55:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/24(火) 21:27:51.30 ID:B8whUwhOo
ソファーに座り眼を閉じていますと、鈴の音のような声が聞こえました。
「おはようございます四条さん。お茶が入りましたよ」
白いワンピースに栗色の髪が涼しげな少女―――萩原雪歩殿がお盆を持って微笑みながら歩み寄ってきました。
56:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/24(火) 21:28:24.20 ID:B8whUwhOo
「私、これくらいしか取り柄がありませんから……」
「雪歩殿……?」
謙遜しすぎるのは彼女の悪癖ですが、うつむきがちな表情は卑下の色が濃く出ていました。
57:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/24(火) 21:28:51.07 ID:B8whUwhOo
ぼんやりと蝉の声に耳を傾けて座っておりますと、一人、また一人と減っていきました。
私と同様にれっすんをするはずだった者は連絡を受けているのか初めから来ておりません。
萩原雪歩殿を除いては。
58:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/24(火) 21:29:16.79 ID:B8whUwhOo
「……なにかあったのですか?」
「…………」
この沈黙は肯定と同義でしょう。
59:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/24(火) 21:29:51.36 ID:B8whUwhOo
「そ、そういう訳じゃないですぅ……」
「ならば精進されなさい。失態を憂いているだけではなにも変わりませんよ」
「うぅ……」
60:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/24(火) 21:30:50.26 ID:B8whUwhOo
真夏の日はしつこく粘り部屋を橙色に塗り替えてきます。
夕方になっても鳴き続けている蝉は朝と同じ蝉なのでしょうか。
仕切りの影に隠れながらそんなことを思いました。
61:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/24(火) 21:31:43.52 ID:B8whUwhOo
受話器を置きますと、すぐにまたどこかへ掛けなおしています。
「あ、プロデューサーさんですか? 私です、音無です。雪歩ちゃんがまだ家に帰っていないそうで……」
なにがあったという訳でもなし、何故ここまで心配しているのでしょうか。
62:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/24(火) 21:32:21.70 ID:B8whUwhOo
「雪歩ちゃんはね、なんて言うか支えてあげたくなるところがあるの。
強い自分になりたくて、弱い自分を変えたいって頑張ってるから応援したくなっちゃうのよね」
意外です。
63:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/24(火) 21:33:15.84 ID:B8whUwhOo
とは言ったものの、この広い街で人一人を見つけるのは言うほど容易くはありません。
父上ならば眼を使ったでしょうし、母上ならば眷属を使役して探したでしょうが、
まだまだ修行中である私には地道に探すしかありません。
64:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/24(火) 21:33:46.80 ID:B8whUwhOo
れっすんるぅむには人の気配がありませんでした。
それなのに扉は施錠されておりません。
私は一抹の不安を感じながら扉を開きました。
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