6: ◆CwzTH05pAY[saga]
2013/03/07(木) 23:27:01.63 ID:IvaGbYZyo
 「ない、です」 
  
 「よろしい。ただ、100点をあげられない一番の理由は須賀君が聴牌チャンスを下げる打牌をしているからよ?」 
  
 「えっ、えぇ? これで、ですか?」 
7: ◆CwzTH05pAY[saga]
2013/03/07(木) 23:28:09.86 ID:IvaGbYZyo
 いくら指導に割く時間を取るつもりはないといっても、完全無視と言うわけにはいかない。 
 咲は中学からの付き合いとということもあり須賀君とは仲がいいし、優希も彼には懐いている。 
 意図的に仲間はずれにすると部が分裂してしまう。 
 蔑ろに扱いすぎて辞めてもらわれると士気に関わる。 
 つまり、今の段階で辞めてもらうわけにはいかないのだ。 
8: ◆CwzTH05pAY[saga]
2013/03/07(木) 23:28:53.35 ID:IvaGbYZyo
 そう言いながら、私は笑う。須賀君が思い通りの反応をしたことに。自分の思い通りに進んでいることに。 
 須賀君が牌譜の取り方を覚えてくれれば任せられることが増える。 
 今まで牌譜の整理やネト麻のデータ集計などは主にまこがやっていたことだが、それを須賀君に任せることが出来るだろう。 
 これでまたひとつ、メンバーの負担を減らすことが出来る。 
 そんな私の黒い企みなど気づきもしないように、須賀君は何か照れくさそうに笑っていた。 
9: ◆CwzTH05pAY[saga]
2013/03/07(木) 23:29:31.88 ID:IvaGbYZyo
 「あー、今日もよう打ったのぅ」 
  
 「おなかへったじょー……」 
  
 部活の時間が終わり、まこが背伸びをしながら言った。 
10: ◆CwzTH05pAY[saga]
2013/03/07(木) 23:30:49.33 ID:IvaGbYZyo
 全員が出て行ったところで私は須賀君に向き直った。 
  
 「さーって、はじめましょうか」 
  
 「うっす!」 
11: ◆CwzTH05pAY[saga]
2013/03/07(木) 23:31:51.96 ID:IvaGbYZyo
 「な、なんとか」 
  
 いろいろといっぺんに言い過ぎたかしら? 
 須賀君は煮詰まった顔をしながら自分で書いたノートを見つめている。 
 とは言え、覚えてもらわねば困る。 
12: ◆CwzTH05pAY[saga]
2013/03/07(木) 23:33:08.24 ID:IvaGbYZyo
 あれから部室の後片付けをして、私と須賀君は部室を出た。 
 それなりの時間だが、もう夏ということもありまた薄暗い程度だった。 
  
 「疲れた……いや、でもこれからまたさらに疲れるのか……」 
  
13: ◆CwzTH05pAY[saga]
2013/03/07(木) 23:35:06.98 ID:IvaGbYZyo
 「しかし、大会までもうすぐですねぇ」 
  
 「ほんと、あっという間ねぇ」 
  
 須賀君はアイスをかじりながらそんなことを言った。 
14: ◆CwzTH05pAY[saga]
2013/03/07(木) 23:35:55.59 ID:IvaGbYZyo
 「……うしっ!」 
  
 須賀君は私の言葉を黙って聞いていたと思ったら溶けかけた残り少ないアイスを一気に口に含んだ。 
 一気に食べ過ぎたせいか、余りの冷たさに少しもがいている。 
 私は突然の行動に思わずぽかんとした。 
15: ◆CwzTH05pAY[saga]
2013/03/07(木) 23:36:53.16 ID:IvaGbYZyo
 私の話に何か感じ入るものでもあったのだろうか。 
 私が何かしらの働きかけをしなくても私が望むことを自分から言い出してくれた。 
 まぁ、何はともあれ好都合だ。 
 本人が言うように、頑張ってもらおう。 
  
16: ◆CwzTH05pAY[saga]
2013/03/07(木) 23:37:34.47 ID:IvaGbYZyo
 彼女はこの時、彼がなぜこう言いだしたかということに対して深く考えることはなかった。 
 彼女がそれを後悔することになるのはしばし先の話である。 
 彼女がこの時に帰りたいと望むことになるのも先の話である。 
  
 今はただ、自分の望む展開に進んだことによる喜びに包まれていた。 
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