2:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/21(金) 23:56:03.05 ID:Rcy++Q4I0
   巨大な「目」の下に、彼女は立っていた。 
   目を取り囲むのは、無数の目。 
   蠢く肉質な壁、壁、ピンク色のそれは建物や地面を覆っている。 
   ぶよぶよした浮腫のようなものがまとわりついているのだ。 
   そして、そこに埋め込まれているのは眼球。 
3:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/21(金) 23:56:47.90 ID:Rcy++Q4I0
   「ついたよ。この人の煉獄の入り口」 
    
   『OK、それじゃ、攻撃に遭う前にそこに入って、記憶を修正してくれ』 
    
   マイクの向こう側から、まだうら若い青年の声が聞こえる。 
4:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/21(金) 23:57:32.25 ID:Rcy++Q4I0
   「鬼さんこちら! 手の鳴る方へ!」 
    
   パンパンと手を叩く。 
    
   『こら、何してるんだ! おい、汀!』 
5:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/21(金) 23:58:03.87 ID:Rcy++Q4I0
   『遊ぶな!』 
    
   怒号が聞こえる。 
   今までぼんやりしていた表情は、まるで別人のように生き生きと輝いていた。 
   しかし、次の瞬間、眼球が一つ汀の脇腹に食い込んだ。 
6:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/21(金) 23:59:14.28 ID:Rcy++Q4I0
   * 
  
   一瞬視界がホワイトアウトした。 
   次いで彼女は、狭い、四畳半ほどの真っ白い、正方形の部屋に立っていた。 
   何もない部屋だった。 
7:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 00:00:01.20 ID:CGXDMCHp0
   汀はにっこりと笑った。 
   そしてマネキンの前にしゃがみこんだ。 
    
   「だから死にたいの?」 
    
8:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 00:00:30.39 ID:CGXDMCHp0
   マネキンの手が動き、汀の首を掴んだ。 
   それがじわりじわりと、彼女の細い首を締め付けていく。 
   汀は、苦しそうに咳をしながら、ひときわ強く眼窟の中に指を突きいれた。 
    
   『ウッ』 
9:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 00:01:13.44 ID:CGXDMCHp0
   1 劣等感の階段 
  
   「……と言うことで、旦那様は一命を取り留めました」 
    
   眼鏡をかけた、中肉中背の青年が、柔和な表情でそう言った。 
10:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 00:02:01.07 ID:CGXDMCHp0
   「まぁ……後は区役所の社会福祉課にご相談なさってください。こちらが、ご主人が今入院されている病院です。面会も可能です」 
    
   「先生!」 
    
   女性が机を叩いて声を張り上げた。 
11:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 00:02:49.57 ID:CGXDMCHp0
  * 
   
   散々喚き散らした女性を軽くあしらい、診断室を追い出した青年は、息をついてカルテをベッドの上に放り投げた。 
   八畳ほどの白い部屋だった。 
   見た目は普通の、内科の診断室に見える。 
178Res/185.76 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
板[3] 1-[1] l20 
	このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
	もう書き込みできません。