74: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 03:54:30.42 ID:yIkrPX16o
織莉子は契約した。そして魔法少女になった。
その代償は、「織莉子自身の生きる意味を知りたい」というものだった。
父は死んだ。受け継いだ想いも否定された。いや、そもそも父はその想いを抱いていたのだろうか。
だがそれでも、私は世界に尽くそうと思った。飽くまでも私自身の意志で。でもそれすらも、私が私であることすらも、世界は否定した。
75: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 03:55:03.32 ID:yIkrPX16o
76: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 03:55:47.99 ID:yIkrPX16o
もちろん、唐突に地球がぱかっと割れて爆散した――なんて馬鹿げたことが起こったわけじゃない。
けれど実際に起きたのは、それと同じくらいに馬鹿馬鹿しいできごとだった。
その宙に浮かぶ巨大な魔女からほんの少し離れた地点、そこから目も眩むばかりにまばゆい桜色の光が興った。
それは光を放ったまま中空へと昇っていくと、そこから輝く桜色の矢が撃ち出されて魔女に突き刺さる。
77: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 03:56:33.76 ID:yIkrPX16o
魔法少女となった織莉子は、すぐさま行動を開始することにした。
そうは言っても策を実行することはできない、先ずは下準備として、あの逆さま魔女を撃破した魔法少女が誰であるのかを識ることが専決だった。
世界が崩壊するさまを何度もまざまざと見せつけられるのは心にくるものがあったが、四の五の言ってはいられない。
78: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:00:29.24 ID:yIkrPX16o
織莉子が魔法少女になって5日ほどが経った日の出来事だ。とある事件が織莉子の身へと降りかかる。
その日、織莉子は狩に出た。
契約した瞬間に魔法少女のからくりをすべて知る破目になり、他の魔法少女たちと一線を画す悲壮な決心を胸に生きる織莉子と言えど、その基本的な性質は変わらない。
魔力を消費すればソウルジャムは濁る、濁りが過ぎれば魔女になる。魔法少女としての、逃れようのない軛だった。
79: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:01:03.90 ID:yIkrPX16o
80: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:02:11.79 ID:yIkrPX16o
「ねえ、貴女。……実はね、たった一つだけその苦しみから逃れる方法があるの」
織莉子は、自らの幼子にするように語りかけた。
内心で歯噛みしながら。
81: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:03:02.16 ID:yIkrPX16o
少女は死んだ。あまりに、あまりに簡単な死だった。
痙攣すらも起きなかった。織莉子の拡張された知覚が、この瞬間から既に祖父所の肢体が腐敗し始めていることを告げる。
魔法少女にとっての「死」とは、つまりそういうものなのだ。
織莉子はすぐに動かねばならなかった。
82: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:04:00.49 ID:yIkrPX16o
***
そこにいたのは黒い少女だった。
身長と幼い顔立ちからいって、自分より2、3歳ほど年下だろうか。もしかしたら小学生かもしれない。
だが織莉子が初めに考えたのはそんなことではなかった。
83: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:05:17.30 ID:yIkrPX16o
「いけない、いけない、いけない!いけないんだよ、キミ"が"そんなことをしちゃあ!」
と、唐突に少女が叫びだす。中性的に甲高い声が路地に響いた。
あからさまに咎めるような口調だ。やはりこの頭がおかしいとしか思えない少女といえど、殺人行為は容認しがたいものであるようだ。
そして、魔法少女。彼女は自分からそう言った。であるとすれば、やはりこの子は口封じするべき相手なのだろうか。
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