483:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/18(土) 19:03:20.46 ID:rIc6JsyG0
単純なその言葉に殴りつけられ、愛寡は下を向いた。
その、大魔法使いとしてはあまりにも頼りない姿に、功刀はため息をついた。
そして、彼女がスカートの中に隠していた左足の義足を目に留める。
「……聞きヅライんデスが、その足……」
484:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/18(土) 19:03:56.20 ID:rIc6JsyG0
「……面倒なコトになりそうダナ」
カタカタと、テーブルの上の血のグラスが振動していた。
爪が歯軋りするたびに、振動が大きくなっていく。
遂には、功刀が持っているグラスと、愛寡がテーブルに置いたグラスが、パァンッ! と音を立てて砕け散った。
485:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/18(土) 19:04:32.72 ID:rIc6JsyG0
「待って……功刀!」
愛寡が慌てて呼び止める。
しかし功刀は、それを坦々とした瞳で見返し、やがてトプリと、影の中に音を立てて消えた。
愛寡は慌てて、転がるように爪に駆け寄り、彼の腕と足のワイヤーを解き始めた。
486:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/18(土) 19:05:04.50 ID:rIc6JsyG0
「畜生……畜生あの……野郎……!」
爪が歯軋りをする。
その手の束縛を解き、愛寡は爪の頭を強く抱きしめた。
胸に顔が押し付けられ、爪は一瞬きょとんとした後、真っ赤になった。
487:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/18(土) 19:05:30.90 ID:rIc6JsyG0
*
ガタン、ゴトン、とトレーラーが揺れる。
それを運転しているのは、まだ年端もいかない少女だった。
鼻歌交じりに、大きなハンドルを切っている。
488:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/18(土) 19:06:43.87 ID:rIc6JsyG0
燐は息をついてギアをチェンジさせると、里の方を向いた。
「私達が、前のドームを出てから二ヶ月くらい経ちますわ。本当にその地図、合ってるんですの?」
「高額で落札したものです。信憑性は高いと思われます」
489:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/18(土) 19:07:15.62 ID:rIc6JsyG0
それを聞いて、里と燐が顔を見合わせる。
そして燐は深くため息をついて、トレーラーを停めた。
「本当ですの?」
490:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/18(土) 19:07:59.19 ID:rIc6JsyG0
「困りましたわ……食料がないのは、死活問題ですの」
燐が頬に手を当てて、全く危機感がない声で言う。
ガゼルは、運転室の奥のハンモックに横になって沈黙している主、金髪の少女、虹に、前部に搭載されているカメラアイを向けた。
虹の首筋には、ガゼルから伸ばされたコードが接続されている。
491:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/18(土) 19:08:30.21 ID:rIc6JsyG0
すぅ、すぅ、という寝息が聞こえる。
深い眠りに入っているらしい。
最近、虹は寝ていることが多くなった。
前のような人格分裂の症状はあまり見られなくなったものの、ガゼルは、基本的に虹の指示がないと動けない。
彼にとっては歯がゆい状況が続いていた。
492:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/18(土) 19:09:05.82 ID:rIc6JsyG0
「ああ」
「やっぱり前のドームで、お医者に診せた方が良かったのでは……」
里がそう言うと、ガゼルは押し殺した声で言った。
979Res/589.08 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。