642:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/21(火) 17:02:38.62 ID:mkVHEDB80
およそ人間ではなしえない所業をしてもなお、
功刀は息一つ上がっていなかった。
彼は自分のコートを脱いで燐にかけると、
上半身をむき出しにした状態で、エンドゥラハンに向けて歩き出した。
643:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/21(火) 17:03:22.41 ID:mkVHEDB80
功刀は、残骸を登ると、頭部までたどり着いた。
そして頭部を手づかみに、力の限り引く。
ブチブチと生体組織が千切れ、
644:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/21(火) 17:04:16.93 ID:mkVHEDB80
脳のいたるところにコードが接続されていた。
功刀は無表情で立ち上がり、
自分の影の中から重厚なハンドガンを取り出した。
645:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/21(火) 17:05:02.05 ID:mkVHEDB80
ずっと、この雪の中を単独で行動してきたわけではないだろう。
集団で移動してきたか。
もしくは……。
646:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/21(火) 17:05:52.23 ID:mkVHEDB80
功刀は知っていた。
そいつが、どうして裏切ることになったのか。
裏切るに足る理由を知っていた。
647:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/21(火) 17:06:27.14 ID:mkVHEDB80
*
燐が目を覚ましたのは、それから半日ほど過ぎてのことだった。
ハッ、と目を開き、慌てて起き上がる。
648:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/21(火) 17:07:15.83 ID:mkVHEDB80
いや、自分の体だけは何かに照らされているかのようにハッキリと見える。
不思議な感覚だった。
そこで彼女は、背後に人間の気配を感じ、慌てて振り返った。
649:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/21(火) 17:07:59.89 ID:mkVHEDB80
穏やかに呼びかけられ、燐は何度かしゃっくりのような声を上げた後、
黒い空間――何故か全く寒くなく、適温に保たれているそこの中で男に言った。
「里を、里をどうするつもりですの?」
650:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/21(火) 17:08:39.53 ID:mkVHEDB80
今まで何もなかった空間に、不意に厚手のソファーが浮かび上がった。
その脇には冷蔵庫、そして湯気を立てているコーヒーのバリスタが見える。
どこかの家庭内の一室であるかのような、そんなアットホームな感覚がしだす。
651:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/21(火) 17:09:16.59 ID:mkVHEDB80
そして椅子を鳴らし、燐の方に体を向ける。
「接続ガ変わるト、記憶領域ノバックアップができナイ」
「あ……私……私、燐と言います。あなたは……?
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