13:今日はここまで ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/03/31(日) 21:02:41.28 ID:XVRz4++K0
  
  大食漢がその大きなお腹のせいか二人分の席を使っていたせいで、僕は少し気後れしながらも目の鋭い男の隣に腰をおろした。 
  
  間近で見る料理は、圧巻の一言であった。 
  僕の顔よりも大きいパンに、思わず声があがる。 
14: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:48:37.25 ID:VN/U1bqQ0
 ♦ 
  
  空腹のあまり、街についてからのことはよく覚えていない。 
  案内されるがままに、丘を登り、席につき、飯を喰らっていた。 
   
15: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:49:09.19 ID:VN/U1bqQ0
  
  ご馳走に気を取られて、今の今まで気づかなかった。 
  この土地の慣習か何か知らないが、置いてあるのだから貰っておこう。 
  俺は、ためらいなくそれを懐に納める。 
  
16: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:49:42.22 ID:VN/U1bqQ0
  
  領主のことを「お館さま」と呼び、食事を勧めるホストのような振る舞い。 
  察するに、デブはこの館の人間だろう。 
  しかし、どうして館の人間が俺達のような流れ者と席を同じくしている。 
  周りを見渡しても、どいつもこいつも薄汚れて生気のない顔で飯を貪っている。 
17: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:50:13.48 ID:VN/U1bqQ0
  
 「おいデブ! 酒はないのか?」 
  
  デブは、目を細めこちらを睨みつけてきたが、悲しいかな少しも恐ろしくない。 
   
18: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:50:52.04 ID:VN/U1bqQ0
  
 「月が出る頃には、魔物の軍勢は街を囲うだろう」 
  
 「お館様……」 
  
19: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:51:22.48 ID:VN/U1bqQ0
  
 「さて、そこのお前」 
  
  領主の青みがかった目が、俺の濁ったそれと交錯する。 
  
20: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:51:58.21 ID:VN/U1bqQ0
  
 「悪いが、剣や槍は既に枯れた。だが、代わりになるものを用意した」 
  
  領主が、テーブルナイフを握り俺の眉間に向ける。 
  思わずギョッとするが、向けられているのは俺の頭の先だ。 
21: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:52:30.42 ID:VN/U1bqQ0
  
  くそ、酒が欲しい。この震えを止めるにはもうそれしかない。 
  
 「やります」 
  
22: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:53:44.40 ID:VN/U1bqQ0
  
  俺は、愕然としていた。 
  どうしてそんな恐ろしいことが言える。 
  魔物の恐ろしさは、お前だって知っているはずだ。 
  
23: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:54:14.78 ID:VN/U1bqQ0
  
 「……領主さまが問題にしているのは、お前がまだガキだってことだ」  
   
  俺の言葉に、ガキが口を真一文字に結んだ。 
  どうして俺は、領主に助け舟を出しているのだろうか。 
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