1: ◆3feiQFueVc[sage]
2012/12/26(水) 12:03:39.74 ID:nzTAcqmZo
遅れに遅れたアイドルマスター萩原雪歩誕生日記念。
・四条さんに幸せになってほしかった。
・この雪歩はゆりしーです。
・この四条さんは人間です。
各種注意書きはありません。
個人的事情によりPが特定人物をモデルとした名無しのオリキャラであり、これにより原作準拠の曲は現在使用される予定がありません。
私信、ekrさんへ。及び天使へ。
以下、本文
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2: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 12:12:58.57 ID:nzTAcqmZo
萩原雪歩
幽華仰月 自由律
『遥か空にまろぶ君へ』
3: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 12:14:01.33 ID:nzTAcqmZo
……思った通りでした。案外早く、送り主は判明し、それからというもの、なんだかどきどきしてたまりません。舞台に立ったときのような高揚が、足元にふわふわとした感覚を伴って、私の血を上へ上へと押し流していきます。
「四条さん……」
4: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 12:19:09.40 ID:nzTAcqmZo
「花だけお渡しして、すぐに帰るつもりだったのですが。プロデューサーにつかまってしまいました」
ふふふ、と笑います。プロデューサーは憮然とした顔で立ってますけど。照れくさいのでしょう。
5: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 12:20:00.89 ID:nzTAcqmZo
「……」
四条さんは、何も言わず、にこ、と微笑むと、また窓の外に視線を戻してしまいました。
私は頬が熱くなるのを自覚しながら、膝上に視線を落とし、それから、事務所に着くまで、誰も話はしませんでした。不思議と、居心地は悪くなかったんですけれど。
6: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 12:20:55.04 ID:nzTAcqmZo
「雪歩、お湯沸いてるよ」
「あっ、……うん、ありがとう」
美希ちゃんに言われて、しゅんしゅんと蒸気を上げ続けるやかんの火を止めます。プロデューサーにはしょうがの擦りおろしとはちみつを入れた紅茶。四条さんと、私と、美希ちゃんと、小鳥さんに、緑茶。私たちのを淹れる前に、プロデューサーに持っていきます。どうせ、少し冷まさないといけないから。
7: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 12:21:37.67 ID:nzTAcqmZo
少し、相談してみようかな、と思ったのだけれど、何を訊けばいいのかわからなくて、曖昧に笑い、一口香を差し出しました。お盆から一つつまみあげて、立ったままぱくっ、と齧りつきます。行儀が悪い、なんて言われそうだけれど、そんな言葉よりもまず、美味しそう、なんて思ってしまう。彼女には、そんな魅力がありました。
「雪歩」
「はい、四条さん。ちょっと待っててくださいね」
8: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 12:22:03.66 ID:nzTAcqmZo
こくん、喉が動くのに、多分、私は見とれていました。
「正月菓子ですね」
「頂き物なんです。少し、余っちゃいそうだったので」
9: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 12:22:37.09 ID:nzTAcqmZo
「これよりレッスンの時代です」
半期に一度の、定例ライブが近付いて、レッスン内容が基礎力から本番形式に変わってくると、トレーナーさんと一緒に、プロデューサーが付き添うことが多くなりました。
プロデューサーの一風変わった演出に美希ちゃんが大ウケして、律子さんなんかは初めこそ困っていたようですけれど、そのやり方で結果がついてきているのだから、と、最近では大分協力的になってくれているみたいです。
10: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 12:24:32.20 ID:nzTAcqmZo
それから、私を傷つけないように、と、何重にも言葉を重ねてくれました。確かに、この思慕の情に、最近の私はとらわれすぎていたのです。プロデューサーは、仕事のために、という言葉で、どつぼにはまってしまいそうな私をとりあえず掬いあげてくれたのでしょう。
「仕事場は……タブー」
11: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 12:25:06.27 ID:nzTAcqmZo
美希ちゃんは言うだけ言って、ころんとソファで眠りはじめます。
セパレートの向こうで、あずささんと律子さんが新曲のミュージッククリップの話をしているのが聞こえてきました。
「あずささんは、余りにも喪服が似合いすぎるんです」
12: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 12:25:37.60 ID:nzTAcqmZo
「雪歩、雪歩」
誰かが私を呼んでいます。きれいなメゾソプラノ。あたたかくって、やわらかくって、ずっとここでこうして、その声に包まれていたい。
13: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 12:26:42.82 ID:nzTAcqmZo
「いやじゃ、ないです」
でもどうして、と、もう一度続けることはできませんでした。
四月末のライブまで、あと二月ないくらい。
14: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 12:27:08.91 ID:nzTAcqmZo
「夜空は曇天……シチューの泡、雲のみどろが……」
隠喩のような歌詞を、口ずさみます。
恥ずかしい、とは違う。照れくさい、わけでもなかった。
15: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 12:27:43.59 ID:nzTAcqmZo
四条さんは……不思議な人です。
不思議な人が近くて、私は、恐怖に似た感情を抱き、そのことにひどく狼狽しました。
四条さんは、もっと、だれからも遠い、そんな風に思っていたのです。きっと、それは、私の憧れが、勝手に作り上げた四条さんで、四条さんは、もっと、きっと……。
16: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 12:28:10.11 ID:nzTAcqmZo
翌日は、私は午後から仮録、四条さんはインタビュー記事一枠だけ。この日を逃せばチャンスはありません。
タイミングを見計らって、茶器を片づけ、月刊ラーメンなる謎の情報誌に読みふける四条さんの隣に座ります。
「しっ、し、しし四条さんっ」
17: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 12:31:10.94 ID:nzTAcqmZo
ころん。身長の高い四条さんは、真横に倒れるようにして私の脚に頭を乗せて。思っていたよりも頭蓋は重く、豊かな銀色の髪が流れては、絡みつきます。少し身じろぎして、形のいい頭をおなかに抱きかかえるように収めます。
「……」
18: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 12:32:19.46 ID:nzTAcqmZo
「あの」
「……雪歩」
19: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 12:32:58.78 ID:nzTAcqmZo
事務所のドアの開く音で、一気に世界が発破を食らいます。
「おかえり、春香ちゃん」
「ただいま、雪歩。貴音さんと何してるの?」
20: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 13:04:48.37 ID:nzTAcqmZo
2
『あゝ 窓に あゝ オーロラ
眼を見張れ今は 夜が歌うとき』
21: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 13:05:21.14 ID:nzTAcqmZo
『サイレン uh- 時が止まるよ
サイレン uh- あとわずかで――』
入れ替わり、立ち替わり、みんながステージに走り出ます。プロダクションのみんなと、観客のみんなと、あと、それから、何かわからないもの。気配とか、空気とかテンションとか、そういう言葉で表される、わからないもの。
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