過去ログ - 織莉子「私の世界を守るために」
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72: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 03:52:43.94 ID:yIkrPX16o
 織莉子が学校へ行くと、彼女の席は無かった。学級名簿には、織莉子の名は無かった。
生徒会長には、ついこの間までは副会長をやっている娘の名があった。実直で、織莉子をよく慕ってくれていた子だった。

 信じられなかった。何が起こったのか分からなかった。
急いで職員室に向かうと、汚いものを見る目が送られ、
以下略



73: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 03:53:56.98 ID:yIkrPX16o
 織莉子は目を覚ました。今が夜なのか昼なのかも分からない。分厚い遮光カーテンが、織莉子の部屋の外の風景をほとんど完全にシャットアウトしているからだ。
豆電球の付いた薄暗い部屋の中でぼんやりと見える時計から察するに、針は12時ちょと過ぎを指しているところだったが、そんなものはもはや織莉子にとってはなんの意味も持ってはいない。

 織莉子は出来る限り寝ていたいと思った。少なくとも、睡眠中には頭をあれこれ巡らせる必要はない。
寝ている間には大概ろくでもない悪夢――在りし日の思い出だったり、やたらと誇大強調された父の死にざまだったりを見ることにはなるのだが、それは所詮夢なんだと割り切ることでなんとか叫びだすのは我慢することが出来る。
以下略



74: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 03:54:30.42 ID:yIkrPX16o
 織莉子は契約した。そして魔法少女になった。
その代償は、「織莉子自身の生きる意味を知りたい」というものだった。

 父は死んだ。受け継いだ想いも否定された。いや、そもそも父はその想いを抱いていたのだろうか。
だがそれでも、私は世界に尽くそうと思った。飽くまでも私自身の意志で。でもそれすらも、私が私であることすらも、世界は否定した。
以下略



75: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 03:55:03.32 ID:yIkrPX16o
 




以下略



76: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 03:55:47.99 ID:yIkrPX16o
 もちろん、唐突に地球がぱかっと割れて爆散した――なんて馬鹿げたことが起こったわけじゃない。
けれど実際に起きたのは、それと同じくらいに馬鹿馬鹿しいできごとだった。

 その宙に浮かぶ巨大な魔女からほんの少し離れた地点、そこから目も眩むばかりにまばゆい桜色の光が興った。
それは光を放ったまま中空へと昇っていくと、そこから輝く桜色の矢が撃ち出されて魔女に突き刺さる。
以下略



77: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 03:56:33.76 ID:yIkrPX16o
 魔法少女となった織莉子は、すぐさま行動を開始することにした。

 そうは言っても策を実行することはできない、先ずは下準備として、あの逆さま魔女を撃破した魔法少女が誰であるのかを識ることが専決だった。
世界が崩壊するさまを何度もまざまざと見せつけられるのは心にくるものがあったが、四の五の言ってはいられない。

以下略



78: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:00:29.24 ID:yIkrPX16o
 織莉子が魔法少女になって5日ほどが経った日の出来事だ。とある事件が織莉子の身へと降りかかる。

 その日、織莉子は狩に出た。
契約した瞬間に魔法少女のからくりをすべて知る破目になり、他の魔法少女たちと一線を画す悲壮な決心を胸に生きる織莉子と言えど、その基本的な性質は変わらない。
魔力を消費すればソウルジャムは濁る、濁りが過ぎれば魔女になる。魔法少女としての、逃れようのない軛だった。
以下略



79: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:01:03.90 ID:yIkrPX16o
 




以下略



80: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:02:11.79 ID:yIkrPX16o
「ねえ、貴女。……実はね、たった一つだけその苦しみから逃れる方法があるの」

 織莉子は、自らの幼子にするように語りかけた。
内心で歯噛みしながら。

以下略



81: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:03:02.16 ID:yIkrPX16o
 少女は死んだ。あまりに、あまりに簡単な死だった。
痙攣すらも起きなかった。織莉子の拡張された知覚が、この瞬間から既に祖父所の肢体が腐敗し始めていることを告げる。
魔法少女にとっての「死」とは、つまりそういうものなのだ。

 織莉子はすぐに動かねばならなかった。
以下略



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