽器を投げつけられて、集中できないからではない。
 おそらく完璧な戦術で隠れているのだ。

「(床下か、天井裏に居るとしたら……?)」
『テレポートみたいな技が使えるのかもしれねぇぞ。』

 【こっくりさん】の考えでは、核は影響範囲の中央付近に存在する。
 その中央を攻めても出てこない以上、上下方向に隔てられた床・天井へ隠れている可能性がある。
 壁を貫通するほどの力は、自分には無い。
167 :sample02-03 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2018/01/18(木) 21:44:03.85 ID:/pQzhGZ8O
 蹴斗の考えでは、影響範囲(テリトリー)を定めて、その中を高速移動している。
 今まで見えない敵と鬼ごっこをしていたのだ。見つかる訳がない。

 どちらの説にせよ、決定的な情報が足りない。
 その隙を与えない猛攻が、【ポルターガイスト】の策略だろう。
 ここで打てる1手は……。

「「 これだ! 」」

 2人は音楽準備室に飛び込み、様子をうかがう。
 この部屋に物を投げるのは困難。流石の【ポルターガイスト】も移動せざるを得ない。
 そう考えていたのだ。

「(さぁ、来い。【ポルターガイスト】……。)」
『そこから出ないと攻撃できないぜ……?』

 警戒も怠っていない、はずだった。

「「 かはっ……。 」」

 背後からの強襲。音楽準備室から突き出されると同時に、床に落ちていた椅子が跳ねる。
 天井に打ち付けられた2人は、そのまま床へと叩きつけられた。

「【こっくりさん】……例えばだけどさ。」
「なんだい、蹴斗……。」
「この学校全域がテリトリーって、あり得るかな……。」

 絶望的な可能性。音楽室どころか、この学校のどこかに核が隠れているという説。
 自分達が想像していた以上に、【ポルターガイスト】は力を持っていた。
 そして、力を発揮できる最高の場所を見つけてしまった。

「負けるかもな……こりゃあ。」

 諦めかけた蹴斗の言葉を止めたのは、廊下から入ってくる扉の音。
 そう、美子の姿だった。

「神倉さん!」
「こいつの核が分からない! いったん逃げよう!」

 蹴斗と【こっくりさん】の警告を無視し、美子は床に触れる。

「あらゆる物質よ、その理に逆らい、新たな設定によって、そこにあれ!」

 その瞬間、蹴斗の身体を借りていた【こっくりさん】は変化を感じた。
 体が重くなる……比喩ではなく、物理的に。そして、この部屋にある全てのものも。

「本当は元旦にしか見せてあげないけど……特別よ?
 アタシの【神懸り】、構成神・バンブツの力!」

 カタカタと揺れる椅子や楽器。しかし浮き上がる様子はない。
 そんな中、ゆっくりと浮き上がろうとする椅子がひとつ。

「そこね……!」
「ちょ、ちょっと!」

 美子は椅子を自在にコントロールし、床へ天井へと叩きつける。
 そしてフラフラになった核が、わずかに姿を見せた。

「核の中心ほどパワーが強い……でも『質量』を変えられたら、重くて動かせない。
 バンブツはアンタとは桁が違うのよ。【ポルターガイスト】!」
168 :sample02-03 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2018/01/18(木) 21:44:33.32 ID:/pQzhGZ8O
 椅子が、楽器が、全てのものが【ポルターガイスト】の核へ目掛けて『落ちて』いく。
 謎の球体が出来上がった頃に、何かが潰れる音が聞こえ、そして全てが床に落ちた。

「さすが本職巫女……!」
「正直、ナメてたよ。」

 蹴斗と【こっくりさん】は、ただ巫女を称賛した。

「ふふん。元旦はねぇ、【神懸り】して新年を祈るのよ。
 アタシの本気、分かったかしら?」
「はいはい、ボクの評価シートは更新しておくよ。」

 さてと、敵はあと1体。
 余裕はあるが、油断せず確実に仕留めよう……。



―――ゾクリ



 そう考えていた時だった。蹴斗の背筋に嫌な気配を感じる。
 蹴斗だけではない。美子も【こっくりさん】も感じていた。

「これは【悪霊】タイプね……危険よ。」
「百も承知だ。この森の平和を守るために、倒す!」

 そんな3人の前に現れたのは―――



 3階の窓から覗く、巨大な目玉だった。



「「 大入道……!? 」」



 ―――これは、『伝説使徒』と契約し、『伝説使徒』と戦う者達の物語―――
169 :大王は伝説使徒 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2018/01/18(木) 21:55:27.84 ID:/pQzhGZ8O
苦情は聞き受けます。

Q:構成神って?
A:アーバントという概念があるように、時・物体・エネルギー・意思という概念があります。
  その管理者が「構成神」です。【神懸り】で呼び降ろせる能力と言い換える事もできます。
  なお、『空間』という概念を管理するものはいません。空間はより上位の存在が管理しています。

Q:透明人間騒動って?
A:諸々の事情で書けていない、幕間のストーリーです。
  今後を考慮すると必須の話なんで、肝試しが終わったら書きます。

Q:あの狐と会話したモブ娘、名前ないくせに妙に喋るな?
A:気に入りました。名前付けたいです。
170 :まーだだよーズ ◆John//PW6. [sage]:2018/01/20(土) 19:58:41.59 ID:cyWrGsHJo
 
大王の人お疲れ様です
自分のことを棚上げして言いますと……
名前がまだ無いだなんて実に勿体ない!
というわけで名前を決めるときの参考にお使い下さい

://www.name-automaker.com/index.html ☜ 花子さんの人に教わったサイト
://name-recipe.info/ ☜ 辞典はたまに使うがお助けコーナーも意外と使う
://namegen.jp/ ☜ 主に中の人が「組織」系の連中の名づけの際に使う

ちなみに私個人は美子ちゃんのような人が好きです(ぬるり)
 
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/23(火) 03:02:48.05 ID:xM07uYAD0
皆さんオツデス
今年の抱負も何もないけど
イケメンを出して盛大に毛を毟りたい
172 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2018/01/23(火) 22:52:04.26 ID:pizmkOBA0
みなさんあけおめ&乙ですー!
とりあえずピエロの続きを二月中に投下したいっす!
書くの遅くてマジすいません
173 :まだズ ◆John//PW6. [sage]:2018/01/27(土) 11:36:34.02 ID:Sb7yhMUfo
 
改めまして明けましておめでとうございます
鳥居の人、お久しぶりでございます
私もこの週末か来週末には出す物を出したいです
 
今年の初夢は明らかに10代な女の子の尻を撫で回して泣かれる内容でした
正夢にならぬよう頑張ります
 
174 :大王は伝説使徒 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2018/01/27(土) 17:38:46.15 ID:dR1kzffcO
えー、業務連絡。兄者との協議の結果、狐と会話した少女の名前は
[藪小路 翔華(やぶこうじショウカ)]ちゃんに決定しました。
今後どのような活躍をするか、お楽しみに!

>>170
おつありですの。あと命名サイトもありがとうございます。
美子ちゃんは割と大事にしたいキャラなので、応援頂ければ幸いです。

>>173
>今年の初夢は明らかに10代な女の子の尻を撫で回して泣かれる内容でした

1.噂話に熱中しすぎ、他の事が疎かになる暗示。
2.性的願望の高まり。あるいは、やや一方的な愛情を示すもの。
3.金運に関する夢の場合、「泣かれる=失う」なら、無駄遣いの暗示かも(独自解釈)

という検索結果が出たよ翔太郎
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 15:13:51.64 ID:0df+33dm0
人が戻ってきてうれしいうれしい

ところで冒涜的神話を調べてたんだが
ニャルみたいな外なる神は地球神の因果律の影響を受けないし
地球に顕現した貌もやろうと思えば天使や悪魔相手に舐めプしてSEIBAIすることも可能なのか…

これって最強…いやチートすぎない?
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 15:26:26.49 ID:0df+33dm0
この程度ではチートとは言わない(断言)

ところで海外には可愛らしい旧支配者のぬいぐるみが売ってるそうな
これはほしい…
177 : [sage saga]:2018/02/01(木) 20:16:35.90 ID:c1zcRU87o
ウッ....ハァハァ....
ウウウッ....ハァハァ....ウッ!?

........ハァハァ
ウゥウ〜....ハァハァ
178 :次世代ーズ 前回 >>132-134 ◆John//PW6. [sage]:2018/02/10(土) 14:38:42.03 ID:ale9fTeBo
 


 ある学校で、男子生徒が放課後、教室に居残っていた
 男子が何となく窓の外を見ると、向かいの校舎の屋上に人の影がある
 男子は不審に思い、窓に近づいてよく見ようと目を凝らした


 その瞬間だった、人影が飛び降りたのは
 重たい物が堅い地面に激突する音が、確かに聞こえたのはその直後だ


 突然の出来事に混乱した男子生徒は暫く動揺していたが
 兎に角人を呼ばないと、飛び降りた人はまだ助かるかもしれない、そう思い
 人影が落ちたであろう場所に駆け付けるが、其処に誰かが飛び降りた痕跡は無かった

 取り乱した男子生徒は、部活中の生徒や付近を通り掛かった教員を捕まえて話をしたが
 誰かが飛び降りる現場など誰も目撃していないのだと言う

 騒ぎを聞いてやって来た用務員は男子生徒の話を聞くなり
 腑に落ちたような顔をして、男子生徒に説明を始めた

 昔、この学校で飛び降り自殺があったのだと
 女子生徒が校舎の屋上から飛び降りたのは、丁度、男子生徒が飛び降りを目撃した時間帯
 彼女が死んだ後、時折このようにして在る筈の無い飛び降りの光景を目撃する生徒が少なくなかったそうだ


 彼女は死してなお、飛び降りを繰り返しているのかもしれない










 
     「繰り返す飛び降り」
 







 
179 :次世代ーズ 28 「繰り返す飛び降り」 1/8 ◆John//PW6. [sage]:2018/02/10(土) 14:39:58.10 ID:ale9fTeBo
 



 週が明けて月曜日、その夜
 俺達は東中に向かっていた。勿論理由は東ちゃんに会う為だ
 俺達、ってのはつまり


「まあ頼まれたからには聞いてやっけどよぉ」
「新谷のおいちゃん、やっぱり陽が落ちると寒いね」
「そだね、でも寒くなると星が綺麗に見えるんだよな、ほら」


 先週金曜の顔ぶれと一緒だからだ
 「人面犬」の半井のおっさんに新谷さん、「コロポックル」のれおん
 そして俺の計四名、この数で押し掛けるからには今夜中に東ちゃんを見つけたい所だ


「なあ、兄ちゃん」
「おん?」


 後ろから新谷さんに話し掛けられた
 ホワイトシェパードな新谷さんは見た目がほぼ犬に近い
 この日も新谷さんはれおんを背中に乗っけていた


「あいつら、人身売買やってたんだよな。もう捕まったかな……」
「今頃は『組織』に捕まってるよ。わざわざやって来てたわけだしな」
「だといいんだけど」
「大丈夫だよ、後のことは『組織』が何とかするだろ」


 あいつら、ってのは先週金曜にれおんを誘拐しようとした連中のことだ
 現場には俺たちの後から『組織』所属の二人組が駆け付けたわけだし、直ぐ気づいただろう
 むしろあれで犯罪者共をみすみす見逃してたとしたらだ、『組織』は余程のポンコツってことになる

 それ以上に気になるのは奴の存在、あの『組織』の刀使いだ
 現場で遭遇したとき俺を注視していたわけで、間違いなく俺に気付いていた

 ひょっとしなくても確実に目を付けられてる? 「組織」に?
 やばくない?

 いやいや考えるのは止めろ俺! もう既に何度も悩んだろ俺!
 悩み過ぎて眠れない夜を過ごしたりもしたけど、そもそも「組織」に目を付けられたんなら
 もっとこうストレートに接触してくるだろ普通。だからきっと大丈夫だ。多分、多分ね


「それより新谷さん、れおんも一緒なのは何か訳とかあったり?」
「そりゃおめえ、留守番は危ないからだ」


 迷いを振り捨てて、取りあえず今気になっていることを訊いてみると
 答えが返って来たのは先頭を行く半井のおっさんからだった


「確かに野良の連中が侵入してくるリスクは低いだろうが
 オヤジは寝入っちまってるし、ヤバい部屋はヤバいからな
 おまけに最近は『黒服』が付近を張ってるようだしな、万が一ってこともある」
「オヤジ?」
「いずれ紹介するよ、“地下区”のこともな」


 地下区? よく分からんが学校町の地下が根城ってことだろうか
 ううむ、この町のことは一応下調べしてきた積りだったけど、まだまだ未知がいっぱいとは
 前に瑞樹さんから色々教えてもらったことを思い出しながら……あ、そうだ
 半井のおっさんに真っ先に言うべきことがあったんだ


「そういやおっさん、以前の霊園訪問の件で『墓守』さんが怒ってたぜ」
「は、なんで急にその話が出てくんだ? 大体あれだ、ほら、墓でうるさくしてたのはお前だろ早渡」
「おもにありもしない呼び出し方を新参者に吹き込んだ不届き極まりない都市伝説が居るってとこにな
 おっさん、あんたのことだからな?」
「は? 俺!? あっおいまさか! 早渡お前『墓守』にバラしたのか!?」
「馬鹿言うなよ、『墓守』さんは最初から最後まで全てをバッチリ把握済みだ」
「阿呆かお前!! あれだ、あの、あの人はキレるとめっちゃ怖えんだぞ!?」
「知るか、俺にホラ吹いた報いだろ」
 
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