72: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/15(木) 06:49:18.45 ID:06zt3LxLo
『……気分が落ち込むことなんて考えないで、さっさと会社に戻ろう』
私はやや速足で事務所への道を進む。一つ、二つと角を曲がり、事務所のある道へと差し掛かったところだった。
『……あれは?』
73: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/15(木) 06:49:46.92 ID:06zt3LxLo
(シンデレラガールズ、の社長さんか。うちへ用かな)
降りた位置といい、うちの事務所を見上げる姿といい、どう見てもそうとしか思えない。なので、声を掛けようかと思ったが、ふと思い立つ。私と彼とでは彼我の地位が違うのだ。
案内をするのが私の立場では当然の選択だろうが、私の方から声を掛けるのもいささか憚られる気がした。なので、そそくさと事務所のある雑居ビルへと入ろうとしたのだが。
74: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/15(木) 06:50:14.47 ID:06zt3LxLo
一度聞いただけの名前と、一度見ただけの顔と、書類の名前と顔を一致させる。それがどれだけすごい事かは、私でもわかる。
やはり、この目の前の男性にも、とんでもないほどの才能があるのだ、と私は思った。
「ああ、それよりも、だ。今日そちらの社長さんは在社かな」
75: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/15(木) 06:50:43.92 ID:06zt3LxLo
『とりあえずは、お疲れのことでしょうし、立ち話をさせるのも申し訳がないのでお入りください。お荷物の方、お預かりいたしましょうか?』
「ああ、いや、結構だ。心遣いだけ受け取っておくよ」
彼はそう言い、ずんずんと歩きはじめる。まるで私が案内されているようだ、と苦笑を一つ零すも、食い下がることはせず、階段を上る。
76: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/15(木) 06:51:10.32 ID:06zt3LxLo
『ああ、すみません。では、ご案内させていただきます』
「うむ、済まんね」
そんな会話を一つ、二つとかわし、私はシンデレラガールズの社長を、うちの社長室へと案内する。こん、こんと二度ノックを鳴らし、私は中にいるだろう社長へと言葉を投げかけた。
77: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/15(木) 06:51:36.86 ID:06zt3LxLo
私は社長に言われた通り、お茶を出すために社長室より退出する。そして、給湯室へ向かい、茶葉を茶瓶に入れると、ポットからお湯を注ぎ、少し待った。
そうして、二分か三分ほど経ってから、それを二度、茶碗へ移した。それから、茶請けのお菓子を添えてお盆に乗せ、社長室へと向かう。もう慣れた作業だ。
『失礼します』
78: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/15(木) 06:52:05.93 ID:06zt3LxLo
「ああ、Pくん、だったか。ちょっと残ってくれるかね」
そんな私を、呼び止める声が上がる。思わず、少し身を震わせると、私はゆっくりと振り返る。
完全に目が合った。嫌な合い方だ、漫画や小説の世界なら、確実にこの後嫌な展開が待っている。そう思いながら、私は目が合った相手――シンデレラガールズの社長へ向けて、言葉を紡ぐ。
79: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/15(木) 06:52:41.95 ID:06zt3LxLo
「なに、こちらも移籍の申し出ですよ、社長さん。そちらのPくんを、うちへ迎えたい、と思いまして」
からん。私の落としたお盆が、床に当たって立てる音が響く。
私はきっと、どこか遠くの世界の映像を見ているのだ――。
80: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/15(木) 06:54:21.12 ID:06zt3LxLo
今回の更新は以上です。
少々短いのはまだ体調がすぐれないからですね、すみません。
また数日のうちに投下の方をさせていただきたく思います。
81:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/08/15(木) 11:35:02.78 ID:65nGE+LXo
乙
無理しなくていいのよ
82:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/08/15(木) 12:18:01.78 ID:IFNyisaVP
面白いよ
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