529:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/20(木) 03:04:27.27 ID:WU9ARoQ2o
◇
猫は飛び跳ねるようにしてわたしとツキの目の前にやってきた。
それから素っ気ない態度で前を向いたかと思うと、前方の木々の隙間を進んでいく。
530:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/20(木) 03:05:45.67 ID:WU9ARoQ2o
何か悪い冗談みたいだった。
実は夢でも見ているのかもしれない。
目を覚ましたら、わたしはごく当たり前にシラユキと屋敷で生活しているのかもしれない。
531:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/20(木) 03:06:17.41 ID:WU9ARoQ2o
「……ツキ?」
呼びかけてみたけれど、彼は返事をしなかった。
わたしは何か、彼の機嫌を損ねるようなことをしてしまっただろうか。
532:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/20(木) 03:06:44.33 ID:WU9ARoQ2o
「大丈夫?」
訊ねてから、心底自分が嫌になった。
大丈夫なわけがないのだ。
533:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/20(木) 03:08:11.99 ID:WU9ARoQ2o
わたしは、ツキがこんな場所までやってくるとは思っていなかった。
シラユキが死んだときだって、彼は確かに悲しんでいたけれど、ちゃんと起こったことを受け入れていた。
だからわたしが死んだところで、最初は少し悲しかったとしても、少し怒ったとしても、すぐに慣れてしまうだろうと思った。
534:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/20(木) 03:08:42.17 ID:WU9ARoQ2o
「嘘だよ、そんなの」
混乱した頭のまま、わたしは言った。
535:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/20(木) 03:10:36.33 ID:WU9ARoQ2o
わたしはまた泣き出したい気持ちになる。
「……どうしてそんなに、平然としてるの?」
536:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/20(木) 03:11:28.72 ID:WU9ARoQ2o
覚束ない足取りで、ツキは猫を追い続ける。
わたしは腕を引かれたまま、どうすることもできない。
ひょっとしたら、このツキも、わたしに都合のいい妄想のようなものなのかもしれない。
537:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/20(木) 03:13:26.59 ID:WU9ARoQ2o
やがて、前を猫は立ち止まった。
代わり映えのしない森の中。さっきまで歩いてきた景色と、何も変わらない。そんな場所だ。
538:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/20(木) 03:13:54.31 ID:WU9ARoQ2o
つづく
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