499:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/17(月) 07:03:09.54 ID:IMrWsM59o
「なんだよ、それ……」
悲しげな声だった。でも、それだってそう聞こえるだけのことだ。
500:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/17(月) 07:03:45.82 ID:IMrWsM59o
彼は表情を歪めたけれど、わたしにはもう、その表情が何を意味するのかも分からなかった。
どんな感情なのかも、分からない。
雨の雫が彼を打ち続ける。
501:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/17(月) 07:04:14.42 ID:IMrWsM59o
「シラユキが死んだのは、俺だって悲しいよ」
ツキはわたしの方を振り向かず、前を見て、歩き続ける。
わたしの腕を引いたまま。
502:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/17(月) 07:04:52.67 ID:IMrWsM59o
ツキを助けたい、と思った。
でもわたしは、生きていたくなんてなかった。
ツキには生きていてほしい。
503:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/17(月) 07:05:21.41 ID:IMrWsM59o
「お前の考えなんて知らない」
自分に言い聞かせるみたいに、ツキは言った。
504:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/17(月) 07:05:55.16 ID:IMrWsM59o
「ツキ、あのね、仮に、あなたと一緒に現実に帰ったとしても……。
たとえばわたしが今、ちょっとだけ前向きになって、もうちょっとだけがんばってみようって、そう思ったとしてもね。
きっといつか、嫌になってしまうと思う。また同じことの繰り返しになると思うの」
505:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/17(月) 07:06:23.17 ID:IMrWsM59o
「この世界でずっと生きられるなら、たしかに幸せかもしれないな。
でも、実際にはそうじゃない。この世界で作り上げられる永遠は偽物だろ。
実際にずっと暮らせるわけじゃない。単に時間の流れが止まるだけだ。それを永遠と呼ぶだけだ」
506:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/17(月) 07:07:12.62 ID:IMrWsM59o
思考が急に混乱しはじめる。
おかしい、と思った。
507:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/17(月) 07:07:52.41 ID:IMrWsM59o
わたしが何も言わなくなったのを不審がってか、ツキが立ち止まり、振り返った。
彼はなおもわたしの腕を引いていこうとしたけれど、わたしは動かない。
508:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/17(月) 07:08:19.60 ID:IMrWsM59o
わたしは、現実において死を望んだ。そして、実際に死のうとした。
その際、自分の願いを反映させたこの世界を作り上げた。
死のうとした理由は、現実が苦しいことばかりだったから。
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