348:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/08(土) 06:21:02.78 ID:Onzl2ZvFo
しばらく歩き回ってみても、ほとんど何も見つからなかった。
ただ木々や草花が生い茂っているだけだ。足場は悪く、草の上の露が何度も足を濡らした。
樹木が枝を伸ばしているせいで、ここからは太陽がろくに見えなかった。
349:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/08(土) 06:21:48.42 ID:Onzl2ZvFo
ふと、何かが草を掻き分けるような音が聞こえた。
咄嗟のことに身が竦む。音は近付いてきていた。
心臓がどくりと跳ねる。
350:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/08(土) 06:22:50.81 ID:Onzl2ZvFo
猫の姿は見るからにシラユキに似ていた。
雨と土に汚れ黒ずんではいたけれど、毛並みは薄くクリーム色がかっていた。
瞳の色は左右どちらも鳶色だった。
351:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/08(土) 06:24:18.43 ID:Onzl2ZvFo
彼女はひらりと体を翻して、わたしの腕の中から地面へと着地した。
手のひらが泥で汚れてしまったことに気付き、レインコートで軽く拭ってみた。
汚れは広がっただけだった。
352:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/08(土) 06:25:01.66 ID:Onzl2ZvFo
猫は常にわたしの少し前を歩いた。
わたしが立ち止まると、当然のようにその場で待っていた。
それは考えるまでもなくおかしな話だ。
353:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/08(土) 06:25:33.50 ID:Onzl2ZvFo
やがて、猫は立ち止まった。
わたしは少し不安に思ったけれど、それを追いかける。木々の隙間から水の音が聞こえた。
猫の傍らまで歩み寄ると、そこが開けた空間になっているのが見えた。
354:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/08(土) 06:27:24.67 ID:Onzl2ZvFo
そうやって泉を覗き込んでいるとき、不意に、水面に自分の顔が映っていることに気付いてぞっとする。
水面に映る自分と、目が合った気がした。
凍てつくような目。誰とも知れない他人のようだった。
355:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/08(土) 06:27:52.93 ID:Onzl2ZvFo
つづく
356:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/06/08(土) 08:00:03.65 ID:BuuOkqlOo
いいところで
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2013/06/08(土) 09:17:18.00 ID:bRF+ui+DO
不思議の国のアリスにでもなってしまった気分だ…
358:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/06/08(土) 11:20:56.80 ID:jvgBCplAO
不穏だ
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