過去ログ - 少女「ずっと、愛してる」
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10:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:14:47.50 ID:A45p+aH70
「さて……こいつらを起こさなきゃいけねぇな」

「え……?」

愛寡の顔から、笑顔が消えた。
以下略



11:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:15:20.77 ID:A45p+aH70
――この人は
――この人は
――それさえも許してくれないというの?
――その、ひとひらの慈悲さえくれないの?
――一体いつまで
以下略



12:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:15:54.23 ID:A45p+aH70
「待って……」

すがるように呟いて、愛寡は……立ちあがろうとした彼の首に手をかけた。

「……待って……」
以下略



13:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:16:24.23 ID:A45p+aH70
寝息が、聞こえる。
白青髪の少女と、黒髪の少女。
二人の姉は……愛寡と彼の会話にも起きる気配を見せなかった。
どれだけ長いこと、彼の首を絞めていただろうか。
どんなに絞めても。
以下略



14:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:17:00.21 ID:A45p+aH70
太陽が沈んで行き、そして空に満天の星がきらめき始める。どこまでも……何処までも続く電灯のように。漆黒の空間のどこまでも遠くに、ビーズ玉よりも小さな、小さな星達がきらめき始める。
愛寡は、彼の首を絞める手を緩めていなかった。もはや渾身と言ってもいいほど、全体重をかけて締め付けていた。
彼の唇や顔は土気色に変色し、目は閉じられ、既に息はない。
二人の姉は、ピクリとも動いていない。
いつの間にか寝息は聞こえなくなっていた。
以下略



15:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:18:38.54 ID:A45p+aH70
体中が冷え切り、指先が真紫になった頃。
やっと愛寡は彼から手を離した。
そしてうずたかく体に積もった雪を払おうともせず、吹雪の中で肩を落とした。

――どうして許してくれるの?
以下略



16:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:19:08.58 ID:A45p+aH70
カサリ、という音がして。物言わぬ死体と化した彼の口が動いた。殆どミイラ。骨と皮のその口から、握り拳大の、手の平のような足をした黒光りする背中を見せた昆虫が這い出してくる。
それは次から次へと……何処にそんなに隠れていたのかというくらい、雪崩のようにミイラ死体の口から溢れ出てきた。
それは、二人の姉の死体からも同様だった。
蟲……蟲。
黒い……おぞましいそれは、愛寡の足を噛み、腕を噛み。耳に足を突っ込み……口から体の中に入ろうと足を動かし。
以下略



17:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:19:39.91 ID:A45p+aH70
それは……地平線の果てまでどこまでも続く黒蟲の洪水だった。地面がどこまでも……どこまでもそのおぞましい昆虫に埋め尽くされている。
それが、まるで降りに放り込まれた餌に群がるように愛寡に向かって雪崩を為して押し寄せてきているのだ。
怖さも、何もなかった。
体の皮を蟲の鉤爪のような口で食い破られながら、愛寡はただ、ぼんやりと足元……先ほどまで首を絞めていた彼がいた場所に向けていた。蟲……蟲。どこまでも蠢くそれに覆い隠されて、もはや見えない。


18:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:20:17.79 ID:A45p+aH70
――どれだけ私を傷つけているかも知らず
――あなたは、その下で微笑んでいるの?
――あなたは、それでも私に
――ここにいろと言うのですか?
――どうして
以下略



19:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:22:01.20 ID:A45p+aH70


 ぼんやりと、外を見ていた。
ああ……今日も一日が始まる。
今日も……始まってしまう。
以下略



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