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2013/10/29(火) 03:08:52.00 ID:kWQTiV4f0
四条貴音の噂は瞬く間に両国に広がった。
ナムコ皇国の民衆からはその活躍ぶりから救世主と、また自国の心ない兵士からは殺戮人形と揶揄されていた。
クロイ帝国からは死をも恐れぬ戦いぶりと畏怖を込めて銀の銃弾[シルバー・ブレット]と呼ばれるようになっていた。
四条貴音が戦いに参加してどれくらいの月日が経っただろう、彼女が参加してからというもの日に日にナムコ皇国の優勢が目立つようになってきた。
これもひとえに彼女の大車輪の活躍があってのことであろう。そんな彼女も連戦に次ぐ連戦で疲弊していたのか珍しく傷を負って帰還した。
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2013/10/29(火) 03:09:34.09 ID:kWQTiV4f0
「私にはお構いなく、この程度どうということありませんので。」
そう冷たく言い放つと自室に帰ろうとしていた、その時。
「待ってください!!あなたの噂は聞いています。とてもお強い方だと聞きましたが傷を負った兵士放っておくわけにはいきません!」
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2013/10/29(火) 03:10:24.64 ID:kWQTiV4f0
彼女が振り返るとそこには短く切られた髪をブラウンに染めた白衣の少女が立っていた。首からは[軍医 萩原雪歩]と書かれた名札を下げている。
「ご心配なく、あなたの手を借りるほどのことではございません。」
「そうはいきません!私にも軍医としてのプライドが有るのです。あなたは人を[ピーーー]のが仕事でしょうが私は人を治すのが仕事なんです。ここは引き下がれません!」
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2013/10/29(火) 03:11:36.30 ID:kWQTiV4f0
ここで貴音はあることに気付いた。見れば目の前にいる少女は体を小刻みに震わせており、自分を怖がっている様子である。
「どうしたのです?怖いのであれば近づかなければよろしいではありませんか。」
「嫌です!軍医になって日も浅くてダメダメな私ですけど、あなただけは放っておいたらいけないと思ったんです!」
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2013/10/29(火) 03:12:38.13 ID:kWQTiV4f0
「おかしな方ですね、分かりました。そこまで言うのなら仕方ありませんね。」
貴音は彼女の診察を受けることにした。
診察を受けたかった訳ではない、むしろ診察をする彼女の方に興味がわいたのだ。
彼女は明らかに自分に対して恐怖していた、自分に恐怖する者の取る行動といえば命乞いか背を向けて逃げるものばかり、だから恐怖してなお自分に相対してきた彼女が不思議で仕方なかったのだ。
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2013/10/29(火) 03:13:44.07 ID:kWQTiV4f0
「こ、こちらにどうぞ」
さっきの威勢はどこへ行ったのやら、頼りない背中の後を貴音はただ黙ってついて行った。程なくして簡素な診察室へとたどり着いた。
「まずはその甲冑を脱いでいただけますか?」
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2013/10/29(火) 03:15:02.53 ID:kWQTiV4f0
甲冑を脱いだ貴音の姿に雪歩は唖然とした。彼女の透き通るような白い肌には無数のアザ、切り傷、やけどの痕など見るにたえない姿であった。
「な、なんでこんなになるまで放っておいたんですか!?もっと早く来ていただければそれなりの処置はしたのに・・・」
「なにをそんなに驚いているのです?私の傷など自国の勝利には取るに足らない代償、戦いの中で死ぬのならそれもまた私の運命なのでしょう。」
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2013/10/29(火) 03:15:34.58 ID:kWQTiV4f0
ありがとうございました。失礼致します。」
それだけ言い残すと貴音は自室へと帰っていった。
結局あまり会話をすることが出来なかった、しかし彼女を放っておいたらいつか取り返しの付かないことになる、雪歩の勘がそう言っていた。一晩中考えて雪歩はひとつの決心をした。
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2013/10/29(火) 03:16:24.75 ID:kWQTiV4f0
自室に戻った貴音もやはり彼女のことが気になっていた。
なぜ彼女は自分の姿を見て驚いていたのだろうか、戦場での傷は当然の事、戦場での死も当然の事、軍医である彼女がそんな事を知らないはずがない。
ならば彼女はなぜあんなに驚いていたのか。
自分の言動、姿にどこか問題でもあったのだろうか。
考えてもわからない。そしてふと気がついた。
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2013/10/29(火) 03:17:06.04 ID:kWQTiV4f0
ナムコ皇国はその後も一気に攻勢に転じ、クロイ帝国をじわじわと追い詰めていた。
そして次の遠征から兵士達が帰ってきた時、雪歩は真っ先に駆けつけ貴音の姿を探した。きっとまた無茶をして帰ってきているに違いない、雪歩には確信があった。程なくして銀色の甲冑を真っ赤に染めた彼女の姿をみつけた。
「四条さん!!」
22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/10/29(火) 03:18:04.43 ID:kWQTiV4f0
「どうしたのです萩原雪歩?前とは様子が随分違うようですが。」
「四条さんはおかしいです!あのあとゆっくり考えましたけどやっぱり四条さんはおかしいんです!」
まただ、また得も言われぬ違和感が胸をよぎる。自分は全くおかしいところなど無い、ただ兵士として当然のことをしているだけ。しかし目の前の彼女は兵士というものを知りながらおかしなことを言っている。思い切って貴音も自分の思いを言うことにした。
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