7:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 20:35:19.22 ID:u50g9+A20
  
  
  アイドルになったからと言って、すぐにあの煌びやかな世界に飛び出せる訳ではなかった。 
  
  湖を優雅に泳ぐ白鳥のようでも、水面下では必死に足をばたつかせている。 
8:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 20:36:43.44 ID:u50g9+A20
  
  
  夕暮れ時。 
  
  並び立つビルを彩るのは、刺々しいスポットライトやLEDの装飾された看板の数々。どれもこれも自己主張が強くて、統一感なんてまるでない凸凹な都会の風景。 
9:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 20:38:08.83 ID:u50g9+A20
  二人っきりのダンスレッスン。基礎的な振り付けをひたすら繰り返すような日だった。 
  
  運動には、多少の自信はあったけど、ダンスレッスンは想像以上にハードだった。 
   
  疲れた体に、程よい炭酸の甘さと冷たさが良く沁みた。 
10:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 20:40:25.46 ID:u50g9+A20
  
  
 「千里の道も一歩から、でしょ」 
  
 「千里どころか、万里の道に感じます」 
11:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 20:42:26.93 ID:u50g9+A20
  
  
 「奏さんが羨ましいです。なんでもすぐに器用に出来て」 
  
 「……どうかしらね」 
12:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 20:44:13.59 ID:u50g9+A20
  
  
  
 「文香は、なんでもかんでも集中しすぎちゃうんじゃないかな」 
  
13:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 20:46:37.02 ID:u50g9+A20
  
  
 「同じことなのよ。本当は、気合いを入れる必要はない。ただ読めばいいし、ただ踊ればいいの」 
  
  
14:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 20:49:33.41 ID:u50g9+A20
  
  
  しかし、やっぱり動きが硬い。一番の問題は。 
  
  私は顔を伏せたまま文香の両肩に手を置くと、ぐっと力を込めた。 
15:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 20:52:21.36 ID:u50g9+A20
  
  
  気恥ずかしさも覚えるけど、これも文香のためか。 
  
  
16:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 20:55:09.38 ID:u50g9+A20
  
  
  私はゆっくりと踊る速度を落として、やがて止まる。 
  
  文香から、手を離した。 
17:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 21:00:35.61 ID:u50g9+A20
  
  
  私は拍手をしようとして、別の人に役目を取られた。 
  
  背後からの拍手の音に、私は顔を向ける。 
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