1: ◆vlTFewOdSQ[sage]
2019/07/17(水) 05:51:35.82 ID:zErl41JR0
ガチャッ
果南「やっほー! ……ってあれ?」
勢いよく部室の扉を開いた先には誰もいなかった。とりあえず中に入ってスマホの画面をつけると、そこには通知が何件か表示されていた。
果南「あちゃぁ。今日は休みに変更になってるよ」
私の連絡把握ミスで、休みなのにわざわざ部室まで来てしまった。ダイヤも鞠莉も私が教室を出た時点で教えてくれれば良かったのに。
果南「はぁ。折角来たし少し休んでから帰ろっと」
私は並べられている椅子の中から入ってきた扉に一番近い椅子に座った。
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2: ◆vlTFewOdSQ[sage]
2019/07/17(水) 06:15:20.23 ID:zErl41JR0
部室の中は丁度良い暖かさの風が吹いている。気持ち良くて気を抜くと寝てしまいそうだ。
果南「ふあぁ……少しくらい寝ても大丈夫でしょ」
私は自分の欲に逆らわず、ゆっくりと目を閉じた。段々と力が抜けてリラックスしていくのが分かる。
3: ◆vlTFewOdSQ[sage]
2019/07/17(水) 06:38:44.22 ID:zErl41JR0
果南「まさか、オバケ? ……ないないないない! そんな訳ないよ、ね?」
いるはずなんてないと分かっていても、訳の分からないことが起こっているとオバケの仕業なんじゃないかと考えてしまう。
果南「ひゃうっ!」
4: ◆vlTFewOdSQ[sage]
2019/07/17(水) 06:48:37.67 ID:zErl41JR0
「きゃっ!」
私が見たのとは反対方向から声がした。声の方向へ振り返るとそこには一人、浦の星の生徒が体勢を崩して転んでいた。
善子「いたたたた……」
5: ◆vlTFewOdSQ[sage]
2019/07/17(水) 06:56:59.88 ID:zErl41JR0
果南「善子、何か隠してるでしょ?」
善子「そ、そんな訳ないじゃない! だいたい私が何を隠してるっていうのよ」
果南「うーん?」
善子は分かりやすく動揺している。絶対何か隠し事があるに違いない。
6: ◆vlTFewOdSQ[sage]
2019/07/17(水) 06:57:51.95 ID:zErl41JR0
ニャーォ
7: ◆vlTFewOdSQ[sage]
2019/07/17(水) 07:05:39.20 ID:zErl41JR0
果南「ん?」
善子「あ、コラ駄目!」
善子の後ろから揺れる黒い尻尾が見えた。善子が自分の後ろを気にしている間に、私は背中側へと回り込んだ。
8: ◆vlTFewOdSQ[sage]
2019/07/17(水) 07:12:40.79 ID:zErl41JR0
私は怖がられないようにゆっくりと手を近づけて、黒猫の頭を触ろうとした。すると、私の手が頭へ到達する前に黒猫の方から頭を近づけてきた。
果南「おー、よしよし。本当に人懐っこいね」
善子「だから言ったでしょ?」
果南「そうだね。おっ、おまえ〜まだ撫でて欲しいのか〜?」
9: ◆vlTFewOdSQ[sage]
2019/07/17(水) 07:20:39.75 ID:zErl41JR0
善子「この子、親猫とはぐれちゃったみたいでね。私が朝登校しているときに雨の中木の下で鳴いてたのよ」
果南「坂のところ?」
善子「そうそう。それで放っておく訳にも教室に連れていく訳にもいかないじゃない? だから中庭にあった段ボールに避難させて部室の扉のところに置いておいたの」
果南「そういうことね」
10: ◆vlTFewOdSQ[sage]
2019/07/17(水) 07:26:55.84 ID:zErl41JR0
果南「別に悪い事してる訳じゃないんだから隠れなくても良かったのに」
善子「だって、隠れて飼ってるなんて勘違いされたら何言われるか分からないじゃない。今朝会ったばっかりなのにね?」
果南「みんな何も言わないと思うけどなぁ……」
善子「私もそうだと思うんだけど、反射的にね」
果南「あー……なんとなく分かる気がする」
11: ◆vlTFewOdSQ[sage]
2019/07/17(水) 07:35:16.03 ID:zErl41JR0
善子「今日この後、この子の事どうしようかと思って」
果南「ああ、子猫だろうし、ここに置いていく訳にはいかないし、ね?」
善子「でも私の家ペット禁止だし、連れて帰れなくて……」
果南「そっか……」
12: ◆vlTFewOdSQ[sage]
2019/07/17(水) 07:46:26.67 ID:zErl41JR0
善子「果南……ありがとう!」
果南「うぉっと」
善子は黒猫ごと私に抱きついてきた。黒猫は目を丸くして私と善子の顔を交互に見ている。
13: ◆vlTFewOdSQ[sage]
2019/07/17(水) 07:53:00.74 ID:zErl41JR0
なんとか学校を抜け出した私たちは私の船が置いてある場所へと移動した。
善子「誰にも会わなくて良かったわね……」
果南「運が良かったね。誰かに合うんじゃないかとヒヤヒヤしてたよ」
14: ◆vlTFewOdSQ[sage]
2019/07/17(水) 08:06:07.88 ID:zErl41JR0
コンビニに一番近い船が泊まれる所となると、必然的に千歌の家の前になる。
善子「千歌に見つからないかしら……?」
果南「うーん……念の為、急いだ方が良いかも?」
善子「じゃあ私、ダッシュで行ってくるから。この子よろしくね」
15: ◆vlTFewOdSQ[sage]
2019/07/17(水) 08:19:48.55 ID:zErl41JR0
善子が息を切らしながら戻ってきた。
果南「転ばなかった?」
善子「大丈夫だったわ。躓きはしたけれど」
16: ◆vlTFewOdSQ[sage]
2019/07/17(水) 08:26:03.07 ID:zErl41JR0
善子「なんだかまるで、悪い事をしているみたいね」
果南「本当にそうだね! でも秘密っていいと思わない?」
天候が悪い訳ではないけど、風が強く吹き始めて自然と声が大きくなる。
17: ◆vlTFewOdSQ[sage]
2019/07/17(水) 08:35:10.73 ID:zErl41JR0
私の家に着くと、善子は音を立てないようにそろりそろりと進んでいた。
善子「……おじゃましまーす」
果南「今の時間は私しかいないから、別にコソコソしなくて大丈夫だよ?」
善子「早く言ってよ!」
18: ◆vlTFewOdSQ[sage]
2019/07/17(水) 08:39:34.97 ID:zErl41JR0
善子「ゆっくりと言っても、もうそろそろ帰らないといけないのよね」
果南「だよね。じゃあご飯だけあげよっか」
善子「うん、そうする!」
善子は先程買ってきた物を、コンビニのビニール袋から取り出した。
19: ◆vlTFewOdSQ[sage]
2019/07/17(水) 08:43:50.94 ID:zErl41JR0
私が缶を開けると匂いで分かるのか、黒猫は缶の近くに寄ってきた。
果南「お、気になるか。お皿に出してあげるからちょっと待ってね」
私は台所から普段自分で使っている小皿を持ってきて、それに缶の中身を出した。
20: ◆vlTFewOdSQ[sage]
2019/07/17(水) 08:51:14.70 ID:zErl41JR0
「「あ! 食べた!」」
私達は声を揃えて喜んだ。もし食べなかったらどうしようと心配していたから余計に嬉しかった。
果南「美味しそうに食べてるね。善子のチョイスが良かったんじゃない?」
21: ◆vlTFewOdSQ[sage]
2019/07/17(水) 08:58:11.40 ID:zErl41JR0
船は問題なく夜の海を進み、あっという間にさっきの砂浜へと戻ってきた。
善子「果南、今日は本当にありがとう」
果南「黒猫のことは私に任せてね」
善子「うん、頼もしいわ。ねぇ、明日も果南の家に行っていい?」
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