1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/23(土) 20:44:40.80 ID:sFFUNv8Z0
【序】
会場が割れんばかりの拍手と歓声に包まれ、観客の誰もが皆、新たなトップアイドルの誕生を祝福する。
その時、ステージに立っているのは俺達じゃなかった。
孤独こそが人を強くする、というのは黒井のおっさんの口癖であり、俺達も散々言い聞かされてきた言葉だ。
実際、その通りだと思った。
今でこそ俺達はユニットを組んでいるが、突き詰めるとこの業界は個人の実力が全てであり、甘えは許されない。
だから、俺は北斗や翔太に対して、常に厳しい姿勢で臨んだ。
ダンスの振りを間違えたり、時間に遅れたり、ここ一番って時に体調を崩したりしようものなら、容赦なく責めた。
逆に、俺にも至らない所があれば、同じように責めてもらった。
馴れ合おうなどとは一切考えなかった。
たとえ仲間同士だろうと、緊張感が無ければ個人の成長なんて望めるはずがない。
他の二人も、同じように考えていたと思う。
だから、765の連中を見ると、俺は虫唾が走って仕方がなかった。
仲良しこよしでオシゴトしてりゃ、そりゃあ楽しいだろうさ。
だが、少なくとも俺はあいつらを認めなかった。
あいつらは互いに馴れ合うばかりで、トップアイドルになるのを目的としているのではないと感じたからだ。
お遊びしてぇなら他所でやれ。心底そう思った。
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/23(土) 20:46:26.30 ID:sFFUNv8Z0
実際、オーディションで顔を合わせれば、俺達の圧勝だった。
当然だ。こっちは真剣なんだ。あいつらとは違う。
だが、そんな中でも、対決が終わればあいつらは互いに「良くやった」、「そう気を落とすな」、「次は頑張ろう」などと慰めあっていやがる。
自分の実力が不足している現実を認めようとしないのだ。
とことん腹の立つ連中だぜ。
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/23(土) 20:48:34.43 ID:sFFUNv8Z0
【1】
さっきから電車内の騒がしい声を我慢していた律子の鼻先に、タバコの煙が漂ってきた。
煙の元は、優先席に座っている三人組みの男達だった。
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/23(土) 20:50:25.65 ID:sFFUNv8Z0
「どうしたよ、姉ちゃん?」
男の一人が律子に声をかけた。
下劣な視線に、律子は決して動じる素振りは見せまいと思った。
「電車の中は公共の場であり、禁煙です。
自分達の行いを振り返って、人として恥ずかしいと思わないんですか?」
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/23(土) 20:53:19.42 ID:sFFUNv8Z0
その時、電車はいつの間にか浜松町に着いたようだった。
扉が開き、一人の少女が乗り込んできた。
「あふぅ、何か変な人だったなぁ」
少女は、喧嘩沙汰で騒然とする車内の空気などお構いなしに、ブツブツと独り言を呟きながら、先ほどまで男達が座っていた優先席に腰を下ろした。
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/23(土) 20:54:26.74 ID:sFFUNv8Z0
「よぉ、そこの彼女。何それ、あぁ、かわいい携帯だね〜」
男の一人が、少女の携帯を見て声をかけた。
少女は顔を上げ、不思議そうに男達の顔を順番に見た。
「でもさ、知ってた? 優先席って、携帯使っちゃいけないんだよ」
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