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2013/03/23(土) 20:56:03.70 ID:sFFUNv8Z0
「だってミキ――あっ、ミキっていうんだけどね?
ミキ、あまりお兄さん達みたいな人って好みじゃないもん。
タバコ臭いし、服も顔も何か汚いし、ちょっと一緒に歩きたくないって思うな。
だから、携帯返して」
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2013/03/23(土) 20:57:10.42 ID:sFFUNv8Z0
少女は、男が投げ捨てた携帯を手に取った。
そして、角についてしまったキズを見てガッカリした後、再び元の席に腰を下ろした。
「お嬢ちゃん、ありがとうねぇ」
つまらなそうな顔をしていた少女に、隣に座っていた老婆が優しく声をかけた。
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2013/03/23(土) 20:59:00.57 ID:sFFUNv8Z0
少女は品川で降りた。
二駅分しか電車に乗っていなかったが、その短い間に彼女が他の乗客に与えたインパクトはあまりにも強烈だった。
律子と雪歩も同様だった。
自分が絡まれた時に助けが無かったことを思い出し、少しムッとしたが、今はそれよりも、律子は天真爛漫な少女の事で頭の中がいっぱいだった。
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2013/03/23(土) 21:01:00.16 ID:sFFUNv8Z0
翌日、新しいアイドル候補生をスカウトしたと、プロデューサーが鼻息を荒くして律子に話した。
その名前に聞き覚えがあったため、律子はどんな子なのかと問いかけた。
「金髪ロングでスタイル抜群、でもあどけなさが残る顔が印象的だったなぁ。
昨日、浜松町を歩いてたところを見かけてさ」
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2013/03/23(土) 21:02:49.56 ID:sFFUNv8Z0
「先生に会いに行ってたの」
星井美希は、昨日事務所に来なかった理由を律子が聞くと、そう答えた。
学校の先生かしら。
「ううん、違うよ。カモ先生なの」
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2013/03/23(土) 21:05:13.38 ID:sFFUNv8Z0
美希はおそらく、アイドルという職業に興味があった訳ではないらしい。
一昨日プロデューサーに声を掛けられ、たまたま暇だったから今日来たということだろう。
律子は、15分程度の面接を経てそう解釈した。
ならば、興味を持たせてやろうではないか。
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2013/03/23(土) 21:07:19.52 ID:sFFUNv8Z0
タクシーを捕まえて向かった先は、地元の自治会館だった。
既に事務所の車が駐車場に停められている。
ちょうど、あずさとやよいの出番が始まる時間であった。
受付を済ませ、美希の手を引き、律子は庁舎内の2階にある大会議室へと向かった。
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/23(土) 21:09:34.02 ID:sFFUNv8Z0
「あふぅ。この人に連れられたから来ただけなの」
それはそうなんだけど―――。
何か言い返したくなるのを我慢して、律子は美希にライブの感想を聞いてみた。
「うーん、ちょっと想像してたのと違うってカンジかな」
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/23(土) 21:11:46.73 ID:sFFUNv8Z0
プロデューサーから半ば強引に事務所の車の鍵を受け取り、律子は第二京浜を北へ向かった。
五反田駅を過ぎ、品川にある衆議院の議員宿舎へ向かうよう交差点を右折すれば、通り沿いに765プロ御用達のレッスンスタジオがある。
およそ10分ほど車を走らせ、ダンスレッスンが行われている部屋の扉を開けると、春香と雪歩、真が休憩しているところだった。
真の姿を見て、律子はしめたと思った。
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/23(土) 21:14:01.79 ID:sFFUNv8Z0
「ダンスの練習風景をこの子に見せてあげたいの。一度、通しでやってみせてちょうだい」
律子の目線は、真と美希の方へ交互に向けられていた。
三人は元気良く返事をすると、音源をセットし、配置についた。
「真を良く見ていなさい。あの黒いタンクトップの子」
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2013/03/23(土) 21:15:58.07 ID:sFFUNv8Z0
少したどたどしくはあるが、美希は一度見たダンスの振り付けの前半部分を、ほぼ間違えることなく踊ってみせた。
765プロ関係者以外の誰かに披露したのは、今回美希が初めてのダンスである。
「えっ!? す、すごい! 今の見ただけでもう覚えちゃったの?」
春香は動揺を隠せなかった。
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