4:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:10:42.37 ID:A45p+aH70
葉の隙間からこぼれる、金色の光。彩られて虹色に輝くそこで、彼女は自分の膝に頭を乗せて眠っている男性を見下ろした。
愛寡は、美しい女性だった。
年の頃は、十七、八頃。まさに今が盛りという、少し大人びた魅力を内包している。燃えるような赤褐色の髪。所々ウウェーブがかかったそれは、色と対照的に流れる清流をイメージさせるものだった。
ワンピースタイプの白い服の上からも分かるとおりに、彼女はかなり成熟した体型をしていた。童顔と相まって、アンバランスな魅力を孕んでいる。
長い髪は腰の辺りで一つにまとめられている。それは右側の顔面を口元まで覆い隠していた。
5:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:11:26.39 ID:A45p+aH70
しかし……。
彼女が孕む温かさは、少し離れた場所にいる愛寡にもはっきり分かっていた。
自分達がいる緑と青、そして色とりどりの美しい空間。それを球形に囲む一キロほどの周りは、真っ白な……雪と氷に覆われた世界だった。
温かい。
本当に。
6:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:12:00.51 ID:A45p+aH70
「何だ……こいつらも来てたのか」
「ええ」
囁くように言葉を交わし、愛寡は疲れたように笑ってみせた。
7:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:12:39.41 ID:A45p+aH70
いつもそうだ。
この人は、いつも無邪気な顔で。
私のことを認めてくれる。
ここにいてもいいよと、何もしないでも認めてくれる。
この人は。
8:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:13:36.03 ID:A45p+aH70
「何がだ?」
「いい、のです」
「……」
9:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:14:18.14 ID:A45p+aH70
――あなたはそう
――いつもそう
――笑って許してくれる
――怒らない。認めてくれる
――それが、どれだけ私を傷つけているか
10:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:14:47.50 ID:A45p+aH70
「さて……こいつらを起こさなきゃいけねぇな」
「え……?」
愛寡の顔から、笑顔が消えた。
11:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:15:20.77 ID:A45p+aH70
――この人は
――この人は
――それさえも許してくれないというの?
――その、ひとひらの慈悲さえくれないの?
――一体いつまで
12:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:15:54.23 ID:A45p+aH70
「待って……」
すがるように呟いて、愛寡は……立ちあがろうとした彼の首に手をかけた。
「……待って……」
13:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:16:24.23 ID:A45p+aH70
寝息が、聞こえる。
白青髪の少女と、黒髪の少女。
二人の姉は……愛寡と彼の会話にも起きる気配を見せなかった。
どれだけ長いこと、彼の首を絞めていただろうか。
どんなに絞めても。
979Res/589.08 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。