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2011/01/19(水) 19:32:15.64 ID:IClwZiHj0
「彼は敵じゃない。彼は世界の……敵じゃない」
俺の喉、そして背中から違和感が消える。それと同時に目の前に有った人の形をした夜も、見回せば背後に確かに居たであろう少女の姿も正しく言葉通り影も形もなくなっていた。
奇術集団かよ、お前らは。
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2011/01/19(水) 19:36:25.92 ID:IClwZiHj0
「十三銃士」
戯言遣いに促されるままに道を歩く。その俺に向かってソイツは肩口にそう言った。
「じゅうさん……じゅうし? 突然数を数えだして何がしたいんだよ、戯言遣い」
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2011/01/19(水) 19:38:44.83 ID:IClwZiHj0
「さっき」
戯言遣いは話し出す。
「君の喉にナイフを突き付けていた娘、居ただろう?」
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2011/01/19(水) 19:41:04.87 ID:IClwZiHj0
悪役のアジトを話が始まった途端に強襲する正義の味方サイド。
そんな話聞いた事ねえよ。
「よお、よく来たな、俺の敵」
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2011/01/19(水) 19:43:48.03 ID:IClwZiHj0
はてさて、お分かり頂けたとは思うだろうが、それとも読み飛ばされただろうか。悪の秘密結社と言って俺が連れてこられたのはどこにでも有る二十四時間ファミレスである。
最近の流行か知らんが喫茶店を拠点にする正義の味方は聞いた事が有っても、流石にファミレスに寄生する悪役ってのは前代未聞だ。
少しづつではあるが、もしかしたらそんなにシリアスな話でもないのかもなと思えてきた。
そんな俺の醸し出す気だるい空気など最初っから、存在すらも無かった事にしてしまいかねない勢いでいーさんと狐面の男のやり取りは続く。
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2011/01/19(水) 19:46:01.18 ID:IClwZiHj0
「……敵同士、って!?」
「おうおう、動揺してる姿も可愛いねえ、いーちゃん。だが、幾ら可愛くても今回ばっかりはダメだ」
赤いウェイトレスさんはそう言って、狐面の男の隣にどかりと座り込む。え? 店員さんじゃないの?
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2011/01/19(水) 19:50:22.41 ID:IClwZiHj0
哀川さんは豪快に笑う。ファミレス中に轟く、大音量でその人は笑った。
「正直、諦めてた部分も有ったんだよ。アタシらしくもないが、それでもちょっと強くなり過ぎたっつーかロープレでチートして途中からゲームをする事自体がダルくなる感じだな。やっぱ最初から勝敗が分かってるような敵じゃ、こう……燃えねえよなあ」
燃え盛る炎のような真紅で全身を染め上げて、立ち上る存在感は最早熱気としか形容のしようがない。炎と比喩して何の問題もないであろう人類最強の口から出た「燃えない」という言葉。
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2011/01/19(水) 19:54:07.73 ID:IClwZiHj0
オラ、ワクワクしてきたぞを地で行くその眼の輝きは紛れもない本心なのだろう。なんだ、この人。どんな図太い神経してやがるってんだ。
「つまり、アタシにしてみりゃクソ親父の世界の終わり云々なんってーのはどうでもいいんだよ。アタシは強敵と出会えればそれでいい」
格闘漫画みたいな事言い出しやがった。本当にこの人は現実に居る人間か、俺にはどうも怪しく思えてきたぜ?
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2011/01/19(水) 19:57:58.72 ID:IClwZiHj0
「話し合いで済むのならば、それに越した事は無いと思っていたんですよ。そういうのがぼくの戯言における本領ですからね。ただ……ただ、哀川さんがそちら側に回っているのは予想外でした」
いーさんは言う。
「貴女は、貴女だけは正義を間違えないと思っていましたから。どうやらぼくの買い被りだったようでほっとしていますよ。哀川潤も、人の子だったんだな、なんて。変な話ですけど」
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2011/01/19(水) 20:01:46.98 ID:IClwZiHj0
「その辺にしておけ、潤」
「……クソ親父。なんだよ、アタシのパートはこれで終了かよ。つっまんねえな」
頬を膨らませて立ち上がる赤い彼女。その鋭い眼光で睨み付けるのは、俺。……え? なんで、俺?
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2011/01/19(水) 20:05:10.77 ID:IClwZiHj0
「良いんですか、狐さん。哀川さんを帰してしまって。これでもう、貴方を守る人は居ませんよ」
「『これでもう、貴方を守る人は居ませんよ』、フン。いいか、"いーちゃん"。潤はただの前座だ。お前も得意な時間稼ぎってヤツだ。時間が時間だからな。連絡が付いたのは六人しか居なかったが、それでもお前らを全滅させるには十分だろ」
十三銃士。あんな人が後十二人も居るっていうのかよ、おい。たった一人でも長門の相手を出来そうな規格外が他にまだ!?
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