2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/11(月) 01:00:15.45 ID:Bw6Z329mo
「え、ここで悩む?」
キャプテンが笑いながら言う。ここは普通に悩むところじゃなくねえ? そんなふうに。
追従の声も周囲からあがった。七番は慌てた調子で「いや、どっちともよく話すからさあ」とよく分からない言い訳をする。
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2013/11/11(月) 01:01:11.98 ID:Bw6Z329mo
何もしないのは暇だから、俺はいつも一人で暇を潰している。
気取ってドストエフスキーなんて読んだみたり、前日に観た「汚れた顔の天使」のことを考えたり。
もしくは「ホテル・カリフォルニア」のイントロをできるかぎり正確に思い出そうとしたり。
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2013/11/11(月) 01:01:41.93 ID:Bw6Z329mo
◇
べつに寂しいわけじゃない。
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2013/11/11(月) 01:02:13.30 ID:Bw6Z329mo
◇
その場にいるだけで人を傷つけたり、不愉快にさせたりする人間っていうのはべつに珍しい存在でもない。
たぶんそこらじゅうに掃いて捨てるほどいるんだと思う。
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2013/11/11(月) 01:02:40.08 ID:Bw6Z329mo
佐々木春香は性格が悪い。最初にそう言ったのはたぶん木村だ。
木村里奈。吹奏楽部でフルートを吹いている。
木村里奈が、たぶんバスケ部のキャプテンあたりにそう言った。会話の流れは至ってシンプル。
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2013/11/11(月) 01:03:30.26 ID:Bw6Z329mo
俺がそのことを無神経にも報告すると、「わたし、そいつらと話もしたことないんだけど」と、佐々木は泣きだしそうな顔で笑ってた。
その表情は、すごく魅力的だった。いたいけな強がりと頼りなさが融和していた。
とてもかわいくて、いっそ性的ですらあった。
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2013/11/11(月) 01:04:26.84 ID:Bw6Z329mo
◇
そんなわけで、俺はひそかに盗み聞きしていたバスケ部のやり取りに対して、頭の中で「佐々木が一番に決まってるだろ」と答えていた。
そんなことを実際に口に出せば、彼らは、
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2013/11/11(月) 01:04:59.26 ID:Bw6Z329mo
◇
どうでもいい話だけれど俺たちは中三で、季節は秋で、だから正確に言えば彼らはバスケ部じゃなくて元バスケ部だった。
キャプテンは元キャプテンだったし、七番は元七番だった。
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/11(月) 01:05:52.09 ID:Bw6Z329mo
俺は「直帰」ないし「自主的居残り派」だ。寄り道もするが、ゲーセンやファーストフード店で時間を潰すことはしない。
だってゲーセンってうるさいしなんか怖くねえ? というのが俺の主張。
ゲーセンで金を使うくらいならコンビニで同額分のスナック菓子を買い込んで家で食べる。
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/11(月) 01:06:19.19 ID:Bw6Z329mo
冗談みたいなナチュラルボーン・ボッチな生活において唯一と言ってもいい話相手が佐々木春香だった。
彼女はいつも屋上のフェンスに背を向けて座り込み、イヤホンをつけて音楽を聴いている。
レンタルショップで買ったらしい安物のMP3プレイヤーを、結構長い間使い古している。
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/11(月) 01:06:58.03 ID:Bw6Z329mo
彼女は俺のそんな反応すらも楽しんでいたのだと思う。
俺と彼女は、フェンスを背に、並んで座り込みながらも、ほとんど言葉を交わさなかった。
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