1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/18(土) 00:15:19.60 ID:IiA584goo
 
 「財布を無くした!?」 
  
 事の起こりは、白い夏の日の昼下がり。 
  
 ボクらの前のテーブルには、雪歩の飲んだペットボトルが立っている。 
 中身は空っぽなのに、それは、すっかり汗をかいてしまっていた。 
  
 「真ちゃん、声が大きいよぉ」 
  
 「ご、ゴメン。でも大変じゃんか」 
  
 「細かいのとかは、小銭入れに入れてたからいいんだけど……」 
  
 「でも、貴重品とか入ってたんでしょ?」 
  
  
 「ううん、そういうのは別にしてあったし、大丈夫」 
  
  
 「それなら、新しいのを買えば――」 
  
  
 「それはダメ!!」 
  
 「ゆ、雪歩?」 
  
  
 「あっ、ごめんね?でも、ダメ、なの……」 
  
  
 そう言って、いつも以上に白くなった顔を隠すようにうつむく雪歩。 
  
 なす術もなく、途方に暮れようとしていると、後ろでドアの開く音がした。 
 
SSWiki : ss.vip2ch.com
2:訂正[saga]
2012/08/18(土) 00:17:57.50 ID:IiA584goo
  
 「財布を無くした!?」 
  
 事の起こりは、白い夏の日の昼下がり。 
 ボクらの前のテーブルには、雪歩の飲んだペットボトルが立っている。 
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/18(土) 00:18:27.87 ID:IiA584goo
 「おはようなの!」 
  
 今度は、ボクのじゃない声が事務所で響いた。 
 ソファから立ち上がって、ドアの方へと振り返る。 
  
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/18(土) 00:19:20.10 ID:IiA584goo
 「――アレ?雪歩、どうしたの?」 
  
 ソファの、背もたれ越しにいた雪歩をようやく見つけたらしい。 
  
 「それが、財布を無くしちゃったんだって」 
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/18(土) 00:19:51.75 ID:IiA584goo
 「美希はすごいなぁ」 
  
 「でしょ?もっと褒めてくれてもいいんだよ?」 
  
 そういうと、美希は紙袋の中からおにぎりを取り出す。 
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/18(土) 00:21:10.08 ID:IiA584goo
 「ねぇ雪歩、財布無くしたのって今日?」 
  
 美希が質問を投げかけた。 
 雪歩は何も言わずに、ただ首を縦に振る。 
  
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/18(土) 00:21:44.67 ID:IiA584goo
 「ちょっと待ってほしいの! 
 おにぎりが、まだ残ってるの!!」 
  
 「だって、早くした方がいいでしょ?」 
  
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/18(土) 00:22:27.67 ID:IiA584goo
 「公園とお茶屋なら……。お茶屋の方が遠いんだっけ」 
  
 あわてる美希を尻目に、ボクらは作戦会議を始めた。 
  
 「そうだね。遠い方から行くの?」 
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/18(土) 00:23:05.36 ID:IiA584goo
 「も、もうひょっとまってほひいの!みき、まはのみこめてないの!」 
  
 美希が悲鳴に似た叫び声をあげた。 
  
 なんとか飲み込ませようとお茶を用意する。 
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/18(土) 00:23:59.19 ID:IiA584goo
 外はやっぱりうだるような暑さだった。 
 思わず、手をかざして、ビルの隙間から覗く青空を睨みつける。 
  
 こういう時に、車を運転できれば便利なのにね。 
  
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/18(土) 00:24:56.72 ID:IiA584goo
 「へぇ。でも、黒ってあんまり雪歩らしくないね」 
  
 三人でのお喋りって、 
 下手すると置いてけぼりを食らうから大変。 
  
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/18(土) 00:25:55.27 ID:IiA584goo
 「あっづいの……とけちゃいそうなの……」 
  
 これだけ暑いのだから、誰かがこう言い出すのは予想済みだ。 
 待ってましたとばかりに、用意済みの提案をしてやった。 
  
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/18(土) 00:26:49.93 ID:IiA584goo
 事務所から歩いて三十分。 
 ようやくたどり着いたお茶屋は、思ってたよりこぎれいなところだった。 
  
 「……ここなの?」 
  
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/18(土) 00:27:25.09 ID:IiA584goo
 「いつもおばさんがいるのに…」 
  
 中を覗く。 
 確かに、気難しそうなおじさんがカウンターに座っていた。 
  
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/18(土) 00:28:05.39 ID:IiA584goo
 「財布?知らないねぇ」 
  
 「そうですか……」 
  
 おそるおそるおじさんに尋ねると、そっけない返事をされた。 
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/18(土) 00:29:05.75 ID:IiA584goo
  
 ――――― 
  
 「あんみつ三つ、お願いします」 
  
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/18(土) 00:29:57.27 ID:IiA584goo
 「あのね、ミキ思ったんだけど……」 
  
 ボクらのやり取りを見て、美希が言葉を発する。 
  
 「うん?」 
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/18(土) 00:30:47.67 ID:IiA584goo
 「……雪歩、ここら辺からバス出てないの?」 
  
 「うーん……」 
  
 「ちょっと調べてみようか」 
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/18(土) 00:31:33.82 ID:IiA584goo
 「うーんと、この辺からだと1時間に2本くらい出てるみたい」 
  
 携帯に表示された、バスの時刻表をそのまま読み上げる。 
  
 「あはっ!やっぱり、ミキの言うとおりだったの」 
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/18(土) 00:32:45.39 ID:IiA584goo
 そんな空気の中、注文したあんみつがボクらの前に届けられた。 
  
 「さぁ。ちゃっちゃと食べちゃって、はやくバス停に行こうよ!」 
  
  
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/18(土) 00:33:59.08 ID:IiA584goo
 「ここのあんみつ、おいしいねぇ」 
  
 「ミキ、このお店気に入っちゃった! 
 バスまで時間もあるし、もうちょっとゆっくりしていこうよ!」 
  
94Res/48.15 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
板[3] 1-[1] l20 
	このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
	もう書き込みできません。