1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/03/12(土) 08:42:51.50 ID:IW7IgJuDO
初SSです。
・けいおん澪の一人称形式です。
・少し鬱っぽいです。
・短いので最後までお付き合い頂けると少し嬉しいです。
2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/03/12(土) 08:44:38.58 ID:IW7IgJuDO
何か一から新しい事を始めようとしても、無意味だ。何故なら終わらせることが出来ないから。
入院してからもう何日目になるだろうか。真っ白い壁と天井に閉じ込められた病室で、私は新曲の歌詞を書こうとして…シャープペンを置いた。
人はいつか死ぬんだという事を漠然とにしろ考え始めるのは普通何歳になってからなのだろうか。少なくとも高校生の私には、その日一日を精一杯過ごすということに終われる日々の中で、今まで死という現実を直視する事はなかった。
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2011/03/12(土) 08:46:30.64 ID:IW7IgJuDO
今の環境を私はそれなりに受け入れてはいた。ただ、ママ…お母さんが、私が入院してからというもの、毎日私に会いに来てくれることに少しばかり心の痛みを感じていた。
「…どうせ死ぬのに」
具合なんか全然悪くないのにこんな所に閉じ込められて、気分ばかりが滅入っていく。そんな鬱々とした気持ちのまま私は何となく軽音部で作った曲を口ずさんでみた。
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2011/03/12(土) 08:47:59.20 ID:IW7IgJuDO
「…どうしてなのかな」
もう私は放課後音楽室で唯達とお茶を飲むことも、みんなと演奏をすることも、まして学校に行くことすら、永遠に出来ないのだからーー…。
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2011/03/12(土) 08:50:37.60 ID:IW7IgJuDO
私、秋山澪はごくごく普通の高校生だ。長く黒いストレートの髪と標準より少しだけ豊満なバストが特長と言えば特長と言えるかもしれない。それ以外には特に人に自慢出来る特技も持ち合わせていない。ただ私は軽音部に所属している。軽音部にいるからには何か楽器が出来なければ嘘であり。そして私はベースというものが弾けたりする。それくらいだろうか。軽音部には他に四人の仲間がいて、そこで私は放課後ティータイムというバンドを組んで音楽的活動をしたりしなかったり。年二回、文化祭と新歓ライブが私達の主な発表の場だが、今年のクリスマスには中学時代の友人のコネで、ライブハウスで演奏したりもした。
その帰り道、私は突然目の前がブラックアウトし意識を失った。有り体に言えば、倒れた。
意識のない私を誰かが呼んだ救急車が病院に運び、何がなんだか分からないまま私は、入院することになった。
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2011/03/12(土) 08:52:20.65 ID:IW7IgJuDO
数日後、私は自分の病名を担当の医者から聞かされることになる。先生は私の緊張を解くところから始め、そして私は自分の体に起こった異変について知ることになる。病名については難しい名前で延々と話されてよくは覚えていない。ただ私の病気は治療不可能で末期。もう余命一ヶ月しかない、という揺るぎない事実だけだった。
「ーー髪、切ろうかな」
さらさらと、手で自分の髪を梳きながら、ひとりごちる。なんだか急にうっとおしく思えてそんな独り言をこぼしてしまう。勿論ハサミなど持っているはずもないし、美容院になど行けるはずもない。
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/03/12(土) 08:53:47.11 ID:IW7IgJuDO
ーー
「じゃあ出席を取るわねー」
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2011/03/12(土) 08:55:24.03 ID:IW7IgJuDO
「…そこで目が覚めたんだ」
「ふーん」
私の話しを黙って聞いていた律は、真顔でそう相槌を打った。律、というのは先に話した軽音部のメンバーで、小学校時代からの私の親友だ。律は私が今日みた夢の内容という、他人が聞くには恐ろしく興味の薄い類の話しをしている間中ずっと真剣に、私の顔を見つめながら聞いていた。やがて律は、
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2011/03/12(土) 08:56:57.10 ID:IW7IgJuDO
律とはつい最近までずっと一緒にいたのに、まるで何年も会っていないかのように歯車が滑らかに噛み合わず、とてもぎこちのないものだった。軽音部の他のみんなも、始めは毎日お見舞いに来てくれてはいたが、そのうちに回数が減り、今では毎日来てくれるのは律だけになった。
律がいうには、みんなは次の新歓ライブに向けて、部活動に忙しいらしい。
次の?
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/03/12(土) 08:58:55.74 ID:IW7IgJuDO
「じゃあ私、帰るな」
「あ…」
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/03/12(土) 09:00:42.90 ID:IW7IgJuDO
「具合はどう、澪ちゃん?」
私の隣に座りそんな事を聞く。病室に来てから五分で聞くことは毎日決まって同じ台詞だった。同じことばかり繰り返す母親は私を心配させまいとしているのだろうが、その顔はまるで『笑顔』が張り付いてしまった能面のように見えた。一人っ子の私を可愛がるのは何もおかしくはないが、今のお母さんはどこか不気味だ。
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/03/12(土) 09:02:11.53 ID:IW7IgJuDO
そして、夜が訪れる。
私の命を削る暗い闇が。
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/03/12(土) 09:03:53.95 ID:IW7IgJuDO
私は目が覚めるとすぐ、カレンダーの日付に赤いマーカーで×印をつけた。
昨日という一日が終わり、今日という一日が始まる儀式。
今日は二月二日だ。
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/03/12(土) 09:05:31.83 ID:IW7IgJuDO
「どうした?元気ないじゃんか」
そんな私に律は軽口を続ける。実際元気になれるわけがないことを律だってよく知っている筈なのに。
「…うん」
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/03/12(土) 09:07:30.47 ID:IW7IgJuDO
走り気味な律のドラム。私は軽音部での活動の事を思い出していた。放課後ティータイム。私にとってはもう過去のことだ。終わってしまった私の青春…。
「…みんなもさ、」
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/03/12(土) 09:09:19.94 ID:IW7IgJuDO
恨まないでくれよなーー…と。
「…ーー恨むよ」
律の手が止まる。
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/03/12(土) 09:11:30.04 ID:IW7IgJuDO
「…あ、」
私の馬鹿!律の気持ちも考えろ!
「…ごめん」
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/03/12(土) 09:13:14.28 ID:IW7IgJuDO
「澪」
去り際に律は、
「生きろよ」
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/03/12(土) 09:15:08.71 ID:IW7IgJuDO
私達は小さい時からずっと一緒で、これから先もずっと親友同士でいられるのだと、口に出すまでも、頭で考えるまでもなく、当然のことなのだと今までそう錯覚していたーー…。
「あ、りっちゃん」
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/03/12(土) 09:15:51.50 ID:IW7IgJuDO
終わりです。
ありがとうございました。
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/03/12(土) 09:20:30.83 ID:0dYRfNjTo
乙
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