1:名無しNIPPER[saga]
2019/03/23(土) 17:59:41.25 ID:WXZGVs7k0
午前に降りしきった雨も止み、秋晴れが心地よい午後のひとときでした。
2年3組、午後の一コマ目は山本先生の世界史。
抜群に興味深い内容でこそありません。
ですが始終穏やかに進められるその雰囲気は、クラス内でもなかなかの人気を誇っています。
前回に引き続く形となった三十年戦争の解説。
山本先生は今回のために資料を用意してきてくれました。
WEB上のフリーアーカイブから引用した、数点の絵画でした。
モノクロコピーの束を、列の先頭に並ぶ生徒達へ手渡してゆきます。
前から数えて三番目の席に座る奏ちゃんは気が付きました。
自身の列の後ろに続くのはもう二人。
手元に渡ってきた束は二つだけ。
このままでは一つ足りなくなってしまう勘定でした。
奏ちゃんは気の利く女の子でしたから、すっと綺麗な手を伸ばします。
不足している資料をもう一つ貰うつもりだったのでしょう。
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2:名無しNIPPER[saga]
2019/03/23(土) 18:00:30.42 ID:WXZGVs7k0
ただ、きっと、油断していると眠たくなってしまうような、午後の陽差しが悪いのです。
3:名無しNIPPER[sage]
2019/03/23(土) 18:01:50.47 ID:WXZGVs7k0
学校じゃマジメな方の女の子こと速水奏ちゃんのSSです
i.imgur.com
4:名無しNIPPER[saga]
2019/03/23(土) 18:04:41.95 ID:WXZGVs7k0
@小出さんの場合
まず間違い無く、昨晩遅くまでペルソナをやり込んでいたせいでしょう。
5:名無しNIPPER[saga]
2019/03/23(土) 18:13:37.40 ID:WXZGVs7k0
――あのね。スカウト、されたみたい。
6:名無しNIPPER[saga]
2019/03/23(土) 18:28:19.90 ID:WXZGVs7k0
短いその一言が、小出さんに気付かせてくれました。
いつしか自分が、彼女を遠い世界の住人だとばかり思い込んでしまっていたのだと。
奏ちゃんも本当は、先生をお父さんと呼んでしまったりもする、一人の女の子なのだと。
7:名無しNIPPER[saga]
2019/03/23(土) 18:40:39.73 ID:WXZGVs7k0
A永津くんの場合
刻一刻と近付いてくる受験戦争の足音。
8:名無しNIPPER[saga]
2019/03/23(土) 18:53:00.48 ID:WXZGVs7k0
「お父さんあっ」
9:名無しNIPPER[saga]
2019/03/23(土) 19:02:51.20 ID:WXZGVs7k0
自身の怠慢で奏ちゃんに恥をかかせるなど、永津くんにとって我慢ならない事でした。
かと言って、今この場で振り向いて真摯に謝罪をするとしましょう。
きっとみんなには見せたくない羞恥の表情を、間近で目にしてしまいます。
10:名無しNIPPER[saga]
2019/03/23(土) 19:08:28.58 ID:WXZGVs7k0
B山本先生の場合
良い職場だなと、山本先生は常々考えていました。
11:名無しNIPPER[saga]
2019/03/23(土) 19:18:42.85 ID:WXZGVs7k0
各列の先頭に座る生徒達へ資料の束を渡し終え、教壇に立ち戻った矢先の事でした。
指導用ノートをめくろうとすると、不意に耳へと飛び込んできた言葉。
それが奏ちゃんの声だったものですから、彼も驚いて顔を上げてしまいます。
12:名無しNIPPER[saga]
2019/03/23(土) 19:28:11.46 ID:WXZGVs7k0
奏ちゃんは優秀な生徒でした。
全国で見ても上位に食い込むのは間違いありません。
もっとも、学校が学校ですから、クラス内ではごく普通の成績ではあります。
13:名無しNIPPER[saga]
2019/03/23(土) 19:54:21.05 ID:WXZGVs7k0
C2年3組の場合
「お父さんあっ」
14:名無しNIPPER[saga]
2019/03/23(土) 20:08:00.21 ID:WXZGVs7k0
――ふふっ……すみません。実家みたいに安心できる陽射しだったものですから。
15:名無しNIPPER[saga]
2019/03/23(土) 20:08:34.26 ID:WXZGVs7k0
「……ファンサすご」
16:名無しNIPPER[saga]
2019/03/23(土) 20:09:56.34 ID:WXZGVs7k0
短いたった一言に、クラス中が湧き立ちました。
「えーー先生ズルいー!」
17:名無しNIPPER[sage]
2019/03/23(土) 20:17:51.89 ID:WXZGVs7k0
【エピローグ】
18:名無しNIPPER[saga]
2019/03/23(土) 20:26:23.37 ID:WXZGVs7k0
D奏ちゃんの場合
今日も秋晴れの気持ち良い渋谷の街を抜けて、奏ちゃんは事務所へと辿り着きました。
19:名無しNIPPER[saga]
2019/03/23(土) 20:43:30.94 ID:WXZGVs7k0
「うぅ〜〜っ……!」
「あぁ無理もぅ無理」
20:名無しNIPPER[saga]
2019/03/23(土) 21:01:09.08 ID:WXZGVs7k0
結局そのじたばたはドア前で物音がするまで続きました。
帰って来た周子ちゃんを前に、すっかりいつも通りの奏ちゃんは涼しげにおかえりを告げます。
仲良く夕食を挟んでいる最中に一度だけ、思い出した痛みに眉をしかめましたが、
21:名無しNIPPER[saga]
2019/03/23(土) 21:08:47.53 ID:WXZGVs7k0
昨日がまるまるオフだったのは奏ちゃんにとって不幸中の幸いでした。
これでも彼女はセルフコントロールが得意な方。
丸一日も時間があれば、極度のストレスだって丸め込めてしまうのです。
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