1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/01(木) 23:06:54.11 ID:a9tfMA/V0
 まだ、彼女がデビューしていないときのことだった。  
   アナスタシアが、「星を見たい」と言った。  
  「星?」  
   思わず問い返すと、彼女は頷きを見せた。  
  「ダー。Город………都会のものではなく、もっと、綺麗なものを」  
  「ふむ………」  
   いつもは滅多におねだりなどしない彼女のたっての願いだったので、随分と張り切ったものだ。  
   正直なことを言うと、当時彼女とはうまくいっていなかったと思う。  
   自分にとって初めてのアイドルであり、初めてのプロデュース業ということもあってどうあるべきかを測りかねていた。  
   もちろん事務所に先輩のプロデューサーはたくさんいたし、その中にはあの渋谷凛や高垣楓をデビューさせ今や一流プロデューサーとして名を馳せている方だっていた。  
   だが、彼らにプロデューサーの在り方について学んだところで、誰もが皆最後は「アイドルの最善のために臨機応変に対応する」ことを何よりもの目標として掲げ、担当アイドルに適したプロデュース方法を取らなければならないため必勝法などというものはないから地道に行け、と語った。今思えば、その言葉に少し甘えていたのかもしれない。  
   彼女もまた、謙虚で丁寧な物腰ながら、どこかぎこちなさを隠せないでいた。いや、そんな姿勢で一線を引いているようにさえ思えた。  
   アイドルとプロデューサー。  
   二人三脚で進むには、少しばかり息が合っていなかった。  
   そんな時に、彼女から「星を見たい」と言われた。  
   夏の暑い日のことだった。
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/01(木) 23:07:53.92 ID:a9tfMA/V0
  星を見に行くことになった日。 
  レッスンを終えたアナスタシアを拾って目的地へと向かった。  
  万が一事故を起こしても怪我が少ないようにと、いつも後部座席に座らせている。 
  バックミラーに映るアナスタシアは居心地悪そうに車に揺られていた。 
 「………それなりにかかるから、横になっていていいぞ」 
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/01(木) 23:08:26.95 ID:a9tfMA/V0
  助手席に乗ってきたアナスタシアに飴の袋を差し出した。 
 「Конфета………飴、ですか?」 
 「運転席と助手席は空調が直当たりするからな。喉のためにも舐めておいた方がいい」 
 「ダー………ありがとうございます」 
  小袋を一つつまんで、彼女は飴玉を口に放り込み、ころころと舐め始めた。 
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/01(木) 23:08:58.49 ID:a9tfMA/V0
 「わぁ……………!」 
  目的地である山の頂上付近の広場に着くなり、アナスタシアは我先にと車を降り、目を輝かせた。 
 「プロデューサー、Звезда…………星です!」   
 「そうだな」 
 「とても………とても綺麗です………!」 
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/01(木) 23:09:25.54 ID:a9tfMA/V0
  あの天体観測からしばらくして、ついにアナスタシアはデビューした。 
  日本ではあまり見受けられないそのビジュアルは人々を魅了し、謙虚ともいえる姿勢が反感を生むことなくアナスタシアというアイドルを世間に広めた。広めたはずなのだが………。 
 「プロデューサー、星を見に行きたいです」 
  謙虚な姿勢はいづこへ、あの天体観測以来、アナスタシアはひどく甘えん坊になった。 
 「この前行ったばかりじゃないか………」 
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/01(木) 23:09:52.95 ID:a9tfMA/V0
  目的地へ向かう車中では、以前のように居心地の悪い沈黙が生まれることがなくなった。  
 「今日、幼少組に無表情で怖いって責め立てられたんだが………」 
 「ダー………プロデューサー、滅多に表情が変わりませんもんね」 
 「これでも笑顔を作る練習はしているんだが………」 
 「そうなんですか? なら今やってみてください」 
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/01(木) 23:10:19.50 ID:a9tfMA/V0
 「………お?」 
  目的地へと続くとされる道には、草木が生い茂っていた。 
 「………しまったな。カーナビが古いんだった」 
  昔は車も通れたのだろうが、今はそうはいかなくなっているようだ。 
 「アナスタシア、歩け………」 
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/08/01(木) 23:10:22.84 ID:3/iEVMIvo
 あ 
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/01(木) 23:10:33.99 ID:a9tfMA/V0
 「………重く、ないですか?」 
 「まったく。むしろ軽すぎて驚くくらいだ。ちゃんと飯は食べれているか?」 
 「ダー。寮のご飯美味しいです。お菓子がよく出るのが玉に瑕ですけど………」 
 「………女の子的には嬉しいことではないのか?」 
 「その………体重が………」 
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/01(木) 23:11:03.56 ID:a9tfMA/V0
  目的地に着いたはいいが、 
 「しまったな………」 
 「今日はНеудача………失敗が多いですね。もしかして、お疲れですか?」 
 「いや、そんなことはないと思うが………」 
  言いながら荷物を確認する。 
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/01(木) 23:11:29.87 ID:a9tfMA/V0
 「………寝心地は悪くないか?」 
 「………大丈夫です」 
 「………固くないか?」 
 「………ちょうどいいです」 
 「………そうか」 
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/01(木) 23:11:58.00 ID:a9tfMA/V0
  アナスタシアがユニットを組むことになった。 
  その名もにゃん・にゃん・にゃん。 
  ………高峯や前川が猫耳を付けているのは見たことがあったが、アナスタシアの選考理由が「アーニャ」という彼女の愛称から「あーにゃん」という名前が思いついたので、というよく分からないものだった。それでいいのかと思ったが高峯や前川などの大物アイドルと共に活動するのは彼女にとっても大きな利益となると思ったので快く彼女を送り出した。 
  もちろんアナスタシア個人の活動も続いているが、売り出しということもあってにゃん・にゃん・にゃんの活動時間の方が多く、またにゃん・にゃん・にゃんは別のプロデューサーの管轄であるためアナスタシアと顔を合わせる機会も随分と減ってしまった。 
  
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/01(木) 23:12:24.98 ID:a9tfMA/V0
 「その………うまくやっているか?」 
 「ダー。皆さんにはよくしていただいてます」 
 「そうか………」 
  久々に事務所で会う度に同じ質問をしてしまう。 
 「もしかして心配してくれてるんですか?」 
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/01(木) 23:12:52.17 ID:a9tfMA/V0
 「あーにゃんです」 
 「………ああ、猫耳を付けたのか。暑さにやられたのかと思った」 
 「Больной-tempered…………」  
 「で、猫耳なんぞ付けてどうした」 
 「似合いますか?」 
15:行間空けてくれたら目に優しいかなーって[sage]
2013/08/02(金) 00:18:22.21 ID:MPj4WOfBo
 i.imgur.com 
 i.imgur.com 
 アナスタシア(15) 
  
 i.imgur.com 
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/02(金) 00:35:39.54 ID:vx4V5jTo0
 すんません、次からは行間空けます 
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/08/02(金) 01:10:03.57 ID:1YTVQFCro
 カワイイ 
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/08/02(金) 01:26:15.70 ID:QXmYM2YDO
 アナスタシアの話し方良かったわ 
 これもすごくいい 
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/08/02(金) 09:20:22.08 ID:gKNi+W/7o
 良い 
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/08/02(金) 09:24:14.92 ID:625EXOivo
 内容がいいだけに行間あいてないのが気になってしまっていた 
 改善されるという事でさらに期待 
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/08/02(金) 10:15:08.95 ID:NvPequhAO
 >>20 
 多分もうちょっと余裕持って生きた方がいいぞ 
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