アルコ&ピース平子「夏の概念と夢の国」
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6: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/08/26(水) 23:28:29.01 ID:qUczw4Pjo



2020年は厳しい8月を迎えていた。その厳しさったら驚くほどで、静岡の浜松ではついに41度にまで達した日が出たという。もはや暑さに人間どころか自然も勝てず、とうとうセミたちすらも鳴くことが叶わず繁殖するよりも先に死んでしまうらしい。
そのあまりの暑さに誰もが「いやぁ、今年オリンピックじゃなくってよかったね」なんて、大型イベントを逃した口実に使っているくらいだ。あのまま、熱に対する対策がほとんど練られないままで五輪を迎えていたらどうなったことかと思った。
以下略 AAS



7: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/08/26(水) 23:32:24.93 ID:qUczw4Pjo
ほんとに好きなんだね、と笑われたこともある。むしろ熱量そのままに語ってドン引きされることすらある。素でも周りに半分引かれていることは承知、本当に最高の場所なんだと何回でもお伝えしていきたい。むしろ伝えさせてほしい、本当ならもっとたくさんの人に行ってほしい!
そもそもなんだ、お前は見たのかと。俺の熱を笑うならあそこで遊んだことはあるのか?と。問いたい、問い詰めたい、地の果てまでも問いかけに行きたい。寝起きでもベッドでもどこでも駆けつけて問いかけたい。
あのプールを、スライダーを、イーグルからの景色を、コースターを、人々の笑顔を、夏を彩る噴水の美しき水飛沫を、なによりも世界最古級の回転木馬である『カルーセルエルドラド』を。

行きたかった、本気で!俺も!泳ぎ納め的なやつやりたかったの!
以下略 AAS



8: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/08/26(水) 23:35:13.40 ID:qUczw4Pjo
だから、としまえんだって、いずれなくなる。
普通に考えたらそうなんだろう。だけど、なぜだか俺はそんな当たり前のことを忘れていたのだ。いや、分かっていたとしても『としまえんは別』だと勝手に思い込んでしまっていたのだ。
だって、終わるわけがないと思っていた。未来永劫のものだとつい思っていた。むしろそうであろうと信じて疑うことは無かった。
としまえんが無くなるはずなんてないって、未だに実感湧かなくって、意味分かんなくて、全く理解できなくて、信じたくなくて。
だけど、としまえんだって、なくなるのだ。
以下略 AAS



9: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/08/26(水) 23:36:46.43 ID:qUczw4Pjo



そんな事実を聞かされても、まだ理解できていなかった。なんだ、芸人特有のリップサービス?いわゆる、面白くなると思って喋ったこと、なのだろう?それが、今の俺とどうつながると言うのだ。そもそも、俺はお前が言っている平子という人物は知らないし、そんな話をした覚えなどは一切無いのだから。
と、こちらから語っても説得しても酒井は折れず、未だ真剣な顔をしてこちらを見ていた。この時点で誰か呼んだり、警察にでも通報すればよかったのだが、なぜかそんな気は起きなかった。
以下略 AAS



10: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/08/26(水) 23:37:45.30 ID:qUczw4Pjo
狂人ではないはずの男のあまりの狂った論説に、本来の夏を取り戻したかのように、俺の体は発熱していた。混乱、恐怖、愕然としたまま酒井を見る。何もかもが現実味がないまま進んでいる。
としまえんに、なった?は?はぁ?
俺の相方と名乗った男は、酒井は、あまりにも真剣に……真面目に、どこまでもめちゃくちゃなことを言っている。なんだ、どこまでが本当で、どこまでが嘘なんだ?
一度頭を抱え、言葉を整理しながらも酒井は続ける。

以下略 AAS



11: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/08/26(水) 23:39:12.19 ID:qUczw4Pjo



8月31日もやっぱり暑かった。今年も結局、日中は最高気温35度をマークした非常に暑い日だった。こういう時には、室内での仕事が多い自分の現在をありがたく思うことがある。
実際のところ、もっと厳しい体当たりな現場も多数存在しており、この8月もあらゆるところで体を張ったり汗まみれになったりはしていたのだが、それでもたまにはとは言えどこんな太陽の上った暑い時間帯を涼しいスタジオで過ごせるのはツイている。夏の長所であり短所でもある熱射には弱い。
以下略 AAS



12: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/08/26(水) 23:41:15.01 ID:qUczw4Pjo
ブラックアウト。突然の沈黙。息をするのも忘れそうになり、眼球がぎょろんと忙しなくあちこちを見ようとした。

「……は!?」

車のエンジンが唐突に切れ、車内の明かりと言う明かりが途絶える。あの唸り声も突然無くなって、エアコンも動かないのかなんの音もしないし、計器類を照らした光も無くなった。
以下略 AAS



13: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/08/26(水) 23:43:49.24 ID:qUczw4Pjo



頭がごちゃごちゃだった。

以下略 AAS



14: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/08/26(水) 23:46:50.92 ID:qUczw4Pjo
酒井はスマートフォンを見せてくる。

画面に映る、自分らしき誰かが。
見せたことのない笑顔を向けている写真がある。

以下略 AAS



15: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/08/26(水) 23:49:10.26 ID:qUczw4Pjo



学生時代は、暗黒だった。

以下略 AAS



16: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/08/26(水) 23:54:17.86 ID:qUczw4Pjo
子供みたいな疑問が胸中渦巻いて、けれど言葉にすることは、返事が、言葉が帰ってくるのが恐ろしくてどうしようもなくて黙り込む。

だけど、だけどさぁ。
本当に?
ここは俺のための楽園?
以下略 AAS



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