過去ログ - 魔法使い「勇者がどうして『雷』を使えるか、知ってる?」
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146: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/30(木) 23:38:56.32 ID:rM6FpdA8o
ランタンの灯り、そして領主が壁に掛けた松明の灯りで、その全貌が見てとれた。
裸身のまま、壁に据えつけられた手枷に縫いとめられるように拘束され、首輪から伸びた鎖も同様に。
肌の色は古書とは違い、人間の女と同じく、白い。
ゆるくクセのある黒髪が鎖骨まで伸び、頭を倒して寝息を立てているため、顔は見えない。
豊かな双丘と、艶やかに肉付いた肢体は、騎士の目を釘付けにして離さない。
以下略



147: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/30(木) 23:39:55.88 ID:rM6FpdA8o
領主が語るところによれば、彼女を淫魔たらしめているのはその姿、肉体だけだという。
双眸には魅了の輝きなどなく、ほんの少し灯りを出すだけの魔術さえ使えず、
闇を裂いて飛ぶ翼は、名残りさえもその背には無い。
角と尾が生えただけの、『人間』に過ぎないという。

以下略



148: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/30(木) 23:40:21.31 ID:rM6FpdA8o
領主に覚えた嫌悪感はもうない。
屋敷の地下に、文字通りの『魔性』の女を囲っていた事も驚きだったが、それ以上に引っかかることがある。
彼女は、自分はともかく……領主を見て、『初めまして』と言った。
五年間に渡り、恐らくは毎日繋がれていただろう、領主に向けて。
惑わすための舌、あるいは皮肉を効かせたのかとも思った。
以下略



149: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/30(木) 23:41:37.86 ID:rM6FpdA8o
その次の朝、騎士は一人で『淫魔』に会いに行った。
多少眠れはしても、日の出から少し遅れただけの時間に目が覚めてしまった。
屋敷の空気は冷え切っており、その澄んだ空気を取り入れながら、澱んだ空気の溜まり場へと降りて行く。
入った途端にかび臭い空気が漂い、どこからか水の滴る音も聞こえる。
こんな場所に五年もいれば、通常の人間は、たちまちに病みついてしまうだろう。
以下略



150: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/30(木) 23:43:01.68 ID:rM6FpdA8o
騎士「……五年? 昨日、お前に会った……男の事は?」

淫魔「? ですから、あなたですよね〜?」

騎士「違う! 私と、もう一人いただろう!?」
以下略



151: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/30(木) 23:44:03.16 ID:rM6FpdA8o
話によれば、彼女は人間界へとやって来た時に、なけなしの魔力を使い果たしたという。
制御も効かず、よりにもよって森の真ん中に出てきてしまい、そこで狩猟中の領主の一団に出くわした。
当然、伴っていた兵士にその場で捕らえられ……そして、今に至るらしい。

騎士「間抜けな」
以下略



152: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/30(木) 23:44:42.26 ID:rM6FpdA8o
淫魔「? 帰る場所、無いって?」

騎士「我が父から継ぐはずだった、一族の屋敷は取り上げられた。今や……もう、私の生家は無い」

淫魔「ふぅーん……?」
以下略



153: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/30(木) 23:45:56.18 ID:rM6FpdA8o
彼女は、語る。
父親の顔はおろか、いるのかさえも分からないという。
分かったとしても何千年も前の事だから恐らく生きてはいまいが、それでも気にはなると。
彼女の母には……ただ、「子を孕んでいた」という結果だけがあったという。

以下略



154: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/30(木) 23:46:48.13 ID:rM6FpdA8o
淫魔「あのぉ〜……騎士さん。帰る場所、無いって……仰ってましたよね?」

騎士「……ああ」

淫魔「じゃ、私を……色々、見に連れて行ってくださいよ〜」
以下略



155: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/30(木) 23:48:06.25 ID:rM6FpdA8o
全編でなくて申し訳ない、今日の分を終了です
それでは、さようなら
また明日、同じ頃の時間に〜


156:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/31(金) 19:10:18.57 ID:oOWbpier0
おつおつ


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