玉座の間にて
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35: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/13(土) 09:55:36.78 ID:ewOe4rJE0

「魔王の首は、俺がもらい受ける!」

大叔父上が、ひときわ大きな声をあげ一息に魔王へと切りかかった。
必殺の上段構え。一切の防御を捨てた、海すら割る渾身の一撃。
以下略 AAS



36: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/13(土) 09:56:04.08 ID:ewOe4rJE0

大叔父上は、倒れかかる供周りを手で押しのけ再びの大上段に構える。
あくまで一刀にかける、大叔父上のその頑なな姿に、魔王の口角が徐々に上がっていき、遂には歯を見せ声をあげて呵々大笑してみせた。

「よいぞ、人間」
以下略 AAS



37:今日はここまでです ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/13(土) 09:56:34.76 ID:ewOe4rJE0

皆が、大叔父上の敗北に気を取られる中、間髪入れずに黒い影が魔王へと迫る。
影の正体は、我が父。父の必殺の刺突が、大叔父上の体の隙間より魔王の心臓へと放たれる。

大叔父上のその巨体の影に、魔王の死角へと巧みに隠れ完全なる不意打ちを狙ったのだ。魔王の目には、父が無から沸いて出たように見えたであろう。
以下略 AAS



38:予定を変更しました ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/13(土) 18:46:40.53 ID:ewOe4rJE0


子を三人産んでなお、その美しさが評判だった叔母上の腹から腸が漏れ出る。大叔父上の厳しい稽古から逃げ出した俺を、よく探しに来てくれていた兄の首が胴から離れた。片目を抜かれながらも、再び立ち上がった父は顔をつぶされてしまった。

共に育ち、共に飯を喰らい、共に生きてきた家族たちが魔王に蹂躙されていく。
以下略 AAS



39: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/13(土) 18:47:08.15 ID:ewOe4rJE0

あまりの歯痒さに、腸が煮えくり返りそうになる。だが、だからと言って祖母を投げ出すわけにもいかない。
俺は祖母の言葉に従い、じっと目を凝らす。

呼吸を整え、魔王の剣に穴が開くほどみつめる。
以下略 AAS



40: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/13(土) 18:47:35.76 ID:ewOe4rJE0

「不意打ちなら。いや、奴は死角からの親父の剣すら交わして見せた」

「奴の目は、異常なほど良い。魔王は常に、動きある者を視界におき、その挙動を把握できるように努めておる……」

以下略 AAS



41: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/13(土) 18:48:03.41 ID:ewOe4rJE0

「ばば様、何か知恵があるなら貸してくれ」

「奴は、自らを前に剣すら抜けぬ臆病者を敵としてみておらんのかもしれん。つまり、いまだ剣を抜いていないお前は魔王にとっていないも同じ。

以下略 AAS



42: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/13(土) 18:48:31.08 ID:ewOe4rJE0

魔王を狭間に、祖母と目が合った。これが、今生の別れとなるやもしれぬ。
減らず口の絶えない、気難しい年寄りであったが、いまとなっては何もかもが愛おしくてたまらない。

「ちぇえええいぃあああああああああああああ」
以下略 AAS



43: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/13(土) 18:48:58.41 ID:ewOe4rJE0

祖母がその小さき体で魔王の蹴りを受け、壁まで飛ばされる。
その衝撃に、肺腑の空気がすべて抜けたのであろう。祖母の叫声が止まり、ほんの一瞬だけ場が沈黙に包まれた。

ちりん。
以下略 AAS



44: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/13(土) 18:49:26.84 ID:ewOe4rJE0

「ここまでか」

利き腕を斬りおとされたというのに、魔王はその冷静さを微塵も失わず穏やな様子であった。

以下略 AAS



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