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2013/02/22(金) 16:05:19.91 ID:L62z0KCK0
京子「ん、どうかしたの綾乃?」
歳納京子が振り返る。流れる金髪、いつもと同じ明るい笑顔。ああ、なんでこんなに幸福と痛みが一緒にやってくるだろう。でも言うことがある。
綾乃「あ、あのね。その、さ……」
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2013/02/22(金) 16:05:57.33 ID:L62z0KCK0
そう言ってはしゃぎ始める歳納京子を見ながら、よく言えた、がんばった、私。
なんて自分を褒めた。座り込んで立ち上がるのに時間はかかったけど、体の重みよりも幸福と充実感が体を包んでいた。
素直になれてよかったって思えるし、なによりこういう結果になって本当に良かった。
綾乃「じゃあ、私こっちだから」
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2013/02/22(金) 16:06:36.99 ID:L62z0KCK0
―あかり―
下駄箱の中を見るとビニール袋にきれいにたたまれたあかりのコートがあった。
もう真っ暗になって寒くなって、誰もいないと思う場所であかり、なにをしているのだろう?
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2013/02/22(金) 16:07:23.69 ID:L62z0KCK0
あかり「結衣ちゃん」
声をかけたところであかりがいるってことに気付いたみたいで、振り返ると同時にいつものように軽く言葉をくれた。
でも、やっぱりなんでこんな時間まで残っているんだろうって思った。
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2013/02/22(金) 16:08:18.39 ID:L62z0KCK0
あかり「……」
なんで知っているのって思った。
あかり、まだ生徒会の人としか話したことなかった。
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2013/02/22(金) 16:09:32.45 ID:L62z0KCK0
結衣「……行かないでよ」
あかり「結衣ちゃん……」
結衣「知ってるんだよ。あかりのこと、私はよく知ってるんだよ。なんで進学校に行こうとしてるのかも、大体察しがつくんだよ……」
結衣ちゃんは下を向いたままで、あかりはもう何が何だか分からなくて。
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2013/02/22(金) 16:11:03.48 ID:L62z0KCK0
伸ばされた小指に小指を絡めて、指切りをする。
子供みたいな無邪気な行為だったらよかったのにと思っても、やっぱりそんな軽いことに思えない。
結衣ちゃんはすごく悲しんでいて、あかりはそれを抱き締めてあげた。
でも、それが結衣ちゃんにとってうれしいことなのかと聞かれたら、多分ただの慰めになっちゃうのだってわかる。
だって、あかりは結衣ちゃんから告白されて、それを断ったことがあって、その時もこうやって抱きしめてしまったのだから。
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2013/02/22(金) 16:11:46.78 ID:L62z0KCK0
―結衣―
あかりに抱き締められながら、私は告白をした日のことを思い出していた。
新学期が始まり、夏の到来に合わせて舞い込んできた生徒会の話。
私と京子はすでに3年生で入るっていう選択肢がなかった状態だったから、自然とちなつちゃんとあかりに矛先が向いた。
46:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 16:12:31.53 ID:L62z0KCK0
昔、京子とあかり三人で遊んでいたころから、それなりに意識していたのかもしれないし、中学校に上がってからは完全に意識していた。
あかりのあの他人にも優しくできる性格とか、そういう振舞いを見ていると胸が痛んだ時もあった。
ちなつちゃんとキスしている姿を見たときは、あまりの衝撃にそこから京子と一緒に逃げだして家に帰った後になってからショックが支配していた。でも、あれが誤解だってわかった時は心底安心していた。
そしてあかりが中学2年生、私たちが中学3年生になって、生徒会の用事であまりあかりが、ごらく部にいないと寂しいってことに気がついていた。
これはどんな感情なのかって考えて、あかりを独り占めしたいっていう独占欲なのかなって悩んだこともあった。多分、本当はその独占欲に近い好意だった。
47:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 16:13:25.15 ID:L62z0KCK0
今日と同じように校門で待ち伏せした。
京子とちなつちゃんは用事があって帰っていたから、自然とあかりを待つ口実ができていた。
緊張とかそういうのが全くなかった、怖いくらいに冷静にあかりを私のものにしようなんて考えていた。今思えば、狂っていた。
まだ日が長い頃だった。17時になっても明るいくらい。
私は経つ時間も忘れていて、空をぼんやり見上げながらこの後のことを考えていた。
48:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/02/22(金) 16:14:07.80 ID:L62z0KCK0
あかりに先にリビングに行ってもいいよって言って、私は鍵を閉めた。
チェーンロックもした、こうすればあかりが逃げ出しても、チェーンロックに気づかないで開けられないはずだなんて思ったから。
妙に頭がすっきりして、この後はどうすればいいんだろうなんて思っていたけど、気にすることもない、なんて呟いていた。
リビングに入ると座りながら、「結衣ちゃんの家に来るのは久しぶり〜」って周りをキョロキョロ見回している。
特に真新しいものは準備してないけど、久しぶりに来て新鮮な感じだったのかもしれない。
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