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2011/03/06(日) 00:58:06.80 ID:UJglJRMW0
(もし……なんて考えても仕方のないことだけれど)
交通事故に遭い、失われる筈だった命をつなぎ止めることと引き替えに魔法少女になったマミは、二つのものを同時に失った。
家族と、ふつうの少女としての青春とを。
それまでクラスの人気者だったマミは、事故の後、だんだんと自分が周囲から浮いた存在になっていくのを感じた。事故で一度に家族を失った悲劇の主人公にうまく接していくには、マミの友人たちはまだ幼すぎたのだった。もちろん、それだけなら時間が解決してくれたのかも知れない。孤独の影をひきずりながらも、一人の十代の少女として、人並みの青春を送れていたのかも知れない。
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2011/03/06(日) 00:58:34.58 ID:UJglJRMW0
「で、これからどうする気だい、マミ?」
放課後、黄色い傘をさして家路につくマミの肩にしがみつきながら、キュゥベえは尋ねた。
「今日の事件が魔女の仕業だと分かった以上、放っておくとまた次の犠牲者がでることになるよ」
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2011/03/06(日) 00:59:10.75 ID:UJglJRMW0
「あったわ。小さく記事になってる」
見滝原市立図書館の閲覧室で、マミは一人目の生徒の自殺を報じた新聞記事を見つけた。
「『……10日朝9時頃、見滝原市のショッピングセンター△△の屋上で、少女が血を流して倒れているのを警備員が見つけた。倒れていたのは見滝原中学2年の××(14)で、すぐに病院に運ばれたが既に死亡していた。少女の右手首には切り傷があり、警察では自殺を図った可能性もあるとみて捜査を進めている……』ですって」
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2011/03/06(日) 00:59:38.74 ID:UJglJRMW0
「魔女は移動しているのかな」
「だとしたら、そうとう逃げ足の早い相手ね。今日私たちが屋上に行ったときにはもう、気配の痕跡さえ感じられなかったんだもの」
「でも、もし遠く離れた場所から二つの事件をおこしたのだとしたら、それはそれで手強い相手だよ、マミ」
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2011/03/06(日) 01:00:39.24 ID:UJglJRMW0
図書館から出ると、雨はますます激しくなっていた。遠くからは微かに雷の鳴る音も聞こえてくる。
「ひどい雨……。キュゥベえ、魔女も気になるところだけど、今日のところはひとまず家に帰りましょう」
マミは制服のスカートの裾をひらひらさせながら言った。
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2011/03/06(日) 01:01:11.69 ID:UJglJRMW0
(魔法少女なんていっても、雨から身を守ることさえ自由には出来ないなんてね)
マミは心の中でそう呟きながら苦笑いした。
もちろん魔法を使えば、雨よけのシールドを作り出すことなどたやすい。しかし、そんなささやかな術であってもソウルジェムを濁らせるとあっては、迂闊に魔力を使うわけには行かなかった。
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2011/03/06(日) 01:01:39.15 ID:UJglJRMW0
「マミ!」
その時、キュゥベえが突然心の中に話しかけてきた。
「気配を感じるよ。このすぐ近くだ」
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2011/03/06(日) 01:02:14.80 ID:UJglJRMW0
「僕に考えがある」
「何なの?モタモタしてると、また逃げられてしまうわ」
「だったら逃がしてやろうよ」
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2011/03/06(日) 01:03:05.01 ID:UJglJRMW0
光の中から現れたマミは、もう見滝原中学の制服などまとってはいなかった。白いブラウスに、髪の毛と同じ色のリボンとスカート。ブラウンのコルセットに、戦いにはやや不似合いなベレー帽。「魔法少女」としての、いつものマミのスタイルだった。
「油断は禁物だよ、マミ。どんな相手かよく分からないからね」
「分かってる」
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2011/03/06(日) 01:03:44.83 ID:UJglJRMW0
「でも、事態は少しばかりやっかいになってきたね」
「え?」
問い返すマミを見上げながらキュゥベえは言った。
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