過去ログ - 少女「雨が止んだなら」
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248:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/02(日) 07:42:19.77 ID:lXtenV6yo

 人の歴史は石ころを積み上げて作った山のようなものだ。無意味な生と死が積み重なっている。
 いつかは崩れるその石の山に、わたしがひとつ石を重ねたところで何になるんだろう?
 わたしひとりが石を重ねなかったところで、誰が困るというんだろう?

以下略



249:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/02(日) 07:43:12.17 ID:lXtenV6yo



 不意に、何かの音が聞こえた。
 なんだっけ、とわたしは思う。意識は雨の音に集中していた。
以下略



250:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/02(日) 07:43:46.40 ID:lXtenV6yo

 こういうとき、何も考えずに泣き出してしまえたらよかったんだろうな、と思う。
 たとえば、ツキに抱きついて弱音を吐いたりして、思い切り泣いてしまえたら。
 不安に思っていることをぜんぶ吐き出して、当り散らしてみたり。

以下略



251:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/02(日) 07:44:20.46 ID:lXtenV6yo

 昨夜の約束のことで来たのだとツキは言った。
 すぐには思い出せなかったけれど、散歩のことを言っているのだと思い当った。

 わたしの頭は、いつになくぼんやりしている。
以下略



252:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/02(日) 07:44:51.64 ID:lXtenV6yo

 相変わらず、生き物の気配がしない森だ。それも当たり前の話かもしれない。
 昨日彼が言った、ヨモツヘグイ、という言葉を不意に思い出す。

 黄泉戸喫。その言葉がなくたって、わたしはきっと気付いただろう。
以下略



253:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/02(日) 07:45:42.90 ID:lXtenV6yo

 彼は何かの歌を口ずさみながら歩いた。わたしには、その光景は少し意外に見えた。

 なんだったかな。明るい曲調だけれど、少し寂しげな。
 悲しい曲だった気がする。よく思い出せない。
以下略



254:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/02(日) 07:46:18.08 ID:lXtenV6yo

「……そうかもしれない。疲れたのかもね」

 たいした含意もなく、わたしは答えた。自分で思ったよりも、それはあからさまな言葉だった。

以下略



255:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/02(日) 07:46:57.76 ID:lXtenV6yo

 ひとつ言えるのは、とツキは続けた。

「お前がどちらを選ぶにせよ、俺は戻るってことだ。それだけは変わらない。
 俺は生きていくよ。でも、お前の選択によってはとても悲しい思いをすると思う。
以下略



256:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/02(日) 07:47:44.92 ID:lXtenV6yo



 そろそろ戻ろう、とツキは言った。わたしは彼に先に戻ってもらい、森の中に残った。
 考えたいことが、たくさんあった。でも、何から考えればいいのか分からない。
以下略



257:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/02(日) 07:48:11.25 ID:lXtenV6yo
つづく


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